経済学・経済政策 ~R4-12 供給曲線(1)~

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今回は、「経済学・経済政策 ~R4-12 供給曲線~」について説明します。

 

目次

経済学・経済政策 ~令和4年度一次試験問題一覧~

令和4年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

供給曲線 -リンク-

本ブログにて「供給曲線」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

 

供給曲線

「供給曲線」とは、財市場において決定される財の価格と生産者が供給する財の数量(生産量)の関係を表す曲線のことをいい、生産者が財を生産するときの「限界費用曲線」を表しています。

「供給曲線」は、単純な右上がりの直線として表されることが多いですが、単純な右上がりの直線として描かれる「供給曲線」を厳密に言うと、「完全競争市場」において生産者が利潤を最大化させるように財を生産するときの「限界費用曲線」を表しています。

したがって、「供給曲線」が単純な右上がりの直線として表されるのは「完全競争市場」を前提としているためであり、この前提が異なる場合は「供給曲線」が単純な右上がりの直線になるとは限りません。

 

本ページでは「完全競争市場」を前提として説明しています。

 

供給曲線(S)

 

供給曲線の横軸と縦軸

「供給曲線」は、「需要曲線」とセットで表されることが多いため、横軸に「数量」を縦軸に「価格」を設定したグラフとして描かれますが、「供給曲線」だけの観点から見ると、横軸は「生産量」を、縦軸は「価格」「限界収入」「限界費用」を表しています。

 

供給曲線(S)

 

供給曲線で表される限界費用と可変費用

「供給曲線」は、生産者が財を生産するときの「限界費用曲線」を表しているため、グラフの縦軸は「限界費用」を表しています。

「限界費用」とは、生産量を1単位増加したときの総費用の増加分であるため、生産量の増加に伴い増加する費用である「可変費用」の増加分を表しており、生産量を1単位増加しても増減しない「固定費用」は含まれていません。

したがって、「供給曲線」より下方の範囲の面積は「限界費用」の合計である「可変費用」を表しています

 

供給曲線(S)で表される限界費用と可変費用

 

「余剰分析」では、「供給曲線」より下方の範囲の面積は、生産者が財を生産するときの「総費用」として説明していますので、ご注意ください。

経済学・経済政策では、長期においては概念から固定費用がなくなるなどの理由から「限界費用」の合計が「総費用」としているのではないかと。。。。推測です。

それか、私の「余剰分析」における説明が違っているのか。。。

 

供給曲線(S)の作成方法

単純な右上がりの直線として表される「供給曲線(S)」が、「完全競争市場」において生産者が利潤を最大化させるように財を生産するときの「限界費用曲線」であることを確認するため「完全競争市場」において「供給曲線(S)」を作成する方法を説明していきます。

 

「供給曲線」は、問題において当たり前のように与えられますが、正確に理解するには経済学の様々な知識を結集する必要があります。

 

財の価格による生産量の決定(完全競争市場)

最初に、財市場において財の価格が決定したとき、生産者が供給する財の数量(生産量)を決定する流れについて説明します。

 

財市場において財の価格が決定したとき、生産者が供給する財の数量(生産量)を決定する流れの説明は長くなるため、結論のみを列挙しています。結論だけでなく詳細を確認したい方は、以下のページを参考としてください。

 

  1. 需要曲線(d)
    • 「完全競争市場」において、財市場全体の「需要曲線(D)」は右下がりの曲線であり、プライステイカーである各企業が直面する「需要曲線(d)」は水平である。
  2. 限界収入曲線(MR)
    • 「限界収入(MR)」とは、生産量を1単位増加したときの総収入の増加分である。
    • 「完全競争市場」において、各企業が直面する「需要曲線(d)」が水平であるということは、財を供給する企業は生産量に関わらず「価格(P0)」で財を販売できるため、生産量を1単位増加すると収入が「価格(P0)」だけ増加する。
    • 「限界収入(MR)=価格(P0)」であるため「完全競争市場」において各企業が直面する「限界収入曲線(MR)」は「需要曲線(d)」と同じく水平(MR=d)となる。
  3. 限界費用曲線(MC)
    • 「限界費用(MC)」とは、生産量を1単位増加したときの総費用の増加分である。
    • 「総費用曲線」が「逆S字型」である場合「限界費用曲線(MC)」は「U字型」である。
  4. 利潤を最大化させる生産量
    • 財を供給する企業は「限界利潤(MR-MC)」が「ゼロ(MR=MC)」となるまで生産すれば利潤を最大化させることができるため、生産量を「限界収入曲線(MR)」と「限界費用曲線(MC)」の交点(E)の「生産量(q0)」に決定する。
  5. 財の生産量の決定
    • 完全競争市場においては「限界収入曲線(MR)= 価格(P0)」であるため、「限界収入曲線(MR)」を「価格(P0)」に置き換えると、財市場において「財の価格(P0)」が決定したとき「生産量(q0)」に決定する。

 

完全競争市場の各企業における財の生産量の決定

 

各企業の供給曲線(s)の決定(完全競争市場)

続いて、「完全競争企業」において財を供給する企業が「供給曲線(s)」を決定する方法について説明します。

 

企業の供給曲線を決定する過程の説明は長くなるため、結論のみを列挙しています。結論だけでなく詳細を確認したい方は、以下のページを参考としてください。

 

  1. 可変費用/平均可変費用/固定費用
    • 「可変費用(VC)」は生産量の増加に伴い増加する費用である。
    • 「平均可変費用(AVC)」は「可変費用(VC)」を生産量で除して求められる。
    • 「固定費用(FC)」は生産量に関わらず一定額で発生する費用である。
  2. 操業停止点
    • 「限界費用曲線(MC)」と「平均可変費用曲線(AVC)」の交点は「操業停止点」を表している。「操業停止点」では、財を供給する企業の「利潤」は「マイナス」となっており「可変費用(VC)」はすべて回収できているが「固定費用(FC)」は全く回収できていない状態である。
  3. 財を供給する企業が当該の財市場から撤退する条件
    • 財の価格が値下がりして利潤を最大化する生産量が「操業停止点」よりも少なくなると、財を供給する企業としては「可変費用(VC)」すら回収できない状態となるため、当該の財市場から撤退する。
  4. 供給曲線(s)の決定
    • したがって、財を供給する企業の「供給曲線(s)」は、「操業停止点」よりも財の価格が低い場合は各企業は財市場から撤退する(生産しない)ため縦軸上に、「操業停止点」よりも財の価格が高い場合は「操業停止点」を始点として財の価格の上昇に伴って生産量が増加する「限界費用曲線」として描かれます。

 

財を供給する企業の供給曲線(s)

 

財市場全体の供給曲線(S)(完全競争市場)

最後に、財市場全体の「供給曲線(S)」について説明します。

財市場全体の「供給曲線(S)」は、財を供給する企業の「供給曲線(s)」を、財を供給する企業の数だけ重ね合わせたものとなります。

ちなみに、財を供給する企業の「供給曲線(s)」を重ね合わせたとしても、縦軸の「価格」は変わらないため、横軸の「数量(生産量)」を合計したものということになります。

財市場全体の「供給曲線(S)」における「数量(生産量)」と、財を供給する企業の「供給曲線(s)」における「数量(生産量)」は、その規模が大きく異なり、仮に当該の財市場に参入している1つの企業が「数量(生産量)」を大量に増減させたりもしくは撤退したとしても、財市場全体の「数量(生産量)」には影響を与えない程度であると考えます。

 

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【令和4年度 第12問】

下図には、供給曲線が描かれている。この図に関する記述の正誤の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

 

 

a 生産量が拡大するにつれて、限界費用は増加する。
b 価格がP0のとき、生産者が必要最低限回収しなければならない費用の合計は三角形OE0Q0で示される。
c 価格がP1のときの生産者余剰は、台形P1E1E0P0で示される。

 

[解答群]

ア a:正 b:正 c:正
イ a:正 b:正 c:誤
ウ a:正 b:誤 c:誤
エ a:誤 b:正 c:誤
オ a:誤 b:誤 c:正

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答

「供給曲線」に関する知識を問う問題です。

 

「供給曲線」とは、財市場において決定される財の価格と生産者が供給する財の数量(生産量)の関係を表す曲線のことをいい、生産者が財を生産するときの「限界費用曲線」を表しています。

 

(a) 適切です。

「供給曲線」は、生産者が財を生産するときの「限界費用曲線」を表しているため、グラフの縦軸は「限界費用」を表しています。

問題で与えられた「供給曲線」は右上がりの直線となっているため、「生産量」が増加すると「限界費用」も増加していきます。

 

したがって、生産量が拡大するにつれて、限界費用は増加するため、選択肢の内容は適切です

 

(b) 適切です。

「供給曲線」は、生産者が財を生産するときの「限界費用曲線」を表しているため、グラフの縦軸は「限界費用」を表しています。

「限界費用」とは、生産量を1単位増加したときの総費用の増加分であるため、生産量の増加に伴い増加する費用である「可変費用」の増加分を表しており、生産量を1単位増加しても増減しない「固定費用」は含まれていません。

したがって、「供給曲線」より下方の範囲の面積は「限界費用」の合計である「可変費用」を表しています

 

生産者が必要最低限回収しなければならない費用は、供給曲線より下方の範囲の面積として表されているため、「三角形OE0Q0」となります。

 

したがって、価格がP0のとき、生産者が必要最低限回収しなければならない費用の合計は三角形OE0Q0で示されるため、選択肢の内容は適切です

 

選択肢に記述されている「必要最低限回収しなければならない費用」という表現について考えてみます。

「供給曲線」は、生産者が財を生産するときの「限界費用曲線」を表しているため、供給曲線より下方の範囲の面積である「三角形OE0Q0」は、生産量の増加に伴い増加する費用である「可変費用」の増加分を表しており、生産量を1単位増加しても増減しない「固定費用」は含まれていません

生産者が、財市場で決定された価格で財を供給するか撤退するかを判断する際には「操業停止点」を基準としますが、「操業停止点」では、財を供給する企業の「利潤」は「マイナス」となっており「可変費用(VC)」はすべて回収できているが「固定費用(FC)」は全く回収できていない状態です。

つまり、生産者としては、固定費用が回収できなくても、可変費用が回収できるのであれば、財を生産して供給すると判断するため、生産者にとって「必要最低限回収しなければならない費用」とは可変費用のことを意味しています。

 

(c) 不適切です。

「生産者余剰」は、財市場で取引することにより生産者が得られる「利益」のことをいいます。

生産者の収入は「価格(P1)× 生産量(Q1)= 四角形OP1E1Q1」であり、生産者が必要最低限回収しなければならない費用は供給曲線より下方の範囲の面積(三角形OE1Q1)であるため、「生産者余剰」は「収入(四角形OP1E1Q1)- 費用(三角形OE1Q1)= 利益(三角形OP1E1)」となります。

 

したがって、価格がP1のときの生産者余剰は、台形P1E1E0P0ではなく三角形OP1E1で示されるため、選択肢の内容は不適切です

 

「余剰分析」では、「供給曲線」より下方の範囲の面積は、生産者が財を生産するときの「総費用」として説明していますので、ご注意ください。

経済学・経済政策では、長期においては概念から固定費用がなくなるなどの理由から「限界費用」の合計が「総費用」としているのではないかと。。。。推測です。

それか、私の「余剰分析」における説明が違っているのか。。。

 

「a:正 b:正 c:誤」であるため、答えは(イ)です。


 

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