経済学・経済政策 ~R2-4 主要経済理論(1)消費と貯蓄~

にほんブログ村に参加しています。
記事の内容にご満足いただけた場合は、以下のボタンをクリックいただけると、また頑張ることができます。

にほんブログ村 資格ブログ 中小企業診断士試験へ

にほんブログ村に参加しています。
記事の内容にご満足いただけた場合は、以下のボタンをクリックいただけると、また頑張ることができます。

にほんブログ村 資格ブログ 中小企業診断士試験へ







今回は、「経済学・経済政策 ~R2-4 主要経済理論(1)消費と貯蓄~」について説明します。

 

目次

経済学・経済政策 ~令和2年度一次試験問題一覧~

令和2年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

消費(C)

 

ケインズ型消費関数(税金を考慮しない場合)

税金を考慮しない場合の「ケインズ型消費関数」は、所得水準に関わらず発生する「基礎消費(a)」と、「限界消費性向(b)」に「GDP(Y)」を乗じた「変動消費(bY)」を合計することにより求めることができます。

 

 

基礎消費(a)

「基礎消費(a)」とは、所得水準に関わらず発生する消費のことをいいます。

 

限界消費性向(b)

「限界消費性向(b)」とは「所得(Y)」が1単位増加したときの「消費(C)」の変化量のことをいいます。

「 Y = C+I+G 」であり「 Y > C 」の関係が成立するため「限界消費性向(b)」は「0 < b < 1」の範囲で推移します。

 

 

「限界消費性向」は「ケインズ型消費曲線」の「傾き」として表されます

 

 

平均消費性向( C ÷ Y )

「限界消費性向(b)」に似た指標として「平均消費性向」という指標があります。

「平均消費性向」は、「原点(0)」と「所得(Y)」により決定する「消費(C)」をつなぐ曲線の傾きとして表されます

 

 

「平均消費性向」は「C(縦軸)÷ Y(横軸)」で求められます。

「基礎消費(a)」と「限界消費性向(b)」が一定であるとした場合、「平均消費性向」は「所得(Y)」が増加するにつれて小さくなります

式で表さなくとも、上述のグラフで「所得(Y)」を増加させる(右に動かす)ことをイメージすると「所得(Y)」が増加するにつれて「平均消費性向(傾き)」が小さくなることが分かると思います。

 

 

ケインズ型消費関数(税金を考慮した場合)

税金を考慮した場合の「ケインズ型消費関数」は、所得水準に関わらず発生する「基礎消費(a)」と、「限界消費性向(b)」に「所得(Y)」から「税金(T)」を差し引いた「可処分所得(Yd)」を乗じた「変動消費(b(Y-T))」を合計することにより求めることができます。

 

 

税金(T)

「税金(T)」は、「定額税(T0)」と、「所得(Y)」に「税率(t)」を乗じた「定率税(tY)」を合計することにより求めることができます。

 

 

「税金(T)」を「定額税(T0)」と「定率税(tY)」で表した場合の「ケインズ型消費関数」を以下に示します。

 

 

貯蓄(S)

 

貯蓄関数(税金を考慮しない場合)

税金を考慮しない場合の「貯蓄関数」は「所得(Y)」から「消費(C)」を控除することにより求めることができます。

 

 

「貯蓄関数」に「ケインズ型消費関数( C = a + bY )」を代入して変形すると以下のようになります。

 

 

限界貯蓄性向(1-b)

「限界貯蓄性向(1-b)」とは「所得(Y)」が1単位増加したときの「貯蓄(S)」の変化量のことをいい、「限界貯蓄性向 = 1 - 限界消費性向」として求めることができます。

「 S = Y - C 」であり「 S < Y 」の関係が成立するため「限界貯蓄性向(1-b)」は「0 < 1-b < 1」の範囲で推移します。

 

 

「ケインズ型消費関数( C = a + bY )」を代入して変形した「貯蓄関数」から分かるように、「貯蓄(S)」は「傾き(1-b)」で「所得(Y)」に比例して増加する金額から「基礎消費(a)」を控除することにより求められます

「限界貯蓄性向」は「貯蓄曲線」の「傾き」として表されます

 

 

平均貯蓄性向( S ÷ Y )

「限界貯蓄性向(1-b)」に似た指標として「平均貯蓄性向」という指標があります。
「平均貯蓄性向」は、「原点(0)」と「所得(Y)」により決定する「貯蓄(S)」をつなぐ曲線の傾きとして表されます

 

 

「平均貯蓄性向」は「S(縦軸)÷ Y(横軸)」で求められます。

「基礎消費(a)」と「限界貯蓄性向(1-b)」が一定であるとした場合、「平均貯蓄性向」は「所得(Y)」が増加するにつれて大きくなります

式で表さなくとも、上述のグラフで「所得(Y)」を増加させる(右に動かす)ことをイメージすると「所得(Y)」が増加するにつれて「平均貯蓄性向(傾き)」が大きくなることが分かると思います。

 

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【令和2年度 第4問】

下図は、均衡GDP の決定を説明する貯蓄・投資図である。
消費C は次のようなケインズ型の消費関数によって表されるとする。

  • C = C0 + c Y
    ( Y:所得、C:消費、C0:基礎消費、c:限界消費性向(0<c<1))

また、I は投資、S は貯蓄であり、S = Y - C  である。
この図に基づいて、下記の設問に答えよ。

 

 

(設問1)

この図に関する記述として、最も適切なものはどれか。

 

ア GDP が Y0 にあるとき、総需要 = 総供給、投資 = 貯蓄である。
イ GDP が Y1 にあるとき、総需要< 総供給、投資 >貯蓄である。
ウ GDP が Y1 にあるとき、総需要 >総供給、投資< 貯蓄である。
エ GDP が Y2 にあるとき、総需要< 総供給、投資 >貯蓄である。
オ GDP が Y2 にあるとき、総需要 >総供給、投資< 貯蓄である。

 

(設問2)

人々の節約志向が高まって、貯蓄意欲が上昇したとする。このときの消費と GDP の変化に関する記述として、最も適切なものはどれか。

 

ア 消費が減少し、GDP も減少する。
イ 消費が減少し、GDP が増加する。
ウ 消費が増加し、GDP が減少する。
エ 消費が増加し、GDP も増加する。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答(設問1)

問題で与えられた「貯蓄・投資図」から「投資と貯蓄」の関係と「総需要と総供給」の関係を読み解く力を求められています。

 

問題文で与えられている公式とグラフをじっくり見ていると、うっすらと解答が分かってくる気がしますが、財市場において「総需要」と「総供給」を意味する以下の式だけは理解しておかないと、頭が混乱してしまいます

 

  • 総需要:YD = C + I(+G)
  • 総供給:YS = Y

45度線分析

「45度線分析」とは、「45度線図」を用いて、財市場の「総需要(YD)」と「総供給(YS)」の関係を分析する手法のことをいいます。

財市場においては「総供給(YS)= GDP(Y)」の関係が成り立つため、縦軸に「総供給(YS)」を、横軸に「GDP(Y)」を取ったグラフにおいて「総供給曲線」が角度45度の曲線として描画されることから「45度線図」と呼ばれています。

「45度線図」において、財市場の「総需要(YD)」と「総供給(YS)」は「総需要曲線」と「総供給曲線」の交点で均衡します。このように、「総需要(YD)=総供給(YS)」となる「GDP(Y)」のことを「均衡GDP(YE)」といいます。

様々な要因により「総需要(YD)」が増加(減少)すると、企業による生産量が調整されて「総供給(YS)」が増加(減少)していき、最終的に「総需要(YD)=総供給(YS)」となる「均衡GDP(YE)」に落ち着きます。

 

45度線図

 

 

GDP が Y0 の場合

問題で与えられた「貯蓄・投資図」から、GDP が「Y0」であるとき「I:投資」と「S:貯蓄」の関係は「 I = S 」であると読み取ることができます。

「 I = S 」の関係を、貯蓄関数「 S = Y - C( S:貯蓄、Y:GDP、C:消費 )」に当てはめて「総需要(YD)」と「総供給(YS)」の関係を確認します。

 

  • I = S = Y - C
  • I = Y - C
  • I + C = Y ( I:投資、C:消費、Y:GDP )
  • YD = YS( YD = C + I:総需要、YS = Y:総供給 )

 

したがって、GDP が Y0 にあるとき「総需要=総供給」であり「投資=貯蓄」であるため、選択肢(ア)に記述されている内容は適切です。

 

GDP が Y1 の場合

問題で与えられた「貯蓄・投資図」から、GDP が「Y1」であるとき「I:投資」と「S:貯蓄」の関係は「 I > S 」であると読み取ることができます。

「 I > S 」の関係を、貯蓄関数「 S = Y - C( S:貯蓄、Y:GDP、C:消費 )」に当てはめて「総需要(YD)」と「総供給(YS)」の関係を確認します。

 

  • I > S = Y - C
  • I > Y - C
  • I + C > Y ( I:投資、C:消費、Y:GDP )
  • YD > YS( YD = C + I:総需要、YS = Y:総供給 )

 

したがって、GDP が Y1 にあるとき「総需要>総供給」であり「投資>貯蓄」であるため、選択肢(イ)(ウ)に記述されている内容は不適切です。

 

GDP が Y2 の場合

問題で与えられた「貯蓄・投資図」から、GDP が「Y2」であるとき「I:投資」と「S:貯蓄」の関係は「 I < S 」であると読み取ることができます。

「 I < S 」の関係を、貯蓄関数「 S = Y - C( S:貯蓄、Y:GDP、C:消費 )」に当てはめて「総需要(YD)」と「総供給(YS)」の関係を確認します。

 

  • I < S = Y - C
  • I < Y - C
  • I + C < Y ( I:投資、C:消費、Y:GDP )
  • YD < YS( YD = C + I:総需要、YS = Y:総供給 )

 

したがって、GDP が Y2 にあるとき「総需要<総供給」であり「投資<貯蓄」であるため、選択肢(エ)(オ)に記述されている内容は不適切です。

 

答えは(ア)です。


 

考え方と解答(設問2)

人々の節約志向が高まって貯蓄意欲が上昇した場合「消費」と「GDP」がどのように変化するかを求められています。

 

今回の問題において「貯蓄関数」は以下の通り指定されています。

 

  • S = Y - C( S:貯蓄、Y:GDP、C:消費 )

 

「貯蓄関数」で確認しなくても感覚的に分かるとは思いますが、人々の節約志向が高まって貯蓄意欲が上昇すると「S:貯蓄」が増加するため「C:消費」は減少します

 

  • S = Y - C ( S:貯蓄、Y:GDP、C:消費 )

 

今回の問題では「総需要(YD)」は以下の式で求められているため、「C:消費」が減少すると「総需要(YD)」は減少します

 

  • YD = C + I ( YD:総需要、C:消費、I:投資 )

 

「総需要(YD)」が減少すると「GDP」は以下の通り推移します。

 

  1. 「総需要(YD)」が減少すると「超過供給」となる。
  2. 「超過供給」になると企業が減産して供給を減少させるため「GDP」が減少する。
  3. 「GDP」は「総需要(YD)」と「総供給(YS)」が一致するところまで減少して均衡する

 

したがって、人々の節約志向が高まって貯蓄意欲が上昇すると、消費が減少してGDPも減少します

 

答えは(ア)です。


 

コメント

タイトルとURLをコピーしました