財務・会計 ~H28-5-2 剰余金の配当と処分(3)繰越利益剰余金の分配~

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今回は、「財務・会計 ~H28-5-2 剰余金の配当と処分(3)繰越利益剰余金の分配~」について説明します。

 

目次

財務・会計 ~平成28年度一次試験問題一覧~

平成28年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

剰余金の配当と処分 -リンク-

本ブログにて「剰余金の配当と処分」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

 

剰余金の配当

会社法(第453条)の施行により、平成18年5月1日以降、株式会社は株主に「剰余金の配当」を行うことができるようになりました。

もちろん、会社法(第453条)の施行以前も株式会社は株主に配当を行っていましたが、それは「剰余金の配当」ではなく「利益の配当」として行われていました。

そのため、配当の回数も、定時株主総会の決議による各事業年度の決算で確定した利益を原資とした1事業年度に1度の「期末配当」と、取締役会の決議による1事業年度に1度の「中間配当」の最大2回までに制限されていました。

 

法定準備金の積み立て

株式会社が、株主に剰余金の配当を行う場合、資本金の「4分の1」に達するまで「法定準備金(資本準備金/利益準備金)」を積み立てる必要があります

「法定準備金(資本準備金/利益準備金)」の積立金額が、資本金の「4分の1」に達していない場合は、以下の計算式により求められた金額のうち低い方を「法定準備金(資本準備金/利益準備金)」として積み立てます

 

 

なお、「繰越利益剰余金」を原資として配当を行う場合は「利益準備金」に「その他資本剰余金」を原資として配当を行う場合は「資本準備金」に「法定準備金」を積み立てます。

 

仕訳

株式会社が、株主に配当する場合の「法定準備金」の積み立て額を「配当金の10分の1」とした場合の仕訳を以下に示します。

 

繰越利益剰余金を原資として配当を行う場合

「繰越利益剰余金」を原資として配当を行う場合の仕訳は以下の通りです。

 

借方 貸方
繰越利益剰余金 11,000 現金(配当金)
利益準備金(法定準備金)
10,000
1,000

 

その他資本剰余金を原資として配当を行う場合

「その他資本剰余金」を原資として配当を行う場合の仕訳は以下の通りです。

 

借方 貸方
その他資本剰余金 11,000 現金(配当金)
資本準備金(法定準備金)
10,000
1,000

 

その他資本剰余金による配当を受けた企業の仕訳

「その他資本剰余金」により配当を行う場合は、配当を行う企業よりも、配当を受け取る企業の仕訳が複雑です。

これは、「その他資本剰余金」による配当が、株主から預かった資金を投資して得ることができた利益からの配当ではなく、資本金の払い戻しという意味合いが強いためです。

 

売買目的有価証券以外の有価証券を保有している場合

「その他資本剰余金」による配当を受けた株主が保有する株式が「売買目的有価証券以外」の場合は、当該の有価証券の帳簿価額から減額する仕訳を実施します。

借方 貸方
現金 1,000 その他有価証券 1,000

 

売買目的有価証券の場合

「その他資本剰余金」による配当を受けた株主が保有する株式が「売買目的有価証券」の場合は、通常通り「受取配当金」として仕訳を実施します。

借方 貸方
現金 1,000 受取配当金 1,000

 

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【平成28年度 第5問】

次の資料に基づいて、下記の設問に答えよ。

[資料]

(期首)純資産の部 (単位:千円)
Ⅰ 株主資本
1. 資本金 80,000
2. 資本剰余金
(1)資本準備金 1,000
(2)その他資本剰余金 100
3. 利益剰余金
(1)利益準備金 5,000
(2)その他利益剰余金
繰越利益剰余金 1,200
87,300

 

期中取引(発生順)

  1. 増資にあたり、株式300株を1株当たり70千円の価格で発行し、払込金は当座預金とした。
    なお、会社法が定める最低額を資本金とした。また、株式募集のための費用150千円を小切手を振出して支払った。
  2. 株主総会が開催され、繰越利益剰余金の分配を次のように決定した。
    ① 利益準備金 会社法が定める最低額
    ② 配当金 800千円
    ③ 別途積立金 180千円

 

(設問2)

期中取引が終わった時点の繰越利益剰余金の金額として、最も適切なものはどれか。

 

ア 120千円
イ 140千円
ウ 184千円
エ 220千円

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答(設問2)

繰越利益剰余金の分配に関する知識を問う問題です。

 

純資産の部(設問1の反映結果)

「設問1」で株式を発行して増資を行った結果を反映した「資本金」や「資本準備金」に基づき考える必要があります。

なお、「設問1」で計上した「株式交付費」は費用(または繰延資産として減価償却を行う)ですが、決算処理が行われていないため、期中取引が終わった時点では、繰越利益剰余金に反映されていません

「設問1」で株式を発行して増資を行った結果を反映した「貸借対照表」の「純資産の部」は以下の通りです。

 

(期首)純資産の部 (単位:千円)
Ⅰ 株主資本
1. 資本金 90,500
2. 資本剰余金
(1)資本準備金 11,500
(2)その他資本剰余金 100
3. 利益剰余金
(1)利益準備金 5,000
(2)その他利益剰余金
繰越利益剰余金 1,200
108,300

 

法定準備金の積み立て

株式会社が、株主に剰余金の配当を行う場合、資本金の「4分の1」に達するまで「法定準備金(資本準備金/利益準備金)」を積み立てる必要があります

「法定準備金(資本準備金/利益準備金)」の積立金額が、資本金の「4分の1」に達していない場合は、以下の計算式により求められた金額のうち低い方を「法定準備金(資本準備金/利益準備金)」として積み立てます

 

 

なお、「繰越利益剰余金」を原資として配当を行う場合は「利益準備金」に「その他資本剰余金」を原資として配当を行う場合は「資本準備金」に「法定準備金」を積み立てます。

 

「設問1」の結果を反映した貸借対照表の数値を上述の計算式に当てはめて計算します。

 

  • 資本金 ÷ 4 -( 資本準備金 + 利益準備金 )
    = 90,500千円 ÷ 4 -( 11,500千円 + 5,000千円 )= 6,125千円
  • 配当金 ÷ 10
    = 800千円 ÷ 10 = 80千円

 

「法定準備金」として積み立てるべき金額は、金額の低い方であるため、「80千円」ということになります。

 

「繰越利益剰余金」を原資として配当を行う場合は「利益準備金」に「法定準備金」を積み立てるため、積み立てるべき法定準備金は「利益準備金:80千円」です。

 

仕訳

「繰越利益剰余金」を原資として配当を行う場合の仕訳は以下の通りです。

 

借方 貸方
繰越利益剰余金 1,060 現金(配当金)
利益準備金(法定準備金)
別途積立金
800
80
180

 

純資産の部(設問2の結果反映)

「繰越利益剰余金」を原資として配当を行う場合の仕訳を反映した「貸借対照表」の「純資産の部」は以下の通りです。

 

(期首)純資産の部 (単位:千円)
Ⅰ 株主資本
1. 資本金 90,500
2. 資本剰余金
(1)資本準備金 11,500
(2)その他資本剰余金 100
3. 利益剰余金
(1)利益準備金 5,080
(2)その他利益剰余金
別途積立金 180
繰越利益剰余金 140
107,500

 

答えは(イ)です。


 

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