今回は、「財務・会計 ~H29-22 リスクの種類(1)流動性リスク~」について説明します。
目次
財務・会計 ~平成29年度一次試験問題一覧~
平成29年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
リスクの種類 -リンク-
一次試験に向けて「リスクの種類」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- リスクの種類のまとめ
- R5-22 リスクの種類(5)市場リスク
- H30-16 リスクの種類(4)アンシステマティック・リスクとシステマティック・リスク
- H27-19 リスクの種類(2)ポートフォリオ理論のリスク
- H26-21 リスクの種類(3)システマティック・リスク
リスク
一般的に「リスク」とは「危険」を表す言葉として認知されていますが、正確には「リスク」とは「不確実性さ」を意味しています。
例えば、「ハイリスクハイリターン」な金融商品とは、大損をする可能性もあれば大儲けできる可能性もある商品のことをいいますが、これは「危険が大きいので儲けも大きくなる可能性がある」のではなく「不確実性が高いため儲けも損も大きくなる可能性がある」ということを意味しています。
企業のリスク管理
企業はリスクを管理することによって、被る損失を事前に回避したり軽減する必要があります。
企業にとってのリスクは、「災害リスク」「システムリスク」「法的リスク」「損害賠償リスク」など多岐にわたりますが、以下では「財務・会計」に関連するリスクについて説明します。
信用リスク
「信用リスク」とは、取引相手先の信用状況の変化(債務超過、倒産など)により、債権回収ができなくなるリスクのことをいいます。
海外企業が取引先だった場合、戦争や革命などが起きて債権が回収できなくなる「カントリーリスク」も含まれます。
市場リスク
「市場リスク」には「為替変動リスク」や「金利変動リスク」があります。
為替変動リスク
「為替変動リスク」とは、為替相場の変動により外貨取引で為替差損益が発生するリスクのことをいいます。
輸入や輸出など海外企業と取引を行う企業は、デリバティブ取引(為替予約、オプション取引)を活用して、為替相場の変動による損失を回避します。
金利変動リスク
「金利変動リスク」とは、金利の変動により債券などの資産価値が変動するリスクのことをいいます。
債券は金利変動による影響を受けやすく、市場の金利が高くなれば債券の価値は下がり、市場の金利が低くなれば債券の価値が上がります。
価格変動リスク
「価格変動リスク」とは、投資対象である金融商品の価格変動により投資資産の価値が変動するリスクのことをいいます。
一般的に大きいリターンが期待できる金融商品は「価格変動リスク」も大きく、小さいリターンしか期待できない金融商品は「価格変動リスク」も小さくなります。
「価格変動リスク」は、標準偏差などの統計指標を用いて分析します。
流動性リスク
「流動性リスク」には「市場流動性リスク」や「資金調達リスク」があります。
市場流動性リスク
「市場流動性リスク」とは、市場における取引ができなくなったり、通常より著しく不利な価格でしか売ることができなくなるリスクのことをいいます。
そのような事態が発生するのは、そもそも市場での取引量が少ない商品(流動性が低い商品)の場合や、大暴落、システム停止、災害、戦争などにより取引自体ができなくなるケースが考えられます。
資金調達リスク
「資金調達リスク」とは、通常より著しく不利な価格でしか資金を調達できなくなるリスクのことをいいます。
例えば、上述した「市場流動性リスク」により資金を回収できなかったり、通常より著しく高い金利でしか借入ができなかったりというケースが考えられます。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成29年度 第22問】
流動性リスクに関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 外国為替レートが変動することにより差損を被るリスク
イ 借入金や債券の金利支払いや元本の返済が遅れたり、支払いが不能となるリスク
ウ 債券を売却するときに、その債券の市場価格が金利変動の影響により値上がりしたり、値下がりするリスク
エ 市場取引において需給がマッチしないために売買が成立しなかったり、資金繰りに失敗するリスク
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
「流動性リスク」に関する知識を問う問題です。
流動性リスク
「流動性リスク」には「市場流動性リスク」や「資金調達リスク」があります。
市場流動性リスク
「市場流動性リスク」とは、市場における取引ができなくなったり、通常より著しく不利な価格でしか売ることができなくなるリスクのことをいいます。
そのような事態が発生するのは、そもそも市場での取引量が少ない商品(流動性が低い商品)の場合や、大暴落、システム停止、災害、戦争などにより取引自体ができなくなるケースが考えられます。
資金調達リスク
「資金調達リスク」とは、通常より著しく不利な価格でしか資金を調達できなくなるリスクのことをいいます。
例えば、上述した「市場流動性リスク」により資金を回収できなかったり、通常より著しく高い金利でしか借入ができなかったりというケースが考えられます。
(ア) 不適切です。
「為替変動リスク」とは、為替相場の変動により外貨取引で為替差損益が発生するリスクのことをいいます。
輸入や輸出など海外企業と取引を行う企業は、デリバティブ取引(為替予約、オプション取引)を活用して、為替相場の変動による損失を回避します。
したがって、外国為替レートが変動することにより差損を被るリスクとは「為替変動リスク」のことを表しているため、選択肢の内容は不適切です。
(イ) 不適切です。
「信用リスク」とは、取引相手先の信用状況の変化(債務超過、倒産など)により、債権回収ができなくなるリスクのことをいいます。
海外企業が取引先だった場合、戦争や革命などが起きて債権が回収できなくなる「カントリーリスク」も含まれます。
したがって、借入金や債券の金利支払いや元本の返済が遅れたり、支払いが不能となるリスクとは「信用リスク」のことを表しているため、選択肢の内容は不適切です。
(ウ) 不適切です。
「金利変動リスク」とは、金利の変動により債券などの資産価値が変動するリスクのことをいいます。
債券は金利変動による影響を受けやすく、市場の金利が高くなれば債券の価値は下がり、市場の金利が低くなれば債券の価値が上がります。
したがって、債券を売却するときにその債券の市場価格が金利変動の影響により値上がりしたり値下がりするリスクとは「金利変動リスク」のことを表しているため、選択肢の内容は不適切です。
(エ) 適切です。
「流動性リスク」には「市場流動性リスク」や「資金調達リスク」があります。
市場流動性リスク
「市場流動性リスク」とは、市場における取引ができなくなったり、通常より著しく不利な価格でしか売ることができなくなるリスクのことをいいます。
そのような事態が発生するのは、そもそも市場での取引量が少ない商品(流動性が低い商品)の場合や、大暴落、システム停止、災害、戦争などにより取引自体ができなくなるケースが考えられます。
資金調達リスク
「資金調達リスク」とは、通常より著しく不利な価格でしか資金を調達できなくなるリスクのことをいいます。
例えば、上述した「市場流動性リスク」により資金を回収できなかったり、通常より著しく高い金利でしか借入ができなかったりというケースが考えられます。
したがって、市場取引において需給がマッチしないために売買が成立しなかったり資金繰りに失敗するリスクとは「流動性リスク」のことを表しているため、選択肢の内容は適切です。
答えは(エ)です。
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