今回は、「運営管理 ~R4-32 輸配送管理(14)輸送手段の特徴~」について説明します。
目次
運営管理 ~令和4年度一次試験問題一覧~
令和4年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
ユニットロード・パレチゼーション・複合一貫輸送・モーダルシフト・パレット・箱/容器 -リンク-
本ブログにて「ユニットロード」「パレチゼーション」「複合一貫輸送」「モーダルシフト」「パレット」「箱/容器」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- ユニットロード・パレチゼーション・複合一貫輸送・モーダルシフト・パレット・箱/容器のまとめ
- R4-33 輸配送管理(15)ユニットロード
- R3-33 輸配送管理(11)輸送手段
- R3-36 輸配送管理(13)ユニットロード
- R2-36 輸配送管理(9)輸送手段
- R2-37 輸配送管理(10)ユニットロード
- R1-34 輸配送管理(7)輸送手段の特徴
- H30-33 輸配送管理(2)ユニットロード
- H29-35 輸配送管理(3)輸送手段
- H29-36 輸配送管理(4)ユニットロード
- H28-35 輸配送管理(6)ユニットロード
トラック運送・船舶輸送・貨客混載 -リンク-
本ブログにて「トラック運送」「船舶輸送」「貨客混載」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- トラック運送・船舶輸送・貨客混載のまとめ
- R5-34 輸配送管理(17)中継輸送
- R4-35 輸配送管理(16)トラックの積載率
- R3-33 輸配送管理(11)輸送手段
- R3-34 輸配送管理(12)共同輸送
- R2-36 輸配送管理(9)輸送手段
- R2-38 物流センター管理(15)物流センター運営
- R1-34 輸配送管理(7)輸送手段の特徴
- R1-35 輸配送管理(8)輸送形態
- R1-37 物流センター管理(12)物流センター運営
- H30-32 輸配送管理(1)配送経路(セービング法)
モーダルシフト
「モーダルシフト」とは、トラックによる貨物輸送を「鉄道輸送」や「海上輸送」といった環境負荷の低い大量輸送機関に転換することをいい、「二酸化炭素の排出量を削減すること」を目的とした環境保護の取り組みの1つです。
貨物輸送において環境負荷を低減する取り組みには「モーダルシフト」「輸配送の共同化」「輸送網の集約」などがありますが、その中でも「モーダルシフト」は、特に環境負荷を低減する効果が大きい取り組みです。
トラック輸送による二酸化炭素排出量と比較すると、鉄道輸送では「11分の1」に、船舶輸送では「6分の1」に抑制できるため、二酸化炭素排出量の大幅な削減を期待されています。
「モーダルシフト」を推進するためには、一括輸送するために必要な貨物量を確保することや、輸送途中における荷物の積み替えを効率化することが課題とされていますが、複数荷主による混載便により必要な貨物量を確保したり、カーフェリーを利用してトラックそのものを海上輸送することで荷物の積み替えをなくすなどの方法も数多く利用されています。
トラック運送
標準貨物自動車運送約款
トラック運送業においては、運送の対価である「運賃」の範囲が不明瞭であり、以下に示すような具体的な問題が顕在化していたため、荷主とトラック事業者の間で適正な運賃を収受できる環境を整備することを目的として、平成29年11月に「標準貨物自動車運送約款」の改正が行われました。
「標準貨物自動車運送約款」とは、国土交通省が制定する荷主とトラック事業者の契約書のひな形のことをいいます。
トラック運送業において問題となる具体的行為類型
- 運送委託者が、運送受託者の運転手等に依頼し、契約で定められていない業務(発荷主・着荷主の倉庫内荷役、ピッキング、仕分け、清掃、検査・検収、ラベル貼り等)について、無償で実施させること(契約外の無償による附帯業務)
- 運送委託者が、運送受託者に、当該運送受託者に委託した取引とは関係のない貨物の積み下ろし作業をさせること
「標準貨物自動車運送約款」では、運送状に運送の対価である「運賃」と運送以外の役務等の対価である「料金」を区別して記載することを義務付けています。
「料金」には、積込み・取卸しの対価として「積込料・取卸料」、荷主都合による荷待ち時間の対価として「待機時間料」、附帯業務の対価として「附帯業務料」を設定します。
附帯業務には「横持ち」「縦持ち」「棚入れ」「ラベル貼り」「はい作業(倉庫等において箱等を一定の方法で 規則正しく積み上げたり崩したりする作業)」があります。
船舶輸送
船舶輸送には、貨物を積載した車両ごと船内に積み込んで運搬できる「RORO(roll-on roll-off)船」による輸送と、クレーンやリフトでコンテナを吊り上げて貨物の積み下ろしを行う「LOLO船(lift-on lift-off)」による輸送があります。
RORO(roll-on roll-off)船
「RORO(roll-on roll-off)船」とは、船と陸地を橋渡しして車両を自走させるランプウェイを有しており、トラックやトレーラーから貨物を積み下ろすことなく、貨物を積載した車両ごと船内に積み込んで運搬する貨物船のことをいいます。
旅客を輸送しない「カーフェリー」といった方がイメージが湧きやすいと思います。
「RORO(roll-on roll-off)船」は、トラックやトレーラーから貨物を積み下ろすことなく、貨物を積載した車両ごと船内に積み込んで運搬する貨物船であるため、「LOLO船(lift-on lift-off)」よりも、素早く貨物を積み下ろしすることができますが、車両ごと船内に積み込むため貨物の積載効率は劣っています。
LOLO(lift-on lift-off)船
「LOLO(lift-on lift-off)船」とは、船上や陸地に設置しているクレーンやリフトで「コンテナ」を吊り上げて、貨物の積み下ろしを行う貨物船のことをいいます。
「コンテナ船」といった方がイメージが湧きやすいと思います。
「LOLO船(lift-on lift-off)」は、船上や陸地に設置しているクレーンやリフトで「コンテナ」を吊り上げて、貨物の積み下ろしを行う貨物船であるため、「RORO(roll-on roll-off)船」よりも、貨物の積み下ろしに時間がかかりますが、貨物の積載効率は優れています。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和4年度 第32問】
物品の輸送手段の特徴に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 鉄道輸送において使用されるコンテナは、1種類に限定されている。
イ トラックに積載した貨物をRORO船で輸送する際には、トラックがそのまま船内へ入れないため、貨物を取り卸して船内に積み込む作業が発生する。
ウ トラック輸送から鉄道輸送へのモーダルシフトを推進することにより、貨物の積み替えが不要になる。
エ トラック輸送の契約に関する「標準貨物自動車運送約款」では、運送の対価である運賃と運送以外の役務等の対価である料金を区別している。
オ 路線便は、トラック1台を単独の荷主が貸し切りにして、発地から着地まで直行する輸送方法である。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
「物品の輸送手段」に関する知識を問う問題です。
(ア) 不適切です。
選択肢には「鉄道輸送において使用されるコンテナは、1種類に限定されている」と記述されていますが、鉄道輸送において使用されるコンテナラックには「12フィート」「20フィート」「31フィート」などのサイズがあり、また機能面から見ても「有蓋コンテナ」「無蓋コンテナ」「冷凍コンテナ」「冷蔵コンテナ」「通風コンテナ」「タンクコンテナ」「ホッパコンテナ」といった様々な種類があるため、選択肢の内容は不適切です。
(イ) 不適切です。
「RORO(roll-on roll-off)船」とは、船と陸地を橋渡しして車両を自走させるランプウェイを有しており、トラックやトレーラーから貨物を積み下ろすことなく、貨物を積載した車両ごと船内に積み込んで運搬する貨物船のことをいいます。
旅客を輸送しない「カーフェリー」といった方がイメージが湧きやすいと思います。
したがって、選択肢には「トラックに積載した貨物をRORO船で輸送する際には、トラックがそのまま船内へ入れないため、貨物を取り卸して船内に積み込む作業が発生する」と記述されていますが、トラックに積載した貨物をRORO船で輸送する際には、貨物を取り卸ろすことなく、貨物を積載したトラックがそのまま船内へ入れるため、選択肢の内容は不適切です。
(ウ) 不適切です。
「モーダルシフト」とは、トラックによる貨物輸送を「鉄道輸送」や「海上輸送」といった環境負荷の低い大量輸送機関に転換することをいい、「二酸化炭素の排出量を削減すること」を目的とした環境保護の取り組みの1つです。
「モーダルシフト」を推進するためには、一括輸送するために必要な貨物量を確保することや、輸送途中における荷物の積み替えを効率化することが課題とされていますが、複数荷主による混載便により必要な貨物量を確保したり、カーフェリーを利用してトラックそのものを海上輸送することで荷物の積み替えをなくすなどの方法も数多く利用されています。
したがって、選択肢には「トラック輸送から鉄道輸送へのモーダルシフトを推進することにより、貨物の積み替えが不要になる」と記述されていますが、モーダルシフトを推進してもすべての経路を鉄道輸送にすることはできず、経路の途中でトラックから鉄道への積み替えと鉄道からトラックへの積み替えが発生するため、選択肢の内容は不適切です。
(エ) 適切です。
「標準貨物自動車運送約款」とは、国土交通省が制定する荷主とトラック事業者の契約書のひな形のことをいいます。
「標準貨物自動車運送約款」では、運送状に運送の対価である「運賃」と運送以外の役務等の対価である「料金」を区別して記載することを義務付けています。
したがって、トラック輸送の契約に関する「標準貨物自動車運送約款」では、運送の対価である運賃と運送以外の役務等の対価である料金を区別しているため、選択肢の内容は適切です。
(オ) 不適切です。
「路線便」とは、トラック単位で調達して荷物を目的地に直接輸送する「貸切便」や「チャーター便」とは異なり、トラックに複数社の荷物を混載して、路線会社の配送ルートと拠点を経由して輸送することをいいます。
したがって、選択肢には「路線便は、トラック1台を単独の荷主が貸し切りにして、発地から着地まで直行する輸送方法である」と記述されていますが、路線便はトラックに複数社の荷物を混載して、路線会社の配送ルートと拠点を経由する輸送方法であり、トラック1台を単独の荷主が貸し切りにして、発地から着地まで直行する輸送方法は貸切便であるため、選択肢の内容は不適切です。
答えは(エ)です。
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