事例Ⅳ ~平成22年度 解答例(3)(損益分岐点分析)~

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平成22年度の事例Ⅳに関する解答例(案)を説明していきます。

私なりの思考ロジックに基づく解答例(案)を以下に説明しますので、参考としてもらえればと思います。

事例Ⅳ ~平成22年度試験問題一覧~

平成22年度の他の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

損益分岐点分析(CVP分析)

「損益分岐点分析(CVP分析)」では、総費用を変動費と固定費に区分して、目標利益を達成するために必要な売上高や製品の販売数量を分析するなど企業が利益計画を立てるために必要な数値を求めることができます。

「損益分岐点分析(CVP分析)」は、企業の費用構造に関する安全性を分析する手法です。

企業の費用構造上、総費用に占める固定費の割合が低くなると、世の中の不況などの外部環境の変化により売上高が低下しても利益を確保することができるなど、外部環境の変化に対する抵抗力が強くなります。

第2問

第2問(配点25点)

営業部からの報告によれば、Z社は部品Qの納入価格の20%引き下げを要求している。さらにZ社からは、納入価格を現在の価格より30%引き下げることができれば、今後は仕入れ先をD社に一本化し、発注量を2倍にする案が提示されている。
部品Qの現在の売上高は2,823百万円、変動費は1,129百万円、固定費は1,640百万円である。

なお、現状の生産能力には十分な余裕があり、生産技術部からは、部品Qの納入量を2倍にしても、その原価構造は現状と変化がないと報告されている。

(設問1)

部品Qの損益分岐点図表は次ページに示されたとおりである。

①納入価格を20%引き下げた場合、②納入価格を30%引き下げた場合のそれぞれについて、解答用紙の損益分岐点図表に総費用線を描け。また、①および②の場合の損益分岐点売上高を所定の解答欄に求めよ(単位:百万円)。

なお、総費用線を描く際には、2つのケースを区別するため、①の場合を破線、②の場合を実線で表すものとする。

定規がない場合、フリーハンドでもよいが、始点、交点、終点等のうち重要なものは明確にすること。

(設問2)

D社はZ社から提示された案のうち、どちらを受け入れるべきか、その理由とともに60字以内で解答せよ。

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

考え方(設問1)

「設問1」では「損益分岐点図表に総費用線を描くこと」と「納入価格を引き下げた場合の損益分岐点売上高を算出すること」の2つを求められています。

「納入価格を引き下げた場合の損益分岐点売上高を算出すること」はそれほど難しくありませんが、「損益分岐点図表に総費用線を描くこと」は慣れていないと少し戸惑うかもしれません。

損益分岐点図表

問題文で与えられている「損益分岐点図表」で表していることを理解するために「損益分岐点図表」に記載されている「2本の線」である「総費用線(総費用曲線)」と「売上曲線」について説明します。

総費用曲線

「Y=費用」「X=売上高(生産量)」「a=変動費率(変動費の傾き)」「b=固定費」とすると、「総費用曲線」は「Y=aX+b」という式で表すことができます。

「b= 固定費 = 1,640百万円」から「変動費率」を傾きとした右肩上がりの直線となっています。

売上曲線

「売上曲線」はゼロから始まり「生産量」に比例した右肩上がりの直線です。
縦軸にも横軸にも「売上高」が設定されるため、基本的に「45度」の傾きで表されます。

今回の問題でも「ゼロ」を始点とした「45度」の右肩上がりの直線となっています。

損益分岐点

上記で説明した「総費用曲線」と「売上曲線」を組み合わせた時の「総費用曲線」と「売上曲線」の交点(青い点)が「損益分岐点」です。

「損益分岐点」とは「売上高」と「総費用」が等しくなり「利益」がゼロとなる点のことをいいます。

「始点、交点、終点等のうち重要なもの」とは?

今回の問題では、「定規がない場合、フリーハンドでもよいが、始点、交点、終点等のうち重要なものは明確にすること」と記載されていますが、重要なのは「交点=損益分岐点売上高」です。
「始点」は①②のいずれの場合でも「現在の状況」から変化しません
また、「終点」は生産能力に限界が来るまで右肩上がりで伸び続けます

「損益分岐点図表」の読み方について説明したので、続いて「現在の状況」「①納入価格を現在の価格より20%引き下げた場合」「②納入価格を現在の価格より30%引き下げた場合」の「損益分岐点売上高」を求めていきます。

現在の状況

Z社から納入価格の引き下げ要求を受ける前の「売上高」「変動費」「固定費」から「損益分岐点売上高」を求めていきます。

現在の状況
売上高 2,823百万円
変動費 1,129百万円
固定費 1,640百万円

変動費率

「変動費率」は、以下の計算式により算出されます。

なお、計算結果が割り切れないため、ここでは計算式までを書き出すこととします。

  • 変動費率 = 1,129 ÷ 2,823

損益分岐点売上高

「損益分岐点売上高」は、以下の計算式により算出されます。

なお、計算結果が割り切れないため、与件文の最後に記載されている条件に基づき「小数点第3位を四捨五入」します。

  • 損益分岐点売上高 = 1,640 ÷( 1 - 1,129 ÷ 2,823 )= 2,733.010… ≒ 2,733.01百万円

損益分岐点売上高の公式算出過程

「損益分岐点分析(CVP分析)」では、様々な公式が出てきますが、公式だけ覚えておくと、応用問題に対応することができないので、算出過程から公式を算出できるように理解を深めておく必要があります。

「損益分岐点売上高」は「売上高」から「変動費」と「固定費」を控除したときに「利益」がゼロとなる「売上高」であり、「売上高 - 変動費 - 固定費 = 0」という式からスタートします。

  • 売上高 - 変動費 - 固定費 = 0
  • 変動費 = 売上高 × 変動費率

この式を変形していくと。

  • 売上高 - 売上高 × 変動費率 - 固定費 = 0
  • 売上高 ×(1 - 変動費率)- 固定費 = 0
  • 売上高 ×(1 - 変動費率)= 固定費
  • 売上高 = 固定費 ÷(1-変動費率)

「損益分岐点売上高」の公式は以下の通りです。

①納入価格を現在の価格より20%引き下げた場合

納入価格を現在の価格より20%引き下げた場合の「売上高」「変動費」「固定費」から「損益分岐点売上高」を求めていきます。

現在の状況 20%引き下げ 備考欄
売上高 2,823百万円 2,258.4百万円 20%DOWN
変動費 1,129百万円 1,129百万円 変化なし
固定費 1,640百万円 1,640百万円 変化なし

「変動費率」「損益分岐点売上高」は以下の通りです。

  • 変動費率 = 1,129 ÷ 2,258.4
  • 損益分岐点売上高 = 1,640 ÷( 1 - 1,129 ÷ 2,258.4 )= 3,279.419… ≒ 3,279.42百万円

②納入価格を現在の価格より30%引き下げた場合

納入価格を現在の価格より30%引き下げた場合の「売上高」「変動費」「固定費」から「損益分岐点売上高」を求めていきます。

納入価格は30%低下しますが「販売量=生産量」が「2倍」となるため「変動費」も「2倍」となることに注意が必要です。

現在の状況 30%引き下げ 備考欄
売上高 2,823百万円 3,952.2百万円 30%DOWN
販売量2倍
変動費 1,129百万円 2,258百万円 生産量2倍
固定費 1,640百万円 1,640百万円 変化なし

「変動費率」「損益分岐点売上高」は以下の通りです。

  • 変動費率 = 2,258 ÷ 3,952.2
  • 損益分岐点売上高 = 1,640 ÷( 1 - 2,258 ÷ 3,952.2 )= 3,825.763… ≒ 3,825.76百万円

「変動費率」の増減に伴う総費用曲線の変化

今回の問題では、納入価格を引き下げた場合、「固定費」は変動しませんが「変動費率」が上昇します。

現在の状況 20%引き下げ 30%引き下げ
売上高 2,823百万円 2,258.4百万円 3,952.2百万円
変動費 1,129百万円 1,129百万円 2,258百万円
変動費率  約40% 約50% 約57%

総費用曲線(ページ前半で説明済み)

「変動費率」は「総費用曲線」の「傾き」を表しているため、納入価格の引き下げにより「変動費率」が上昇するということは「総費用曲線」の傾きが大きくなるたことを示しています。

つまり、①②の「総費用曲線」を描く場合は、「現在の状況」の「総費用曲線」よりも上方に描く必要があることが分かります。

解答(設問1)

「①納入価格を20%引き下げた場合」「②納入価格を30%引き下げた場合」の「損益分岐点図表の総費用線」と「損益分岐点売上高」は以下の通りです。

損益分岐点図表

問題文に記載されている「始点、交点、終点等のうち重要なものは明確にすること」という指示が曖昧なので、何を明確にしたらよいかがよく分かりません。

「損益分岐点売上高」の数値は以下に解答するのでいらない気がしますが、せっかく求めたので書くことにしました。

損益分岐点売上高

3,279.42百万円
3,825.76百万円

考え方(設問2)

「損益分岐点分析(CVP分析)」の観点から、「①納入価格を現在の価格より20%引き下げた場合」「②納入価格を現在の価格より30%引き下げた場合」のいずれを受け入れるべきかを確認していきます。

損益分岐点図表の見方

「損益分岐点図表」では、「損益分岐点」よりも右側に行く(売上高が高くなる)と「利益」が発生しており、損益分岐点よりも左側に行く(売上高が低くなる)と「損失」が発生していることを示しています。

つまり、「売上高 > 損益分岐点売上高」の関係が成立していれば「利益」を上げることができますが、「売上高 < 損益分岐点売上高」の場合は「損失」が発生していることとなります。

「売上高」と「損益分岐点売上高」

「現在の状況」「①納入価格を現在の価格より20%引き下げた場合」「②納入価格を現在の価格より30%引き下げた場合」の「売上高」と「損益分岐点売上高」を以下に示します。

現在の状況 20%引き下げ 30%引き下げ
売上高 2,823百万円 2,258.4百万円 3,952.2百万円
損益分岐点売上高 2,733.01百万円 3,279.42百万円 3,825.76百万円

「①納入価格を現在の価格より20%引き下げた場合」では、「売上高 < 損益分岐点売上高」となり「損失」が発生することとなるため、受け入れるべきではありません

一方で、「②納入価格を現在の価格より30%引き下げた場合」では、「売上高 > 損益分岐点売上高」となり「利益」が発生することとなるため、受け入れることが可能だと判断することができます。

解答(設問2)

上述で説明した結果を踏まえ、解答を以下に示します。

案②を受け入れるべきである。案①は売上高が損益分岐点売上高を下回り損失が発生するが案②は上回っており利益を得られるため。(60文字)


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