事例Ⅳ ~設備投資の経済性計算(7)(NPV・PIによる投資の実行判断)~

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今回は、「設備投資の経済性計算(7)(正味現在価値法/収益性指数法による投資の実行判断)」について説明します。

 

目次

設備投資の経済性計算

「設備投資の経済性計算」に関連する記事は、以下のページに整理しています。

 

設備投資の概要について(例題)

A社は、来年度の期首に新しい設備投資の導入を検討している。
想定している条件は以下の通りである。

  • 新しい設備は、プロジェクト開始のタイミングで購入して5年間利用する。
  • 設備の購入価格は4,000万円である。
  • 設備投資にかかる費用の全額を、年利3%で銀行から借り入れる。
  • 銀行からの借入金は、プロジェクト終了時に一括で返済する。
  • 設備は、耐用期間5年、残存簿価0円として、定額法で減価償却を行う。
  • 5年後のプロジェクト終了時に設備を500万円で売却する。
  • 設備の導入による売上、原価は以下の通り推移すると予想されている。
1年目 2年目 3年目 4年目 5年目
売上 2,100万円 2,500万円 2,700万円 2,300万円 1,900万円
原価 1,400万円 1,700万円 1,700万円 1,600万円 1,500万円
  • 売掛金、棚卸資産、買掛金は以下の通り推移すると予想されている。
    現時点(0年目)の正味運転資本は140万円である。
1年目 2年目 3年目 4年目 5年目
売掛金 200万円 240万円 240万円 200万円 150万円
棚卸資産 60万円 80万円 80万円 40万円 40万円
買掛金 110万円 110万円 120万円 80万円 80万円
  • A社の資本コスト率は5%である。
  • 割引率5%の複利現価係数は以下のとおりである。
1年 2年 3年 4年 5年
複利現価係数 0.9524 0.9070 0.8638 0.8227 0.7835

 

 

プロジェクトにより得られるCF(法人税を考慮しない場合)

「法人税を考慮しない場合」のプロジェクトにより得られるキャッシュフローは「設備投資の経済性計算(5)(プロジェクトにより得られるキャッシュフロー(法人税を考慮しない場合))」で算出しました。

 

プロジェクトにより得られるCF(法人税を考慮する場合)

「法人税を考慮する場合」のプロジェクトにより得られるキャッシュフローは「設備投資の経済性計算(6)(プロジェクトにより得られるキャッシュフロー(法人税を考慮する場合))」で算出しました。なお、例題の設定で「法人税率40%」としています。

 

プロジェクトへの投資額

プロジェクトへの投資額は、プロジェクト開始時(来年度の期首)に設備を調達する現金支出です。「1年目の期首≒0年目の期末」として「0年目」に「4,000万円」の現金支出が発生します。

  • 新しい設備は、プロジェクト開始のタイミングで購入して5年間利用する。
  • 設備の購入価格は4,000万円である。

 

正味現在価値法(NPV)

正味現在価値法(NPV)による投資の実行可否判断

設備投資の経済性計算(3)(意思決定モデル)」において、正味現在価値法(NPV)の計算式および投資可否の判断基準にを以下の通り説明しました。

 

法人税を考慮しない場合

以下の通り、正味現在価値がマイナスになるため、投資を実行しないと判断します。

  • 正味現在価値:3,900万円 - 4,000万円 = ▲100万円

 

法人税を考慮する場合

以下の通り、正味現在価値がプラスになるため、投資を実行すると判断します。

  • 正味現在価値:4,079万円 - 4,000万円 = 79万円

 

収益性指数法(PI)

収益性指数法(PI)による投資の実行可否判断

設備投資の経済性計算(3)(意思決定モデル)」において、収益性指数法(PI)の計算式および投資可否の判断基準にを以下の通り説明しました。

 

法人税を考慮しない場合

以下の通り、収益性指数が1以下になるため、投資を実行しないと判断します。

  • 収益性指数:3,900万円 ÷ 4,000万円 ≒ 0.98

 

法人税を考慮する場合

以下の通り、収益性指数が1より大きくなるため、投資を実行すると判断します。

  • 収益性指数:4,079万円 ÷ 4000万円 ≒ 1.02

 

NPVとPIによる投資の実行可否の判断について

既にお気づきかもしれませんが、投資の実行可否を検討する際、「正味現在価値法(NPV)」と「収益性指数法(PI)」のどちらを採用しても、その判断結果は同じとなります。

いずれの意思決定モデルも「プロジェクトにより得られるキャッシュフローの現在価値」が「プロジェクトへの投資額」よりも大きければ投資を実行するという結果になるためです。

なぜ、結果が同じになるような意思決定モデルが2種類あるのかについて理解を深めるため、「正味現在価値法(NPV)」と「収益性指数法(PI)」のメリット・デメリットが分かる例を以下に補足しておきます。

 

正味現在価値法(NPV)

正味現在価値法(NPV)では、投資により得られるキャッシュは分かりますが、投資額に対して何倍のキャッシュを得られるかが分かりません。

例えば、以下の2つのパターンでは「2.」の方が効率的ですが、正味現在価値法ではどちらも結果が「100万円」となってしまいます。(収益性指数法で計算すると「2.」の方が収益性が高いことが明確に分かります。)

  1. 1000万円の投資をして1100万円のキャッシュを得られる場合
  2. 100万円の投資をして200万円のキャッシュを得られる場合

 

収益性指数法(PI)

収益性指数法(PI)では、投資額に対して何倍のキャッシュを得られるかは分かりますが、投資により得られるキャッシュが分かりません。

例えば、以下の2つのパターンでは「1.」の方が得られるキャッシュの全体額が大きいですが、収益性指数法ではどちらも結果が「1.1」となってしまいます。(正味現在価値法で計算すると「1.」の方が収益性が高いことが明確に分かります。)

  1. 1000万円の投資をして1100万円のキャッシュを得られる場合
  2. 100万円の投資をして110万円のキャッシュを得られる場合

 

 


明日は、「設備投資の経済性計算(8)(内部収益率法による投資の実行判断)」について説明します。

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