今回は、「財務・会計 ~H28-6-1 製造原価の構造(2)原価計算基準~」について説明します。
目次
財務・会計 ~平成28年度一次試験問題一覧~
平成28年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
製造原価の構造 -リンク-
「製造原価の構造」については、過去にも説明していますので、以下のページにもアクセスしてみてください。
- H29-10 製造原価の構造(1)
- H28-6-2 製造原価の構造(3)原価計算基準
- H27-6 製造原価の構造(4)原価計算基準
- H25-9 製造原価の構造(5)労務費
- H24-6 製造原価の構造(6)原価に算入される項目
- H22-7 製造原価の構造(7)原価計算制度
- R2-10 製造原価の構造(8)直接労務費
製造原価の構造
「製造原価」の基本的な考え方は「原価計算基準」に定義されています。
「原価計算基準」は、昭和37年(1962年)に大蔵省企業会計審議会から公表された会計基準であり「企業会計原則」の一環をなす原価計算の実践規範とされています。
原価計算基準
「原価計算基準」は、非常に難解で言い回しが分かりくいのですが、50年以上も前に書かれたことを考えると、内容が合理的であり、日本の企業が原価計算を大事にすることで発展して現代に至った理由が分かるような気がしてきます。
本ブログでは、文章の意味を分かりやすくするために、原文をかなり意訳しています。
原文がそのまま出題された場合には意味が分からない可能性もありますので、あらかじめご了承ください。
原価計算基準の構成
原価計算基準は以下の章立てで構成されています。
- 前書き 原価計算基準の設定について
- 第1章 原価計算の目的と原価計算の一般的基準
- 第2章 実際原価の計算
- 第3章 標準原価の計算
- 第4章 原価差異の算定および分析
- 第5章 原価差異の会計処理
第2章以降には、「製造原価要素の分類、製造原価の計算方法、個別原価計算、総合原価計算、標準原価計算、原価の差異分析」など多岐にわたる内容が記載されていますが、原価計算基準の問題としては第1章に記載されている内容が多く出題される傾向にあるため、第1章を中心に説明していきます。
第1章 原価計算の目的と原価計算の一般的基準
1.原価計算の目的
- 財務諸表を作成するために必要な真実の原価を集計すること
- 価格計算に必要な原価情報を提供すること
- 経営管理者に対して原価管理に必要な原価情報を提供すること
「原価管理」とは、標準原価と実際に発生した原価との差異分析を行い、生産能率を増進する措置を講じることをいう。 - 予算の編成ならびに予算統制のために必要な原価情報を提供すること
「予算」とは各業務分野の具体的な数値目標を設定し、設定した目標を達成するために統合的に管理していくものをいう。予算編成の過程では個々の意思決定が行われるのはいうまでもない。 - 経営の基本計画を設定するに当たり、これに必要な原価情報を提供すること
「基本計画」とは、経済の動態的変化に対応して様々な意思決定を行い、組織構造を合理的に組成することをいう。
2.原価計算制度
- 「原価計算」とは制度としての原価計算をいう。
- 「原価計算制度」とは財務諸表の作成、原価管理、予算統制などの目的を達成するための一定の計算ルールをいう。
- 原価計算制度は、実際原価計算制度と標準原価計算制度に分類されるが、企業が原価計算を行う目的や条件に合わせて適用することができる。
- 「実際原価計算精度」は、製品原価の計算と財務会計が、実際原価で有機的に結合する原価計算制度である。原価管理上必要な場合は、必要な原価の標準を勘定組織の枠外に設定して、これと実際原価との差異を分析し、報告することがある。
- 「標準原価計算精度」は、製品原価の計算と財務会計が、標準原価で有機的に結合する原価計算制度である。設定した製品の標準原価と実際原価との差異を分析し、報告する計算体系のことをいう。
- 広い意味での原価計算には、原価計算制度以外に、意思決定に必要となる差額原価、機会原価、付加原価等を算出することも含まれるが、このような特殊原価調査は原価計算基準には含めない。
3.原価の本質
原価計算制度において、原価とは、企業が経営活動の中で製品を製造したりサービスを提供するために費やした資材や労働の消費を金額で表したものである。
- 原価は、経済価値の消費である。
経営活動とは、製品を製造して販売することを目的としており、必要な資材や労働という経済価値を消費してその製品を製造する。
原価とは、経営活動において消費する経済価値のことである。 - 原価は、製造する製品と関連付けて発生したものである。
製品とは、完成品だけでなく、仕掛品も含んでいる。 - 原価は、経営目的に関連したものである。
経営の目的とは、製品を生産して販売することであり、原価は製品を生産して販売するためにかかる費用である。経営の目的に関連しない費用や、資本の調達、返還、利益処分などの財務活動は原価には含めない。 - 原価は正常な経営活動により発生するものである。異常な状態を原因とするものは含まない。
説明が終わらなかったため、次回も引き続き説明します。
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