今回は、「財務・会計 ~H26-2 売上割引・売上控除(2)売上割戻・売上割戻引当金~」について説明します。
目次
財務・会計 ~平成26年度一次試験問題一覧~
平成26年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
売上割引・売上控除・仕入割引・仕入控除 -リンク-
本ブログにて「売上割引」「売上控除」「仕入割引」「仕入控除」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- 売上割引・売上控除
- 仕入割引・仕入控除
引当金 -リンク-
本ブログにて「引当金」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- 引当金のまとめ
- R5-7 剰余金の配当と処分(6)剰余金の配当
- R3-5 引当金(3)債務性引当金・非債務性引当金
- R2-2 引当金(2)貸倒引当金
- R1-7 企業会計原則(2)負債の会計処理と開示
- H23-2 引当金(1)引当金への繰入れ
売上割引・売上控除・仕入割引・仕入控除
販売した商品の返品など
販売した商品に対する「返品(戻り)」「値引」「割戻」「割引」について説明します。
覚えておくのは、「売上割引」の場合は「営業外費用」として計上して、それ以外の「返品(戻り)」「値引」「割戻」の場合は「売上」から控除するということです。
「割引」という言葉の定義が、一般的に使っている意味と違いますので、注意してください。
項目 | 会計処理 | 説明 |
売上戻り | 売上控除 | 販売した商品の品質などに問題があった場合に、取引先から商品を返品されること。 |
売上値引 | 販売した商品の品質などに問題があった場合に、取引先に安い価格で提供すること。 | |
売上割戻 | 商品の大量販売等の条件に基づき、取引先に安い価格で提供すること。(リベート) | |
売上割引 | 営業外費用 | 販売した商品の売掛金を取引先から期日前に受け取った場合、受取金額から利息分に相当する金額を免除すること。(ディスカウント) |
仕訳
掛けで販売した商品に対して「売上戻り」「売上値引」「売上割戻」「売上割引」した場合の仕訳例を以下に示します。
売上戻り・売上値引・売上割戻
「売上戻り/売上値引/売上割戻」の場合は売上金額から控除します。
借方 | 貸方 | ||
売上 | 1,000円 | 売掛金 | 1,000円 |
売上割引
売掛金について、決済期日よりも前の割引有効期限内に取引先から支払いを受けたため、利息分に相当する「50円」の割引を行った。この場合、売上高から控除するのではなく、売上割引「50円」を営業外費用として計上します。
借方 | 貸方 | ||
現金 売上割引 |
950円 50円 |
売掛金 | 1,000円 |
仕入れた商品の返品など
仕入れた商品に対する「返品(戻し)」「値引」「割戻」「割引」について説明します。
覚えておくのは、「仕入割引」の場合は「営業外収益」として計上して、それ以外の「返品(戻し)」「値引」「割戻」の場合は「仕入」から控除するということです。
「割引」という言葉の定義が、一般的に使っている意味と違いますので、注意してください。
項目 | 会計処理 | 説明 |
仕入戻し | 仕入控除 | 仕入れた商品の品質などに問題があった場合に、仕入先に商品を返品すること。 |
仕入値引 | 仕入れた商品の品質などに問題があった場合に、仕入先から安い価格で提供されること。 | |
仕入割戻 | 商品の大量仕入等の条件に基づき、仕入先から安い価格で提供されること。(リベート) | |
仕入割引 | 営業外収益 | 仕入れた商品の買掛金を仕入先に期日前に支払った場合、支払金額から利息分に相当する金額を免除されること。(ディスカウント) |
仕訳
掛けで仕入れた商品に対して「仕入戻し」「仕入値引」「仕入割戻」「仕入割引」した場合の仕訳例を以下に示します。
仕入戻し・仕入値引・仕入割戻
「仕入戻し/仕入値引/仕入割戻」の場合は仕入金額から控除します。
借方 | 貸方 | ||
買掛金 | 1,000円 | 仕入 | 1,000円 |
仕入割引
決済期日よりも前の割引有効期限内に仕入先に買掛金を支払ったため、利息分に相当する「50円」の割引を受けた。この場合、仕入から控除するのではなく、仕入割引「50円」を営業外収益として計上します。
借方 | 貸方 | ||
買掛金 | 1,000円 | 現金 仕入割引 |
950円 50円 |
引当金
引当金の目的
「引当金」とは、債権者や株主等の利害関係者が企業の状況に関する判断を誤らないように「適正な期間損益計算」や「保守主義の原則」に則った会計処理を行って必要な会計事実を明瞭に表示するため、貸借対照表の負債の部(または資産の部から控除)に計上する将来の特定の費用または損失に備える準備金のことをいいます。
当期以前の活動に起因して次期以降に費用または損失が発生する可能性が高い場合「引当金」にその金額を繰り入れます。「引当金繰入額」は当期の損益計算書に計上して「引当金」は貸借対処表の負債の部(または資産の部から控除)に計上します。
また、次期以降に費用または損失が実際に発生した場合は「引当金」を切り崩して、その金額を支払います。
「引当金」の中でも有名な「貸倒引当金」では、当期以前の売上に関する「売上債権(売掛金・受取手形)」を、次期以降に回収できない可能性が高い場合に、その金額を「貸倒引当金」として当期以前の売上に関する「売上債権(売掛金・受取手形)」から控除する形で「貸借対照表」に表示します。
適正な期間損益計算への対応
「貸倒引当金」を例にすると、取引先の業績悪化などの理由により、当期に販売した商品や製品の「売上債権(売掛金・受取手形)」を次期以降に回収できなかった場合、「売上債権(売掛金・受取手形)」を回収できなかったという事実は次期以降に発生したとしても、その「売上債権(売掛金・受取手形)」は商品や製品を当期に販売したという事実に起因するため、回収できない可能性が高い金額は「費用収益対応の原則」や「発生主義の原則」に則り、当期の費用として計上します。
保守主義の原則への対応
「保守主義の原則」では、予測される将来の危険に備えて慎重な判断に基づく会計処理を行うことを要請しています。
「貸倒引当金」を例にすると、次期以降に「売上債権(売掛金・受取手形)」を回収できない可能性が高く(予測される将来の危険に備えて)、その金額を合理的に見積もることができる場合は、将来の費用または損失を先延ばしすることなく当期の損益計算に含める(慎重な判断に基づく会計処理を行う)必要があります。
引当金の定義
引当金は、「企業会計原則」の「企業会計原則注解(注18)」に定義されています。
企業会計原則注解(注18) ~引当金について~
将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰入れ、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部又は資産の部に記載するものとする。
製品保証引当金、売上割戻引当金、返品調整引当金、賞与引当金、工事補償引当金、退職給与引当金、修繕引当金、特別修繕引当金、債務保証損失引当金、損害補償損失引当金、貸倒引当金等がこれに該当する。
発生の可能性の低い偶発事象に係る費用又は損失については、引当金を計上することはできない。
引当金の計上条件
「引当金」を計上するために満たすべき4つの条件を以下に示します。
- 将来の特定の費用または損失であること
- その費用又は損失が当期以前の事象に起因していること
- その費用又は損失が発生する可能性が高いこと
- その金額を合理的に見積もることができること
なお、発生の可能性が低い「偶発事象」に関する費用または損失を「引当金」に計上することはできません。
引当金の種類(売上割戻引当金のみ)
主な引当金の種類を以下に説明します。
売上割戻引当金
商品や製品を大量に販売するなどの条件のもとに、取引先に商品や製品を安い価格で提供することを「売上割戻」といいます。
取引先と商品や製品の販売数量に基づく「売上割戻」の金額などを定めた「売上割戻契約」を締結している場合、当期以前に販売した商品や製品に対して将来発生すると見込まれる「売上割戻」の金額を「売上割戻引当金」に計上します。
なお、「売上割戻引当金繰入額」は、損益計算書において費用として計上するのではなく売上高から直接控除する形式で表示します。
売上割戻引当金
商品や製品を大量に販売するなどの条件のもとに、取引先に商品や製品を安い価格で提供することを「売上割戻」といいます。
取引先と商品や製品の販売数量に基づく「売上割戻」の金額などを定めた「売上割戻契約」を締結している場合、当期以前に販売した商品や製品に対して将来発生すると見込まれる「売上割戻」の金額を「売上割戻引当金」に計上します。
なお、「売上割戻引当金繰入額」は、損益計算書において費用として計上するのではなく売上高から直接控除する形式で表示します。
売上割戻の仕訳(引当金なし)
「X1年度」に販売した商品に対して「売上割戻引当金」を計上せずに、「X2年度」に入ってから「X1年度」に販売した商品に対する「売上割戻」が発生した場合の仕訳を以下に示します。
商品を売り上げたとき(X1年度)
借方 | 貸方 | ||
現金 | 50,000円 | 売上 | 50,000円 |
決算日
仕訳なし
売上割戻が発生したとき(X2年度)
「X1年度」に販売した商品に対する「売上割戻」のため、本来は「X1年度」の売上から控除するべきですが、「X2年度」の売上から控除することとなってしまいます。
借方 | 貸方 | ||
売上 | 1,000円 | 現金 | 1,000円 |
売上割戻の仕訳(引当金あり)
「X1年度」に販売した商品に対して「売上割戻引当金」を計上して、「X2年度」に入ってから「X1年度」に販売した商品に対する「売上割戻」が発生した場合の仕訳を以下に示します。
商品を売り上げたとき(X1年度)
借方 | 貸方 | ||
現金 | 50,000円 | 売上 | 50,000円 |
決算日
「X1年度」の決算日に「売上割戻引当金」を計上しますが、「売上割戻引当金繰入額」は「X1年度」の損益計算書において「X1年度」の「売上高」から直接控除します。
借方 | 貸方 | ||
売上割戻引当金繰入 | 1,000円 | 売上割戻引当金 | 1,000円 |
売上割戻が発生したとき(X2年度)
「X2年度」に入ってから発生した「X1年度」に販売した商品に対する「売上割戻」については、「売上割戻引当金」を控除する形で仕訳を行います。
「売上割戻引当金」は「X1年度」の費用として処理しているため、「費用収益対応の原則」に則った会計処理となっています。
借方 | 貸方 | ||
売上割戻引当金 | 1,000円 | 現金 | 1,000円 |
売上割戻の仕訳(同一年度)
「X1年度」に販売した商品に対する同一年度中(X1年度)に発生した「売上割戻」の仕訳を以下に示します。
商品を売り上げたとき(X1年度)
借方 | 貸方 | ||
現金 | 50,000円 | 売上 | 50,000円 |
売上割戻が発生したとき(X1年度)
「X1年度」に販売した商品に対する同一年度中(X1年度)の「売上割戻」については「売上」から控除する形で仕訳を行います。
仮に「売上割戻引当金」が計上されていたとしても、それは前年度(X0年度)に販売した商品に対する「売上割戻引当金」のため控除することはできません。
借方 | 貸方 | ||
売上 | 1,000円 | 現金 |
1,000円 |
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成26年度 第2問】
当社は、当期において売上割戻契約を得意先A社だけと締結した。以下の資料に基づいて、決算における損益計算書に計上すべき売上高として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
[資料]
当期中の総売上高のうち、850,000円がA社を対象とする売上高であり、当期中に実行された売上割戻は10,000円であった。また、A社に対する総売上高のうち250,000円が当会計期間の最終月における売上高であり、この売上高に対して2%の割戻しが翌期に実行されることが見積もられたため、決算において売上割戻引当金が設定された。なお、A社以外の得意先への売上高合計は2,500,000円である。
[解答群]
ア 3,335,000円
イ 3,340,000円
ウ 3,345,000円
エ 3,350,000円
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
「売上割戻」および「売上割戻引当金」の会計処理に関する出題です。
当期中に実行された売上割戻
当期の売上高に対する当期中の「売上割戻」は、当期の売上から直接控除します。
借方 | 貸方 | ||
売上 | 10,000円 | 売掛金(現金など) | 10,000円 |
売上割戻引当金の計上
得意先A社と締結した売上割戻契約に基づき、翌期に「2%」の割戻しが実行されることが見積もられているため、A社に対する当会計期間の最終月における売上高である「250,000円」に対して「2%」の「売上割戻引当金」を計上します。
なお、「売上割戻引当金繰入額」は、当期の売上から直接控除します。
- 売上割戻引当金
250,000円 × 2% = 5,000円
借方 | 貸方 | ||
売上割戻引当金繰入 | 5,000円 | 売上割戻引当金 | 5,000円 |
損益計算書に計上すべき売上高の算定
売上高(A社以外) | 2,500,000円 |
売上高(A社) | 850,000円 |
当期中に実行された売上割戻(A社) | ▲10,000円 |
売上割戻引当金の計上(A社) | ▲5,000円 |
損益計算書に計上すべき売上高 | 3,335,000円 |
答えは(ア)です。
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