このブログでは二次試験(事例Ⅲ/事例Ⅳ)についても説明していますので、参考としてください。

経済学・経済政策 ~R2-18 市場の失敗と外部性(1)外部不経済-ピグー税~

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今回は、「経済学・経済政策 ~R2-18 市場の失敗と外部性(1)外部不経済-ピグー税~」について説明します。

 

経済学・経済政策 ~令和2年度一次試験問題一覧~

令和2年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

余剰分析(外部経済・外部不経済) -リンク-

本ブログにて「余剰分析(外部経済)」「余剰分析(外部不経済)」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

 

余剰分析

「余剰分析」とは、財市場において資源配分の効率性を分析する手法のことをいいます。

「余剰」とは、財市場の取引により得られる「利益」のことを表しており、「余剰分析」では「消費者余剰」と「生産者余剰」と「政府余剰」を重ね合わせた「社会的総余剰(総余剰)」に基づき、資源配分が効率的になっているかを確認していきます。

 

例:社会的総余剰(消費者余剰+生産者余剰)

 

外部効果

「外部効果」とは、財市場の取引によって当事者である「消費者」や「生産者」以外の第三者に「便益」や「損害」を与えることをいいます。

取引当事者以外の第三者に「便益」を与えることを「外部経済」といい、取引当事者以外の第三者に「損害」を与えること「外部不経済」といいます。「外部不経済」は、工場の生産活動により周辺環境や周辺住民に悪影響を与えてしまうなどのケースが該当します。

「外部効果」が発生する財の「余剰分析」では、第三者に与える「便益」により社会全体が享受する利益や、第三者に与える「損害」を賠償するために社会全体が負担すべき費用も考慮する必要がありますが、政府が介入せずに財市場に取引を任せると、第三者に与える「便益」や「損害」が考慮されずに財の生産量が決定されるため、「社会的総余剰(総余剰)」が最大化されず、最適な資源配分が実現されなくなります

 

外部効果が発生する財の供給曲線(限界費用曲線)

「外部効果」が発生する財の「余剰分析」においては「私的限界費用曲線(PMC)」と「社会的限界費用曲線(SMC)」の2種類の「供給曲線(限界費用曲線)」が描画されます。

 

  • 私的限界費用曲線(PMC)
    「私的限界費用曲線(PMC)」は、生産者が財を生産するための「供給曲線」であり、生産者が財を生産するための「限界費用」を表しています。
  • 社会的限界費用曲線(SMC)
    「社会的限界費用曲線(SMC)」は、生産者が財を生産するための「限界費用」に、第三者に与える「便益」により社会全体が享受する利益や、第三者に与える「損害」を賠償するために社会全体が負担すべき費用を加味した限界費用を表しています。

 

外部不経済が発生する財の場合

「外部不経済」が発生する財の場合、その取引によって第三者が被った「損害」を賠償するために社会全体が負担すべき費用が追加となるため、社会全体の限界費用を表す「社会的限界費用曲線(SMC)」は「私的限界費用曲線(PMC)」よりも上方にシフトします。

 

外部不経済が発生する財(PMC/SMC)

 

余剰分析(外部不経済)

「外部不経済」とは、財市場の取引によって当事者である「消費者」や「生産者」以外の第三者に「損害」を与えることをいいます。

 

政府が介入せずに財市場に取引を任せた場合

「外部不経済」が発生する財において、政府が介入せずに市場に取引を任せた場合の「社会的総余剰(総余剰)」について考えていきます。

 

消費者余剰と生産者余剰

政府が介入せずに「外部不経済」が発生する財市場に取引を任せると、生産者はその取引が第三者に与える「損害」を賠償するための費用を考慮しないため、生産者が財を生産するための「限界費用」である「私的限界費用曲線(PMC)」と「需要曲線」の交点で財の価格と生産量を決定します。

 

消費者余剰/生産者余剰
(財市場に取引を任せた場合)

 

外部不経済による余剰(損失)

「外部不経済」が発生する財を取引するごとに「損害」を賠償するための費用が増加していくため、生産者が財を生産するための「限界費用」である「私的限界費用曲線(PMC)」と、第三者に与える「損害」を賠償するために社会全体で負担すべき費用を加味した「限界費用」である「社会的限界費用曲線(SMC)」の差額である「線IJ」に「生産量(X0)」を乗じた面積(IJ×X0)に相当する「外部不経済による余剰(損失)」が発生します。

 

 

外部不経済(財市場に取引を任せた場合)

 

社会的総余剰(総余剰)

「消費者余剰」と「生産者余剰」と「外部不経済」を重ね合わせた「社会的総余剰(総余剰)」において「三角形GJI」の分だけ「余剰の損失」が発生します。

 

社会的総余剰(財市場に取引を任せた場合)

 

政府が介入する場合(ピグー税・補助金の交付)

「外部不経済」が発生する財において、政府が介入する場合の「社会的総余剰(総余剰)」について考えていきます。

「外部不経済」が発生する場合に「政府が介入する」手段としては「課税(ピグー税)」と「補助金の交付」の2種類があります。

 

  • 課税(ピグー税)
    「外部不経済」を引き起こしている財に対して、政府が「外部不経済」の金額に相当する「従量税」を課す方法
  • 補助金の交付
    「外部不経済」を引き起こしている財の「生産量」を減らすことに対して、政府が「補助金」を交付する方法

 

「従量税」とは、財の数量を基準として課税する方法のことをいい、政府は財の販売単位に対して一定額を課税します。

 

消費者余剰と生産者余剰と政府余剰

「外部不経済」が発生する財に、政府が生産者に「従量税(ピグー税)」を課した場合、生産者が財を生産するための「限界費用」である「私的限界費用曲線(PMC)」が上方にシフト( S → S’ )するため、第三者に与える「損害」を賠償するために社会全体で負担すべき費用を加味した「限界費用」である「社会的限界費用曲線(SMC)」と「需要曲線」の交点で財の価格と生産量が決定します。

その結果、「需要曲線」と「供給曲線」の交点が「J」から「G」にシフトして、財の消費量が「X0個」から「X1個」に減少するため、「消費者余剰」と「生産者余剰」が減少します

政府としては「従量税(ピグー税)」の税収に相当する「X1個」分の「政府余剰」が発生します

 

消費者余剰/生産者余剰/政府余剰(ピグー税を課した場合)

 

外部不経済

「外部不経済」が発生する財に、政府が生産者に「従量税(ピグー税)」を課した場合、「需要曲線」と「供給曲線」の交点が「J」から「G」にシフトして、財の消費量が「X0個」から「X1個」に減少するため、「外部不経済による余剰(損失)」についても「X1個」分に減少します。

 

外部不経済(ピグー税を課した場合)

 

社会的総余剰(総余剰)

「外部不経済」が発生する財に、政府が生産者に「従量税(ピグー税)」を課した場合、「消費者余剰」と「生産者余剰」と「政府余剰」と「外部不経済」を重ね合わせた「社会的総余剰(総余剰)」においては、「余剰の損失」が発生せず、「社会的総余剰(総余剰)」が最大化され、最適な資源配分が実現されていることが分かります

 

社会的総余剰(ピグー税を課した場合)

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【令和2年度 第18問】

オーバー・ツーリズムによる地域住民の生活への悪影響に対して、政府が税を使って対処することの効果を考える。下図において、Dはこの地域の観光資源に対する需要曲線、Sは観光業者の私的限界費用曲線、S’はオーバー・ツーリズムに伴う限界外部費用を含めた観光業者の社会的限界費用曲線である。

この図に関する記述として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

 

 

a 課税によって、観光客の余剰は四角形BCJGだけ減少する。
b 課税によって、観光業者の余剰は四角形EFHGだけ減少する。
c 課税によって、この地域の総余剰は三角形GJIだけ増加する。
d 課税によって、政府は四角形EFJIの税収を得る。

 

[解答群]

ア aとb
イ aとc
ウ bとc
エ bとf

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答

「外部不経済」に対する「課税(ピグー税)」の効果に関する知識を問う問題です。

 

「外部効果」が発生する財の「余剰分析」では、第三者に与える「便益」により社会全体が享受する利益や、第三者に与える「損害」を賠償するために社会全体が負担すべき費用も考慮する必要がありますが、政府が介入せずに財市場に取引を任せると、第三者に与える「便益」や「損害」が考慮されずに財の生産量が決定されるため、「社会的総余剰(総余剰)」が最大化されず、最適な資源配分が実現されなくなります

「外部不経済」が発生している財に「従量税(ピグー税)」を課した場合の「消費者余剰」と「生産者余剰」と「政府余剰」と「外部不経済」を重ね合わせた「社会的総余剰(総余剰)」においては、「余剰の損失」が発生せず、「社会的総余剰(総余剰)」が最大化され、最適な資源配分が実現されていることが分かります

 

 

(a) 適切です。

「外部不経済」が発生する財に、政府が生産者に「従量税(ピグー税)」を課した場合、生産者が財を生産するための「限界費用」である「私的限界費用曲線(PMC)」が上方にシフト( S → S’ )するため、第三者に与える「損害」を賠償するために社会全体で負担すべき費用を加味した「限界費用」である「社会的限界費用曲線(SMC)」と「需要曲線」の交点で財の価格と生産量が決定します。

その結果、「需要曲線」と「供給曲線」の交点が「J」から「G」にシフトして「X財」の消費量が「X0個」から「X1個」に減少するため「消費者余剰」と「生産者余剰」が減少します

 

 

したがって、課税によって、観光客の余剰(消費者余剰)は四角形BCJGだけ減少するため、選択肢の内容は適切です

 

(b) 不適切です。

「外部不経済」が発生する財に、政府が生産者に「従量税(ピグー税)」を課した場合、生産者が財を生産するための「限界費用」である「私的限界費用曲線(PMC)」が上方にシフト( S → S’ )するため、第三者に与える「損害」を賠償するために社会全体で負担すべき費用を加味した「限界費用」である「社会的限界費用曲線(SMC)」と「需要曲線」の交点で財の価格と生産量が決定します。

その結果、「需要曲線」と「供給曲線」の交点が「J」から「G」にシフトして「X財」の消費量が「X0個」から「X1個」に減少するため「消費者余剰」と「生産者余剰」が減少します

 

 

今回の問題で与えられた点では「消費者余剰」が減少した大きさを表現することができません
「需要曲線」と「S(PMC)」の「交点H」における価格が与えられていれば表現することはできますが。。。

 

したがって、課税によって、観光業者(消費者余剰)の余剰が減少するのは、四角形EFHGではないため、選択肢の内容は不適切です

 

(c) 適切です。

「外部不経済」が発生する財に、政府が生産者に「従量税(ピグー税)」を課した場合、「消費者余剰」と「生産者余剰」と「政府余剰」と「外部不経済」を重ね合わせた「社会的総余剰(総余剰)」においては、「余剰の損失」が発生せず、「社会的総余剰(総余剰)」が最大化され、最適な資源配分が実現されていることが分かります

 

 

したがって、課税によって、この地域の総余剰(社会的総余剰)は三角形GJIだけ増加するため、選択肢の内容は適切です

 

(d) 不適切です。

「外部不経済」が発生する財に、政府が生産者に「従量税(ピグー税)」を課した場合、生産者が財を生産するための「限界費用」である「私的限界費用曲線(PMC)」が上方にシフト( S → S’ )するため、第三者に与える「損害」を賠償するために社会全体で負担すべき費用を加味した「限界費用」である「社会的限界費用曲線(SMC)」と「需要曲線」の交点で財の価格と生産量が決定します。

その結果、政府としては、税金の収入額に相当する「X1個」分の「政府余剰」が発生します

 

 

したがって、課税によって、政府は四角形EFJIではなく、四角形EFHGの税収を得るため、選択肢の内容は不適切です

 

(a)と(c)に記述されている内容が適切であるため、答えは(イ)です。


 

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