今回は、これまでに説明してきた「総合原価計算」の試験問題を解いてみます。
目次
財務・会計 ~平成29年度一次試験問題一覧~
平成29年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
総合原価計算
総合原価計算の説明を確認したい方は、以下のページを参照してください。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成29年度 第8問】
単純総合原価計算を採用しているA工場の以下の資料に基づき、平均法により計算された月末仕掛品原価として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。なお、材料は工程の始点ですべて投入されている。
[資 料]
⑴ 当月の生産量
月初仕掛品 200 個(加工進捗度50 %) 当月投入 800個 合計 1,000 個 月末仕掛品 400 個(加工進捗度50 %) 当月完成品 600 個
⑵ 当月の原価
月初仕掛品直接材料費 200 千円 月初仕掛品加工費 100 千円 当月投入直接材料費 1,000 千円 当月投入加工費 700 千円
[解答群]
ア 500 千円
イ 680 千円
ウ 700 千円
エ 800千円
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
問題文の理解
問題の中に記載されている文章から、以下2つの前提条件を読み取ってください。
- 平均法により月末仕掛品原価を計算する
月初仕掛品と当月投入した原価の合計額を、「完成品」と「月末仕掛品」に数量比率で按分して「月末仕掛品原価」を算出する。 - 材料は工程の始点ですべて投入する
工程の始点で材料を投入するため、「月初仕掛品」と「月末仕掛品」は加工進捗度に関わらず材料が投入されている。
原価ボックスの作成(問題中の値を投入)
続いて、問題中の[資料]に記載されている情報に基づき、原価ボックスを作成します。
- 平均法により原価計算を行うため、以下の原価ボックスフォーマットを利用します。
- 材料は工程の始点で材料を投入するため、「月初仕掛品」と「月末仕掛品」は加工進捗度に関わらず[資料]に記載されている数量が入ります。
加工費の当月投入数量の計算
上述の原価ボックスの中で、「加工費」の「当月投入」に「800個」と記載されていないのはなぜでしょうか。
各原価ボックスの「左辺(月初仕掛品と当月投入)の合計値」と「右辺(完成品と月末仕掛品)の合計値」は必ず一致します。
加工費の原価ボックスの「当月投入」の数量に、問題文の「800個」を入れると「左辺:900個」となり「右辺:800個」と一致しなくなります。
加工費の「当月投入数量」は「左辺の合計値」と「右辺の合計値」が一致するように、月初仕掛品数量、完成品数量、月末仕掛品数量から計算します。
今回の問題では「当月投入数量」は「700個」となります。
今回は加工費の「当月投入数量」の計算方法として説明しましたが、直接材料費の当月投入の数量も同じように月初仕掛品数量、完成品数量、月末仕掛品数量から計算するように癖をつけてください。
今回の問題では、「材料は工程の始点で材料を投入する」という条件のため、[資料]の値を入れただけで「左辺=右辺」となりますが、「材料は加工進捗度50%の段階で投入する」とか「材料は最終工程で投入する」などの条件となった場合は、今回の加工費と同じように考えていく必要があります。
完成品原価と月末仕掛品原価の計算
あとは、左辺(月初仕掛品と当月投入)の原価合計額を、「完成品」と「月末仕掛品」に数量比率で按分すれば、完成品原価と月末仕掛品原価の原価を算出することができます。
この場合も、必ず「左辺=右辺」を意識して検算してみることを忘れないでください。
それぞれの原価は以下の通りです。
- 完成品原価:直接材料費(720千円)+加工費(600千円)=1,320千円
- 月末仕掛品原価:直接材料費(480千円)+加工費(200千円)=680千円
次回は、「標準原価計算」について説明していきます。
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