財務・会計 ~R4-17 株式指標(7)サスティナブル成長率~

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今回は、「財務・会計 ~R4-17 株式指標(7)サスティナブル成長率~」について説明します。

 

目次

株式指標 -リンク-

一次試験に向けて「株式指標」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

 

ROE(自己資本当期純利益率/Return On Equity)

「ROE(自己資本当期純利益率)」とは、「純資産(株主資本、自己資本)」に対する「当期純利益(税引後当期純利益)」の比率を示す指標であり「自己資本利益率」「株主資本利益率」とも呼ばれます。

「ROE(自己資本当期純利益率)」は、企業の収益力を示す財務指標の一つであり、自己資本によってどれだけ効率的に利益を生み出すことができているかを表す重要な指標であり、数値が高いほど収益性が高いことを示しています。

 

 

企業は、「株主資本(自己資本)」と「負債(他人資本)」で構成される「資本」を投下して事業を行い、その結果として「営業利益」を獲得します。さらに、「営業利益」から「他人資本」の債務者に対して「利息」を支払った後の残額を「経常利益」といい、「経常利益」から法人税等を納付した後の残額を「税引後当期純利益」といいます。

したがって、債務者への支払額や法人税等の納付額を控除した「税引後当期純利益」が「株主資本(自己資本)」を元手にして獲得した純粋な利益であり、株主に対する配当金の源泉となるため、「税引後当期純利益」を「株主資本(自己資本)」で除して求めた「ROE(自己資本利益率)」は、配当金を受け取る株主にとって非常に重要な指標です。

 

「ROE(自己資本当期純利益率)」は、この後説明する「PER(株価収益率)」と「PBR(株価純資産倍率)」を用いて、以下の公式でも算出することができます。

 

 

ROEの分解による理解

上述の通り、「ROE(自己資本当期純利益率)」は「純資産(株主資本、自己資本)」に対する「当期純利益(税引後当期純利益)」の比率として表されますが、「収益性」と「効率性」と「安全性」の指標に分解すると、「ROE(自己資本当期純利益率)」を高めるためには「収益性を高める」「効率性を上げる」「負債の割合を増やす」という3つの方法があることが分かります。

 

 

財務レバレッジ

上図で出てきた「財務レバレッジ」とは安全性を示す財務指標であり、自己資本比率の逆数(総資本÷自己資本)で求められます。総資本に占める自己資本が小さくなるほど高くなるため、銀行からの借入金などの負債を増やすほど、財務レバレッジの数値が高くなります

一般的に資本構成における負債の割合が高くなると倒産リスクが高まり経営上好ましくないと考えがちですが、借入金等により調達した資本で利益を上げることができれば、企業としては良い経営状態にあるということになります。

ここで注意が必要なのは、ROEを高くするためには、ただ単に借入金を増やせばよいのではなく、借入金により調達した資本で売上や当期純利益を高める必要があるということです。

 

「財務レバレッジ」の「レバレッジ」とは、日本語では「てこの原理」のことを示しており、少ない資金で大きな利益を手に入れるという意味で使われます。

つまり、少ない資金(自己資本)でも借入金(他人資本)を活用することで、事業の効率性を高める(大きな利益を手に入れる)ことができるということを示しています。

 

配当性向

配当性向は、当期純利益(税引後利益)に対する配当金の比率を示す指標であり、当期純利益1円当たりいくらの配当金が支払われているかを示しています。
投資家にとって、配当性向は企業がどの程度の利益を還元しているかを確認する重要な指標です。

 

 

発行済み株式全体で考えた場合、配当性向は以下の式で表されることもあります。

 

 

内部留保率

「内部留保率」とは当期純利益(税引後利益)に対する内部留保の比率を示す指標です。

 

 

「内部留保」は、当期純利益(税引後利益)から株主に配当金が支払われた後の残額であるため、当期純利益(税引後利益)に対する配当金の比率を示す指標である「配当性向」と以下の関係が成立します。

 

 

サスティナブル成長率

「サスティナブル成長率」とは、金融機関からの借り入れや新株の発行といった外部資金調達を行わずに、内部留保のみを事業に再投資し続けた場合に期待される持続的な成長率を示す指標です。

 

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【令和4年度 第17問】

以下の資料に基づき計算したサステナブル成長率(内部留保のみを事業に投資した場合の純資産の成長率)として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

 

【資料】

売上高 5,000万円
当期純利益 200万円
総資産 4,000万円
純資産 1,000万円
配当 80万円

 

[解答群]

ア  2%
イ  3%
ウ  8%
エ 12%

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答

「サステナブル成長率」に関する知識を問う問題です。

 

おそらく受験者の多くは「サステナブル成長率」という指標について初見だったのではないかと思いますが、まずは「サステナブル成長率」の定義と公式により回答を求めていきます。

解説の後半で公式を使わない「サステナブル成長率」の求め方について説明します。

 

「サスティナブル成長率」とは、金融機関からの借り入れや新株の発行といった外部資金調達を行わずに、内部留保のみを事業に再投資し続けた場合に期待される持続的な成長率を示す指標です。

 

「サステナブル成長率」の公式は以下の通りです。

 

問題で与えられた数値により「サステナブル成長率」を算出します。

  • サステナブル成長率 = ROE × 内部留保率
    =( 当期純利益 ÷ 純資産 )×{( 当期純利益 - 配当 )÷ 当期純利益 }
    =( 200万円 ÷ 1,000万円 )×{(200万円-80万円)÷ 200万円 }
    = 20% × 60% = 12%

 

参考程度ですが、もう一つの公式で「サステナブル成長率」を算出します。

  • サステナブル成長率 = ROE ×( 1 - 配当性向 )
    =( 当期純利益 ÷ 純資産 )×( 1 - 配当金 ÷ 当期純利益 )
    =( 200万円 ÷ 1,000万円 )×( 1 - 80万円 ÷ 200万円 )
    = 20% ×( 1 - 40% )= 12%

 

公式を使わない解答の求め方

「サステナブル成長率」という指標を知らなくても、問題文にカッコ書きされている「内部留保のみを事業に投資した場合の純資産の成長率」という補足説明と、資料で与えられた財務数値をよく見れば、解答を求めることができます。

 

  1. 内部留保は、当期純利益(税引後利益)から株主に配当金が支払われた後の残額であるため、当期純利益(200万円)から配当(80万円)を控除した金額(120万円)です。
  2. 株主総会による決議を経て、内部留保が利益剰余金(純資産)に振り替えられると、純資産は「1,000万円」から「1,120万円」に増加します。
  3. 純資産が「1,000万円」から「1,120万円」に増加するということは、純資産の成長率は「12%」ということになります。

 

この内部留保を事業に再投資すれば、次年度の売上高が「12%」成長し、当期純利益が「12%」成長し、配当が「12%」成長し、内部留保が「12%」成長し、純資産が「12%」成長して、事業への再投資が行われるという循環が持続的に継続するということが「サスティナブル成長率」の表す意味だと考えられます。

 

私としても「サステナブル成長率」という指標が初見ではありましたが、公式を変更すると「内部留保(当期純利益-配当金)」を「純資産」で除すことにより「サステナブル成長率」を求めることができることから、上記の考え方で正しいのではないかと考えています。

 

 

答えは(エ)です。


 

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