今回は、「経済学・経済政策 ~R1-14 生産関数と限界生産性(2)総生産物曲線~」について説明します。
目次
経済学・経済政策 ~令和元年度一次試験問題一覧~
令和元年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
総生産物曲線・生産関数 -リンク-
本ブログにて「総生産物曲線」「生産関数」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- 総生産物曲線・生産関数のまとめ
- R3-12 生産関数と限界生産性(11)全要素生産性
- R2-16 生産関数と限界生産性(1)総生産物曲線/労働需要曲線
- R1-20 生産関数と限界生産性(3)コブ=ダグラス型生産関数
- H28-20 生産関数と限界生産性(4)限界生産物/平均生産物
- H27-11 生産関数と限界生産性(5)新古典派の経済成長モデル
- H27-16 生産関数と限界生産性(6)コブ=ダグラス型生産関数
- H26-13-1 生産関数と限界生産性(7)限界生産物/平均生産物
- H26-13-2 生産関数と限界生産性(8)労働需要曲線
- H25-11 生産関数と限界生産性(9)新古典派の経済成長モデル
- H24-18 生産関数と限界生産性(10)限界生産物/平均生産物
総生産物曲線
「総生産物曲線」とは、縦軸に「生産量(産出量)」を、横軸に「生産要素の投入量」を取ったグラフで表される「生産要素を投入したときに産出される生産物の量を表す曲線」のことをいいます。
「生産量(産出量)」を増減させる「生産要素の投入量」には「労働投入量(労働量)」と「資本投入量(資本量)」の2種類の要素があります。
「労働投入量(労働量)」は、労働者の雇用調整などによって短期であっても増減させることができますが、設備投資を伴う「資本投入量(資本量)」の増減には、ある程度の長い期間が必要となります。
生産要素の投入量(労働投入量)
「生産量(産出量)」を増減させる「生産要素の投入量」には「労働投入量(労働量)」と「資本投入量(資本量)」の2種類の要素がありますが、労働者の雇用調整などによって短期であっても増減させることができる「労働投入量(労働量)」と「生産量(産出量)」の関係を確認していきます。
労働の限界生産物
「労働の限界生産物」とは、「労働投入量(労働量)」を1単位増加したときの「生産量(産出量)」の増加分のことをいいます。
「労働の限界生産物」は、縦軸に「生産量(産出量)」を、横軸に「労働投入量(労働量)」を取ったグラフに描かれた「総生産物曲線」の接線の「傾き」として表されます。
労働の平均生産物
「労働の平均生産物」とは、「労働投入量(労働量)」1単位当たりの「生産量(産出量)」のことをいい、「生産量(産出量)」を「労働投入量(労働量)」で除することにより求めることができます。
「労働の平均生産物」は、縦軸に「生産量(産出量)」を、横軸に「労働投入量(労働量)」を取ったグラフに描かれた「総生産物曲線」上の点と原点を結んだ直線の「傾き」として表されます。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和元年度 第14問】
労働と生産水準の関係について考える。労働は、生産水準に応じてすぐに投入量を調整できる可変的インプットである。資本投入量が固定されているとき、生産物の産出量は労働投入量のみに依存し、下図のような総生産物曲線を描くことができる。
この図に関する記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
[解答群]
ア 労働投入量を増加させるほど、総生産物は増加する。
イ 労働の限界生産物は、原点Oから点Aの間で最小を迎え、それ以降は増加する。
ウ 労働の平均生産物と限界生産物は、点Aで一致する。
エ 労働の平均生産物は、点Aにおいて最小となり、点Bにおいて最大となる。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
総生産物曲線に関する知識を問う問題です
「総生産物曲線」とは、縦軸に「生産量(産出量)」を、横軸に「生産要素の投入量」を取ったグラフで表される「生産要素を投入したときに産出される生産物の量を表す曲線」のことをいいます。
「生産量(産出量)」を増減させる「生産要素の投入量」には「労働投入量(労働量)」と「資本投入量(資本量)」の2種類の要素があります。
「労働投入量(労働量)」は、労働者の雇用調整などによって短期であっても増減させることができますが、設備投資を伴う「資本投入量(資本量)」の増減には、ある程度の長い期間が必要となります。
今回の問題では「資本投入量(資本量)」が固定されており「生産量(産出量)」は「労働投入量(労働量)」のみに依存するとされています。
労働の限界生産物
「労働の限界生産物」とは、「労働投入量(労働量)」を1単位増加したときの「生産量(産出量)」の増加分のことをいいます。
「労働の限界生産物」は、縦軸に「生産量(産出量)」を、横軸に「労働投入量(労働量)」を取ったグラフに描かれた「総生産物曲線」の接線の「傾き」として表されます。
労働の平均生産物
「労働の平均生産物」とは、「労働投入量(労働量)」1単位当たりの「生産量(産出量)」のことをいい、「生産量(産出量)」を「労働投入量(労働量)」で除することにより求めることができます。
「労働の平均生産物」は、縦軸に「生産量(産出量)」を、横軸に「労働投入量(労働量)」を取ったグラフに描かれた「総生産物曲線」上の点と原点を結んだ直線の「傾き」として表されます。
(ア) 不適切です。
「生産量(産出量)」は、縦軸に「生産量(産出量)」を、横軸に「労働投入量(労働量)」を取ったグラフに描かれた「総生産物曲線」の「高さ(産出量)」として表されます。
問題で与えられた図において「労働投入量(労働量)」を「原点O」から徐々に増加していくと「生産量(産出量)」である「総生産物曲線」の「高さ(産出量)」は大きくなっていき「点B」で最大となった後、徐々に減少していくことが分かります。
したがって、労働投入量を増加させるほど、総生産物は増加するのではなく、労働投入量を増加させると原点Oから点Bまでは総生産物が増加するが、労働投入量を点Bよりも増加させると総生産物は減少するため、選択肢の内容は不適切です。
(イ) 不適切です。
「労働の限界生産物」とは、「労働投入量(労働量)」を1単位増加したときの「生産量(産出量)」の増加分のことをいいます。
「労働の限界生産物」は、縦軸に「生産量(産出量)」を、横軸に「労働投入量(労働量)」を取ったグラフに描かれた「総生産物曲線」の接線の「傾き」として表されます。
問題で与えられた図において「労働投入量(労働量)」を「原点O」から徐々に増加していくと「労働の限界生産物」である「総生産物曲線」の接線の「傾き」は逓増して「点A」の手前で最大となり、その後逓減していき「点B」においてゼロとなります。「労働投入量(労働量)」をさらに増加していくと「労働の限界生産物」はマイナスとなり、そのマイナス幅は徐々に大きくなっていきます。
したがって、労働の限界生産物は、原点Oから点Aの間で最小を迎え、それ以降は増加するのではなく、原点Oの近くで最小を迎え、徐々に増加するが、点Aの手前で最大となり、それ以降は減少するため、選択肢の内容は不適切です。
(ウ) 適切です。
「労働の限界生産物」とは、「労働投入量(労働量)」を1単位増加したときの「生産量(産出量)」の増加分のことをいいます。
「労働の限界生産物」は、縦軸に「生産量(産出量)」を、横軸に「労働投入量(労働量)」を取ったグラフに描かれた「総生産物曲線」の接線の「傾き」として表されます。
「労働の平均生産物」とは、「労働投入量(労働量)」1単位当たりの「生産量(産出量)」のことをいい、「生産量(産出量)」を「労働投入量(労働量)」で除することにより求めることができます。
「労働の平均生産物」は、縦軸に「生産量(産出量)」を、横軸に「労働投入量(労働量)」を取ったグラフに描かれた「総生産物曲線」上の点と原点を結んだ直線の「傾き」として表されます。
問題で与えられた図において「原点O」から「総生産物曲線」上の「点A」を通るように描かれた直線の傾きは「点A」における「労働の平均生産物」を示しており、これは「点A」における「総生産物曲線」の接線の「傾き」である「労働の限界生産物」と一致しています。
したがって、労働の平均生産物と限界生産物は、点Aで一致するため、選択肢の内容は適切です。
(エ) 不適切です。
「労働の平均生産物」とは、「労働投入量(労働量)」1単位当たりの「生産量(産出量)」のことをいい、「生産量(産出量)」を「労働投入量(労働量)」で除することにより求めることができます。
「労働の平均生産物」は、縦軸に「生産量(産出量)」を、横軸に「労働投入量(労働量)」を取ったグラフに描かれた「総生産物曲線」上の点と原点を結んだ直線の「傾き」として表されます。
問題で与えられた図において「労働投入量(労働量)」を「原点O」から徐々に増加していくと「労働の平均生産物」は「原点O」の近くで最小となり、その後増加して「点A」で最大となった後、減少していくことが分かります。
したがって、労働の平均生産物は、点Aではなく原点Oの近くで最小となり、点Bではなく点Aにおいて最大となるため、選択肢の内容は不適切です。
答えは(ウ)です。
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