今回は、「経済学・経済政策 ~R3-11 主要経済理論(14)雇用と失業の用語~」について説明します。
目次
経済学・経済政策 ~令和3年度一次試験問題一覧~
令和3年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
雇用・失業 -リンク-
本ブログにて「雇用」「失業」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- 雇用・失業のまとめ
- R2-8-1 主要経済指標(2)労働力調査
- R2-8-2 主要経済理論(3)失業の分類(発生要因)
- R1-9 主要経済理論(6)自然失業率仮説
- H27-8 主要経済理論(8)自然失業率仮説
- H25-1 主要経済指標(9)労働力調査
- H24-3 主要経済理論(11)フィリップス曲線
労働力調査
「労働力調査」とは、日本における就業及び不就業の状態を把握し、雇用・失業状況の詳細を明らかにすることを目的として、総務省統計局が公表している統計情報のことをいいます。
「労働力調査」の統計情報は、「基本集計」と「詳細集計」に区分されています。
本ページに記載している内容は「総務省統計局ホームページ」に記載されている内容に基づき、加工して作成しています。「総務省統計局ホームページ」をご覧になりたい場合は、以下のリンクにアクセスしてください。
基本集計
「労働力調査(基本集計)」は、「労働力調査基礎調査票」の結果に基づき、労働力人口、就業者数・雇用者数(雇用形態別(正規・非正規雇用者など)、産業別、職業別など)、就業時間、完全失業者数(求職理由別など)、完全失業率、非労働力人口などを集計しています。
詳細集計
「労働力調査(詳細集計)」は、主として「労働力調査特定調査票」の結果に基づき、非正規の職員・従業員が現職についた理由、転職等希望の有無、仕事につけない理由、失業期間、就業希望の有無、未活用労働指標などを集計しています。
労働力調査(基本集計)
「労働力調査(基本集計)」では「国際労働機関(ILO)の基準」に則って「就業形態」を以下のように分類しています。
労働力調査(基本集計)の分類
調査対象期間である「月末1週間(12月は20~26日)」に少しでも仕事をしていれば「従業者」に分類され「従業者」ではなく「休業」の要件を満たす人は「休業者」に分類されます。
さらに、「従業者」でも「休業者」でもなく「失業」の要件を満たす人は「完全失業者」に分類され、これらのいずれにも属さない人は「非労働力人口」に分類されます。
就業状態の定義
「労働力調査(基本集計)」における「就業状態」の定義を以下に説明します。
労働力人口/非労働力人口
「労働力調査(基本集計)」では「15歳以上人口」のうち「就業者(従業者/休業者)」と「完全失業者」を合わせた人を「労働力人口」といい「労働力人口」以外を「非労働力人口」といいます。
「労働力人口」は、既に仕事に就いている人(就業者)と就職しようと求職活動している人(完全失業者)の合計であるため、日本経済が財やサービスを生産するために利用できる人口を表しています。
就業者
「就業者」は「従業者」と「休業者」を合わせた人のことをいいます。
従業者
「従業者」とは、調査対象期間である「月末1週間(12月は20~26日)」に、少しでも(1時間以上)仕事をした人のことをいいます。
労働の対価として収入が発生する仕事であれば、その仕事の内容は問わないため、学生がアルバイトをした場合や、主婦がパートタイムの仕事や内職をした場合なども「従業者」に区分されます。
また、個人経営の商店や農家で家業を手伝っている家族は「無給の家族従業者」と呼ばれており、無給であったとしても、仕事をしたとみなされ「従業者」に区分されます。
休業者
「休業者」は、調査対象期間である「月末1週間(12月は20~26日)」に仕事をしなかった人のうち、以下の要件を満たす人のことをいいます。
- 雇用者(会社などに雇われてる人)で、仕事を休んでいても給料・賃金の支払を受けている場合、または受けることになっている場合
- 自営業主が、自分の経営する事業を持ったままで、その仕事を休み始めてから30日にならない場合
雇用者については、職場の就業規則などで定められている育児(介護)休業期間中の人も、職場から給料・賃金をもらうことになっている場合は「休業者」に区分されます。
また、雇用保険法に基づく育児休業基本給付金や介護休業給付金をもらうことになっている場合も、こうした給付は、給料・賃金の代替と考えるのがより適切と考えられるので、給料・賃金をもらっている人とみなし「休業者」に区分されます。
ただし、個人経営の商店や農家で家業を手伝っている「家族従業者」については、自分で仕事を持っているとみなされないため「休業者」には区分されません。
また、日雇い労務者などについても、仕事を休んでいても「休業者」には区分されません。
なお、不規則に仕事をする人や、1年の中で一時期のみ仕事をする人などは、月末1週間の状態を毎月調べて就業状態を時系列的に明らかにするという労働力調査の趣旨からすれば「休業者」に含めることは適当ではないとされています。
完全失業者
「完全失業者」とは、以下の要件を満たす人のことをいいます。
- 調査対象期間である「月末1週間(12月は20~26日)」に少しも仕事をしなかった
- 仕事があればすぐ就くことができる
- 調査対象期間である「月末1週間(12月は20~26日)」に求職活動をしていた
(過去の求職活動の結果を待っている場合を含む)
「完全失業者」は、何らかの具体的な「求職活動」を行っている人が対象とされています。
例えば、公共職業安定所(ハローワーク)に申し込んだり、求人広告・求人情報誌や、インターネットの求人サイトなどを見て応募したり、学校・知人などにあっせん・紹介を依頼したり、事業所の求人に直接応募したり、登録型派遣に登録するといった活動をしている必要があります。また、自営の仕事を始めようとしている人は、賃金・資材の調達など事業を始める準備をしていれば「求職活動」をしていたと判断されます。
したがって、新規学卒者や新たに収入を得る必要が生じた人のように新しく仕事を始めようとする人(労働市場への新規参入者)、結婚・育児などで一時離職したが再び仕事を始めようとする人(労働市場への再参入者)なども、すぐに就業可能で求職活動をしていれば「完全失業者」となり、よりよい仕事を求めて転職を繰り返す人は、転職の都度、一時的に「完全失業者」となる可能性があります。
一方、会社が倒産して仕事を失ったとしても、「求職活動」をしていなければ「労働市場への参入者」とはならないため「完全失業者」として扱われません。
非労働力人口
「15歳以上人口」のうち「就業者(従業者/休業者)」と「完全失業者」に含まれない人を「非労働力人口」といいます。「非労働力人口」に分類される代表的な例は以下の通りです。
- 満15歳以上の学生
- 専業主婦/専業主夫
- その他(高齢者など)
就業状態に関する各種比率
「就業状態」を示す指標である「労働力人口比率」「就業率」「完全失業率」について説明します。
労働力人口比率
「労働力人口比率」とは「15歳以上人口」に占める「労働力人口」の割合を示す指標であり、以下の式で定義されています。
就業率
「就業率」とは「15歳以上人口」に占める「就業者」の割合を示す指標であり、以下の式で定義されています。
「就業者数」は、仕事をしている「従業者」と、仕事を持っていながら病気などのため休んでいる「休業者」を合わせた人数です。
完全失業率
「完全失業率」とは「労働力人口」に占める「完全失業者」の割合を示す指標であり、以下の式で定義されています。
求人倍率
「求人倍率」とは、全国のハローワークに登録された情報に基づいた「求職者数」に対する「求人数」の割合を示す指標であり、職を探している「求職者」1人に対して何件の「求人」があるかを表しています。
「求人倍率」が1よりも大きく「求人数」の方が「求職者数」よりも多い状況のことを「売り手市場(求職者が仕事を選べる状況)」といい、「求人倍率」が1よりも小さく「求職者数」の方が「求人数」よりも多い状況のことを「買い手市場(企業が雇用者を選べる状況)」といいます。
「求人倍率」には、「新規求職申込件数」に対する「新規求人数」の割合を示す「新規求人倍率」と、「月間有効求職者数」に対する「月間有効求人数」の割合を示す「有効求人倍率」の2種類があります。
新規求人倍率
「新規求人倍率」とは、全国のハローワークに登録された情報に基づいた「新規求職申込件数」に対する「新規求人数」の割合を示す指標のことをいいます。
- 新規求人数
当月中に新たに受け付けた求人数(採用予定人員) - 新規求職申込件数
当月中に新たに受け付けた求職申込みの件数
有効求人倍率
「有効求人倍率」とは、全国のハローワークに登録された情報に基づいた「月間有効求職者数」に対する「月間有効求人数」の割合を示す指標のことをいいます。
ハローワークの登録情報には「2カ月間(翌々月の末日まで)」という有効期限があります。
「有効求人倍率」の算出に用いられる「月間有効求職者数」と「月間有効求人数」には、当月の受付件数に、前月以前に受け付けた求職・求人の中で有効期限が切れておらず契約に至っていない求職数・求人数が加算されています。
- 前月から繰り越された有効求人数
前月末日現在において、有効期限が当月以降に跨っていて雇用が決定していない求人数 - 月間有効求人数
「前月から繰り越された有効求人数」と当月の「新規求人数」の合計 - 前月から繰り越された有効求職者数
前月末日現在において、求職票の有効期限が当月以降に跨っていて就職が決定していない求職者数 - 月間有効求職者数
「前月から繰り越された有効求職者数」と当月の「新規求職申込件数」の合計
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和3年度 第11問】
雇用・失業の用語に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア アルバイトで生計を維持する大学生は、労働力人口に含まれる。
イ 非労働力人口は、専業主婦(夫)を含まない。
ウ 有効求人倍率が1を超えるとき、完全失業率はゼロである。
エ 有効求人倍率は、新規求人数を月間有効求職者数で除した値である。
オ 労働力人口は、未成年を含まない。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
雇用と失業の用語に関する知識を問う問題です。
(ア) 適切です。
「労働力調査(基本集計)」では「15歳以上人口」のうち「就業者(従業者/休業者)」と「完全失業者」を合わせた人を「労働力人口」といい「労働力人口」以外を「非労働力人口」といいます。
「就業者」は「従業者」と「休業者」を合わせた人のことをいいます。
「従業者」とは、調査対象期間である「月末1週間(12月は20~26日)」に、少しでも(1時間以上)仕事をした人のことをいいます。
労働の対価として収入が発生する仕事であれば、その仕事の内容は問わないため、学生がアルバイトをした場合や、主婦がパートタイムの仕事や内職をした場合なども「従業者」に区分されます。
したがって、アルバイトで生計を維持する大学生は、労働力人口に含まれるため、選択肢の内容は適切です。
(イ) 不適切です。
「15歳以上人口」のうち「就業者(従業者/休業者)」と「完全失業者」に含まれない人を「非労働力人口」といいます。「非労働力人口」に分類される代表的な例は以下の通りです。
- 満15歳以上の学生
- 専業主婦/専業主夫
- その他(高齢者など)
したがって、非労働力人口は、専業主婦(夫)を含まないのではなく含んでいるため、選択肢の内容は不適切です。
(ウ) 不適切です。
「求人倍率」とは、全国のハローワークに登録された情報に基づいた「求職者数」に対する「求人数」の割合を示す指標であり、職を探している「求職者」1人に対して何件の「求人」があるかを表しています。
「求人倍率」が1よりも大きく「求人数」の方が「求職者数」よりも多い状況のことを「売り手市場(求職者が仕事を選べる状況)」といい、「求人倍率」が1よりも小さく「求職者数」の方が「求人数」よりも多い状況のことを「買い手市場(企業が雇用者を選べる状況)」といいます。
「求人倍率」には、「新規求職申込件数」に対する「新規求人数」の割合を示す「新規求人倍率」と、「月間有効求職者数」に対する「月間有効求人数」の割合を示す「有効求人倍率」の2種類があります。
「有効求人倍率」とは、全国のハローワークに登録された情報に基づいた「月間有効求職者数」に対する「月間有効求人数」の割合を示す指標のことをいいます。
したがって、有効求人倍率が1を超えるとき、完全失業率はゼロではなく求人数の方が求職者数より多い状況であることを表しているため、選択肢の内容は不適切です。
(エ) 不適切です。
「有効求人倍率」とは、全国のハローワークに登録された情報に基づいた「月間有効求職者数」に対する「月間有効求人数」の割合を示す指標のことをいいます。
ハローワークの登録情報には「2カ月間(翌々月の末日まで)」という有効期限があります。
「有効求人倍率」の算出に用いられる「月間有効求職者数」と「月間有効求人数」には、当月の受付件数に、前月以前に受け付けた求職・求人の中で有効期限が切れておらず契約に至っていない求職数・求人数が加算されています。
したがって、有効求人倍率は、新規求人数ではなく月間有効求人数を月間有効求職者数で除した値であるため、選択肢の内容は不適切です。
(オ) 不適切です。
「労働力調査(基本集計)」では「15歳以上人口」のうち「就業者(従業者/休業者)」と「完全失業者」を合わせた人を「労働力人口」といい「労働力人口」以外を「非労働力人口」といいます。
したがって、労働力人口は、未成年を含まないのではなく15歳以上を対象に含んでいるため、選択肢の内容は不適切です。
答えは(ア)です。
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