今回は、「財務・会計 ~H25-8 損益分岐点分析(CVP分析)(5)~」について説明します。
目次
財務・会計 ~平成25年度一次試験問題一覧~
平成25年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
損益分岐点分析(一次試験) -リンク-
一次試験に向けて「損益分岐点分析(CVP分析)」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- R4-12-2 損益分岐点分析(CVP分析)(12)
- R3-12 損益分岐点分析(CVP分析)(11)
- R2-21 損益分岐点分析(CVP分析)(10)
- H30-11 損益分岐点分析(CVP分析)(9)
- H28-8-1 損益分岐点分析(CVP分析)(1)
- H28-8-2 損益分岐点分析(CVP分析)(2)
- H27-10 損益分岐点分析(CVP分析)(3)
- H26-7 損益分岐点分析(CVP分析)(4)
- H24-11 損益分岐点分析(CVP分析)(6)
- H23-11 損益分岐点分析(CVP分析)(7)
- H22-9 損益分岐点分析(CVP分析)(8)
損益分岐点分析(二次試験) -リンク-
二次試験(事例Ⅳ)に向けた「損益分岐点分析(CVP分析)」の記事は、以下のページに整理していますので、アクセスしてみてください。
損益分岐点分析(CVP分析)とは
「損益分岐点分析(CVP分析)」では、総費用を変動費と固定費に区分して、目標利益を達成するために必要な売上高や製品の販売数量を分析するなど企業が利益計画を立てるために必要な数値を求めることができます。
「損益分岐点分析(CVP分析)」は、企業の費用構造に関する安全性を分析する手法です。
企業の費用構造上、総費用に占める固定費の割合が低くなると、世の中の不況などの外部環境の変化により売上高が低下しても利益を確保することができるなど、外部環境の変化に対する抵抗力が強くなります。
安全余裕率
安全余裕率とは、実際の売上高と損益分岐点売上高の差がどのくらいあるかを表す指標です。
安全余裕率が高いほど実際の売上高が損益分岐点売上高から離れており、安全性が高いことを示しています。
損益分岐点売上高
損益分岐点売上高(利益が「0」となる売上高)の公式は以下の通りです。
公式の算出過程
公式だけ覚えておくと、応用問題に対応することができないので、公式の算出過程を以下に示します。
損益分岐点売上高は利益が「0」となる売上高のことです。
売上高から原価(変動費と固定費)を減算した時に、利益が「0」となります。
- 売上高 - 変動費 - 固定費 = 0
- 変動費 = 売上高 × 変動費率
この式を変形していくと。
- 売上高 - 売上高 × 変動費率 - 固定費 = 0
- 売上高 ×(1-変動費率)- 固定費 = 0
- 売上高 ×(1-変動費率)= 固定費
- 売上高 = 固定費 ÷(1-変動費率)
したがって、損益分岐点売上高(利益が「0」となる売上高)の公式は前述の通り以下の通りとなります。
損益分岐点比率
損益分岐点比率とは、実際の売上高と損益分岐点売上高の比率を計算した指標です。
損益分岐点比率が低いほど良いとされ、売上高の低下による影響を受けにくく、不況抵抗力が強いとされています。
損益分岐点比率と安全余裕率の関係
損益分岐点比率と安全余裕率には、以下の関係があります。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成25年度 第8問】
A社の当期の売上高は20,000千円、費用は以下のとおりであった。なお、一般管理費はすべて固定費である。安全余裕率として最も適切なものを下記の解答群から選べ。
変動製造費用 5,000千円 固定製造費用 9,000千円 変動販売費 3,000千円 固定販売費 800千円 一般管理費 1,000千円
[解答群]
ア 10.0%
イ 10.9%
ウ 25.0%
エ 28.0%
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
安全余裕率を求めるために、問題文で与えられているデータを「変動費」と「固定費」に分解します。「損益分岐点分析(CVP分析)」に関する問題を解く場合は、必ず最初にこの作業が発生します。
- 変動費
変動製造費用 + 変動販売費
= 5,000千円 + 3,000千円= 8,000千円 - 固定費
固定製造費用 + 固定販売費 + 一般管理費
= 9,000千円 + 800千円 + 1,000千円 = 10,800千円
損益分岐点売上高の算出
損益分岐点売上高の公式は以下の通りです。
上記の公式に問題文の数値を当てはめていくと以下の通りとなります。
損益分岐点売上高 = 10,800千円 ÷(1- 8,000千円 ÷ 20,000千円)= 18,000千円
「損益分岐点分析(CVP分析)(1)」でも説明したように、損益分岐点売上高は公式で覚えるのではなく、算出過程を理解した方が試験に対応しやすいので、ここでも同様の方法で導いてみます。
「損益分岐点売上高」とは、原価(変動費と固定費)を減算した時に、利益が「0」となる売上高のことなので、以下の式が成り立ちます。
- 損益分岐点売上高(A)-変動費 -固定費 =0
- 損益分岐点売上高(A)-損益分岐点売上高(A)×変動費率 -固定費 =0
- A - A × 8,000 ÷ 20,000 - 10,800 = 0
- 0.6 A = 10,800
- A = 18,000千円
安全余裕率の算出
安全余裕率の公式は以下の通りです。
上記の公式に問題文の数値を当てはめていくと以下の通りとなります。
安全余裕率 =(20,000千円 - 18,000千円)÷ 20,000千円 × 100% = 10%
損益分岐点比率と安全余裕率の関係から求める方法
安全余裕率は損益分岐点比率よりも出題頻度が少ないため、公式を忘れてしまうこともあるかと思います。そんな時のために、損益分岐点比率と安全余裕率の以下の関係を覚えておくようにしておきましょう。
上記の関係性から、以下のように解答を求めることもできます。
- 損益分岐点比率
損益分岐点売上高 ÷ 実際の売上高 = 18,000÷20,000=90% - 安全余裕率
100% - 損益分岐点比率 = 100% - 90% = 10%
答えは(ア)です。
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