財務・会計 ~H27-5 手形取引(約束手形・為替手形)(1)~

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今回は、「財務・会計 ~H27-5 手形取引(約束手形・為替手形)(1)~」について説明します。

 

目次

財務・会計 ~平成27年度一次試験問題一覧~

平成27年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

手形取引

「手形」とは、支払期日に金額を支払うことを約束した証券であり、「約束手形」と「為替手形」の2種類があります。

手形取引では、代金を支払う企業や代金を受け取る企業などそれぞれの役割ごとに呼称がついていて「約束手形」と「為替手形」でその呼称が変わるため難しく感じますが、実際の仕訳はそれほど難しくありません。

役割の呼称の一つである「名宛人」という言葉の意味が一番分かりにくいのではないかと思いますが、約束手形と為替手形の左上欄に記載する企業を「名宛人」と呼びます。本ページに記載している各手形のイメージ図を見ていただくと理解しやすいと思います。

 

約束手形

約束手形は、代金を支払う企業Aと代金を受け取る企業Bの2社間で取り交わす手形です。

 

  1. 企業Aは企業Bから商品を購入します。
  2. 企業Aが企業Bに約束手形を振り出します。
  3. 企業Bは銀行に受取手形を呈示して、支払期日に代金を受け取ります。

 

 

約束手形のイメージ図

約束手形の左上欄には「受取人」である「企業B」を記載するため、「企業B」が名宛人と呼ばれます。

 

 

仕訳

それぞれの取引における各企業の仕訳を以下に示します。(勘定科目のみ記載)
なお、企業Aが商品を購入する時点で支払手形を発行する場合は、取引「1.」と「2.」の仕訳は1行に集約されます。

 

  1. 企業Aは企業Bから商品を購入します。
  2. 企業Aが企業Bに約束手形を振り出します。
  3. 企業Bは銀行に受取手形を呈示して、支払期日に代金を受け取ります。

 

取引 企業A
「振出人(支払人)」
企業B
「名宛人(受取人)」
借方 貸方 借方 貸方
1. 仕入 買掛金 売掛金 売上
2. 買掛金 支払手形 受取手形 売掛金
3. 支払手形 当座預金 当座預金 受取手形

 

為替手形

為替手形は、代金の支払を依頼する企業A(振出人)と、代金を支払う企業C(名宛人・支払人・引受人)と、代金を受け取る企業B(指図人・受取人)の3社間で取り交わす手形です。

 

  1. 企業Aは企業Bから商品を購入します。
  2. 企業Cは企業Aから商品を購入します。
  3. 企業Aが企業Cに為替手形(企業Cから企業Bへの代金支払い)を振り出します。
  4. 企業Bは銀行に受取手形を呈示して、支払期日に代金を受け取ります。

 

 

為替手形のイメージ図

為替手形の左上欄には「支払人・引受人」である「企業C」を記載するため、「企業C」が名宛人と呼ばれます。

 

 

仕訳

それぞれの取引における各企業の仕訳を以下に示します。(勘定科目のみ記載)
ポイントは「企業A」が為替手形を振り出すときの仕訳です。(取引「3.」)

 

  1. 企業Aは企業Bから商品を購入します。
  2. 企業Cは企業Aから商品を購入します。
  3. 企業Aが企業Cに為替手形(企業Cから企業Bへの代金支払い)を振り出します。
  4. 企業Bは銀行に受取手形を呈示して、支払期日に代金を受け取ります。

 

取引 企業A
「振出人」
企業B
「指図人(受取人)」
企業C
「名宛人(支払人・引受人)」
借方 貸方 借方 貸方 借方 貸方
1. 仕入 買掛金 売掛金 売上 仕訳なし
2. 売掛金 売上 仕訳なし 仕入 買掛金
3. 買掛金 売掛金 受取手形 売掛金 買掛金 支払手形
4. 仕訳なし 当座預金 受取手形 支払手形 当座預金

 

特殊な為替手形

さらに、為替手形の中でも特殊な「自己受為替手形(自己指図為替手形)」と「自己宛為替手形」について説明します。

 

自己受為替手形(自己指図為替手形)

「自己受為替手形」とは、自社を「指図人(受取人)」として取引先「名宛人(引受人・支払人)」に振り出す為替手形のことをいいます。

支払期限を明確にして取引先から確実に売掛金(商品の代金)を回収するという目的や、為替手形には振り出す人が収入印紙を貼付する必要があるため、その費用を支払ってもらう側が負担するという目的などで利用されます。

 

 

仕訳

それぞれの取引における各企業の仕訳を以下に示します。(勘定科目のみ記載)
仕訳は難しくなく、約束手形の場合と同様に「支払手形・受取手形」で単純に整理することができます。

 

  1. 企業Aは企業Bから商品を購入します。
  2. 企業Bが企業Aに自己受為替手形(企業Aから企業Bへの代金支払い)を振り出します。
  3. 企業Bは銀行に為替手形を呈示して、支払期日に代金を受け取ります。

 

取引 企業A
「名宛人(支払人・引受人)」
企業B
「振出人」
「指図人(受取人)」
借方 貸方 借方 貸方
1. 仕入 買掛金 売掛金 売上
2. 買掛金 支払手形 受取手形 売掛金
3. 支払手形 当座預金 当座預金 受取手形

 

自己宛為替手形

「自己宛為替手形」とは、自社を「名宛人(支払人・引受人)」として自社に振り出す為替手形のことをいいます。

全国展開をしている企業において、「本店」が「○○支社」に支払いを依頼するという目的などで利用されます。

 

 

仕訳

それぞれの取引における各企業の仕訳を以下に示します。(勘定科目のみ記載)
仕訳は難しくなく、約束手形の場合と同様に「支払手形・受取手形」で単純に整理することができます。

  1. 企業Aは企業Bから商品を購入します。
  2. 企業Aが企業Bに自己宛為替手形(企業Aから企業Bへの代金支払い)を振り出します。
  3. 企業Bは銀行に為替手形を呈示して、支払期日に代金を受け取ります。

 

取引 企業A
「振出人」
「名宛人(支払人・引受人)」
企業B

「指図人(受取人)」

借方 貸方 借方 貸方
1. 仕入 買掛金 売掛金 売上
2. 買掛金 支払手形 受取手形 売掛金
3. 支払手形 当座預金 当座預金 受取手形

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【平成27年度 第5問】

次の仕訳の取引として最も適切なものを下記の解答群から選べ。

(借) 仕入  500,000  (貸) 支払手形  500,000

 

[解答群]

ア 現金500,000円を約束手形を振り出して借り入れ、この現金で商品500,000円を仕入れた。
イ 商品500,000円を仕入れ、為替手形を振り出し、得意先の引き受けを得て仕入先に渡した。
ウ 商品500,000円を仕入れ、代金として自己宛為替手形を振り出した。
エ 商品500,000円を仕入れ、代金は掛けとした。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答

「手形取引」の仕訳に関する知識を問う問題です。

 

(ア) 不適切です。

借用証書ではなく約束手形を振り出して借り入れを行う場合、「手形借入金」という勘定科目で仕訳します。

今回、手形を振り出して借り入れを行った後、その現金で商品を購入するという2つのステップを踏むこととなります。

 

①約束手形を振り出して借り入れを行う。

借方 貸方
現金 500,000円 手形借入金 500,000円

 

②借り入れた現金で商品の仕入れを行う。

借方 貸方
仕入 500,000円 現金 500,000円

 

「手形借入金」については、「財務・会計 ~H23-14 資金調達方法(3)~」でも説明していますので、そちらも参考としてください。

 

(イ) 不適切です。

「得意先」とは商品の販売先、「仕入先」は商品の仕入先を示しています。
「振出人」が「得意先(名宛人・支払人・引受人)」に対して「仕入先(指図人・受取人)」への代金支払いを依頼する為替手形を発行する場合、商品を販売・仕入れた時点でいったん売掛金・買掛金の勘定科目で仕訳してから手形を発行することとなるため、仕訳は以下の通りとなります。

 

本ページの上方(為替手形-仕訳)で説明していますので、そちらも参考にしてください。

 

借方 貸方
買掛金 500,000円 売掛金 500,000円

 

(ウ) 適切です。

「自己宛為替手形」とは「振出人」が、自社を「名宛人(支払人・引受人)」として振り出す為替手形です。仕訳は以下の通りとなります。

 

借方 貸方
 仕入 500,000円 支払手形 500,000円

 

(エ) 不適切です。

代金を掛け(買掛金)として商品を仕入れる場合、仕訳は以下の通りとなります。

 

借方 貸方
 仕入 500,000円 買掛金 500,000円

 

答えは(ウ)です。


コメント

  1. y.shirai より:

    https://shikakutorunara.tokyo/2018/02/16/post-181/
    為替手形のイメージ図 において、疑問があります。
    引受(右下)は、企業AではなくC
    振出人は、企業CではなくA
    のようにおもうのですが。

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