今回は、「事例Ⅳ ~キャッシュ・フロー計算書(3)営業活動によるキャッシュ・フロー-その2~」について説明します。
目次
キャッシュ・フロー計算書(二次試験) -リンク-
二次試験(事例Ⅳ)に向けた「キャッシュ・フロー計算書」の記事は、以下のページに整理していますので、アクセスしてみてください。
営業活動によるCF(間接法)の算出方法
「間接法」では、損益計算書の「税引前当期純利益」に「Step1.非資金損益項目の調整」「Step2.営業外損益と特別損益の調整」「Step3.営業活動に関連する資産と負債の増減に関する調整」を行って「小計」を算出します。
その後、「Step4.投資活動や財務活動に該当しないキャッシュ・フローの調整」を行って「営業活動によるキャッシュ・フロー」を算出します。
一次試験では「営業活動に関連する資産(売上債権、棚卸資産)および負債(仕入債務)の増減により営業活動によるキャッシュ・フローが増加するのか、減少するのか」という観点で出題されることが多く、二次試験(事例Ⅳ)では「財務諸表から営業活動によるキャッシュ・フローそのものを算出して問題点を指摘すること」が出題されます。
営業活動によるキャッシュ・フロー(間接法)
Step1.非資金損益項目の調整
非資金損益項目の調整では「減価償却費」「繰延資産償却」といった「資産の償却費用」と「貸倒引当金」「退職引当金」などの「引当金の計上額」について調整を行います。
「資産の償却費用」や「引当金の計上額」は、損益計算書で費用として計上しますが、実際に現金支出を伴う内容ではないことから、その差額について調整を行う必要があります。
「減価償却費」や「繰延資産償却費」は、その計上額を「加算(+)」します。
「貸倒引当金」や「退職引当金」などの引当金は、前年度の貸借対照表と比較して増額されている場合は「加算(+)」し、前年度の貸借対照表と比較して減額されている場合は「減算(-)」します。
Step2.営業外損益と特別損益の調整
「税引前当期純利益」から、営業活動に関係のない「営業外損益」と「特別損益」を調整して「営業活動に関連したキャッシュ・フロー」を求めていきます。
「費用・損失」の場合は、損益計算書に記載されている金額を「加算(+)」します。
また、「収益・利益」の場合は、損益計算書に記載されている金額を「減算(-)」します。
なお、営業活動に関係のない「営業外損益」と「特別損益」の調整を目的としていますので、営業活動に関連する「商品評価損」や「営業債権や債務に関する為替差損益」や「営業債権に関する償却債権取立益」については、調整しないことに注意が必要です。
Step3.営業活動に関連する資産と負債の増減に関する調整
営業活動に関連する資産と負債の増減に関する調整については、少し理解するのが難しいです。
「売上債権」や「棚卸資産」といった営業活動に関連する資産の場合は、前年度の貸借対照表と比較して増額されている場合は「減算(-)」し、前年度の貸借対照表と比較して減額されている場合は「加算(+)」します。
また、「仕入債務」といった営業活動に関連する負債の場合は、前年度の貸借対照表と比較して増額されている場合は「加算(+)」し、前年度の貸借対照表と比較して減額されている場合は「減算(-)」します。
「売上債権」を例に、少し考えてみます。
昨年度と「売上高」が全く同じ企業において「売上債権」が昨年度より増加しているとした場合、昨年度よりも回収できた現金が少ないという状況です。
つまり、「売上債権」が増加した場合は「現金」は減少していることとなりますので、キャッシュ・フローの計算では「減算(-)」となります。
一次試験では、「営業活動に関連する資産(売上債権、棚卸資産)および負債(仕入債務)の増減により営業活動によるキャッシュ・フローが増加するのか、減少するのか」という問題が非常に高い頻度で出題されます。
資産・負債の増減によるキャッシュ・フローの変化
Step4.投資活動や財務活動に該当しないCFの調整
「Step1~Step3」により「小計」を求めましたが、「小計」より下の欄では「投資活動」や「財務活動」に該当しないキャッシュ・フローの調整を行います。
つまり、「小計」に記載されている金額が「本来の営業活動によるキャッシュ・フロー」を示しています。「小計」より下の欄には、「投資活動」にも「財務活動」にも該当せずどこにも記載することができない項目をとりあえず「営業活動」に区分して表示しようという形になっています。
投資活動や財務活動に該当しないキャッシュ・フローの調整では、収入は「加算(+)」して、支出は「減算(-)」すればよいので理解はしやすいですが、損益計算書に記載されている金額ではなく、実際に受け取った金額、または実際に支払った金額を記載するため、貸借対照表において「前払利息」「前受利息」「未払利息」「未収利息」「未払法人税等」などが計上されていないかを確認して金額を算出する必要があります。
参考:営業活動によるCFの検算
「Step1~Step4」を通じて「営業CF」を求めましたが、私は「営業CF」を求める問題が出題された場合は、最後に計算過程にミスがないかを確認するために「投資CF」と「財務CF」も計算して、「営業CF」「投資CF」「財務CF」の合計金額が、貸借対照表の「現金・預金」の増減額と一致するかどうかを確認することとしていました。
短い試験時間との戦いなので、実施するかどうかは各自にてご判断いただければと思います。
営業活動・投資活動・財務活動によるCFの合計
「営業CF」「投資CF」「財務CF」を合計すると、キャッシュ・フローが「●●●円」増加していることを求めます。
営業活動によるキャッシュフロー | XXX |
投資活動によるキャッシュ・フロー | XX |
財務活動によるキャッシュ・フロー | ▲XX |
キャッシュ・フローの増減額 | ●●● |
貸借対照表における「現金・預金」の増加額
昨年度末と今年度末の「貸借対照表」における「現金・預金」の増減額を確認して「キャッシュ・フローの増減額」と一致するが確認します。
科目 | D社 平成21年度末 |
D社 平成22年度末 |
現金・預金 の増減額 |
現金・預金 | XXX | XXX | ●●● |
明日は、「キャッシュ・フロー計算書(4)(投資活動・財務活動によるキャッシュ・フロー)」について説明します。
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