今回は、「財務・会計 ~H27-17 分散・標準偏差(3)~」について説明します。
目次
財務・会計 ~平成27年度一次試験問題一覧~
平成27年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
分散・標準偏差 -リンク-
「分散・標準偏差」および「共分散・相関係数」については、過去にも説明していますので、以下のページにもアクセスしてみてください。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成27年度 第17問】
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
E社は、2つのプロジェクト(プロジェクトAおよびプロジェクトB)の採否について検討している。両プロジェクトの収益率は、今夏の気候にのみ依存することが分かっており、気候ごとの予想収益率は以下の表のとおりである。なお、この予想収益率は投資額にかかわらず一定である。また、E社は、今夏の気候について、猛暑になる確率が40%、例年並みである確率が40%、冷夏になる確率が20%と予想している。
今夏の気候 猛暑 例年並み 冷夏 プロジェクトA 5% 2% -4% プロジェクトB -4% 2% 8%
(設問1)
プロジェクトAに全額投資したと仮定する。当該プロジェクトから得られる予想収益率の期待値および標準偏差の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
ア 期待値: 1% 標準偏差: 3.4%
イ 期待値: 1% 標準偏差: 11.8%
ウ 期待値: 2% 標準偏差: 3.3%
エ 期待値: 2% 標準偏差: 10.8%
(設問2)
2つのプロジェクトに関する記述として最も適切なものはどれか。
ア 2つのプロジェクトに半額ずつ投資することで、どちらかのプロジェクトに全額投資した場合よりもリスクが低減される。
イ 2つのプロジェクトの予想収益率の相関係数は0以上1未満となる。
ウ プロジェクトAのリスクのほうがプロジェクトBのリスクよりも大きい。
エ プロジェクトBの期待収益率は負である。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答(設問1)
予想収益率の期待値および標準偏差を計算すると以下の通りです。
以下のフォーマットおよび算出方法については、「分散・標準偏差(1)」を参照してください。
プロジェクトA
答えは(ウ)です。
考え方と解答(設問2)
ア 適切です。
複数のプロジェクトに分散投資することで、単独のプロジェクトに投資するよりもリスクを低減することができます。
例外として、2つのプロジェクトによる予想収益率が完全な正の相関を有する場合は、リスクの分散効果を得ることができません。
2つのプロジェクトが完全な正の相関を有する例
今夏の気候 | |||
猛暑 | 例年並み | 冷夏 | |
プロジェクト1 | 5% | 2% | -4% |
プロジェクト2 | 5% | 2% | -4% |
イ 不適切です。
2つのプロジェクトによる予想収益率が、今夏の気候に合わせて同じ動きをする場合は相関係数がプラスに、逆の動きをする場合は相関係数がマイナスになります。「共分散・相関係数(1)」
「プロジェクトA」は猛暑になるほど予想収益率が高くなりますが、「プロジェクトB」は冷夏になるほど予想収益率が高くなります。つまり、2つのプロジェクトによる予想収益率が、今夏の気候に合わせて逆の動きをするため、相関係数はマイナスとなります。
ウ 不適切です。
2つのプロジェクトにおける「リスク」は、標準偏差の数値の大きさで確認することができます。標準偏差は「データのばらつき」を示しており、数値が大きいほどリスクが高いということを示しています。「分散・標準偏差(1)」
プロジェクトB
プロジェクトAの標準偏差(3.29)は、プロジェクトBの標準偏差(4.49)より小さいため、プロジェクトAのリスクの方がプロジェクトBのリスクよりも低い(小さい)と判断することができます。
一次試験の問題の多くは、実際に標準偏差を求めなくても、与えられた表データから答えを判断することも可能です。(今回も同様です。)
各プロジェクトの予想収益率は、以下の数値内で推移してます。
- プロジェクトAは「-4%<予想収益率<5%」で推移
- プロジェクトBは「-4%<予想収益率<8%」で推移
つまり、プロジェクトAの方が、プロジェクトBよりも「推移する予想収益率の範囲が狭い⇒データのばらつきが小さい⇒標準偏差が小さい⇒リスクが低い」と判断することができます。
エ 不適切です。
以下の通りプロジェクトBの期待収益率はプラス(0.8%)です。
プロジェクトB
答えは(ア)です。
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