今回は、「財務・会計 ~H24-11 損益分岐点分析(CVP分析)(6)~」について説明します。
目次
財務・会計 ~平成24年度一次試験問題一覧~
平成24年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
損益分岐点分析(一次試験) -リンク-
一次試験に向けて「損益分岐点分析(CVP分析)」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- R4-12-2 損益分岐点分析(CVP分析)(12)
- R3-12 損益分岐点分析(CVP分析)(11)
- R2-21 損益分岐点分析(CVP分析)(10)
- H30-11 損益分岐点分析(CVP分析)(9)
- H28-8-1 損益分岐点分析(CVP分析)(1)
- H28-8-2 損益分岐点分析(CVP分析)(2)
- H27-10 損益分岐点分析(CVP分析)(3)
- H26-7 損益分岐点分析(CVP分析)(4)
- H25-8 損益分岐点分析(CVP分析)(5)
- H23-11 損益分岐点分析(CVP分析)(7)
- H22-9 損益分岐点分析(CVP分析)(8)
損益分岐点分析(二次試験) -リンク-
二次試験(事例Ⅳ)に向けた「損益分岐点分析(CVP分析)」の記事は、以下のページに整理していますので、アクセスしてみてください。
損益分岐点分析(CVP分析)とは
「損益分岐点分析(CVP分析)」では、総費用を変動費と固定費に区分して、目標利益を達成するために必要な売上高や製品の販売数量を分析するなど企業が利益計画を立てるために必要な数値を求めることができます。
「損益分岐点分析(CVP分析)」は、企業の費用構造に関する安全性を分析する手法です。
企業の費用構造上、総費用に占める固定費の割合が低くなると、世の中の不況などの外部環境の変化により売上高が低下しても利益を確保することができるなど、外部環境の変化に対する抵抗力が強くなります。
安全余裕率
安全余裕率とは、実際の売上高と損益分岐点売上高の差がどのくらいあるかを表す指標です。
安全余裕率が高いほど実際の売上高が損益分岐点売上高から離れており、安全性が高いことを示しています。
安全余裕率と損益分岐点比率の関係
損益分岐点比率と安全余裕率には、以下の関係があります。
安全余裕率と営業レバレッジの関係
「安全余裕率」は「営業レバレッジの逆数」であり以下の公式により求めることができます。
損益分岐点分析(CVP分析)の中で、直接的に問われることにの少ない知識ですが、知らないと解くことができない問題が出題されることがあるため、是非覚えておくことをお薦めします。
営業レバレッジ(重要!)
営業レバレッジは「限界利益÷営業利益」で表される指標であり、二次試験でも頻繁に出題される内容です。(平成27年度 事例Ⅳ 第2問 設問2など)
営業レバレッジは安全性を示す指標であり、その数値が高い場合は「安全性が低い」と判断することができます。
二次試験で営業レバレッジについて問われる場合は、当該企業の費用構造において固定費の割合が高いケースが想定されますが、その場合の問題点は以下のようになります。
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営業レバレッジの数値が高いということは、費用構造における固定費の割合が高くなっていることを示しており、売上変動に伴う営業利益の増減が大きくなるため、景気変動に伴う売上高の減少によって営業利益がマイナスに転落するリスクが高く安全性が低い。
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試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成24年度 第11問】
損益分岐点分析に関する次の文章の空欄A〜Cに入る用語の組み合わせとして最も適切なものを下記の解答群から選べ。
損益分岐点売上高の定義より、利益は売上高に対する限界利益と損益分岐点売上高に対する限界利益の差として求められる。よって、限界利益と売上高との関係から、[ A ]と[ B ]および[ C ]との間には、
[ A ]=[ B ]×[ C ]
という関係がある。
[解答群]
ア A:売上利益率 B:安全余裕率 C:限界利益率
イ A:売上利益率 B:損益分岐点比率 C:限界利益率
ウ A:限界利益率 B:安全余裕率 C:売上利益率
エ A:限界利益率 B:損益分岐点比率 C:売上利益率
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
空欄A,B,Cの計算式がかなり複雑に感じてしまいますが、選択肢を整理してみると以下のパターンに分けることができます。
その中で、空欄A,Cのいずれかにに入る「売上利益率」と「限界利益率」は、以下の計算式により求めることができます。
これを計算式「[A]=[B]×[C]」に当てはめると、空欄[B]に入る「損益分岐点比率」または「安全余裕率」の計算式が、以下のいずれかとなることが分かります。
「安全余裕率」は「営業レバレッジの逆数」であり以下の公式により求めることができます。
ここで示す「営業利益」は、今回の問題で「利益」と表記されているものと同じ内容を示しているため、空欄Bには安全余裕率が入ります。
上記の結果から、「[A]=[B]×[C]」は、それぞれ以下の指標を当てはめることが適切であることが分かるため、正解は(ア)です。
別解法:公式から正解に辿り着く方法について
安全余裕率が「営業レバレッジの逆数」ということを知らなかった場合に、「損益分岐点比率」と「安全余裕率」の公式から正解に辿り着く方法を以下に説明します。
実際には、一次試験の短い試験時間の中で以下の式を導くのは厳しいので、「営業レバレッジの逆数」ということを知らない時点で正解は難しいかもしれません。
限界利益と利益の関係について
限界利益と売上高の関係から、「利益」は「限界利益」から「固定費」を差し引いた金額という形で表すことができます。
- 限界利益 = 売上高 - 変動費 = 固定費 + 利益
- 利益 = 限界利益 - 固定費
損益分岐点比率の公式の変形
損益分岐点比率の公式を変形して「限界利益=売上高-変動費」という関係性を当てはめていくと、損益分岐点比率は「固定費 ÷ 限界利益」という形に変形することができます。
安全余裕率の計算について
安全余裕率の公式を変形して「利益=限界利益-固定費」という関係性を当てはめていくと、安全余裕率は「利益 ÷ 限界利益」という形に変形することができ、選択肢(ア)の正解に辿り着くことができます。
答えは(ア)です。
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