事例Ⅳ ~企業価値(1)(企業価値の評価方法)~

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今回は、「企業価値(1)(企業価値の評価方法)」について説明します。

 

目次

企業価値

「企業価値」に関連する記事は、以下のページに整理しています。

 

企業価値とは

「企業価値」は「企業買収(M&A)」などのケースにおいて使用されます。

中小企業は、事業領域を拡大することを目的として企業を買収したり、後継者が不在の場合に企業を存続させるための手段として企業を売却します

当然ながら、買収する側の企業としては買収しようとする企業をできるだけ安く購入したいと考え、売却する側の企業としてはできるだけ企業を高く売りたいと考えて交渉を進めることとなります。

このように、買収する側の企業と売却する側の企業で思惑が異なり、独自の立場でその買収価格(売却価格)を話し合っても双方の合意には至らないため、根拠に基づく「企業価値」を算出して、「企業買収(M&A)」の買収価格(売却価格)を決定していきます。

 

二次試験において、「企業価値」に関する問題を解くために必要な知識として「企業価値の評価方法」「DCF法(割引キャッシュフロー法)」について説明していきます。

 

企業価値の評価方法

企業価値を評価する方法は「インカムアプローチ」「マーケットアプローチ」「コストアプローチ」の3つのアプローチ方法に分類されます。

それぞれのアプローチ方法にメリットとデメリットがあるため、実務上では目的に応じて複数の評価方法を組み合わせて企業価値を算出します。

なお、事例Ⅳでは、インカムアプローチの「DCF法(割引キャッシュフロー法)」を中心に出題されます。

 

インカムアプローチ

インカムアプローチは、将来の収益やキャッシュフローを現在価値に換算して企業価値を評価するアプローチ方法です。

将来の収益力を根拠として企業価値を算定することができるというメリットがありますが、算定する人の主観が入りやすいことや算定に手間がかかるというデメリットがあります。

 

インカムアプローチには、以下の手法があります。

  • DCF法(割引キャッシュフロー法)
  • 収益還元法
  • 配当還元法

 

DCF法(割引キャッシュフロー法)

「DCF法(割引キャッシュフロー法)」とは、将来の予想キャッシュ・フローを「資本コスト」で割り引いて「企業価値」を算出する方法です。

将来の事業活動により獲得できると予想されるキャッシュ・フローに基づき企業価値を算出するため、M&Aにおいて企業価値を算出するという目的と照らし合わせると最も適した評価方法ですが、将来の事業活動により獲得すると予想されるキャッシュ・フローの算出に多大な手間がかかります

また、キャッシュ・フローを算出する人の主観が組み込まれるため、客観的に金額の妥当性を評価することが難しいとされています。

 

「資本コスト」とは、企業が存続する限り最低限発生するコストといいます。

「資本コスト」は、「加重平均資本コスト(WACC)」により「負債コスト」と「株主資本コスト」の加重平均で算出します。

 

収益還元法

「収益還元法」とは、将来の予想平均利益を「資本還元率」で割り引いて「企業価値」を算出する方法です。

将来の予想収益には平均値を使用するため、DCF法よりも手間をかけずに「企業価値」を算出することができます。

予想収益の平均値を使用するということは、安定した収益が予想される業界に属する企業の価値を算出するのには適していますが、今後の発展が予想される業界に属する企業やベンチャー企業などのように、これから収益が拡大すると予想される企業の価値を算出するのには適していないということを示しています。

 

もし、事例Ⅳで「収益還元法」を扱う問題が出題されるとした場合、「資本還元率」は数値で与えられるか、「資本コスト率」を「資本還元率」とみなして計算するように。という形で出題されるのではないかと推測されます。

 

配当還元法

「配当還元法」とは、株主に支払う将来の配当金を「株主資本コスト」で割り引いて「株主価値」を算出する方法であり、一次試験では「配当割引モデル」という名称でよく出てきます。

「DCF法」や「収益還元法」は「企業価値」を算出する方法ですが、「配当還元法」は「株主価値」を算出する方法であることに違いがあります。

「配当還元法」により算出される「株主価値」は、企業の配当政策により大きく変わってくるため、企業買収などを目的とした「企業価値」の計算においては、あまり採用されない方法です。

 

「株主資本」とは資本金などの純資産です。資本金を調達するために株式を発行している場合、株主に対して「配当金」を支払わなくてはなりません。これが「株主資本コスト」です。

「株主資本コスト」は、「CAPM(Capital Asset Pricing Model)」により算出します。

マーケットアプローチ

マーケットアプローチは、株式指標などで他社との比較を行い、市場で取引される価値を評価するアプローチ方法です。

企業が公開しているデータを根拠として企業価値を算定することができるというメリットがありますが、企業が適用している会計基準の違いに影響を受けることと将来の収益力を評価することができないというデメリットがあります。

 

マーケットアプローチには、以下の手法があります。

  • 市場株価法
  • 類似会社比較法(マルチプル法)

 

市場株価法

「市場株価法」は、株式市場における「株価」に基づいて「企業価値」を評価する方法です。

「株価」を評価する際には、「企業価値」とは関連性のない株式市場全体の騰落による影響を排除するため、前日終値、1ヶ月終値平均値、3ヶ月終値平均値、6ヶ月終値平均値といった数値を、目的に合わせて選択する必要があります。

 

類似会社比較法(マルチプル法)

「類似会社比較法(マルチプル法)」は、事業内容、市場規模、収益の状況などの観点から自社と類似する企業を選定して、これらの類似企業における株価や財務指標を参照しながら自社の株主価値を算定する方法です。

 

類似企業の選定

「類似会社比較法(マルチプル法)」では、選定する類似企業によって算定結果が大きく変わってくるため、慎重に類似企業を選定することが重要です。

類似企業を選定するにあたっては、業種だけでなく販売・提供している商品・サービスの類似性、ブランド価値を含めた企業の規模、売上高・売上総利益・営業利益・経常利益・当期純利益などの成長率、資本構成(株式資本と負債の比率)、従業員構成などの要素を比較して類似している企業を選定していきます。

すべての要素が類似している企業を選定するのは非常に難しいですが、できるだけ多くの企業を選定して、データの偏りを少なくする必要があります。

 

株主価値の算定

類似企業における各種財務指標の倍率(マルチプル)を求めた後、自社の数値に乗じることによって株主価値を算定していきます。

株主価値を算定するために使用する代表的な財務指標を以下に示します。

  • EBIT倍率:EV ÷ EBIT
  • EBITDA倍率:EV ÷ EBITDA
  • PSR(株価売上高倍率)
  • PER(株価収益率)
  • PBR(株価純資産倍率)
EBIT(経常利益 + 支払利息)
EBITDA(経常利益 + 支払利息 + 減価償却費)
EV(株式時価総額 + 有利子負債 - 現金・預金)
PSR(株式時価総額 ÷ 売上高)

コストアプローチ

コストアプローチは、ネットアセット・アプローチ、ストック・アプローチとも呼ばれ、貸借対照表の資産から企業価値を評価する方法です。

ある時点における資産を根拠として企業価値を算定することができるというメリットがありますが、適切な時価の算出が難しいことと将来の収益力を評価することができないというデメリットがあります。

 

コストアプローチには、以下の手法があります。

  • 簿価純資産法
  • 修正簿価純資産法
  • 時価純資産法

 

簿価純資産法

「簿価純資産法」とは、「貸借対照表」に計上されている「純資産額」に基づいて「株主価値」を算出する方法です。

「貸借対照表」に記載されている簿価が「適正な価値」とは考え難いため、あまり使用されることはありません。

また、「貸借対照表」の「純資産の部」には、株主資本以外の項目(評価・換算差額等、新株予約権、新株式申込証拠金、自己株式申込証拠金など)が含まれており、これらの項目の扱いに関する規定が存在しないため、算出する際には条件を合わせる必要があります。

 

修正簿価純資産法

「修正簿価純資産法」とは、「貸借対照表」に計上されている「純資産」の中で、有価証券や土地などの大きな含み損益が認められるものを時価に修正して「株主価値」を算出する方法です。

 

時価純資産法

「簿価純資産法」とは、「貸借対照表」に計上されている「純資産」の全ての項目に関する時価を算出して「株主価値」を算出する方法です。

 


事例Ⅳでは、インカムアプローチの「DCF法(割引キャッシュフロー法)」を中心に出題されるため、次回は「事例Ⅳ ~企業価値(2)(DCF法)~」について説明します。

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