今回は、「運営管理 ~R4-24 まちづくり三法(9)都市計画法~」について説明します。
目次
運営管理 ~令和4年度一次試験問題一覧~
令和4年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
大規模小売店舗立地法・中心市街地活性化法・都市計画法 -リンク-
本ブログにて「大規模小売店舗立地法」「中心市街地活性化法」「都市計画法」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- まちづくり三法(大規模小売店舗立地法・中心市街地活性化法・都市計画法)のまとめ
- R4-23 まちづくり三法(8)中心市街地活性化法
- R2-23 まちづくり三法(7)大規模小売店舗立地法
- R1-23 まちづくり三法(6)都市計画法
- H30-21 まちづくり三法(1)まちづくり三法
- H29-23 まちづくり三法(2)都市計画法
- H29-26 まちづくり三法(3)大規模小売店舗立地法
- H28-23 まちづくり三法(4)中心市街地活性化法
- H27-23 まちづくり三法(5)都市計画法
まちづくり三法
「まちづくり三法」は、市街地の郊外への拡散を抑制し、街の機能を中心市街地に集中させるコンパクトシティの考え方に基づいており、「大規模小売店舗立地法(大店立地法)」「中心市街地活性化法」「都市計画法」の3つの法律で構成されています。
まちづくり三法の背景と関係性
中小小売業の事業機会を確保することを目的として「大規模小売店舗法(大店法)」が、1973年に制定、1974年に施行されましたが、1990年代に入ってから「大規模小売店舗法(大店法)」が「トイザらス」の日本出店に対する障壁となったことをきっかけとして国際社会から批判を受けたため、1998年に「大規模小売店舗法(大店法)」が廃止され、その代わりに「大規模小売店舗立地法(大店立地法)」が1998年に制定、2000年に施行されました。
しかし、「大規模小売店舗立地法(大店立地法)」が施行されると、郊外への大規模小売店舗の出店が増加して中心市街地の衰退や空洞化が目立つようになったため、「中心市街地活性化法」と「都市計画法」を改正して、郊外に大規模小売店舗を出店できないようにしました。
大規模小売店舗立地法(大店立地法)
「大規模小売店舗立地法(大店立地法)」では、周辺地域の生活環境を保護するという観点から、建物内の店舗面積の合計が1,000㎡を超える大規模小売店舗を対象として、配慮すべき交通渋滞、騒音、廃棄物等に関する事項を定め、施設の配置や運営方法について規制しています。
中小小売業の事業機会を確保するという目的で大規模店舗の新設を禁止した「大規模小売店舗法(大店法)」に対する国際社会からの批判に対処する形で、1998年に同法を廃止しましたが、その代わりに同年に制定され、2000年に施行されたのが「大規模小売店舗立地法(大店立地法)」です。
中心市街地活性化法
1990年代に、日本全国の地方都市で郊外化が進み、中心市街地の衰退や空洞化が目立つようになってきたため、これらを抑止するために「中心市街地の整備改善」と「商業等の活性化」を目的として、1998年に「中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律」という名称で制定されました。
その後、2006年に「街なか居住」や「都市福利施設の整備」等の支援措置を追加することにより、中心市街地における「都市機能の増進」や「経済活力の向上」を図る総合的な支援法に改め、法律名を「中心市街地の活性化に関する法律」に変更されました。
都市計画法
「都市計画法」は、都市の健全な発展と秩序ある整備を図ることを目的として、1968年に制定され1969年に施行されました。
都市計画法では、都市計画の内容とその決定手続、都市計画による規制、都市計画による都市整備事業の実施などに関する事項を定めています。
直近では、2006年に改正が行われ、郊外に大規模集客施設を建設するための条件が厳しくなりました。
都市計画法
「都市計画法」は、都市の健全な発展と秩序ある整備を図ることを目的として、都市計画の内容とその決定手続、都市計画による規制、都市計画による都市整備事業の実施などに関する事項を定めています。
都市計画区域
「都市計画区域」とは、一体的に整備・開発・保全する必要がある市町村の中心部を含む区域のことをいい、都道府県が指定を行います。
さらに、「都市計画区域」を「市街化区域」と「市街化調整区域」に区分していくことを「区域区分」といい、都道府県が指定を行います。このように区域区分された区域のことを「線引き都市計画区域」といいます。
なお、「都市計画区域」の中には、「市街化区域」や「市街化調整区域」のいずれにも区分されない区域も多数存在します。このように区域区分されない区域のことを「非線引き都市計画区域(区域区分が定められていない都市計画区域)」といいます。
都市計画区域の区分
区域 | 説明 | |
線引き都市計画区域 | 市街化区域 | 以下の条件に該当する区域
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市街化調整区域 | 市街化を抑制すべき区域 市街化調整区域内における開発・建築行為を抑制する規制が適用されます。
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非線引き都市計画区域 | 「都市計画区域」のうち「市街化区域」や「市街化調整区域」に区分されない区域 |
準都市計画区域
「準都市計画区域」とは、都市計画区域外において都道府県が指定を行う区域であり、相当数の住居その他の建築物の建築又はその敷地の造成が現に行われ、又は行われると見込まれる一定の区域で、そのまま放置すれば、将来における都市としての整備、開発及び保全に支障が生じるおそれがあると認められる区域のことをいいます。
用途地域
近隣の地域に似通った種類の建物が立地していると、それぞれの用途にあった環境が守られ、効率的な活動を行うことができますが、「住居」「商業施設」「工場」といった種類の異なる建物が乱立している場合は、互いの生活環境や利便性が悪くなります。
「都市計画法」では、地域を「住宅地」「商業地」「工業地」といった用途に応じて「12種類」の「用途地域」に区分しており、それぞれの地域に建設することが建物の種類(用途や容積)が規制されています。
住宅地
用途地域 | 説明 |
第一種低層住居専用地域 |
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第二種低層住居専用地域 |
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第一種中高層住居専用地域 |
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第二種中高層住居専用地域 |
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第一種住居地域 |
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第二種住居地域 |
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準住居地域 |
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田園住居地域 |
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商業地
用途地域 | 説明 |
近隣商業地域 |
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商業地域 |
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工業地
用途地域 | 説明 |
準工業地域 |
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工業地域 |
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工業専用地域 |
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都市計画法の改正ポイント(2006年)
大規模集客施設の立地規制の強化
改正前は、3,000㎡以上の大規模商業施設を、市街化区域の中では「6つ」の用途地域に建設することができましたが、改正によって、延べ床面積10,000㎡を超える大規模集客施設を建設できる用途地域が「商業地域」「近隣商業地域」「準工業地域」の「3つ」に限定されました。
また、都市計画区域と準都市計画区域内の白地地域においては、延べ床面積10,000㎡を超える大規模集客施設を建設することが原則不可能となっています。
公共公益施設の開発許可制度
改正によって、社会福祉施設、医療施設、学校といった施設の開発行為、および国や都道府県が行う開発行為についても、開発許可が必要となりました。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和4年度 第24問】
都市計画法および建築基準法で定められている用途地域と建築物に関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、各記述における面積はその用途に供する部分の床面積の合計を意味する。
ア 近隣商業地域には、100m²(1階建て)の料理店を出店することができる。
イ 工業地域には、15,000m²の店舗を出店することができる。
ウ 第一種住居地域には、500m²(2階建て)のカラオケボックスを出店することができる。
エ 田園住居地域には、300m²(1階建て)の農産物直売所を出店することができる。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
都市計画法および建築基準法で定められている用途地域と建築物に関する知識を問う問題です。
(ア) 不適切です。
「近隣商業地域」とは、近隣の住宅地の住民に対する日用品の供給を行うことを主たる内容とする商業その他の業務の利便を増進するため定める地域のことをいいます。
選択肢において「料理店」と記述されていますが、建築基準法においては、「飲食店」と「料理店」はは明確に異なるものとして定義されています。
「飲食店」とは、ファミリーレストラン、洋食店、うどんすし店など飲食を目的とした店舗のことをいい、「料理店」とは、客の接待をするなど遊興を目的とした店舗のことをいいます。
「料理店」という言葉の一般的な解釈とは大きく異なり、風俗営業の対象として「ナイトクラブ・キャバレー・個室付浴場など」と同じ分野に分類され「商業地域」と「準工業地域」にしか出店できません。
用途地域 | 説明 |
近隣商業地域 |
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したがって、選択肢には「近隣商業地域には、100m²(1階建て)の料理店を出店することができる」と記述されていますが、料理店は商業地域と準工業地域にしか出店することができないため、選択肢の内容は不適切です。
(イ) 不適切です。
「工業地域」とは、主として工業の利便を増進するため定める地域のことをいいます。
用途地域 | 説明 |
工業地域 |
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したがって、選択肢には「工業地域には、15,000m²の店舗を出店することができる」と記述されていますが、工業地域に出店できる店舗は床面積が10,000m²以内に制限され、15,000m²の店舗を出店することはできないため、選択肢の内容は不適切です。
(ウ) 不適切です。
「第一種住居地域」とは、住居の環境を保護するため定める地域のことをいいます。
用途地域 | 説明 |
第一種住居地域 |
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したがって、選択肢には「第一種住居地域には、500m²(2階建て)のカラオケボックスを出店することができる」と記述されていますが、第一種住居地域には、床面積に関わらずカラオケボックスを出店することができないため、選択肢の内容は不適切です。
(エ) 適切です。
「田園住居地域」とは、農業の利便の増進を図りつつ、これと調和した低層住居に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域のことをいい、平成30年4月に都市計画法上の新たな規制の仕組みとして創設されました。
用途地域 | 説明 |
田園住居地域 |
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したがって、田園住居地域には、300m²(1階建て)の農産物直売所を出店することができるため、選択肢の内容は適切です。
答えは(エ)です。
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