今回は、「設備投資の経済性計算(8)(内部収益率法による投資の実行判断)」について説明します。
目次
設備投資の経済性計算
「設備投資の経済性計算」に関連する記事は、以下のページに整理しています。
設備投資の概要について(例題)
例題の内容が、昨日までとは異なっていますので、ご注意ください。
A社は、来年度の期首に新しい設備投資の導入を検討している。
想定している条件は以下の通りである。
- 新しい設備は、プロジェクト開始のタイミングで購入して5年間利用する。
- 新しい設備の購入価格は「1,500万円」である。
- 新しい設備の導入により発生する各期における税引後キャッシュフローは以下の通りである。
【各期における税引後キャッシュフロー】
1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | |
税引後CF | 250万円 | 450万円 | 400万円 | 350万円 | 300万円 |
- A社の資本コスト率は6%である。
- 複利現価係数は以下のとおりである。
【複利現価係数一覧】
割引率 | 1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 |
3% | 0.9709 | 0.9426 | 0.9151 | 0.8885 | 0.8626 |
4% | 0.9615 | 0.9246 | 0.8890 | 0.8548 | 0.8219 |
5% | 0.9524 | 0.9070 | 0.8638 | 0.8227 | 0.7835 |
6% | 0.9434 | 0.8900 | 0.8396 | 0.7921 | 0.7473 |
7% | 0.9346 | 0.8734 | 0.8163 | 0.7629 | 0.7130 |
内部収益率法(IRR)による投資の実行可否判断
今回は、内部収益率の算出方法、および投資の実行可否の判断方法について説明を行います。
各割引率における正味現在価値の算出
問題文で与えられた「投資金額」「各期における税引後キャッシュフロー」「複利現価係数一覧」の数値を使って、各割引率における正味現在価値の一覧を以下の通り算出します。
割引率 | 投資金額 | 各期における税引後キャッシュフローの割引現在価値 | 正味現在価値 | ||||
1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | |||
3% | ▲1,500 | 242.72 | 424.17 | 366.06 | 310.97 | 258.78 | 102.70 |
4% | ▲1,500 | 240.38 | 416.05 | 355.60 | 299.18 | 246.58 | 57.79 |
5% | ▲1,500 | 238.10 | 408.16 | 345.54 | 287.95 | 235.06 | 14.80 |
6% | ▲1,500 | 235.85 | 400.50 | 335.85 | 277.23 | 224.18 | ▲26.39 |
7% | ▲1,500 | 233.64 | 393.05 | 326.52 | 267.01 | 213.90 | ▲65.88 |
補完法による内部収益率の算出
割引率が「5%」の場合は、正味現在価値が「14.80万円(プラス)」であり、割引率が「6%」の場合は「▲26.39万円(マイナス)」となっているため、正味現在価値がゼロとなる割引率(内部収益率)が「5%~6%」の間であることが分かります。
具体的に、正味現在価値がゼロとなる割引率(内部収益率)を算出するためには、「補完法」という手法を利用します。言葉では説明しづらいのでイメージを以下に示します。
- 内部収益率 = 5% + 14.80 ÷ 41.19 ≒ 5.36%
内部収益率法(IRR)による投資の実行可否判断
「事例Ⅳ ~設備投資の経済性計算(3)(意思決定モデル)~」において説明した通り、「内部収益率法(IRR)」による投資の実行可否に関する判断基準は以下の通りです。
新しい設備を導入した場合の「内部収益率」が、A社の「資本コスト」を下回っているため、設備投資を実行すべきではないとの判断を行います。
- 内部収益率:5.36% < 資本コスト:6%
なお、投資による収益性を重視する他の意思決定モデルでも「投資すべきではない」との結論に至ります。
意思決定モデル | 数値 | 投資判断 |
正味現在価値法(NPV) | ▲26.39万円 | 投資すべきではない |
収益性指数法(PI) | 0.98 | 投資すべきではない |
明日は、「設備投資の経済性計算(9)(回収期間法による投資の実行判断)」について説明します。
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