運営管理 ~R3-28 その他店舗・販売管理(23)人時生産性~

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今回は、「運営管理 ~R3-28 その他店舗・販売管理(23)人時生産性~」について説明します。

 

目次

運営管理 ~令和3年度一次試験問題一覧~

令和3年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

日本の労働生産性

世界の中で、日本は生産性が低い国であると位置づけられています。
これから将来にわたって、労働人口が減少していく日本が、経済規模を維持拡大していくためには「生産性」を高めて国内企業の収益力を向上させることが重要な課題とされています。

政府は生産性向上に向けた各種の政策を展開していますが、OECDが発表した2016年のデータによるとあまり効果は出ていないように見受けられます。

 

日本の時間当たり労働生産性(1時間当たり付加価値)

2016年の日本の時間当たり労働生産性は「46.0ドル」です。これは、米国「69.6ドル」の3分の2程度であり、英国「52.7ドル」やカナダ「50.8ドル」を下回るものの、ニュージーランド「42.9ドル」を上回る水準で、OECD加盟国(35カ国)の中では「20位」に位置しており、2015年と比べても順位の変動はありませんでした。

なお、G7(主要先進7カ国)では、データが取得可能な1970年以降、最下位が続いています。

 

日本の1人当たり労働生産性

2016年の日本の1人当たり労働生産性(1人当たり付加価値)は「81,777」ドルです。これは、英国「88,427ドル」やカナダ「88,359ドル」を下回るものの、ニュージーランド「74,327ドル」を上回る水準で、OECD加盟国(35カ国)の中では「21位」に位置しています。

なお、G7(主要先進7カ国)では、「時間当たり労働生産性」と同様に、最下位が続いています。

 

製造業の労働生産性

日本の製造業の労働生産性水準(1人当たり付加価値)は「95,063ドル」です。これは、為替レートがこのところ円安傾向に振れている影響を受けていることもあります(※)が、OECD加盟主要国(29カ国)の中では「14位」に位置しており、1995年以降で過去最低の2008年/2014年に並ぶ結果となっています。

(※)製造業の労働生産性を円ベースでみると着実に上昇を続けています。

 

今回は、「労働生産性」ではありませんが、生産性を評価する指標である「人時生産性」「人時売上高」について説明していきます。

 

人時生産性

「人時生産性」とは、社員・パート・アルバイトを含めた従業員の1人1時間当たりにおける「粗利益」のことを示しており、以下の公式により算出されます。

「粗利益」は「売上高」から「売上原価」を控除した金額であり、「粗利益」を「総労働時間数」で除した「人時生産性」はその数値が高い方が優れています

 

 

粗利益の算出

「粗利益」は、損益計算において「売上高」から「売上原価」を控除した金額であり、「売上総利益」ともいいます。「損益計算書」のフォーマットを以下に示します。

 

 

人時売上高

「人時売上高」とは、社員・パート・アルバイトを含めた従業員の1人1時間当たりにおける「売上高」のことを示しており、以下の公式により算出されます。
「売上高」を「総労働時間数」で除した「人時売上高」はその数値が高い方が優れています

 

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【令和3年度 第28問】

下表は、店舗Xにおける1日の作業全体をまとめたものである。この表に基づく以下の【人時生産性の改善策】A~Dに関する記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。ただし、改善策による売上高・粗利益額の変動はないものとして答えよ。

 

作業 発注 商品陳列 レジ接客 清掃 その他
1人当たりの
作業時間
6時間 4時間 5時間 3時間 4時間
作業担当人数 2人 3人 4人 2人 4人

 

【人時生産性の改善策】

A 自動発注システムを導入し、発注の担当人数を1人減らす。
B 商品陳列に段ボール陳列やシェルフレディパッケージを導入して、1人当たりの作業時間を25%削減する。
C セルフレジを導入してレジ接客の担当人数を1人減らし、1人当たりの作業時間を20%削減する。
D 清掃ロボットを導入して清掃の1人当たりの作業時間を50%削減する。

 

[解答群]

ア AからDのすべての改善策を行うと、全体の人時生産性は2倍以上に高まる。
イ 改善策Aと改善策Bを同時に行う場合と、改善策Cと改善策Dを同時に行う場合とで人時生産性の改善効果は同じである。
ウ 改善策Bと改善策Dの人時生産性の改善効果は同じである。
エ 改善策Bと改善策Dを同時に行う場合の人時生産性の改善効果は、改善策Cを単独で行うよりも大きい。
オ 人時生産性の改善効果が最も高いのは、改善策Aである。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答

「人時生産性」に関する知識を問う問題です。

 

問題文に「人時生産性」という言葉が記述されてはいますが「人時生産性」を算出するために必要な「売上高」や「粗利益」は与えられていません。

改善策A~Dを行うことで「総労働時間数」がどの程度低減することができるかにより、その効果を確認していきます。

 

人時生産性

「人時生産性」とは、社員・パート・アルバイトを含めた従業員の1人1時間当たりにおける「粗利益」のことを示しており、以下の公式により算出されます。

「粗利益」は「売上高」から「売上原価」を控除した金額であり、「粗利益」を「総労働時間数」で除した「人時生産性」はその数値が高い方が優れています

 

 

総労働時間数(改善前)

問題で与えられた表に基づき、改善策を行う前の総労働時間数を以下に示します。

 

作業 発注 商品陳列 レジ接客 清掃 その他
1人当たりの
作業時間
6時間 4時間 5時間 3時間 4時間
作業担当人数 2人 3人 4人 2人 4人
総労働時間数 12時間 12時間 20時間 6時間 16時間
66時間

 

総労働時間数と削減される労働時間(改善後)

改善策A~Dを行った場合の総労働時間数と改善策を行うことにより削減される労働時間を以下に示します。

 

作業 発注 商品陳列 レジ接客 清掃 その他
改善策 A B C D
改善後 1人当たりの
作業時間
6時間 3時間 4時間 2時間 4時間
作業担当人数 1時間 3時間 3時間 2時間 4時間
総労働時間数 6時間 9時間 12時間 3時間 16時間
46時間
総労働時間数
(削減される労働時間)
6時間 3時間 8時間 3時間 0時間
20時間

 

(ア) 不適切です。

改善策A~Dを全て行う場合、総労働時間数は「66時間」から「20時間」削減され「46時間」に減少します。

 

作業 発注 商品陳列 レジ接客 清掃 その他
改善策 A B C D
改善後 1人当たりの
作業時間
6時間 3時間 4時間 2時間 4時間
作業担当人数 1時間 3時間 3時間 2時間 4時間
総労働時間数 6時間 9時間 12時間 3時間 16時間
46時間
総労働時間数
(削減される労働時間)
6時間 3時間 8時間 3時間 0時間
20時間

 

「人時生産性」は「粗利益÷総労働時間数」で求められますが、問題文で「粗利益の変動はない」という条件が与えられているため、改善策を行ったときに「人時生産性」が2倍以上となるためには分母である総労働時間が半分以下に減少する必要があります

改善策A~Dを全て行う場合、総労働時間数は「66時間」から「46時間」に減少しますが半分以下にはなっていないため「人時生産性」の改善効果は2倍に届きません

 

したがって、AからDのすべての改善策を行っても、全体の人時生産性は2倍以上には高まらないため、選択肢の内容は不適切です

 

(イ) 不適切です。

改善策Aと改善策Bを同時に行う場合と改善策Cと改善策Dを同時に行う場合に削減される労働時間を以下に示します。

 

  • 改善策Aと改善策Bを同時に行う場合
    6時間 + 3時間 = 9時間
  • 改善策Cと改善策Dを同時に行う場合
    8時間 + 3時間 = 11時間

 

作業 発注 商品陳列 レジ接客 清掃 その他
改善策 A B C D
改善後 1人当たりの
作業時間
6時間 3時間 4時間 2時間 4時間
作業担当人数 1時間 3時間 3時間 2時間 4時間
総労働時間数 6時間 9時間 12時間 3時間 16時間
46時間
総労働時間数
(削減される労働時間)
6時間 3時間 8時間 3時間 0時間
20時間

 

改善策Cと改善策Dを同時に行う場合(11時間削減)の方が、改善策Aと改善策Bを同時に行う場合(9時間削減)よりも、労働時間が削減されます。

「人時生産性」は「粗利益÷総労働時間数」で求められるため、分母が小さくなる方(削減される労働時間が大きい方)が「人時生産性」の改善効果は大きくなります

 

したがって、改善策Aと改善策Bを同時に行う場合と、改善策Cと改善策Dを同時に行う場合とで人時生産性の改善効果は同じではなく、改善策Cと改善策Dを同時に行う場合の方が人時生産性の改善効果は大きいため、選択肢の内容は不適切です

 

(ウ) 適切です。

改善策Bを行う場合と改善策Dを行う場合に削減される労働時間を以下に示します。

 

  • 改善策Bを行う場合:3時間
  • 改善策Dを行う場合:3時間

 

作業 発注 商品陳列 レジ接客 清掃 その他
改善策 A B C D
改善後 1人当たりの
作業時間
6時間 3時間 4時間 2時間 4時間
作業担当人数 1時間 3時間 3時間 2時間 4時間
総労働時間数 6時間 9時間 12時間 3時間 16時間
46時間
総労働時間数
(削減される労働時間)
6時間 3時間 8時間 3時間 0時間
20時間

 

改善策Bを行う場合(3時間)と改善策Dを行う場合(3時間)に削減される労働時間は同じです。

「人時生産性」は「粗利益÷総労働時間数」で求められるため、削減される労働時間が同じであれば改善策Bと改善策Dによる「人時生産性」の改善効果は同じです

 

したがって、改善策Bと改善策Dの人時生産性の改善効果は同じであるため、選択肢の内容は不適切です

 

(エ) 不適切です。

改善策Bと改善策Dを同時に行う場合と改善策Cを単独で行う場合に削減される労働時間を以下に示します。

 

  • 改善策Bと改善策Dを同時に行う場合
    3時間 + 3時間 = 6時間
  • 改善策Cを単独で行う場合
    8時間

 

作業 発注 商品陳列 レジ接客 清掃 その他
改善策 A B C D
改善後 1人当たりの
作業時間
6時間 3時間 4時間 2時間 4時間
作業担当人数 1時間 3時間 3時間 2時間 4時間
総労働時間数 6時間 9時間 12時間 3時間 16時間
46時間
総労働時間数
(削減される労働時間)
6時間 3時間 8時間 3時間 0時間
20時間

 

改善策Cを単独で行う場合(8時間削減)の方が、改善策Bと改善策Dを同時に行う場合(6時間削減)よりも、労働時間が削減されます。

「人時生産性」は「粗利益÷総労働時間数」で求められるため、分母が小さくなる方(削減される労働時間が大きい方)が「人時生産性」の改善効果は大きくなります

 

したがって、改善策Bと改善策Dを同時に行う場合の人時生産性の改善効果は、改善策Cを単独で行うよりも大きいのではなく小さいため、選択肢の内容は不適切です

 

(オ) 不適切です。

改善策A、改善策B、改善策C、改善策Dをそれぞれ単独で行う場合に削減される労働時間を以下に示します。

 

  • 改善策Aを単独で行う場合:6時間
  • 改善策Bを単独で行う場合:3時間
  • 改善策Cを単独で行う場合:8時間
  • 改善策Dを単独で行う場合:3時間

 

作業 発注 商品陳列 レジ接客 清掃 その他
改善策 A B C D
改善後 1人当たりの
作業時間
6時間 3時間 4時間 2時間 4時間
作業担当人数 1時間 3時間 3時間 2時間 4時間
総労働時間数 6時間 9時間 12時間 3時間 16時間
46時間
総労働時間数
(削減される労働時間)
6時間 3時間 8時間 3時間 0時間
20時間

 

改善策Cを単独で行う場合(8時間削減)が、最も労働時間が削減されます。

「人時生産性」は「粗利益÷総労働時間数」で求められるため、分母が小さくなる方(削減される労働時間が大きい方)が「人時生産性」の改善効果は大きくなります

 

したがって、人時生産性の改善効果が最も高いのは、改善策Aではなく改善策Cであるため、選択肢の内容は不適切です

 

答えは(ウ)です。


 

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