事例Ⅳ ~限界利益と貢献利益による分析(3)(限界利益)~

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今回は、「限界利益と貢献利益による分析(3)(限界利益)」について説明します。

 

目次

限界利益と貢献利益による分析

「限界利益と貢献利益による分析」に関連する記事は、以下のページに整理しています。

 

限界利益と貢献利益

管理会計において、企業全体の利益を増やしていくために、製品や事業部門の採算性を分析するには、「限界利益」と「貢献利益」という指標を活用します。

「限界利益」は、限られた経営資源で、企業の利益を最大限にするために、販売する製品の最適な販売比率(最適セールスミックス)を求めるために活用され、「貢献利益」は、製品ラインナップや事業部門の採算性を見極め、企業全体の利益に貢献していない製品の生産を中止したり、事業部門を廃止する判断をするために活用されます。

「限界利益」は「売上高」から「変動費」を控除した金額「貢献利益」は「限界利益」から「個別固定費」を控除した金額となります。

「個別固定費」と「共通固定費」の違いについては、「限界利益と貢献利益による分析(2)(変動費と固定費)」で説明していますので、そちらを参照してください。

 

企業収支の費用分解

売上高
 変動費
限界利益
 個別固定費
貢献利益
 共通固定費
営業利益

 

損益分岐点分析では「限界利益 = 貢献利益」と捉えて、「貢献利益 = 売上高 - 変動費」として考えます。

 

限界利益

「限界利益」は「売上高」から「変動費」を控除して算出します。

「限界利益」は製品の「売上高・販売量・生産量」が増えた時にどれだけ利益が増加するかを表しており、「1単位当たりの限界利益」が高い製品の「売上高・販売量・生産量」を増やすと、営業利益を最大化することができます。

 

 

限界利益の「限界」とは経済学で使用される概念であり、「限界利益」とは「売上高の増加(1単位)に合わせて増加する利益(1単位)のこと」を示しています。

「1単位」の意味が分かりにくいですが、1つの例として「製品1個」を「1単位」として考えるとイメージしやすいと思います。「製品」を「1個」販売したときに増加する利益は「製品1個当たりの限界利益」です。

 

経済学における限界概念

「限界○○」という言葉は経済学の中で用いられる表現であり、Wikpedia「限界(経済学)」では以下の通り紹介されています。

経済学における限界概念(げんかいがいねん、英: marginal concept)とは、財やサービスなどの変数を微少量だけ増やしたときの、(その変数に依存する)別の変数の追加1単位あたりの増加分もしくは増加率を表す。数学の微分と同じ概念であり、図の上では曲線の傾きで表される。

限界概念を考える際には、財が必要なだけ充分小さい単位に分割できるものと仮定されている

Wikipediaより引用(2018年5月20日現在)

 

限界利益率

「限界利益」は「売上高(=製品の生産量)」に比例して増減します。
売上高に対する限界利益の割合を示す「限界利益率」は以下の計算式により算出されます。

 

変動費率

「変動費」と「固定費」を組み合わせた図において「Y=費用」「X=売上高(生産量)」「a=変動費の傾き」「b=固定費」とすると、「費用曲線」は「Y=aX+b」という式で表すことができます。

 

 

「a=変動費の傾き」のことを変動費率といい、売上高に対する変動費の割合を示しています。なお、分母が原価の総額ではなく、売上高であることに注意してください。

 

 

なお、実際の試験問題では、以下の公式を使うことの方が多いと思われます。

 

【例題】限界利益分析による製品の増産計画

「限界利益」について理解を深めるため、製品の増産計画に関する考え方を例題で説明していきます。

 

D社の収支状況(前提条件)

  • D社では「製品X」「製品Y」「製品Z」を生産している。
  • D社の製品は需要が高く、生産した製品は全て販売することができる。
  • 今年度のD社における損益は「売上高:4,800万円」「営業利益:0万円」である。
  • 各製品の変動費率は以下の通りである。
    • 製品X:40%
    • 製品Y:50%
    • 製品Z:60%
  • 共通固定費は「480万円」であり、売上高の比率によって各製品に按分される。

 

製品別収支状況一覧

製品X 製品Y 製品Z 合計
売上高 1,500 1,600 1,700 4,800
変動費 600 800 1,020 2,420
限界利益 900 800 680 2,380
個別固定費 600 900 400 1,900
貢献利益 300 ▲100 280 480
共通固定費 150 160 170 480
営業利益 150 ▲260 110 0

 

製品の増産計画

D社は生産能力に余剰があり、「製品X」「製品Y」「製品Z」のいずれかの製品について「生産量」を2倍にすることが可能である。
どの製品の「生産量」を増やしたときに「営業利益」が一番大きくなるかを求めよ。

なお、前提条件に記載の通り、D社の製品は需要が高く、生産した製品は全て販売することができる。

 

各製品の「生産量」を2倍にした場合、D社の営業利益がどのように変化するかについて確認していきます。

 

製品Xの生産量を2倍にした場合
製品X 製品Y 製品Z 合計
売上高 3,000 1,600 1,600 6,200
変動費 1,200 800 960 2,960
限界利益 1,800 800 640 3,240
個別固定費 600 900 400 1,900
貢献利益 1,200 ▲100 240 1,340
共通固定費 232 124 124 480
営業利益 968 ▲224 116 860

 

製品Yの生産量を2倍にした場合
製品X 製品Y 製品Z 合計
売上高 1,500 3,200 1,600 6,300
変動費 600 1,600 960 3,160
限界利益 900 1,600 640 3,140
個別固定費 600 900 400 1,900
貢献利益 300 700 240 1,240
共通固定費 114 244 122 480
営業利益 186 456 118 760

 

製品Zの生産量を2倍にした場合
製品X 製品Y 製品Z 合計
売上高 1,500 1,600 3,200 6,300
変動費 600 800 1,920 3,320
限界利益 900 800 1,280 2,980
個別固定費 600 900 400 1,900
貢献利益 300 ▲100 880 1,080
共通固定費 114 122 244 480
営業利益 186 ▲222 636 600

 

各製品の「生産量」を2倍にした場合、「製品X」の「生産量」を増やした場合が「営業利益」が一番大きくなることが分かります。

  • 製品X:860万円 > 製品Y:760万円 > 製品Z:600万円

 

それでは、「製品X」の「生産量」を増やした場合の「営業利益」が一番大きくなるのはなぜでしょうか。それは「製品X」の「限界利益率」が一番高いからです。

  • 製品X:60% > 製品Y:50% > 製品Z:40%

 

解答

「製品X」の生産量を2倍にしたときに営業利益が一番大きくなる。

 

覚えておいて欲しいこと

ここで、是非覚えておいて欲しいことは

 

限界利益が高い製品の「売上高・販売量・生産量」を増やすと、営業利益を最大化することができる。

 

ということです。

 


明日は、「限界利益と貢献利益による分析(4)(最適セールスミックス)」について説明します。

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