事例Ⅳ ~平成25年度 解答例(1)(経営分析)~

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平成25年度の事例Ⅳに関する解答例(案)を説明していきます。

私なりの思考ロジックに基づく解答例(案)を以下に説明しますので、参考としてもらえればと思います。

 

目次

事例Ⅳ ~平成25年度試験問題一覧~

平成25年度の他の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

経営分析

「経営分析」では、企業の財務諸表に基づき、その企業の経営状況を定量的に分析していきます。定量的に分析して企業の経営状況を正確に把握することによって、経営者が意思決定を行うための情報を提供することを目的としています。

 

平成25年度の問題には特徴があり、問題文において財務諸表として「貸借対照表」しか与えられておらず、「安全性」に関する財務指標の中から、財務状況を表す主要な財務指標を3つ選択するため、通常の解答手順とは異なっています。

 

第1問

与件文と財務諸表に基づき、経営分析を行う問題です。

第1問(配点25点)

 

D社では、植物工場設立にあたり、開業資金150百万円のうち、100百万円の出資を予定している。内訳は、D社の余剰資金から70百万円、金融機関からの長期借入30百万円である。
出資によるD社への影響を評価するために、現在のD社の貸借対照表と、出資直後の予想貸借対照表から財務状況を比較することにした。
財務状況を表す主要な財務比率を3つあげ、その財務比率の名称を(a)欄に、出資直前の数値(小数点第3位を四捨五入すること)を(b)欄に、出資直後の数値(小数点第3位を四捨五入すること)を(c)欄に示せ。
また、出資によるD社への影響を(d)欄に80字以内で述べよ。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

Step1.条件の確認

経営分析を始める前に、問題の条件を確認しておきます。

 

  1. 比較対象:D社の出資直前と出資直後の財務諸表を比較
  2. 財務指標:財務状況を表す主要な財務比率を3つ
  3. 有効数字:小数点第3位を四捨五入

 

「財務状況を表す主要な財務比率」を「3つ」解答するよう求められていますが、問題文において「貸借対照表」しか与えられていないため、「安全性」について分析を行い「短期安全性」「長期安全性」「資本調達構造」の3つの観点からそれぞれ1つずつ、「合計3つ」の財務指標を選択します。

 

Step2.出資に伴う財務諸表の変化

出資直前の財務諸表

問題文で与えられている出資直前の財務諸表を見る限り、特に問題となるような箇所は見当たらず、典型的な「安全性の高い企業のB/S」となっています。(以下の図の左のパターン)

 

 

出資に伴う仕訳処理

植物工場設立に際して、D社が資金を調達して出資する場合の仕訳を以下に示します。

 

金融機関からの長期借入に伴う仕訳処理

借方 貸方
現金及び預金 30百万円 長期借入金 30百万円

 

植物工場への出資に伴う仕訳処理

借方 貸方
子会社株式 100百万円 現金及び預金 100百万円

 

出資前後の財務諸表の変化

出資による貸借対照表の変化を以下に示す。
今回の問題では、出資前後の財務状況(安全性)を比較することを求められているため、貸借対照表の中でどの科目の数値が変化するのかを把握することが重要です。

 

 

Step3.財務諸表の数値分析と確定

財務諸表一覧(安全性)

安全性の財務指標を以下に示します。
出資前後の安全性の財務指標を確認すると、出資により全ての財務指標の数値が悪化していますが、いずれの財務指標も安全性が高いことが分かります。

財務指標(安全性) 出資直前 出資直後
流動比率 285.00% 250.00%
当座比率 230.00% 195.00%
固定比率 73.33% 92.38%
固定長期適合率 50.99% 61.78%
自己資本比率 54.97% 53.30%
負債比率 81.90% 87.62%

 

短期安全性
考察
  • 出資前後で数値が変化するのは「現金及び預金」である。
  • 「流動比率」も「当座比率」も悪化するが、「現金及び預金」は「当座資産」に含まれるため、「当座資産」よりも範囲の広い「流動資産」に関する財務指標である「流動比率」を指摘するよりも「当座比率」を指摘する方が適切だと判断する。
  • 「当座資産」である「現金及び預金」が減少していることが明らかなため、「流動比率」を選択すると不正解と扱われるかもしれません。

 

検討結果

「当座比率」で決定

 

長期安全性
考察
  • 出資前後で数値が変化するのは「固定資産」と「固定負債」である。
  • 「固定比率」も「固定長期適合率」も悪化するため、どちらを選択しても問題ないと思われるが、「固定負債」の増加については「安全性」の「資金調達構造」で指摘したいと考えていること、および出資後も良好な財政状態であること(固定比率が100%以下になっている方が固定長期適合率が100%以下となっているよりも安全性が高い)をより的確に表現するために「固定比率」を選択する。

 

検討結果

「固定比率」で決定

 

資本調達構造
考察
  • 出資前後で数値が変化するのは「固定負債」である。
  • 「自己資本比率」「負債比率」のいずれも数値が悪化するが、「固定負債」が増加するということを指摘するため、「自己資本比率」ではなく「負債比率」を指摘する。

 

検討結果

「負債比率」で決定

 

Step4.出資によるD社への影響

出資によるD社への影響について考えていきます。

考え方

毎年の経営分析では「収益性」「効率性」「安全性」の3つの観点を入れるのが鉄則ですが、今回の問題では「安全性」に限定した分析を求められているため、「短期安全性」「長期安全性」「資本調達構造」の3つの観点を入れて解答を構成していきます。

  • 出資することにより、安全性に関する全ての財務指標の数値が出資前よりも悪化する。
  • 出資した後の「短期安全性」「長期安全性」「資本調達構造」に関する財務指標においても、非常に安全性が高く財政状態は健全である。

 

これを「80文字」にまとめます。

  • 出資の影響により、財務状況を表す財務比率は悪化するが、出資後も短期安全性、長期安全性、資本調達構造共に健全な状況である。(80文字)

 

Step5.解答

確定した財務指標を解答します。

(a) (b) (c)
当座比率 230.00% 195.00%
固定比率 73.33% 92.38%
負債比率 81.90% 87.62%

 

(d) 出資の影響により、財務状況を表す財務比率は悪化するが、出資後も短期安全性、長期安全性、資本調達構造共に健全な状況である。(80文字)

 


 

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