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経済学・経済政策 ~R1-8-1 IS-LM曲線(3)水平なLM曲線~

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今回は、「経済学・経済政策 ~R1-8-1 IS-LM曲線(3)水平なLM曲線~」について説明します。

 

経済学・経済政策 ~令和元年度一次試験問題一覧~

令和元年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

IS-LM曲線(一次試験) -リンク-

一次試験に向けた「IS-LM曲線」について説明しているページを以下に示しますので、アクセスしてみてください。

 

 

LM曲線とは

「LM曲線」とは、縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「GDP(Y)」を取ったグラフにおいて「資本市場(貨幣市場)」が均衡する点の組み合わせを表す曲線のことをいいます。

「資本市場(貨幣市場)」において「GDP(Y)」が増加すると「利子率(r)」が上昇するため「LM曲線」は右上がりの曲線として表されます。

なお、「LM曲線」の「L」は「Liquidity Preference(流動性選好)」を、「M」は「Money Supply(貨幣供給)」を表しています。

 

LM曲線

 

LM曲線の描写

「LM曲線」は、縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「実質貨幣供給量( M÷P )、貨幣需要量(L)」を取った「貨幣供給曲線/貨幣需要曲線」と、縦軸に「貨幣の取引需要(L1)」を、横軸に「GDP(Y)」を取った「貨幣の取引需要曲線」を用いて、「GDP(Y)」が変化したときに「利子率(r)」がどのように変化するかを確認していくことで描写することができます。

結論として、「GDP(Y)」が増加すると「利子率(r)」が上昇するため「LM曲線」は右上がりの曲線として表されます。

「GDP(Y)」が増加した場合に「利子率(r)」が変化していく流れを以下に示します。

 

  1. 「GDP(Y)」が「Ya」から「Yb」に増加する
  2. 「GDP(Y)」が増加したため「貨幣の取引需要(L1)」が「L1a」から「L1b」に増加する
  3. 「貨幣の取引需要(L1)」が増加したため「 L=L1+L2 」で表される「貨幣需要量(L)」が「La」から「Lb」に増加する
  4. 「貨幣需要量(L)」が増加したため「利子率(r)」が「ra」から「rb」に上昇して「資本市場(貨幣市場)」が均衡する

 

LM曲線の描写

 

流動性のわな

「流動性のわな」とは「利子率(r)」が「最低水準(r0)」まで低下している状況のことをいい、このとき「貨幣需要の利子弾力性」は無限大になります。

具体的には、「利子率(r)」が「最低水準(r0)」まで低下すると、債券の価値が一気に高まり「債券価格(PB)」が最高水準になると同時に「債券需要(DB)」が一気に減少するため、結果として「貨幣の資産需要(L2)」が一気に増加するという状況が発生します

 

貨幣の資産需要曲線

 

通常においては、「GDP(Y)」が減少すると「貨幣の取引需要(L1)」が減少するため「利子率(r)」が低下しますが、「流動性のわな」の状況下においては「利子率(r)」が「最低水準(r0)」まで低下しているため「GDP(Y)」が減少して「貨幣の取引需要(L1)」が減少しても「利子率(r)」は低下しません

その結果、「流動性のわな」の状況下においては「LM曲線」は「最低利子率(r0)」で水平となります。

 

LM曲線(流動性のわな)

 

LM曲線の描写(簡便法)

「貨幣供給曲線/貨幣需要曲線」と「貨幣の取引需要曲線」を用いて「LM曲線」を描写していく方法ではなく、縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「GDP(Y)」を取ったグラフにおいて「LM曲線」を簡易に描写する方法について説明します。

「LM曲線」を簡易に描写する方法と言いながらも、「金融政策」などにより「LM曲線」がどのように変化するかを考える場合は、こちらの考え方を理解しておかないと付いていけなくなるため、非常に重要です

 

GDPが増加する場合

縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「GDP(Y)」を取ったグラフにおいて「GDP(Y)」が増加すると「利子率(r)」がどのように変化していくかを考えていきます

 

  1. 「GDP(Y)」が「Ya」から「Yb」に増加するため「ポイント(●)」はグラフの右側に移動する
  2. 「GDP(Y)」の増加により「資本市場(貨幣市場)」において「貨幣の取引需要(L1)」が増加するため「貨幣需要量( L = L1 + L2 )」が増加して「資本市場(貨幣市場)」が超過需要の状態( M÷P < L )となる
  3. 「資本市場(貨幣市場)」が超過需要の状態( M÷P < L )になると「利子率(r)」が「ra」から「rb」に上昇するため「ポイント(●)」はグラフの上側に移動する
  4. 「利子率(r)」が「ra」から「rb」に上昇すると「債券価格(PB)」が下降する
  5. 「債券価格(PB)」が下降すると「債券需要(DB)」が増加する
  6. 「債券需要(DB)」が増加すると「貨幣の資産需要(L2)」が減少する
  7. 需要と供給が一致するところ( M÷P = L )まで「貨幣の資産需要(L2)」が減少して「資本市場(貨幣市場)」が均衡する

 

したがって、「GDP(Y)」の増加により「ポイント(●)」はグラフの右上に移動するため「LM曲線」は右上がりの曲線として表されます。

 

GDPが増加する場合

 

GDPが減少する場合

縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「GDP(Y)」を取ったグラフにおいて「GDP(Y)」が減少すると「利子率(r)」がどのように変化していくかを考えていきます

 

  1. 「GDP(Y)」が「Yb」から「Ya」に減少するため「ポイント(●)」はグラフの左側に移動する
  2. 「GDP(Y)」の減少により「資本市場(貨幣市場)」において「貨幣の取引需要(L1)」が減少するため「貨幣需要量( L=L1+L2 )」が減少して「資本市場(貨幣市場)」が超過供給の状態( M÷P > L )となる
  3. 「資本市場(貨幣市場)」が超過供給の状態( M÷P > L )になると「利子率(r)」が「rb」から「ra」に下降するため「ポイント(●)」はグラフの下側に移動する
  4. 「利子率(r)」が「rb」から「ra」に下降すると「債券価格(PB)」が上昇する
  5. 「債券価格(PB)」が上昇すると「債券需要(DB)」が減少する
  6. 「債券需要(DB)」が減少すると「貨幣の資産需要(L2)」が増加する
  7. 需要と供給が一致するところ( M÷P = L )まで「貨幣の資産需要(L2)」が増加して「資本市場(貨幣市場)」が均衡する

 

したがって、「GDP(Y)」の減少により「ポイント(●)」はグラフの左下に移動するため「LM曲線」は左下がりの曲線(右上がりの曲線)として表されます。

 

GDPが減少する場合

 

LM曲線の右下と左上の領域

「LM曲線」とは、縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「GDP(Y)」を取ったグラフにおいて「資本市場(貨幣市場)」が均衡する点の組み合わせを表す曲線のことをいいますが、「LM曲線」の右下の領域では「資本市場(貨幣市場)」において「超過需要の状態( M÷P < L )」が発生しており、「LM曲線」の左上の領域では「資本市場(貨幣市場)」において「超過供給の状態( M÷P > L )」が発生しています。

 

LM曲線(超過供給/超過需要)

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【令和元年度 第8問】

第8問
総需要-総供給分析の枠組みで、財政・金融政策の効果と有効性を考える。

下記の設問に答えよ。

 

(設問1)

「流動性のわな」の状況下にあるときのLM曲線は、下図のように水平になる。このときの総需要曲線に関する記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

 

 

[解答群]

ア 物価が下落しても、利子率が低下しないため、投資支出は不変である。したがって、総需要曲線は垂直になる。
イ 物価が下落すると、利子率が低下して、投資支出が増加する。したがって、総需要曲線は右下がりになる。
ウ 物価が下落すると、利子率は低下しないが、投資支出が増加する。したがって、総需要曲線は右下がりになる。
エ 物価が下落すると、利子率は低下するが、投資支出は不変である。したがって、総需要曲線は垂直になる。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答(設問1)

流動性のわなの状況下にある場合の総需要曲線に関する知識を問う問題です。

 

いきなり、「総需要曲線」のことを説明しても難しすぎるので「LM曲線」から説明していきます。

 

「LM曲線」とは、縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「GDP(Y)」を取ったグラフにおいて「資本市場(貨幣市場)」が均衡する点の組み合わせを表す曲線のことをいいます。

「資本市場(貨幣市場)」において「GDP(Y)」が増加すると「利子率(r)」が上昇するため「LM曲線」は右上がりの曲線として表されます。

 

LM曲線

 

「流動性のわな」とは「利子率(r)」が「最低水準(r0)」まで低下している状況のことをいい、このとき「貨幣需要の利子弾力性」は無限大になります。

具体的には、「利子率(r)」が「最低水準(r0)」まで低下すると、債券の価値が一気に高まり「債券価格(PB)」が最高水準になると同時に「債券需要(DB)」が一気に減少するため、結果として「貨幣の資産需要(L2)」が一気に増加するという状況が発生します

 

貨幣の資産需要曲線

 

通常においては、「GDP(Y)」が減少すると「貨幣の取引需要(L1)」が減少するため「利子率(r)」が低下しますが、「流動性のわな」の状況下においては「利子率(r)」が「最低水準(r0)」まで低下しているため「GDP(Y)」が減少して「貨幣の取引需要(L1)」が減少しても「利子率(r)」は低下しません

その結果、「流動性のわな」の状況下においては「LM曲線」は「最低利子率(r0)」で水平となります。

 

LM曲線(流動性のわな)

 

選択肢の前半部分

「流動性のわな」の状況下にあるとき「利子率(r)」が「最低水準(r0)」まで低下しているため「物価(P)」が下落しても「利子率(r)」は低下しません

 

「マネーストック(マネーサプライ・貨幣供給量)(M)」が変化せずに「物価(P)」が下落すると「実質貨幣供給量(M÷P)」が増加するため「貨幣供給曲線」は右方にシフトします。

「流動性のわな」の状況下でない場合は、「資本市場(貨幣市場)」の需要と供給が均衡する「貨幣需要曲線」と「貨幣供給曲線」の交点が右下にシフトして「利子率」が低下します

 

 

しかし、「流動性のわな」の状況下にある場合は、「資本市場(貨幣市場)」の需要と供給が均衡する「貨幣需要曲線」と「貨幣供給曲線」の交点が右方にシフトするだけで「利子率」は変化しません

 

 

 

選択肢の中盤部分

「利子率(r)」が低下しなければ「投資(I)」は変化しません

 

「投資(I)」は「利子率(r)」の減少関数です。減少関数とは、片方の数値が大きくなると、他方の数値が小さくなることを示しています。
つまり「利子率(r)」が低下すれば「投資(I)」が増加して、「利子率(r)」が上昇すれば「投資(I)」が減少します。

 

選択肢の後半部分

「物価(P)」が下落しても「投資(I)」が変化せず「GDP(Y)」が変化しないため「総需要曲線(AD)」は垂直の曲線として表されます。

 

「総需要曲線(AD)」とは、縦軸に「物価(P)」を、横軸に「GDP(Y)」を取ったグラフにおいて「財市場」と「資本市場(貨幣市場)」を共に均衡させる点の組み合わせを表す曲線のことをいいます。

「IS-LM曲線」において、「流動性のわな」の状況下でない場合は「物価(P)」が下落すると「実質貨幣供給量(M÷P)」が増加して「LM曲線」は下方(見た目は右方)にシフトして「GDP(Y)」が増加しますが、「流動性のわな」の状況下にある場合は「LM曲線」は下方(見た目は右方)にシフトしますが「IS曲線」と「LM曲線」の交点はシフトしないため「GDP(Y)」は変化しません。(経済学・経済政策 ~R2-6-2 IS-LM曲線(2)財政政策と金融政策の効果~

したがって、「流動性のわな」の状況下にある場合は「物価(P)」が下落しても「GDP(Y)」は変化しないため「総需要曲線(AD)」は、垂直の曲線として表されます。

 

 

したがって、物価が下落しても、利子率が低下せず、投資支出は変化しないため、総需要曲線は垂直になります

 

答えは(ア)です。


 

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