今回は、「経済学・経済政策 ~H29-6 主要経済指標(5)景気動向指数(採用系列)~」について説明します。
目次
経済学・経済政策 ~平成29年度一次試験問題一覧~
平成29年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
景気循環・景気動向指数 -リンク-
本ブログにて「景気循環」「景気動向指数」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- 景気循環・景気動向指数のまとめ
- R5-6 主要経済指標(13)景気動向指数(一致系列)
- R4-8 主要経済指標(12)景気循環
- H30-3 主要経済指標(3)CI・DIによる景気判断
- H24-1 主要経済指標(10)景気動向指数(先行系列)
景気動向指数
「景気動向指数」は、生産や雇用など様々な経済活動において重要でかつ景気に敏感に反応する指標の動きを統合することにより、景気の現状把握及び将来予測に資するために、内閣府が毎月公表している指標のことをいいます。
「景気動向指数」には、構成される様々な指標の変動から、景気変動の大きさやテンポ(量感)を測定することを目的とした「CI(コンポジット・インデックス)」と、構成される指標のうち改善している指標の割合を算出して、経済活動の各分野への景気の波及の度合い(波及度)を測定することを目的とした「DI(ディフュージョン・インデックス)」があります。
従来、「景気動向指数」は「DI」を中心に公表されていましたが、景気変動の大きさやテンポ(量感)を把握することの重要性が高まってきた世相を受け、1984年8月からCIが参考資料として公表されるようになり、2008年4月以降は「CI」を中心に公表されるように切り替えられました。
CI(コンポジット・インデックス)
「CI(コンポジット・インデックス)」とは、景気変動の大きさやテンポ(量感)を測定することを目的とした指標のことをいいます。
一般的に、「CI一致指数」の変動と景気の転換点は概ね一致しており、「CI一致指数」が上昇しているときは景気の「拡張期(拡大期)」にあり、「CI一致指数」が低下しているときは景気の「後退期」にありますが、「CI一致指数」が単月で逆方向に振れるなど不規則な動きをすることもあるため「3ヶ月後方移動平均」や「7ヶ月後方移動平均」を組み合わせて景気の基調を判断していきます。
CIによる景気の基調判断の基準
基調判断 | 定義 | 基準 | |
①改善 | 景気拡張の可能性が高いことを示す |
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②足踏み | 景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す。 |
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③局面変化 | 上方への局面変化 | 事後的に判定される景気の谷が、それ以前の数か月にあった可能性が高いことを示す。 |
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下方への局面変化 | 事後的に判定される景気の山が、それ以前の数か月にあった可能性が高いことを示す。 |
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④悪化 | 景気後退の可能性が高いことを示す。 |
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⑤下げ止まり | 景気後退の動きが下げ止まっている可能性が高いことを示す。 |
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- 上記①~⑤に該当しない場合は、前月の基調判断を踏襲する。
- 「①改善」または「②足踏み」から「④悪化」または「⑤下げ止まり」に移行する場合は、「③下方への局面変化」を経る。なお「①改善」または「②足踏み」から「③下方への局面変化」に移行した時点で、既に景気後退局面に入った可能性が高いことを暫定的に示している。
- 「④悪化」または「⑤下げ止まり」から「①改善」または「②足踏み」に移行する場合は、「③上方への局面変化」を経る。なお「④悪化」または「⑤下げ止まり」から「③上方への局面変化」に移行した時点で、既に景気拡張局面に入った可能性が高いことを暫定的に示している。
- 「①改善」または「②足踏み」となった後に「③上方への局面変化」の基準を満たした場合、および「④悪化」または「⑤下げ止まり」となった後に「③下方への局面変化」の基準を満たした場合「③局面変化」は適用しない。
- 定義の欄の「景気拡張」及び「景気後退」については、すべて暫定的なものとする。
- 正式な景気循環(景気基準日付)については「CI一致指数」の各採用系列から作られる「ヒストリカルDI」に基づき、景気動向指数研究会での議論を踏まえて、経済社会総合研究所長が設定するものである。
DI(ディフュージョン・インデックス)
「DI(ディフュージョン・インデックス)」とは、経済活動の各分野への景気の波及の度合い(波及度)を測定することを目的とした指標のことをいいます。
月々で振れはあるものの、「DI一致指数」が継続的に「50%」を上回っている場合は景気の「拡張期(拡大期)」とし、「DI一致指数」が継続的に「50%」を下回っている場合は景気の「後退期」としています。
なお、「DI」は、経済活動の各分野に対する景気拡張や景気後退の波及した度合いを示す指標であり、景気拡張や景気後退が加速していることを示す指標ではありません。
採用系列
「CI」と「DI」が採用している指標は共通であり、景気に対し先行して動く「先行指数」、ほぼ一致して動く「一致指数」、遅れて動く「遅行指数」で構成されています。
「先行指数」は「一致指数」より数か月ほど先行して動くため、景気の動きを予測する目的で利用され、「遅行指数」は「一致指数」より数か月から半年ほど遅れて動くため、事後的な確認に利用されます。
「採用系列」は、概ねひとつの山もしくは谷が経過するごとに見直しが行われるため、以下のリンクから最新の情報を参照するようにすることをお薦めします。
先行系列(11種類) ※2021年5月現在
- 最終需要財在庫率指数(逆)
- 鉱工業用生産財在庫率指数(逆)
- 新規求人数(除学卒)
- 実質機械受注(製造業)
- 新設住宅着工床面積
- 消費者態度指数(2人以上世帯)
- 日経商品指数(42種)
- マネーストック(M2)(前年同月比)
- 東証株価指数
- 投資環境指数(製造業)
- 中小企業売上げ見通しDI
一致系列(10種類) ※2021年5月現在
- 生産指数(鉱工業)
- 鉱工業用生産財出荷指数
- 耐久消費財出荷指数
- 労働投入量指数(調査産業計)
- 投資財出荷指数(除輸送機械)
- 商業販売額(小売業)(前年同月比)
- 商業販売額(卸売業)(前年同月比)
- 営業利益(全産業)
- 有効求人倍率(除学卒)
- 輸出数量指数
遅行系列(9種類) ※2021年5月現在
- 第3次産業活動指数(対事業所サービス業)
- 常用雇用指数(調査産業計)
- 実質法人企業設備投資(全産業)
- 家計消費支出(勤労者世帯、名目)(前年同月比)
- 法人税収入
- 完全失業率(逆)
- きまって支給する給与(製造業、名目)
- 消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)(前年同月比)
- 最終需要財在庫指数
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成29年度 第6問】
景気動向指数の個別系列は、先行系列、一致系列、遅行系列に分けられる。各系列の具体例の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
ア 先行系列:消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)
一致系列:実質法人企業設備投資(全産業)
遅行系列:法人税収入
イ 先行系列:所定外労働時間指数(調査産業計)
一致系列:耐久消費財出荷指数
遅行系列:営業利益(全産業)
ウ 先行系列:中小企業売上げ見通しDI
一致系列:新規求人数(除学卒)
遅行系列:新設住宅着工床面積
エ 先行系列:東証株価指数
一致系列:有効求人倍率(除学卒)
遅行系列:完全失業率
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
景気動向指数の採用系列に関する知識を問う問題です。
「CI」と「DI」が採用している指標は共通であり、景気に対し先行して動く「先行指数」、ほぼ一致して動く「一致指数」、遅れて動く「遅行指数」で構成されています。
「先行指数」は「一致指数」より数か月ほど先行して動くため、景気の動きを予測する目的で利用され、「遅行指数」は「一致指数」より数か月から半年ほど遅れて動くため、事後的な確認に利用されます。
「採用系列」は、概ねひとつの山もしくは谷が経過するごとに見直しが行われるため、以下のリンクから最新の情報を参照するようにすることをお薦めします。
(ア) 不適切です。
選択肢(ア)に記述されている指標は全て「遅行系列」であるため、選択肢の内容は不適切です。
採用系列(選択肢の内容) | 正誤 | |
先行系列 | 消費者物価指数(生鮮食品を除く総合) | × 遅行系列 |
一致系列 | 実質法人企業設備投資(全産業) | × 遅行系列 |
遅行系列 | 法人税収入 | 〇 |
(イ) 不適切です。
選択肢(イ)に記述されている指標は全て「一致系列」であるため、選択肢の内容は不適切です。
採用系列(選択肢の内容) | 正誤 | |
先行系列 | 所定外労働時間指数(調査産業計) | × 一致系列 (現在は対象外) |
一致系列 | 耐久消費財出荷指数 | 〇 |
遅行系列 | 営業利益(全産業) | × 一致系列 |
(ウ) 不適切です。
選択肢(ウ)に記述されている指標は全て「先行系列」であるため、選択肢の内容は不適切です。
採用系列(選択肢の内容) | 正誤 | |
先行系列 | 中小企業売上げ見通しDI | 〇 |
一致系列 | 新規求人数(除学卒) | × 先行系列 |
遅行系列 | 新設住宅着工床面積 | × 先行系列 |
(エ) 適切です。
選択肢(エ)に記述されている「先行系列」「一致系列」「遅行系列」の組み合わせは正しいため、選択肢の内容は適切です。
採用系列(選択肢の内容) | 正誤 | |
先行系列 | 東証株価指数 | 〇 |
一致系列 | 有効求人倍率(除学卒) | 〇 |
遅行系列 | 完全失業率 | 〇 |
答えは(エ)です。
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