財務・会計 ~H29-5 企業会計原則(1)~

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今回は、「財務・会計 ~H29-5 企業会計原則(1)~」について説明します。

 

目次

財務・会計 ~平成29年度一次試験問題一覧~

平成29年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

企業会計原則 一般原則

企業が財務諸表等を作成する際には「企業会計原則」という基準に準拠する必要があります。

「企業会計原則」とは1949年に公表された会計基準であり、今回は「企業会計原則」の中で定められている7つの一般原則について説明します。

 

真実性の原則

企業会計は、企業の財政状態および経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。

 

正規の簿記の原則

企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない。

 

資本・利益区別の原則

資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。

 

明瞭性の原則

企業会計は、財務諸表によって、利害関係差に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない。

 

継続性の原則

企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。

 

保守主義の原則

企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。

 

単一性の原則

株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。

 

「一般原則」ではありませんが、上記の7原則と合わせて問われることの多い「重要性の原則」について以下に捕捉します。

 

重要性の原則(企業会計原則注解[注1])

企業会計は、定められた会計処理の方法に従って正確な計算を行うべきものであるが、企業会計が目的とするところは、企業の財務内容を明らかにし、企業の状況に関する利害関係者の判断を誤らせないようにすることにあるから、重要性の乏しいものについては、本来の厳密な会計処理によらないで他の簡便な方法によることも正規の簿記の原則に従った処理として認められる。

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【平成29年度 第5問】

企業会計原則に関する記述として、最も適切なものはどれか。

 

ア 会計処理の原則および手続きを毎期継続して適用し、みだりに変更してはならない。

イ 株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のためなど種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成してはならない。

ウ すべての費用および収益は、その支出および収入の時点において認識し、損益計算書に計上しなければならない。

エ 予測される将来の危険に備えて、合理的な見積額を上回る費用を計上することは、保守的な会計処理として認められる。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答

企業会計原則に関する知識を問う問題です。

 

(ア) 適切です。

「一般原則」の「継続性の原則」に関する記述です。

「継続性の原則」では、いくつかの選択適用が認められた会計処理の原則又は手続きが存在する場合に、いったん採用した会計処理の原則及び手続きを毎期継続して適用することを要請しています。

選択した会計処理の原則又は手続きにより算出される利益が異なってきますが、毎期同一の方法を適用している限り、利益操作の行われる余地を排除することができ、そのように作成された財務諸表は真実なものということができます。

また、利益操作を意図していない場合でも、会計処理の原則及び手続きを変更して作成した財務諸表は比較することができなくなります。(上述の通り、選択する会計処理の原則又は手続きによって算出される利益が異なってくるため。)

継続性の原則により、財務諸表の期間比較性を確保することによって、利害関係者が企業の状況について適切な判断と意思決定とを行うための情報を入手することを可能としています。

なお、会計処理の原則及び手続の変更は「正当な理由」がある場合に認められています。
「正当な理由」とは、会計処理の原則又は手続を変更することによって、企業会計がより合理的なものとなる場合、つまり企業の財政状態および経営成績をより適正に表すことができる場合を意味しています。

正(企業会計原則-一般原則)

会計処理の原則および手続きを毎期継続して適用し、みだりに変更してはならない。

 

(イ) 不適切です。

「一般原則」の「単一性の原則」に関する記述です。

選択肢では、種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成すること自体を禁止していますが、種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成したとしても、それが正規の簿記の原則に従って作成された単一の会計記録に基づいたものであれば問題ないため、不適切です。

「単一性の原則」は、種々の目的のために異なる形式の財務諸表が作成する場合でも、正規の簿記の原則に従って作成された会計記録に基づかなければならないことを要請しています。

株主向けには利益が多い財務諸表を作成して、税務署向けには利益が少ない財務諸表を作成するなど、それぞれの目的に応じて二重帳簿を作成してはならないということを意図しています。

誤(問題文)

株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のためなど種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成してはならない。

正(企業会計原則-一般原則)

株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。

 

(ウ) 不適切です。

「損益計算書原則」に関する記述です。

選択肢では、「費用および収益」の認識と損益計算書への計上について記載されていますが、いずれも不適切です。

費用は「発生主義の原則」に基づき、収益は「実現主義の原則」に基づき、認識されます
また、損益計算書への計上については「費用収益対応の原則」に基づき、実現した収益に対応する費用を計上しなければなりません。

費用については、収益と対応しているか否かに関わらず、またその支出がなされたか否かに関わらず、発生主義の原則に基づき、とにかく発生したものはすべて認識しておいて、損益計算書を作成する際には、費用収益対応の原則に基づき、当該期に実現した収益に対応する費用だけを計上します。

誤(問題文)

すべての費用および収益は、その支出および収入の時点において認識し、損益計算書に計上しなければならない。

正(企業会計原則-損益計算書原則)
  • 損益計算書原則一A(発生主義の原則/費用)
    すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない。ただし、未実現収益は、原則として、当期の損益計算に計上してはならない。
  • 損益計算書原則三B(実現主義の原則/収益)
    売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る。ただし、長期の未完成請負工事等については、合理的に収益を見積り、これを当期の損益計算に計上することができる

 

(エ) 不適切です。

「一般原則」の「保守主義の原則」に関する記述です。

「保守主義の原則」では、予測される将来の危険に備えて慎重な判断に基づく会計処理を行うことを要請していますが、「適当に」という表現により、過度に保守的な会計処理を禁止しています。

一般に公正妥当と認められた会計処理の原則及び手続きの枠内で会計処理をしていれば真実性の原則に反するものとはなりませんが、過度の保守主義は、恣意的な利益の過小表示により、損益計算を不適正にさせ、真実性の原則に反するものとなってしまいます。

なお、「保守主義の原則」は、将来の危険から企業を守り、企業財政の安全性を図るところに目的を置いているため、安全性の原則とも呼ばれています。

誤(問題文)

予測される将来の危険に備えて、合理的な見積額を上回る費用を計上することは、保守的な会計処理として認められる。

正(企業会計原則-一般原則)

企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。

 

答えは(ア)です。


 

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