今回は、「経済学・経済政策」の「供給曲線」に関する記事のまとめです。
目次
供給曲線 -リンク-
本ブログにて「供給曲線」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
供給曲線
「供給曲線」とは、財市場において決定される財の価格と生産者が供給する財の数量(生産量)の関係を表す曲線のことをいい、生産者が財を生産するときの「限界費用曲線」を表しています。
「供給曲線」は、単純な右上がりの直線として表されることが多いですが、単純な右上がりの直線として描かれる「供給曲線」を厳密に言うと、「完全競争市場」において生産者が利潤を最大化させるように財を生産するときの「限界費用曲線」を表しています。
したがって、「供給曲線」が単純な右上がりの直線として表されるのは「完全競争市場」を前提としているためであり、この前提が異なる場合は「供給曲線」が単純な右上がりの直線になるとは限りません。
供給曲線(S)
供給曲線の横軸と縦軸
「供給曲線」は、「需要曲線」とセットで表されることが多いため、横軸に「数量」を縦軸に「価格」を設定したグラフとして描かれますが、「供給曲線」だけの観点から見ると、横軸は「生産量」を、縦軸は「価格」「限界収入」「限界費用」を表しています。
供給曲線(S)
供給曲線で表される限界費用と可変費用
「供給曲線」は、生産者が財を生産するときの「限界費用曲線」を表しているため、グラフの縦軸は「限界費用」を表しています。
「限界費用」とは、生産量を1単位増加したときの総費用の増加分であるため、生産量の増加に伴い増加する費用である「可変費用」の増加分を表しており、生産量を1単位増加しても増減しない「固定費用」は含まれていません。
したがって、「供給曲線」より下方の範囲の面積は「限界費用」の合計である「可変費用」を表しています。
供給曲線(S)で表される限界費用と可変費用
供給曲線(S)の作成方法
単純な右上がりの直線として表される「供給曲線(S)」が、「完全競争市場」において生産者が利潤を最大化させるように財を生産するときの「限界費用曲線」であることを確認するため「完全競争市場」において「供給曲線(S)」を作成する方法を説明していきます。
財の価格による生産量の決定(完全競争市場)
最初に、財市場において財の価格が決定したとき、生産者が供給する財の数量(生産量)を決定する流れについて説明します。
- 需要曲線(d)
- 「完全競争市場」において、財市場全体の「需要曲線(D)」は右下がりの曲線であり、プライステイカーである各企業が直面する「需要曲線(d)」は水平である。
- 限界収入曲線(MR)
- 「限界収入(MR)」とは、生産量を1単位増加したときの総収入の増加分である。
- 「完全競争市場」において、各企業が直面する「需要曲線(d)」が水平であるということは、財を供給する企業は生産量に関わらず「価格(P0)」で財を販売できるため、生産量を1単位増加すると収入が「価格(P0)」だけ増加する。
- 「限界収入(MR)=価格(P0)」であるため「完全競争市場」において各企業が直面する「限界収入曲線(MR)」は「需要曲線(d)」と同じく水平(MR=d)となる。
- 限界費用曲線(MC)
- 「限界費用(MC)」とは、生産量を1単位増加したときの総費用の増加分である。
- 「総費用曲線」が「逆S字型」である場合「限界費用曲線(MC)」は「U字型」である。
- 利潤を最大化させる生産量
- 財を供給する企業は「限界利潤(MR-MC)」が「ゼロ(MR=MC)」となるまで生産すれば利潤を最大化させることができるため、生産量を「限界収入曲線(MR)」と「限界費用曲線(MC)」の交点(E)の「生産量(q0)」に決定する。
- 財の生産量の決定
- 完全競争市場においては「限界収入曲線(MR)= 価格(P0)」であるため、「限界収入曲線(MR)」を「価格(P0)」に置き換えると、財市場において「財の価格(P0)」が決定したとき「生産量(q0)」に決定する。
完全競争市場の各企業における財の生産量の決定
各企業の供給曲線(s)の決定(完全競争市場)
続いて、「完全競争企業」において財を供給する企業が「供給曲線(s)」を決定する方法について説明します。
- 可変費用/平均可変費用/固定費用
- 「可変費用(VC)」は生産量の増加に伴い増加する費用である。
- 「平均可変費用(AVC)」は「可変費用(VC)」を生産量で除して求められる。
- 「固定費用(FC)」は生産量に関わらず一定額で発生する費用である。
- 操業停止点
- 「限界費用曲線(MC)」と「平均可変費用曲線(AVC)」の交点は「操業停止点」を表している。「操業停止点」では、財を供給する企業の「利潤」は「マイナス」となっており「可変費用(VC)」はすべて回収できているが「固定費用(FC)」は全く回収できていない状態である。
- 財を供給する企業が当該の財市場から撤退する条件
- 財の価格が値下がりして利潤を最大化する生産量が「操業停止点」よりも少なくなると、財を供給する企業としては「可変費用(VC)」すら回収できない状態となるため、当該の財市場から撤退する。
- 供給曲線(s)の決定
- したがって、財を供給する企業の「供給曲線(s)」は、「操業停止点」よりも財の価格が低い場合は各企業は財市場から撤退する(生産しない)ため縦軸上に、「操業停止点」よりも財の価格が高い場合は「操業停止点」を始点として財の価格の上昇に伴って生産量が増加する「限界費用曲線」として描かれます。
財を供給する企業の供給曲線(s)
財市場全体の供給曲線(S)(完全競争市場)
最後に、財市場全体の「供給曲線(S)」について説明します。
財市場全体の「供給曲線(S)」は、財を供給する企業の「供給曲線(s)」を、財を供給する企業の数だけ重ね合わせたものとなります。
ちなみに、財を供給する企業の「供給曲線(s)」を重ね合わせたとしても、縦軸の「価格」は変わらないため、横軸の「数量(生産量)」を合計したものということになります。
財市場全体の「供給曲線(S)」における「数量(生産量)」と、財を供給する企業の「供給曲線(s)」における「数量(生産量)」は、その規模が大きく異なり、仮に当該の財市場に参入している1つの企業が「数量(生産量)」を大量に増減させたりもしくは撤退したとしても、財市場全体の「数量(生産量)」には影響を与えない程度であると考えます。
供給曲線のシフト
「供給曲線」は、生産者が財を生産するときの限界費用(生産量を1単位増加すると追加で発生する費用)の曲線を表しているため、生産者が財を生産するときの「限界費用」が増減すると「供給曲線」は「上方(左方)」または「下方(右方)」にシフトします。
供給曲線の右方シフト(下方シフト)
「供給曲線」は、生産者が財を生産するときの「限界費用」が減少すると「右方(下方)」にシフトします。
厳密には、同じ生産量を生産するときに発生する「限界費用」が減少するため「供給曲線」は「下方」にシフトしますが、見た目には「右方」にシフトしているように見えるため、一般的に「供給曲線が右方にシフトする」と言われます。
供給曲線の右方シフト(下方シフト)
「供給曲線」を「右方(下方)」にシフトさせるための要因には、以下のようなものが考えられます。
- 技術の進歩
- 原材料費の低下
供給曲線の左方シフト(上方シフト)
「供給曲線」は、生産者が財を生産するときの「限界費用」が増加すると「左方(上方)」にシフトします。
厳密には、同じ生産量を生産するときに発生する「限界費用」が増加するため「供給曲線」は「上方」にシフトしますが、見た目には「左方」にシフトしているように見えるため、一般的に「供給曲線が左方にシフトする」と言われます。
供給曲線の左方シフト(上方シフト)
「供給曲線」を「左方(上方)」にシフトさせるための要因には、以下のようなものが考えられます。
- 原材料費の上昇
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