今回は、「財務・会計 ~H29-21 デリバティブ取引(先渡取引と先物取引)(1)~」について説明します。
目次
財務・会計 ~平成29年度一次試験問題一覧~
平成29年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
デリバティブ取引(一次試験) -リンク-
本ブログにて「デリバティブ取引(一次試験)」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- R5-23 デリバティブ取引(為替予約)(2)
- R3-23 デリバティブ取引(オプション取引)(8)
- R2-15 デリバティブ取引(オプション取引)(7)
- R1-14 デリバティブ取引(オプション取引)(6)
- H30-14 デリバティブ取引(4)
- H30-15 デリバティブ取引(オプション取引)(5)
- H30-19 デリバティブ取引(為替予約)(1)
- H29-25-1 デリバティブ取引(1)
- H29-25-2 デリバティブ取引(オプション取引)(1)
- H26-22 デリバティブ取引(オプション取引)(2)
- H25-22 デリバティブ取引(2)
- H25-23 デリバティブ取引(オプション取引)(3)
- H24-21 デリバティブ取引(オプション取引)(4)
- H24-22 デリバティブ取引(先渡取引と先物取引)(2)
- H23-21 デリバティブ取引(金利スワップ取引)(1)
- H22-18 デリバティブ取引(3)
デリバティブ取引(二次試験) -リンク-
本ブログにて「デリバティブ取引(二次試験)」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
デリバティブ取引の目的
材料や商品や製品の輸入や輸出を行う企業においては、為替レートの変動に伴う「為替変動リスク」の対策として「デリバティブ取引」を活用します。
「デリバティブ取引」は、為替レートの変動による損失(為替変動リスク)を回避(ヘッジ)するための手段であり、代表的な方法として「為替予約」と「オプション取引」と「スワップ取引」があります。
輸入を行う企業は業績に悪い影響を与える「円安」になった時に備えて、輸出を行う企業は業績に悪い影響を与える「円高」になった時に備えて、「デリバティブ取引」でリスクヘッジを行います。
なお、中小企業診断士試験で出題される「デリバティブ取引」は、あくまで「為替変動リスク」による損失を回避するための手段であり、為替レートの変動により利益を得ることが目的ではありません。
先渡取引と先物取引の特徴
先渡取引と先物取引の特徴を一部修正しました。(2017年12月2日)
先渡取引
先渡取引は、店頭などで相対取引により行われ、以下のような特徴があります。
- 取引相手が決まっているため、流動性が低く、信用リスクも高い取引です。
- 取引の当事者間で取引内容を自由に決めることができる取引です。
- 取引は現物決済となるため、全額を受け渡します。
- 原則として、期限日に現物を引き渡します。
- 現物決済となるため、取引には100%の資金が必要です。
- 委託証拠金は発生しません。
先物取引
先物取引は東京証券取引所、大阪証券取引所、東京金融先物取引所などの取引所を通じて行われ、以下のような特徴があります。
- 流動性が高く、信用リスクも低い取引です。
- 取引所を通じて、定型化された商品を取り扱う取引です。
- 現物のない取引で、反対取引による差金決済で損益を受け渡します。
- 期限日までであればいつでも差金決済することができます。
- 数%の資金で取引を行うため、レバレッジ効果が高い。
- 証拠金制度(商品の価格により変動)により、取引の履行を確保している取引です。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成29年度 第21問】
先渡取引(フォワード)と先物取引(フューチャー)に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
ア 原則的に先物取引は取引所で、先渡取引は店頭(相対)で取引が行われる。
イ 先物取引では、契約の履行を取引所が保証しているため、信用リスクは少ないといえる。
ウ 先渡取引では、期日までに約定したものと反対の取引を行い、差金決済により清算される。
エ 先渡取引では、原資産、取引条件などは取引の当事者間で任意に取り決める。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
「先渡取引(フォワード)」と「先物取引(フューチャー)」に関する知識を問う問題です。
「先渡取引」と「先物取引」の特徴を以下に示します。
先渡取引
先渡取引は、店頭などで相対取引により行われ、以下のような特徴があります。
- 取引相手が決まっているため、流動性が低く、信用リスクも高い取引です。
- 取引の当事者間で取引内容を自由に決めることができる取引です。
- 取引は現物決済となるため、全額を受け渡します。
- 原則として、期限日に現物を引き渡します。
- 現物決済となるため、取引には100%の資金が必要です。
- 委託証拠金は発生しません。
先物取引
先物取引は東京証券取引所、大阪証券取引所、東京金融先物取引所などの取引所を通じて行われ、以下のような特徴があります。
- 流動性が高く、信用リスクも低い取引です。
- 取引所を通じて、定型化された商品を取り扱う取引です。
- 現物のない取引で、反対取引による差金決済で損益を受け渡します。
- 期限日までであればいつでも差金決済することができます。
- 数%の資金で取引を行うため、レバレッジ効果が高い。
- 証拠金制度(商品の価格により変動)により、取引の履行を確保している取引です。
(ア)適切です。
「先物取引」は東京証券取引所、大阪証券取引所、東京金融先物取引所などの取引所を通じて行われ、「先渡取引」は、店頭などで相対取引により行われるため、選択肢の内容は適切です。
(イ)適切です。
「先物取引」は東京証券取引所、大阪証券取引所、東京金融先物取引所などの取引所を通じて行われる取引であり、信用リスクが低いため、選択肢の内容は適切です。
(ウ)不適切です。
「先物取引」は、現物のない取引であり、反対取引による差金決済で損益のみの受け渡しを行います。また、期限日までであればいつでも差金決済することができます。
一方、「先渡取引」は現物決済であり、全額の受け渡しを行い、期限日に現物を引き渡す取引です。
したがって、期日までに約定したものと反対の取引を行い、差金決済により清算されるのは「先物取引」であるため、選択肢の内容は不適切です。
(エ)適切です。
先渡取引は、店頭などで相対取引により行われる取引であり、取引の当事者間で取引内容を自由に決めることができるため、選択肢の内容は適切です。
答えは(ウ)です。
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