今回は、「経済学・経済政策 ~H27-9 主要経済指標(8)企業物価指数~」について説明します。
目次
経済学・経済政策 ~平成27年度一次試験問題一覧~
平成27年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
物価指数・消費者物価指数・企業物価指数・GDPデフレーター -リンク-
本ブログにて「物価指数(ラスパイレス指数・パーシェ指数)」「消費者物価指数」「企業物価指数」「GDPデフレーター」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- 物価指数・消費者物価指数・企業物価指数・GDPデフレーターのまとめ
- R3-1 国民経済計算(10)実質GDPの推移
- R2-3 国民経済計算(1)国民所得概念と国民経済計算
- H30-4 主要経済指標(4)物価指数
- H28-1 国民経済計算(6)実質GDPとGDPデフレーターの推移
- H28-5 主要経済指標(6)消費者物価指数
- H27-5 主要経済指標(7)物価指数(ラスパイレス指数・パーシェ指数)
- H24-2 主要経済指標(11)物価指数
物価指数
「物価指数」とは、物価の上昇率を表す指標のことをいいます。
「物価指数」は、100を基準として、数値が100より大きければ物価が上昇していることを示しており、また数値が100より小さければ物価が下落していることを示しています。
「物価指数」には「基準時点の財の数量」をウエイトにした「ラスパイレス指数」と、「比較時点の財の数量」をウェイトにした「パーシェ指数」があります。
「ラスパイレス指数」の代表的な例には「消費者物価指数(CPI)」や「企業物価指数(CGPI)」があり、「パーシェ指数」の代表的な例には「GDPデフレーター」があります。
消費者物価指数(CPI)
「消費者物価指数」は、全国の世帯が購入する財とサービスの価格変動を総合的に測定し、物価の変動を時系列的に測定する指標であり、家計の消費構造を一定のものに固定し、これに要する費用が物価の変動によってどう変化するかを表した数値のことをいいます。
対象範囲
「消費者物価指数」は、世帯の消費生活に及ぼす物価の変動を測定するものであるため、家計の「消費支出」を対象としています。
消費支出に含まれるもの
- 財とサービスの購入と一体となって徴収される消費税などの間接税
- 持家の住宅費用(帰属家賃方式)
消費支出に含まれないもの
- 信仰・祭祀費、寄付金、贈与金、他の負担費及び仕送り金
- 直接税や社会保険料などの支出(非消費支出)
- 有価証券の購入、土地・住宅の購入などの支出(貯蓄及び財産購入のための支出)
指定品目
「消費者物価指数」の算定に採用されている「指数品目」は、世帯が購入する多種多様な財とサービス全体の物価変動を代表できるように、家計の消費支出の中で重要度が高いこと、価格変動の面で代表性があること、継続調査が可能であることなどの観点から選定した「指数品目」を対象としています。
価格
「消費者物価指数」の算定に採用されている「指数品目」の価格には、原則として小売物価統計調査の動向編によって得られた市町村別、品目別の小売価格を採用しています。
なお、パソコン(デスクトップ型/ノート型)」と「カメラ」については、POS情報により全国の主要な家電量販店で販売された全製品の販売価格を採用しています。
企業物価指数(CGPI)
「企業物価指数」とは、企業間で取引される財の価格変動を総合的に測定し、物価の変動を時系列的に測定する指標であり、企業間の取引内容を基準時のものに固定し、これに要する費用が個々の財の価格変動によってどのように変化したかを表した数値のことをいいます。
「企業物価指数」は「国内企業物価指数」「輸出物価指数」「輸入物価指数」の3種類で構成されており、日本銀行から毎月公表されています。
基本分類指数
「企業物価指数」の「基本分類指数」は「国内企業物価指数」「輸出物価指数」「輸入物価指数」で構成されています。
- 国内企業物価指数
- 輸出物価指数
- 輸入物価指数
参考指数
「企業物価指数」には、「参考指数」として「需要段階別・用途別指数」「連鎖方式による国内企業物価指数」「消費税を除く国内企業物価指数」などがあります。
- 需要段階別・用途別指数
- 連鎖方式による国内企業物価指数
- 消費税を除く国内企業物価指数
- 戦前基準指数
- 乗用車(北米向け)、乗用車(除北米向け)
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成27年度 第9問】
日本銀行「企業物価指数」では円ベースの輸出入物価指数が公表されている。この統計を利用するためにも、ここで為替レートの変化と物価の動きとの関係を考えてみたい。
自国を日本、外国をアメリカとして、為替レートと輸出財・輸入財価格との関係に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 円高にあわせて、ある輸入財の円価格が引き上げられれば、その輸入財のドル価格は一定に保たれている。
イ 円高にかかわらず、ある輸出財のドル価格を一定に保つためには、その輸出財の円価格を引き上げなくてはならない。
ウ 円安にあわせて、ある輸入財のドル価格が引き上げられれば、その輸入財の円価格は一定に保たれる。
エ 円安にかかわらず、ある輸出財の円価格が一定に保たれれば、その輸出財のドル価格は低下する。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
企業物価指数に関する知識を問う問題です。
「企業物価指数」とは、企業間で取引される財の価格変動を総合的に測定し、物価の変動を時系列的に測定する指標であり、企業間の取引内容を基準時のものに固定し、これに要する費用が個々の財の価格変動によってどのように変化したかを表した数値のことをいいます。
「企業物価指数」の問題として出題されていますが、「企業物価指数」を知らなくても為替レートの変動による輸入材と輸出財の価格への影響を理解していれば、正解を導くことができます。
(ア) 不適切です。
円高に推移したときに輸入材の価格がどう変化するかを考えていきます。
日本の輸入業者が、アメリカの輸出業者から「ドル価格(10ドル/個)」の財を購入するとき、為替レートが円高に推移すると、日本の輸入業者が支払う金額(円)は低下します。
- 1ドル=100円の場合
「ドル価格(10ドル/個)」の財は「 10ドル/個 × 100円/ドル = 1,000円/個 」で購入することができる - 1ドル=80円(円高)に推移した場合
「ドル価格(10ドル/個)」の財は「 10ドル/個 × 80円/ドル = 800円/個 」で購入できるようになる
「1ドル=80円(円高)」に推移したときに、この輸入材の「円価格」が円高に推移する前の「円価格(1,000円/個)」よりも引き上げられた場合は「ドル価格」が「 1,000円/個 ÷ 80円/ドル = 12.5ドル/個」よりも引き上げられています。
したがって、円高にあわせて、ある輸入財の円価格が引き上げられれば、その輸入財のドル価格は一定に保たれているのではなく引き上げられているため、選択肢の内容は不適切です。
(イ) 不適切です。
円高に推移したときに輸出財の価格がどう変化するかを考えていきます。
日本の輸出業者が、アメリカの輸入業者に「円価格(1,000円/個)」の財を販売するとき、為替レートが円高に推移すると、アメリカの輸入業者が支払う金額(ドル)は上昇します。
- 1ドル=100円の場合
「円価格(1,000円/個)」の財は「1,000円/個 ÷ 100円/ドル = 10ドル/個 」で販売することができる - 1ドル=80円(円高)に推移した場合
「円価格(1,000円/個)」の財は「1,000円/個 ÷ 80円/ドル = 12.5ドル/個」で販売することになる
「1ドル=80円(円高)」に推移したときに、この輸出材の「ドル価格」を円高に推移する前の「ドル価格(10ドル/個)」に保つためには「円価格」を「 10ドル/個 × 80円/ドル = 800円/個」に引き下げる必要があります。
したがって、円高にかかわらず、ある輸出財のドル価格を一定に保つためには、その輸出財の円価格を引き上げるのではなく引き下げなくてはならないため、選択肢の内容は不適切です。
(ウ) 不適切です。
円安に推移したときに輸入材の価格がどう変化するかを考えていきます。
日本の輸入業者が、アメリカの輸出業者から「ドル価格(10ドル/個)」の財を購入するとき、為替レートが円安に推移すると、日本の輸入業者が支払う金額(円)は上昇します。
- 1ドル=100円の場合
「ドル価格(10ドル/個)」の財は「 10ドル/個 × 100円/ドル = 1,000円/個 」で購入することができる - 1ドル=120円(円安)に推移した場合
「ドル価格(10ドル/個)」の財は「 10ドル/個 × 120円/ドル = 1,200円/個 」で購入することになる
「1ドル=120円(円安)」に推移したときに、この輸入材の「ドル価格」を円安に推移する前の「10ドル/個」から「12ドル/個」より引き上げると「円価格」は「 12ドル/個 × 120円/ドル = 1,440円/個」に引き上げられます。
したがって、円安にあわせて、ある輸入財のドル価格が引き上げられれば、その輸入財の円価格は一定に保たれるのではなく引き上げられるため、選択肢の内容は不適切です。
(エ) 適切です。
円安に推移したときに輸出材の価格がどう変化するかを考えていきます。
日本の輸出業者が、アメリカの輸入業者に「円価格(1,000円/個)」の財を販売するとき、為替レートが円安に推移すると、アメリカの輸入業者が支払う金額(ドル)は低下します。
- 1ドル=100円の場合
「円価格(1,000円/個)」の財は「1,000円/個 ÷ 100円/ドル = 10ドル/個 」で販売することができる - 1ドル=120円(円安)に推移した場合
「円価格(1,000円/個)」の財は「1,000円/個 ÷ 120円/ドル ≒ 8.3ドル/個」で販売することになる
「1ドル=120円(円安)」に推移したときに、この輸出財の「円価格」を円安に推移する前の「1,000円/個」から変更しなかった場合「ドル価格」は「 1,000円/個 ÷ 120円/ドル ≒ 8.3ドル/個」に低下します。
したがって、円安にかかわらず、ある輸出財の円価格が一定に保たれれば、その輸出財のドル価格は低下するため、選択肢の内容は適切です。
答えは(エ)です。
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