経済学・経済政策 ~H25-19 予算制約と消費者の選択行動(6)予算制約線~

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今回は、「経済学・経済政策 ~H25-19 予算制約と消費者の選択行動(6)予算制約線~」について説明します。

 

目次

経済学・経済政策 ~平成25年度一次試験問題一覧~

平成25年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

予算制約線・最適消費点 -リンク-

本ブログにて「予算制約線」「最適消費点」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

 

効用

消費者は、財を消費することによって「効用」を得ることができます。
「効用」とは「財の消費によって消費者が得られる満足度」のことをいいます。

 

無差別曲線

「無差別曲線」とは、社会に2つの財しか存在しないという仮定の「2財モデル」において、縦軸に「Y財の消費量」を、横軸に「X財の消費量」を取ったグラフで表されるある消費者が等しい効用水準を得られる2財の消費の組み合わせを結んだ曲線」のことをいいます。

消費が増加すると効用が高まる一般的な2つの財の「無差別曲線」は以下の図のようになります。

「無差別曲線」では、「同一の無差別曲線上においてはどの点を取っても効用水準は等しい」という特徴を理解しておくことが重要です。

 

 

また、もう一つ、「無差別曲線」は以下の図のように「3本」しかないわけではなく無数に存在するという特徴も理解しておくことが重要です。

 

 

予算制約線

「予算制約線」とは、社会に2つの財しか存在しないという仮定の「2財モデル」において、「X財の消費量X」と「Y財の消費量Y」のグラフで表される「予算を全て使い切った2財の消費の組み合わせを結んだ曲線」のことをいいます。

 

 

予算制約線の求め方

「予算制約線」の求め方について説明します。

X財の価格が「PX」であり、Y財の価格が「PY」である場合、X財とY財を消費するときの「総支出」は以下の式により求めることができます。

 

 

「予算制約線」とは「予算を全て使い切った2財の消費の組み合わせを結んだ曲線」であるため「予算(M)= 総支出」となる以下の条件式が成立します。

 

 

上記の式を「Y=」という形に変形した以下の式が「予算制約線」です。

 

 

したがって「予算制約線」は以下のように表すことができます。

 

 

「予算制約線」において、X財とY財を消費するときの「総支出」が予算内に収まっていることを表している「予算制約線」より左下の範囲を「入手可能領域」といいます。なお、「予算制約線」より右上の範囲は「予算オーバー」であることを示しています。

 

 

 

予算制約線のシフト

「予算制約線」は「X財の価格(PX)」「Y財の価格(PY)」「予算(M)」などの条件が変化するとシフトします。

 

X財の価格が変動する場合
X財の価格が下落する場合

「X財の価格(PX)」が下落する場合の「予算制約線」のシフトについて確認します。

「X財の消費量がゼロである場合のY財の消費量(Y軸の切片)( M ÷ PY )」は変わりませんが「Y財の消費量がゼロである場合のX財の消費量( M ÷ PX )」が大きくなり「予算制約線の傾きの絶対値( PX ÷ PY )」が小さくなるため、「予算制約線」は以下の通り右方にシフトします。

 

 

X財の価格が上昇する場合

「X財の価格(PX)」が上昇する場合の「予算制約線」のシフトについて確認します。

「X財の消費量がゼロである場合のY財の消費量(Y軸の切片)( M ÷ PY )」は変わりませんが「Y財の消費量がゼロである場合のX財の消費量( M ÷ PX )」が小さくなり「予算制約線の傾きの絶対値( PX ÷ PY )」が大きくなるため「予算制約線」は以下の通り左方にシフトします。

 

 

Y財の価格が変動する場合
Y財の価格が下落する場合

「Y財の価格(PY)」が下落する場合の「予算制約線」のシフトについて確認します。

「Y財の消費量がゼロである場合のX財の消費量( M ÷ PX )」は変わりませんが「予算制約線の傾きの絶対値( PX ÷ PY )」と「X財の消費量がゼロである場合のY財の消費量(Y軸の切片)( M ÷ PY )」が大きくなるため、「予算制約線」は以下の通り上方にシフトします。

 

 

Y財の価格が上昇する場合

「Y財の価格(PY)」が上昇する場合の「予算制約線」のシフトについて確認します。

「Y財の消費量がゼロである場合のX財の消費量( M ÷ PX )」は変わりませんが「予算制約線の傾きの絶対値( PX ÷ PY )」と「X財の消費量がゼロである場合のY財の消費量(Y軸の切片)( M ÷ PY )」が小さくなるため、「予算制約線」は以下の通り下方にシフトします。

 

 

予算が変動する場合
予算が増加する場合

「予算(M)」が増加する場合の「予算制約線」のシフトについて確認します。

「予算制約線の傾きの絶対値( PX ÷ PY )」は変わりませんが「Y財の消費量がゼロである場合のX財の消費量( M ÷ PX )」と「X財の消費量がゼロである場合のY財の消費量(Y軸の切片)( M ÷ PY )」が大きくなるため、「予算制約線」は以下の通り平行に右上方にシフトします。

 

 

予算が減少する場合

「予算(M)」が減少する場合の「予算制約線」のシフトについて確認します。

「予算制約線の傾きの絶対値( PX ÷ PY )」は変わりませんが「Y財の消費量がゼロである場合のX財の消費量( M ÷ PX )」と「X財の消費量がゼロである場合のY財の消費量(Y軸の切片)( M ÷ PY )」が小さくなるため、「予算制約線」は以下の通り平行に左下方にシフトします。

 

 

最適消費点

「最適消費点」とは、社会に2つの財しか存在しないという仮定の「2財モデル」において、「X財の消費量X」と「Y財の消費量Y」の2軸のグラフで表される限られた予算の中で、ある消費者の効用を最大化する2財の消費の組み合わせを示す点」のことをいいます。

ある消費者が等しい効用を得られる2財の消費の組み合わせを表す「無差別曲線」と、予算を全て使い切った2財の消費の組み合わせを表す「予算制約線」の接点が「最適消費点」となります。

 

 

予約制約線の変化による最適消費点のシフト

予約制約線の変化によって「最適消費点」がどのようにシフトするのかについて確認するため「X財の価格が下落した場合」を例として以下に説明します。

 

  1. X財の価格が下落すると「X財の消費量がゼロである場合のY財の消費量(Y軸の切片)」は変わらずに「Y財の消費量がゼロである場合のX財の消費量」が大きくなるため「予算制約線」が右方に拡大します。
  2. 拡大した「予算制約線」は、X財の価格が下落する前の「予約制約線」と接していた「無差別曲線」よりも効用が高い「無差別曲線」と接することとなるため、この新たな「無差別曲線」との接点が、X財の価格が下落した場合の「最適消費点」となります。(無差別曲線がシフトするわけではありません。もともと無差別曲線は無数に存在しています。)

 

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【平成25年度 第19問】

いま、ある地方自治体は、住民(同質的であると仮定)へ地方税を課税して得た財源で公共サービスを提供している。住民は公共サービスを享受しつつ、地方税の税引き後所得を用いて私的財を消費している。もし、地方税をゼロとすれば、私的財の消費量はAとなり、所得のすべてを納税すれば公共サービスの消費量はBとなる。これが予算制約ABとなり、この地方自治体の代表的個人は予算制約上の点Eを選好しているものとする。

この地方自治体が当該住民の負担にならない「補助金」を国から得たとする。地方自治体は、この一部ないし全部を住民に現金で給付することもできるし、公共サービスを直接的に提供することもできるものとし、この状況が予算制約CDとして描かれている。もし、この「補助金」の全額が住民に対して現金で給付されたならば、代表的個人は点Fを選好するものと考える。

この図に関する説明として、最も不適切なものを下記の解答群から選べ

 

 

[解答群]

ア 「補助金」を得た地方自治体がIの公共サービスを提供するならば、この地方自治体は住民の効用を最大化している。
イ 「補助金」を得た地方自治体がKの公共サービスを提供するならば、住民の効用は点Fが選択される場合よりも低下する。
ウ 「補助金」を得た地方自治体がKの公共サービスを提供するならば、それは「フライペーパー効果」とみることができる。
エ 「補助金」を得た地方自治体がその全額を住民へ現金で給付すると、「補助金」を得る前と比べて、住民の地方自治体への納税額は減少する。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答

予算制約線と最適消費点に関する知識を問う問題です。

 

国から地方自治体に補助金が支給されたときの「予算制約線」のシフトについて考えてみます。

地方自治体が国から支給された補助金の全額を住民に現金で給付した場合でも、地方自治体が国から支給された補助金の全額を活用して公共サービスを提供した場合でも、住民にとっては消費できる財やサービスの量が増加することに変わりはないため「予算制約線」は「予算制約線AB」から「予算制約線CD」のように、平行に右上方にシフトします。

 

 

(ア) 適切です。

国から支給された補助金の全額を住民に現金で給付したとき、代表的個人の選考は「予算制約線AB」上の「点E」から「予算制約線CD」上の「点F」に変化します。

これは、国から補助金が支給されていないときの「予算制約線AB」において代表的個人の効用を最大化する「最適消費点」は「点E」であり、国から補助金が支給されたときの「予算制約線CD」において代表的個人の効用を最大化する「最適消費点」が「点F」であるということを示しています。

 

問題で与えられた図に記述されていない「無差別曲線」を追加すると以下の図のようになります。

 

 

国から支給された補助金の全額を住民に現金で給付したときに代表的個人の効用を最大化する「最適消費点」は「点F」であり、「点F」である場合の「公共サービスの量」は「I」です。

なお、問題文において住民は同質的であると仮定されているため、代表的個人の効用を最大化する「最適消費点」は、住民の効用を最大化する「最適消費点」と同じです。

つまり、国から補助金が支給されたときの「予算制約線CD」において、「公共サービスの量」が「I」であるとき、住民の効用は最大化されています。

 

したがって、「補助金」を得た地方自治体がIの公共サービスを提供するならば、この地方自治体は住民の効用を最大化しているため、選択肢の内容は適切です

 

(イ) 適切です。

国から支給された補助金の全額を住民に現金で給付したとき、代表的個人の選考は「予算制約線AB」上の「点E」から「予算制約線CD」上の「点F」に変化します。

これは、国から補助金が支給されていないときの「予算制約線AB」において代表的個人の効用を最大化する「最適消費点」は「点E」であり、国から補助金が支給されたときの「予算制約線CD」において代表的個人の効用を最大化する「最適消費点」が「点F」であるということを示しています。

 

問題で与えられた図に記述されていない「無差別曲線」を追加すると以下の図のようになります。

 

 

国から支給された補助金の全額を住民に現金で給付したときに代表的個人の効用を最大化する「最適消費点」は「点F」であり、「点F」である場合の「公共サービスの量」は「I」です。

また、「点J」である場合の「公共サービスの量」は「K」ですが、「点J」は代表的個人の効用が最大化する「最適消費点」ではないため、代表的個人の効用は「公共サービスの量」が「K」であるとの方が「I」であるときよりも低くなります。

なお、問題文において住民は同質的であると仮定されているため、代表的個人の効用を最大化する「最適消費点」は、住民の効用を最大化する「最適消費点」と同じです。

つまり、「予算制約線CD」において「公共サービスの量」が「K」であるときの住民の効用は「公共サービスの量」が「I」であるときの住民の効用よりも低くなっています

 

したがって、「補助金」を得た地方自治体がKの公共サービスを提供するならば、住民の効用は点Fが選択される場合よりも低下するため、選択肢の内容は適切です

 

(ウ) 適切です。

「フライペーパー効果(ハエ取り紙の理論)」とは、国から地方政府に補助金が支給されても、減税などの手段によって住民に還元されることはなく、財政支出という形で、ハエ取り紙に張り付いたハエのように地方政府に張り付いてしまうという構造を比喩した理論のことをいいます。

 

国から支給された補助金を活用して地方自治体が「K」の「公共サービス」を提供する場合の「予算制約線CD」との交点は「点J」となります。

 

 

国から補助金が支給されていないときの「予算制約線AB」における「点E」から「点J」への変化について確認すると「公共サービスの量」は増加していますが「私的財の量」は増加していないことが分かります。

「私的財の量」が増加していないということは、地方自治体は、国から支給された補助金を住民に現金で給付せず、補助金の全額を活用して公共サービスを提供している(財政支出の増加)ということであり、これは「フライペーパー効果(ハエ取り紙の理論)」が発生していることを表しています。

 

したがって、「補助金」を得た地方自治体がKの公共サービスを提供するならば、それは「フライペーパー効果」とみることができるため、選択肢の内容は適切です

 

(エ) 不適切です。

国から支給された補助金の全額を住民に現金で給付したとき、代表的個人の選考は「予算制約線AB」上の「点E」から「予算制約線CD」上の「点F」に変化します。

これは、国から補助金が支給されていないときの「予算制約線AB」において代表的個人の効用を最大化する「最適消費点」は「点E」であり、国から補助金が支給されたときの「予算制約線CD」において代表的個人の効用を最大化する「最適消費点」が「点F」であるということを示しています。

 

問題で与えられた図に記述されていない「無差別曲線」を追加すると以下の図のようになります。

 

 

国から支給された補助金の全額を住民に現金で給付したときの「最適消費点」の変化(点E→点F)を確認すると「私的財の量」と「公共サービスの量」がどちらも増加していることが分かります。

地方自治体は住民から納付される地方税を財源として「公共サービス」を提供しているため、その「公共サービスの量」が増加しているということは、補助金の全額を住民に現金で給付したとき、住民が地方自治体に納付する地方税も増加しているということを表しています。

 

したがって、「補助金」を得た地方自治体がその全額を住民へ現金で給付すると、「補助金」を得る前と比べて、住民の地方自治体への納税額は減少するのではなく増加するため、選択肢の内容は不適切です

 

最も不適切なものを選択するため、答えは(エ)です。


 

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