今回は、「財務・会計 ~R4-3 特殊な販売形態(6)~」について説明します。
目次
特殊な販売形態 -リンク-
一次試験に向けて「特殊な販売形態」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- H22-2-2 特殊な販売形態(1)委託販売
- H22-2-3 特殊な販売形態(2)試用販売/予約販売
- H22-2-4 特殊な販売形態(3)割賦販売
- H22-2-5 特殊な販売形態(4)未着品販売/荷為替手形
- H22-2-6 特殊な販売形態(5)委託販売と荷為替の取り組み/生産基準
実現主義の原則
収益は「実現主義の原則」に基づき、認識されます。
収益の認識については「企業会計原則」の「損益計算書原則」において以下の通り定義されています。
売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る。ただし、長期の未完成請負工事等については、合理的に収益を見積り、これを当期の損益計算に計上することができる
実現主義とは、①商品や製品が買い手に引き渡されることまたはサービスの提供が行われたことと、②商品、製品およびサービス提供の対価を受け取る(受取手形や売掛金などの計上を含む)という2つの要件を満たしたときに収益を認識することをいい、この判断基準を「販売基準」といいます。
なお、文章後半の「長期の未完成請負工事等については、合理的に収益を見積り、これを当期の損益計算に計上することができる」という記述は、工事契約に係る「工事進行基準」のことを示しています。
特殊な販売形態
しかし、実際の商品販売には「特殊な販売形態」があり、「販売基準」だけでは適切に業績を評価することができない場合があるため、企業会計原則において「販売基準」以外の収益認識基準も認められています。
「企業会計原則」では、「委託販売」「試用販売」「予約販売」「割賦販売」といった「特殊な販売形態」に関する収益の認識に関する基準が規定されています。
委託販売
「委託販売」とは、商品や製品の販売に関する代理店契約などにより、手数料を支払って自社の商品や製品の販売を代理店に委託する販売形態のことをいいます。
委託販売における収益の認識
「委託販売」における収益の認識基準には、以下の2種類があります。
- 販売基準(原則)
受託者が委託品を販売した日をもって売上収益の実現の日とする。 - 仕切精算書到達日基準(例外)
仕切精算書が販売のつど送付されている場合は、当該仕切精算書が到着した日をもって売上収益の実現の日とみなす。
「企業会計原則」では、以下の通り定義されています。
委託販売については、受託者が委託品を販売した日をもって売上収益の実現の日とする。従って、決算手続中に仕切精算書(売上計算書)が到達すること等により決算日までに販売された事実が明らかとなったものについては、これを当期の売上収益に計上しなければならない。ただし、仕切精算書が販売のつど送付されている場合には、当該仕切精算書が到達した日をもって売上収益の実現の日とみなすことができる。
委託販売の特徴
委託販売では、商品を提供する会社のことを委託者、商品の提供を受け販売する会社のことを受託者といいます。また、委託者が委託先(受託者)に商品を発送することを積送といい、委託する商品のことを積送品といいます。
委託販売の特徴は、商品はあくまで委託者の資産であり、受託者は委託者の商品を顧客へ販売することを受託しているということであり、受託者としては商品が売れ残った場合は委託元(委託者)に返送すればよいため、在庫リスクを負うことはありません。
また、受託者は販売価格の何%といった契約条件に基づき、委託者から手数料を受け取ります。
委託者による仕訳(販売基準)
委託販売においては、原則として「販売基準」により収益を認識します。
「販売基準」では、受託者が委託品を販売した日をもって売上収益の実現の日とします。
「販売基準」により収益を認識する場合の仕訳の流れを以下に示します。
なお、委託販売では様々な仕訳方法が認められているため、その都度補足していきます。
委託品を発送したとき
委託者から委託先(受託者)に商品を発送(積送)する際、「仕入」勘定から「積送品」勘定に振り替える仕訳を行います。
- 委託者が商品(10,000円)を委託先(受託者)に積送する。
- なお、積送に際して、発送料金(1,000円)が発生したため、現金で支払った。
借方 | 貸方 | ||
積送品 | 11,000 | 仕入 現金 |
10,000 1,000 |
積送に際して発生した費用については、「積送諸掛(販売費および一般管理費)」勘定に計上する方法もあります。
借方 | 貸方 | ||
積送品 積送諸掛 |
10,000 1,000 |
仕入 現金 |
10,000 1,000 |
仕切精算書(売上計算書)を受け取ったとき
委託先(受託者)から仕切精算書(売上計算書)を受領した場合、書類に記載されている商品を販売した日付の取引として、以下の仕訳を行います。
- 受託者は商品(15,000円)を顧客に販売した。
- 受託者が商品を販売する際に、引取費、発送費、保管料、手数料などの費用(2,000円)が発生した。
借方 | 貸方 | ||
積送売掛金(未収金) 積送諸掛 |
13,000 2,000 |
積送品売上(売上) | 15,000 |
受託者において発生した諸費用を除いた価額を売上に計上する方法(純学法)もあります。
借方 | 貸方 | ||
積送売掛金(未収金) | 13,000 | 積送品売上(売上) | 13,000 |
また、受託者によって販売された商品の原価を「積送品」勘定から「仕入」勘定に振り替えます。(商品を積送した際に「仕入」から「積送品」に振り替えた価額の振り戻し)
なお、受託者によって商品が販売されずに返品された場合も同様の仕訳を行います。
借方 | 貸方 | ||
仕入 | 11,000 | 積送品 | 11,000 |
受託者によって販売されたタイミングで「積送品」勘定から「仕入」勘定に振り替えるのではなく、決算時期に一括して振り替える方法もあります。
委託先(受託者)から現金を受け取ったとき
委託先(受託者)から現金を受け取ったとき、以下の仕訳を行います。
- 受託者が商品の販売価格から、引取費、発送費、保管料、手数料などの費用を差し引いた金額(13,000円)を受け取った。
借方 | 貸方 | ||
現金 | 13,000 | 積送売掛金(未収金) | 13,000 |
委託者による仕訳(仕切精算書到達日基準)
委託販売においては、例外として「仕切精算書到達日基準」により収益を認識することも認められています。
「仕切精算書到達日基準」では、委託先(受託者)が商品を販売するたびに仕切精算書を送付してくる場合のみに適用することができ、この仕切精算書が到着した日をもって売上収益の実現の日とみなすことができます。
「販売基準」と「仕切精算書到達日基準」で仕訳が異なるのは「仕切精算書(売上計算書)を受け取ったとき」です。ただし、仕訳内容が異なるのではなく、収益を計上するタイミングが異なるだけです。
「販売基準」と「仕切精算書到達日基準」の違い
収益の認識基準 | 説明 |
販売基準 |
|
仕切精算書到達日基準 |
|
受託者による仕訳
委託販売における受託者の仕訳について説明していきます。
受託者は、自社の商品ではなく、あくまで委託者の資産である商品の販売業務を受託しているという位置づけにあるため、商品を販売した場合、販売価格の何%といった契約条件に基づき委託者から受け取る「販売手数料」だけを収益として計上することとなります。
委託者が負担すべき費用を立て替えた場合や、商品を販売して顧客から代金を受け取った場合は「受託販売」勘定を用いて仕訳を行い、委託者に対する債権・債務として管理していきます。
委託品を受け取ったとき
商品を受け取ったとしても、あくまで委託者の商品を預かっているだけなので、「仕入」勘定などには計上しません。
また、委託品の受け取りに際して引取費用などを支払った場合は、委託者が負担すべき費用を立て替えたと考え、委託者に対する「債権」として「受託販売」勘定に計上します。
- 受託者は、委託者から商品(10,000円)を受け取った。
- なお、商品の受け取りに際して、引取費用として「200円」を現金で支払った。
借方 | 貸方 | ||
受託販売(引取費用) | 200 | 現金 | 200 |
商品を販売したとき
商品を販売したとしても、あくまで委託者から預かっている商品を販売しただけなので、収益は計上しません。
顧客から商品の代金を受け取っても、委託者に支払うまでの間一時的に預かっているという位置づけとなるため、委託者に対する「債務」として「受託販売」勘定に計上します。
また、商品の販売に際して顧客への発送費用などが発生した場合は、委託者が負担すべき費用を立て替えたと考え、委託者に対する「債権」として「受託販売」勘定に計上します。
- 受託者は商品1個を「15,000円」で販売した。
- なお、商品の販売に際して、顧客への発送費用として「500円」を現金で支払った。
借方 | 貸方 | ||
現金 受託販売(発送費用) |
15,000 500 |
受託販売(販売価格) 現金 |
15,000 500 |
仕切精算書(売上計算書)を送付したとき
委託者に仕切精算書(売上計算書)を送付した場合、既に計上した費用(引取費用や発送費用)以外にも委託者が負担すべき費用が発生している場合には「債権」として「受託販売」勘定に計上します。
また、契約条件に基づき委託者から受け取る「販売手数料」を収益として「受託販売手数料」勘定に計上します。
- 委託者に仕切精算書(売上計算書)を送付した。
- 引取費用や発送費用以外に、商品を倉庫に保管するための費用として「300円」を現金で支払った。
- 委託者との契約により、販売手数料は商品1個につき「1,000円」と定められている。
借方 | 貸方 | ||
受託販売(保管料) 受託販売(販売手数料) |
300 1,000 |
現金 受託販売手数料(売上) |
300 1,000 |
委託元(委託者)に現金を支払ったとき
商品の販売価格から、引取費、発送費、保管料、手数料などの費用を差し引いた「受託販売」勘定の債務を、委託者に現金で支払ったとき、以下の仕訳を行います。
- 商品の販売価格から、引取費、発送費、保管料、手数料などの費用を差し引いた金額(13,000円)を支払った。
借方 | 貸方 | ||
受託販売(すべて) | 13,000 | 現金 | 13,000 |
試用販売
「試用販売」とは、取引先に商品を発送して一定期間、試用品として使用してもらい、取引先が買取りの意思を表示したときに収益を認識する販売形態のことをいいます。
試用販売における収益の認識
「試用販売」における収益の認識は以下の通りです。
- 販売基準(原則)
得意先が買取りの意思を表示した日をもって売上収益の実現の日とする。
「企業会計原則」では、以下の通り定義されています。
試用販売については、得意先が買取りの意思を表示することによって売上が実現するのであるから、それまでは、当期の売上高に計上してはならない。
試用販売における仕訳処理
試用販売においては、得意先による試用品の買取りの意思表示をもって売上収益の実現の日(販売基準)とします。
「試用販売」により収益を認識する場合の仕訳の流れを以下に示します。
商品を発送したとき
取引先に試用として商品を発送する際、備忘録として「試用販売」と「試用販売売掛金」という対照勘定を使って仕訳を行います。なお、仕訳をする際には「販売価格」で計上します。
- 取引先から商品の試用について申し込みを受けたため、商品を発送した。
- 発送した商品の販売価格は「10,000円」である。
借方 | 貸方 | ||
試用販売売掛金 | 10,000 | 試用販売 | 10,000 |
「試用販売」と「試用販売売掛金」ではなく、「試用仮売上」と「試用販売契約」という対照勘定で仕訳する方法もあります。
借方 | 貸方 | ||
試用販売契約 | 10,000 | 試用仮売上 | 10,000 |
取引先から商品買取の意思表示を受けたとき
取引先から、試用している商品を買い取りたいとの意思表示を受けた場合、「試用売上」勘定で売上を計上します。
また、商品を発送する際に行った「試用販売」と「試用販売売掛金」の仕訳を取り消すための逆仕訳を行います。
- 取引先から、試用品の買取意思の表示を受けた。
借方 | 貸方 | ||
売掛金 試用販売 |
10,000 10,000 |
試用売上(売上) 試用販売売掛金 |
10,000 10,000 |
取引先から商品代金を受け取ったとき
取引先から現金を受け取ったとき、以下の仕訳を行います。
- 取引先から、商品代金として「10,000円」を現金で受け取った。
借方 | 貸方 | ||
現金 | 10,000 | 売掛金 | 10,000 |
手許商品区分法による商品の仕訳
試用販売における「収益の認識」に関する仕訳処理は上述の通りですが、手許にある商品と試用のため顧客に引き渡している商品(手元にない商品)を区別して管理する「手許商品区分法」により商品を管理することもあります。
「特殊な販売形態(1)」で説明した「委託販売」の「積送品」勘定による処理も、同じく「手許商品区分法」の考え方に基づく商品の管理方法です。
商品を発送したとき
取引先に試用として商品を発送する際、「仕入」勘定から「試用品」勘定に振り替える仕訳を行います。なお、仕訳をする際には「販売価格」ではなく「仕入価格」で計上します。
借方 | 貸方 | ||
試用品 | 8,000 | 仕入 | 8,000 |
取引先から商品買取の意思表示を受けたとき
取引先から試用している商品を買い取りたいとの意思表示を受けた場合、「売上収益」の計上と合わせて、買取りの意思表示を受けた商品の原価を「試用品」勘定から「仕入」勘定に振り替えます。(商品を発送した際に「仕入」から「試用品」に振り替えた価額の振り戻し)
なお、取引先から試用品が返品された場合も同様の仕訳を行います。
借方 | 貸方 | ||
仕入 | 8,000 | 試用品 | 8,000 |
取引先から試用している商品を買い取りたいとの意思表示を受けたタイミングで「試用品」勘定から「仕入」勘定に振り替えるのではなく、決算時期に一括して振り替える方法もあります。
予約販売
「予約販売」とは、予約金として前もって商品や役務の代金を受け取り、後から商品を発送したり役務を提供する販売形態のことをいいます。
予約販売における収益の認識
「予約販売」における収益の認識は以下の通りです。
- 販売基準(原則)
予約金受取額のうち、商品の引渡し又は役務の給付が完了した日をもって売上収益の実現の日とする。
「企業会計原則」では、以下の通り定義されています。
予約販売については、予約金受取額のうち、決算日までに商品の引渡し又は役務の給付が完了した分だけを当期の売上高に計上し、残額は貸借対照表の負債の部に記載して次期以後に繰延べなければならない。
予約販売における仕訳処理
予約販売においては、予約金として前もって商品や役務の代金を受け取った顧客に対して、商品を引き渡した日または役務の提供が完了した日をもって売上収益の実現の日(販売基準)とします。
「予約販売」により収益を認識する場合の仕訳の流れを以下に示します。
予約金を受け取ったとき
顧客から予約金として前もって商品や役務の代金を現金で受け取った場合は、予約金を受け取った顧客に対する「債務」として「前受金」勘定に計上します。
- 顧客から、商品の予約金として「10,000」円を受け取った。
借方 | 貸方 | ||
現金 | 10,000 | 前受金 | 10,000 |
商品の引渡しまたは役務の提供が完了したとき
商品を引き渡した時点または役務の提供が完了した時点で、収益が実現したと認識されるため「前受金」を取り崩して「売上」を計上します。
- 商品の発送準備ができたため、予約金を受け取った顧客に商品を発送した。
借方 | 貸方 | ||
前受金 | 10,000 | 売上 | 10,000 |
「前受金」と「前受収益」の違いについて
予約販売では「前受金」勘定を用いて仕訳を説明していますが、「前受金」と「前受収益」の違いについて補足しておきます。
「前受収益」とは、一定の契約に従い、継続的に役務を提供する場合に使用する「経過勘定科目」です。一方で、「前受金」とは、予約販売における商品の引き渡しや単発で役務を提供する場合に使用します。
例えば、1年契約でビルの清掃業務を契約する際に、契約締結の時点で料金を一括で受け取った場合は、「継続的に役務を提供する場合」に該当するため、ビル清掃業者は「前受収益」として計上して、役務の提供(ビルの清掃)の実態に合わせて、徐々に「前受収益」を取り崩して「売上」を計上していきます。
一方で、エアコンの清掃業務(1回)を契約して、契約締結の時点で料金を一括で受け取った場合は、「前受金」として計上して、役務の提供(エアコンの清掃業務)が完了した時点で「前受金」を全額取り崩して「売上」を計上します。
割賦販売
「割賦販売」とは、商品または製品を引き渡した後、月賦・年賦(ローン)などの方法によって代金を分割して回収する販売形態のことをいいます。
割賦販売における収益の認識
「割賦販売」における収益の認識基準には、以下の3種類があります。
- 販売基準(原則)
商品等を引渡した日をもって売上収益の実現の日とする。 - 回収基準
割賦金の入金の日をもって売上収益の実現の日とする。 - 回収期限到来基準
割賦金の回収期限の到来の日をもって売上収益の実現の日とする。
「企業会計原則」では、以下の通り定義されています。
割賦販売については、商品等を引渡した日をもって売上収益の実現の日とする。
しかし、割賦販売は通常の販売と異なり、その代金回収の期間が長期にわたり、かつ、分割払であることから代金回収上の危険が高いので、貸倒引当金及び代金回収費、アフター・サービス費等の引当金の計上について特別の配慮を要するが、その算定に当たっては、不確実性と煩雑さとを伴う場合が多い。従って、収益の認識を慎重に行うため、販売基準に代えて、割賦金の回収期限の到来の日又は入金の日をもって売上収益実現の日とすることも認められる。
割賦販売の特徴
割賦販売は、取引先に商品を引き渡した後、その代金を長期にわたって分割払いで回収していくため、取引先から代金を回収できないなどのリスクが高い販売形態です。
そのため、商品を引き渡した時点で収益を認識する販売基準だけではなく、分割払いの支払期限が到来した時点や、取引先から入金があった時点で収益を認識することも認められています。
これは、企業会計原則の「保守主義の原則」に基づく考え方です。
例えば、X1年度に「販売基準」で収益を計上した後、X2年度以降に代金を回収できずに「貸倒損失」を計上したとします。
株主などの利害関係者は、X1年度の財務諸表を見て収益や利益が上がっているように見えるため、企業の業績が好調であると判断してしまいますが、実は代金回収リスクがあったことを知ることができないなど、企業の業績について誤った判断をしてしまう可能性があります。
このように、株主などの利害関係者が誤った判断をしないように「回収基準」や「回収期限到来基準」による会計処理が認められています。
保守主義の原則
企業会計原則に記載されている「企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。」との一文を「保守主義の原則」といいます。
「保守主義の原則」では、予測される将来の危険に備えて慎重な判断に基づく会計処理を行うことを要請しています。
割賦販売の仕訳(販売基準)
割賦販売においては、原則として「販売基準」により収益を認識します。
「販売基準」では、取引先に商品等を引き渡した日をもって売上収益の実現の日とします。
「販売基準」により収益を認識する場合の仕訳の流れを以下に示します。
商品を引き渡したとき
取引先に商品を発送したとき、「割賦売上」勘定と「割賦売掛金」勘定を使って仕訳を行います。
- 商品の割賦売買契約を締結したため、商品「12,000円」を発送した。
- 代金の支払は、毎月月末に「1,000円」ずつ「合計12回」の分割払いとなっている。
借方 | 貸方 | ||
割賦売掛金 | 12,000 | 割賦売上(売上) | 12,000 |
取引先から割賦金を受け取ったとき
取引先から割賦金を受け取ったとき「割賦売掛金」から受け取った金額を控除します。
- 取引先から、月末に「1,000円」を現金で受け取った。
借方 | 貸方 | ||
現金 | 1,000 | 割賦売掛金 | 1,000 |
割賦販売の仕訳(回収基準)
割賦販売においては、例外として「回収基準」により収益を認識することも認められています。
「回収基準」では、割賦金の入金の日をもって売上収益の実現の日とします。
「回収基準」により収益を認識する場合の仕訳の流れを以下に示します。
商品を引き渡したとき
取引先に商品を発送するとき、備忘録として「割賦販売」と「割賦販売売掛金」という対照勘定を使って仕訳を行います。なお、仕訳をする際には「販売価格」で計上します。
- 商品の割賦売買契約を締結したため、商品「12,000円」を発送した。
- 代金の支払は、毎月月末に「1,000円」ずつ「合計12回」の分割払いとなっている。
借方 | 貸方 | ||
割賦販売売掛金 | 12,000 | 割賦販売 | 12,000 |
取引先から割賦金を受け取ったとき
取引先から割賦金を受け取ったとき、「割賦売上」勘定で売上を計上します。
また、商品を発送する際に行った「割賦販売」と「割賦販売売掛金」の仕訳から、実際に受け取った代金を控除するための逆仕訳を行います。
- 取引先から、月末に「1,000円」を現金で受け取った。
借方 | 貸方 | ||
現金 割賦販売 |
1,000 1,000 |
割賦売上(売上) 割賦販売売掛金 |
1,000 1,000 |
割賦販売の仕訳(回収期限到来基準)
割賦販売においては、例外として「回収期限到来基準」により収益を認識することも認められています。
「回収期限到来基準」では、割賦金の回収期限の到来の日をもって売上収益の実現の日とします。
「回収期限到来基準」により収益を認識する場合の仕訳の流れを以下に示します。
商品を引き渡したとき
取引先に商品を発送するとき、備忘録として「割賦販売」と「割賦販売売掛金」という対照勘定を使って仕訳を行います。なお、仕訳をする際には「販売価格」で計上します。
- 商品の割賦売買契約を締結したため、商品「12,000円」を発送した。
- 代金の支払は、毎月月末に「1,000円」ずつ「合計12回」の分割払いとなっている。
借方 | 貸方 | ||
割賦販売売掛金 | 12,000 | 割賦販売 | 12,000 |
割賦金の支払期限が到来したとき
割賦売買契約に明記されている割賦金の支払期限が到来したとき、「割賦売上」勘定で売上を計上します。(取引先から入金されていない場合は、借方は「割賦売掛金」で計上)
また、商品を発送する際に行った「割賦販売」と「割賦販売売掛金」の仕訳から、支払期限が到来した代金を控除するための逆仕訳を行います。
- 割賦売買契約に明記されている割賦金「1,000円」の支払期限が到来した。
借方 | 貸方 | ||
割賦売掛金 割賦販売 |
1,000 1,000 |
割賦売上(売上) 割賦販売売掛金 |
1,000 1,000 |
取引先から割賦金を受け取ったとき
取引先から割賦金を受け取ったとき「割賦売掛金」から受け取った金額を控除します。
- 取引先から「1,000円」を現金で受け取った。
借方 | 貸方 | ||
現金 | 1,000 | 割賦売掛金 | 1,000 |
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和4年度 第3問】
収益認識のタイミングとして、最も適切なものはどれか。
ア 委託販売において、商品を代理店に発送した時点
イ 割賦販売において、商品を引き渡した時点
ウ 試用販売において、試用のために商品を発送した時点
エ 予約販売において、商品の販売前に予約を受けた時点
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
特殊な販売形態における収益認識のタイミングに関する知識を問う問題です。
原則として、収益は「実現主義の原則」に基づき、認識されます。
実現主義とは、①商品や製品が買い手に引き渡されることまたはサービスの提供が行われたことと、②商品、製品およびサービス提供の対価を受け取る(受取手形や売掛金などの計上を含む)という2つの要件を満たしたときに収益を認識することをいい、この判断基準を「販売基準」といいます。
しかし、実際の商品販売には「特殊な販売形態」があり、「販売基準」だけでは適切に業績を評価することができない場合があるため、企業会計原則において「販売基準」以外の収益認識基準も認められています。
「企業会計原則」では、「委託販売」「試用販売」「予約販売」「割賦販売」といった「特殊な販売形態」に関する収益の認識に関する基準が規定されています。
(ア) 不適切です。
「委託販売」とは、商品や製品の販売に関する代理店契約などにより、手数料を支払って自社の商品や製品の販売を代理店に委託する販売形態のことをいいます。
委託販売においては、原則として「販売基準」により収益を認識します。
「販売基準」では、受託者が委託品を販売した日をもって売上収益の実現の日とします。
選択肢において「委託販売において、商品を代理店に発送した時点」と記述されていますが、「委託販売」の収益認識は、商品を代理店に発送した時点ではなく、受託者が委託品を販売した時点であるため、選択肢の内容は不適切です。
(イ) 適切です。
「割賦販売」とは、商品または製品を引き渡した後、月賦・年賦(ローン)などの方法によって代金を分割して回収する販売形態のことをいいます。
割賦販売においては、原則として「販売基準」により収益を認識します。
「販売基準」では、取引先に商品等を引き渡した日をもって売上収益の実現の日とします。
選択肢において「割賦販売において、商品を引き渡した時点」と記述されているため、選択肢の内容は適切です。
(ウ) 不適切です。
「試用販売」とは、取引先に商品を発送して一定期間、試用品として使用してもらい、取引先が買取りの意思を表示したときに収益を認識する販売形態のことをいいます。
試用販売においては、得意先による試用品の買取りの意思表示をもって売上収益の実現の日とします。
選択肢において「試用販売において、試用のために商品を発送した時点」と記述されていますが、「試用販売」の収益認識は、試用のために商品を発送した時点ではなく、取引先が買取りの意思を表示した時点であるため、選択肢の内容は不適切です。
(エ) 不適切です。
「予約販売」とは、予約金として前もって商品や役務の代金を受け取り、後から商品を発送したり役務を提供する販売形態のことをいいます。
予約販売においては、予約金として前もって商品や役務の代金を受け取った顧客に対して、商品を引き渡した日または役務の提供が完了した日をもって売上収益の実現の日とします。
選択肢において「予約販売において、商品の販売前に予約を受けた時点」と記述されていますが、「予約販売」の収益認識は、商品の販売前に予約を受けた時点ではなく、商品を引き渡した時点または役務の提供が完了した時点であるため、選択肢の内容は不適切です。
答えは(イ)です。
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