事例Ⅳ ~平成28年度 解答例(1)(経営分析)~

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平成28年度の事例Ⅳに関する解答例(案)を説明していきます。

私なりの思考ロジックに基づく解答例(案)を以下に説明しますので、参考としてもらえればと思います。

 

目次

事例Ⅳ ~平成28年度試験問題一覧~

平成28年度の他の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

経営分析

「経営分析」では、企業の財務諸表に基づき、その企業の経営状況を定量的に分析していきます。定量的に分析して企業の経営状況を正確に把握することによって、経営者が意思決定を行うための情報を提供することを目的としています。

 

第1問

与件文と財務諸表に基づき、経営分析を行う問題です。

第1問(配点25点)

 

(設問1)

D社の前期および当期の財務諸表を用いて経営分析を行い、前期と比較した場合のD社の課題を示す財務指標のうち重要と思われるものを3つ取り上げ、それぞれについて、名称を(a)欄に、当期の財務諸表をもとに計算した財務指標の値を(b)欄に記入せよ。なお、(b)欄の値については、小数点第3位を四捨五入し、カッコ内に単位を明記すること。

 

(設問2)

設問1で取り上げた課題が生じた原因を70字以内で述べよ。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

第1問(設問1)

Step1.条件の確認

経営分析を始める前に、問題の条件を確認しておきます。

 

  1. 比較対象:D社の前期と当期の財務諸表を比較
  2. 財務指標:課題を示す財務指標を3つ
  3. 有効数字:小数点第3位を四捨五入

 

「課題」を示す財務指標を「3つ」解答するよう求められていますので、「収益性」「効率性」「安全性」の3つの観点からそれぞれ1つずつ、「合計3つ」の財務指標を選択します。

 

Step2.問題で与えられたデータに基づく予想

与件文と財務諸表を読み込み、対象となる企業の状況を把握して、選択する財務指標をある程度予想します。
ここではあくまで選択する財務指標を予想するだけで「Step3」で予想が正しいかを検証する必要があります。

 

与件文で気になる点(定性情報)
  1. 販売状況
    • D社の県内店舗の来店客数は増加傾向を維持し、客単価も維持できている
    • 県外の鉄板焼きレストランも、固定客を獲得できたことから、業績は順調に推移している。
    • 大都市に前期に出店した創作料理店は業績不振が続いており、当期は通年で全社業績に影響が出ているため、その打開が懸案となっている。
  2. 生産状況
    • 与件文に該当する記述はありません。
  3. 今後の展開
    • 用地代を含め約8億円を投じて新しい本社社屋を建設する計画である。
    • 投資資金は、自己資金と借入れによって調達する。
    • 同社は、当期に新社屋の用地として市内の好適地を取得し、建設計画を進めている。

 

財務諸表で気になる点(定量情報)

前期の財務諸表と今期の財務諸表を比較した場合の特徴を以下に示します。

  1. 貸借対照表
    • 有形固定資産で「土地:320 百万円」が増えている。
    • 投資その他の資産が「25百万円」増えている。
    • 流動負債で「短期借入金:318 百万円」が増えている。
    • 固定負債で「長期借入金:40百万円」が減少している。
  2. 損益計算書
    • 全体的に数値が増加しており、パッと見た感じで良し悪しが分からない。
    • すごく気になるのが「特別損失:56百万円」を計上していること。
      与件文に明確な記述がないが「創作料理店の業績不振が続いており、当期は通年で全社業績に影響が出ている」ことが関連しているのではないかと推測される。

 

「特別損失」の内訳は、第2問において「営業活動によるキャッシュフロー」を求める表の中で、創作料理店の業績不振が続いているために計上した「減損損失」であることが分かります

「減損損失」とは、収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった固定資産を対象に、固定資産の帳簿価額を「回収可能価額」まで減額して、帳簿価額と回収可能価額との差額を「特別損失」として計上することをいいます。(固定資産の減損会計(1)

 

 

この時点での予想

ここまで見た段階で、ある程度予想してみます。
ただし、あくまで予想なので、実際に「財務指標」を算出して、自分の予想が正しいかを検証する必要があります。

  1. 収益性
    • 創作料理店の業績不振により収益性が低下していると予想される。(売上高総利益率:×/売上高営業利益率:×)
  2. 効率性
    • 新社屋の用地取得により効率性が低下していると予想される。(固定資産回転率:×/有形固定資産回転率:×)
  3. 安全性
    • 借入金の増加により資本調達構造が低下していると予想される。(自己資本比率:×/負債比率:×)
    • 短期借入金の増加が大きすぎるため、短期安全性が低下している可能性も高い。(流動比率:×/当座比率:×)
    • 長期安全性の財務指標も悪化しているはずだが、固定資産の増加については「効率性」の財務指標で選択することになると予想される。(固定比率:×/固定長期適合率:×)

 

Step3.財務諸表の数値分析(財務指標の絞り込み)

収益性
財務指標一覧(収益性)

収益性の財務指標を以下に示します。
なお、特別損失を計上しており、その金額が大きいため、収益性を示す代表的な財務指標ではありませんが、「売上高税引前当期純利益率」と「売上高当期純利益率」についても算出してみます。

財務指標(収益性) 前期 当期 比較
売上高売上原価比率 49.34% 51.38% ×
売上高総利益率 50.66% 48.62% ×
売上高販管費比率 38.75% 37.23%
売上高営業利益率 11.91% 11.38% ×
売上高営業外費用比率 0.96% 2.13% ×
売上高経常利益率 11.31% 10.11% ×
売上高税引前当期純利益率 11.31% 4.15% ×
売上高当期純利益率 8.06% 2.87% ×
総資本経常利益率 15.77% 10.56% ×

 

考察
  • 今回は課題を示す財務指標を解答するため「売上高販管費比率」は除外する。
  • 予想通り「売上高総利益率/売上高営業利益率」が悪化しているが、それほど顕著ではない。他に収益性の選択候補が残らなければ創作料理店の業績不振が反映される「売上高総利益率」を選択することとしたい。
  • 「売上高営業外費用比率」が「借入金」の増加により悪化しているが、「収益性」では「創作料理店の業績不振」に関連する財務指標を選択して、「借入金」の増加は「安全性」の財務指標で選択したいので選択しない
  • 「売上高税引前当期純利益率」「売上高当期純利益率」は「特別損失」の計上により、大幅に数値が悪化している。
    与件文に「特別損失」の計上に関する明確な記述がないが、「創作料理店の業績不振が続いており、当期は通年で全社業績に影響が出ている」ことが関連しているのではないかと推測する。指標の悪化が著しいため候補として残すが、「特別損失」の中身が分からないので悩むところ
  • 「総資本経常利益率」も大幅に数値が悪化している。
    「経常利益」がほとんど変化していないため、新社屋の用地を取得したことによる「総資本」の大幅な増加による影響が大きいが、「収益性」では「創作料理店の業績不振」に関連する財務指標を選択して、「固定資産」の増加は「効率性」の財務指標で選択したいので選択しない

 

検討結果

「売上高総利益率」と「売上高当期純利益率」を候補として残す。

 


明日も引き続き、「事例Ⅳ ~平成28年度 解答例(2)(経営分析)~」として、「第1問」の続きを説明していきます。

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