事例Ⅲ ~令和2年度 解答例(4)(第3問)~

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今回は、「事例Ⅲ ~令和2年度 解答例(4)(第3問)~」について説明します。

 

目次

事例Ⅲ ~令和2年度試験問題一覧~

令和2年度のその他の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

第3問

第3問(配点20点)

 

C社社長は、納期遅延対策として社内のIT化を考えている。C社のIT活用について、中小企業診断士としてどのように助言するか、120字以内で述べよ。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

解答の方向性

第3問では、C社の納期遅延の対策に有効な社内のIT活用について、助言する能力を問われています。

 

「第2問」において、製造部門で生じている問題点の対応策として「生産計画の作成方法の改善」について解答しましたが、あくまで「複雑な形状など高度な加工技術が必要な製品」の納期遅延に対する対応策であり、C社が製作する全ての製品を対象とはしていません

製造部長が作成している生産計画をシステム化して、C社が製作する全ての製品を対象とした問題点を解決することができれば、生産計画の精度がより向上すると考えられるため、C社が製作する全ての製品を対象とした問題点について記述されている箇所を抽出して、IT化を検討していきます

 

なお、問題文に「納期遅延対策として社内のIT化を考えている」と記述されています。

納期遅延を根絶するためには生産計画だけでなく生産統制を強化する必要があるため「生産管理システム」にするべきか迷いましたが、与件文に記述されている内容を踏まえると「生産計画システム」の方がC社に対する提言として具体性が高まると考え、あえて「生産管理システム」ではなく「生産計画システム」として解答を検討することとしました

 

また、IT化による改善を求められる際は、営業部門と製造部門で様々な情報をリアルタイムに共有するという内容を解答するパターンがよくありますので、今回も解答に使えそうな情報がないか確認していきます

 

なお、IT化を進めるためには、あらかじめ業務プロセスが見直されて確立されていることが前提条件です。

「第1問」において「標準化が確立されておらず脆弱な業務プロセス」が「C社の弱み」であると解答していることも考慮すると、まずは業務プロセスの見直しを進める必要があることにも注意が必要です。

 

与件文で関連しそうな箇所

与件文では、2ページの後半と3ページ全般に渡って記述されています。

 

【業務プロセス】の「最終段落」に「納期遅延の根絶」に向けた全社的な改善活動の中で支援システムとしてIT化も検討していると記述されています。

IT化により改善すべき問題点については【生産の現状】に記述されている内容から抽出していきます。

 

問題文の中では、以下の部分が該当します。

 

 

詳細に示すと以下の通りとなります。

 

業務プロセス

 

  • C社では、全社的な改善活動として「納期遅延の根絶」を掲げ、製作プロセスを含む業務プロセス全体の見直しを進めている。また、その対策の支援システムとしてIT化も検討している。
    ⇒本段落に記述されている内容から、「見直しが行われた製作プロセスを含む業務プロセス全体」に則り、IT化を進めていくと考えられます。

 

生産の現状

 

  • 製作工程は切断加工、曲げ加工、溶接・組立、研磨、最終検査の5工程である。切断加工工程と曲げ加工工程はNC加工機による加工であり、作業員2名が担当している。溶接・組立工程と研磨工程は溶接機や研磨機を用いた手作業であり、4班の作業チームが受注製品別に担当している。この作業チームは1班5名で編成され、熟練技術者が各班のリーダーとなって作業管理を行うが、各作業チームの技術力には差があり、高度な技術が必要な製作物の場合には任せられない作業チームもある。
    ⇒「各作業チームの技術力には差があり、高度な技術が必要な製作物の場合には任せられない作業チームもある」と記述されています。
    IT化により各作業チームにおける技術力の差を平準化することはできませんが、IT化により高度な技術が必要な製品の製作を任せられる作業チームの「余力」を可視化することによって、余力情報に基づき作業チームへの割り当てを行うことができれば、生産計画の精度を高めることができると考えられます。

 

  • ビル建築用金属製品は切断加工、曲げ加工、溶接・組立までは比較的単純であるが、その後の研磨工程に技術を要する。また、モニュメント製品は立体的で複雑な曲線形状の製作が多く、全ての工程で製作図の理解力と高い加工技術が要求される。ビル建築用金属製品は製作完了後、製造部長と営業部の担当者が最終検査を行って、出荷する。モニュメント製品は、デザイナーの立ち会いの下、最終検査が行われ、この際デザイナーの指示によって製品に修整や手直しが生じる場合がある。
    ⇒「モニュメント製品は、デザイナーの立ち会いの下、最終検査が行われ、この際デザイナーの指示によって製品に修整や手直しが生じる場合がある」と記述されています。
    3次元CADデータを共有することにより、製品の最終イメージを摺合わせることができれば、最終検査においてデザイナーからの指示による製品の修正や手直しといった作業を削減できると考えられます。

 

  • 生産計画は、製造部長が月次で作成している。月次生産計画は、営業部の受注情報、設計担当者の製品仕様情報によって、納期順にスケジューリングされるが、溶接・組立工程と研磨工程は加工の難易度などを考慮して各作業チームの振り分けを行いスケジューリングされる。C社の製品については基準となる工程順序や工数見積もりなどの標準化が確立しているとはいえない。
    製造部長が月次で作成している生産計画のシステム化を進めていきます。
    また、構築したシステム上で営業部の受注情報、設計担当者の製品仕様情報をリアルタイムに共有することで、担当者間の打ち合わせを削減できると考えられます。

 

  • 工場は10年前に改築し、個別受注生産に適した設備や作業スペースのレイアウトに改善したが、最近の加工物の大型化によって狭隘(きょうあい)な状態が進み、溶接・組立工程と研磨工程の作業スペースの確保が難しく、新たな製品の着手によって作業途中の加工物の移動などを強いられている。
    ⇒「工場は10年前に改築し、個別受注生産に適した設備や作業スペースのレイアウトに改善したが、最近の加工物の大型化によって狭隘な状態が進み」と記述されています。
    工場建屋の面積が制約となり、レイアウトを見直しても作業スペースを確保できるような状況ではないと考えられますが、生産計画のシステム化によって、営業部の受注情報と工場全体における製作の進捗状況などを考慮して最適な作業スペースを割り当てることで、新たな製品の着手によって発生している作業途中の加工物の移動を削減できると考えられます。

 

  • 製造部長は、全社的改善活動のテーマである納期遅延の問題点を把握するため、作業時間中の作業者の稼働状態を調査した。それによると、不稼働の作業内容としては、「材料・工具運搬」と「歩行」のモノの移動に関連する作業が多く、その他作業者間の「打ち合わせ」、営業部担当者などとの打ち合わせのための「不在」が多く発生していた。
    ⇒モノの移動に関連する作業が多いことはレイアウトの問題であるため、IT化では改善できませんが、営業部の受注情報、設計担当者の製品仕様情報、3次元CADデータを共有することにより、作業者間の打ち合わせや営業部担当者などとの打ち合わせによる不稼働の時間を削減できると考えられます。

 

有効な社内のIT活用

与件文から抽出した内容に基づき、「有効な社内のIT活用」について「生産計画システムの構築」「情報の共有」の観点から、まとめていきます。

 

生産計画システムの構築

与件文から抽出した内容に基づき「生産計画システムの構築」について解答をまとめていきます。

 

  • 「見直しが行われた製作プロセスを含む業務プロセス全体」に則り、IT化を進めていく。
  • 製造部長が月次で作成している生産計画のシステム化を進めていく。
  • 高度な技術が必要な製品の製作を任せられる作業チームの「余力」を可視化することによって、余力情報に基づき作業チームへの割り当てを行うことができれば、生産計画の精度を高めることができる。
  • 生産計画のシステム化によって、営業部の受注情報と工場全体における製作の進捗状況などを考慮して最適な作業スペースを割り当てることで、新たな製品の着手によって発生している作業途中の加工物の移動を削減できる。

 

1つの文章にまとめます。

 

  • 「見直しが行われた製作プロセスを含む業務プロセス全体」に則り、IT化を進めていく。製造部長が月次で作成している生産計画のシステム化を進めていく。高度な技術が必要な製品の製作を任せられる作業チームの「余力」を可視化することによって、余力情報に基づき作業チームへの割り当てを行うことができれば、生産計画の精度を高めることができる。生産計画のシステム化によって、営業部の受注情報と工場全体における製作の進捗状況などを考慮して最適な作業スペースを割り当てることで、新たな製品の着手によって発生している作業途中の加工物の移動を削減できる。(263文字)

 

文章が長すぎるため、簡潔にします。

 

  • 見直しが行われた業務プロセスに則り、月次で作成している生産計画のシステム化を行う。余力情報に基づき作業チームへの割り当てを行うことができれば、生産計画の精度を高めることができ、営業部の受注情報と工場全体における製作の進捗状況などを考慮して最適な作業スペースを割り当てることで、新たな製品の着手によって発生している作業途中の加工物の移動を削減できる。(174文字)

 

  • 見直しが行われた業務プロセスに基づく生産計画システムを構築して、余力情報に基づく作業チームの割り当てや、加工物の移動が発生しない作業スペースの割り当てを行う。(79文字)

 

情報の共有

与件文から抽出した内容に基づき「情報の共有」について解答をまとめていきます。

 

  • 3次元CADデータを共有することにより、製品の最終イメージを摺合わせることができれば、最終検査においてデザイナーからの指示による製品の修正や手直しといった作業を削減できる。
  • 構築したシステム上で営業部の受注情報、設計担当者の製品仕様情報をリアルタイムに共有することで、担当者間の打ち合わせを削減できる。
  • 営業部の受注情報、設計担当者の製品仕様情報、3次元CADデータを共有することにより、作業者間の打ち合わせや営業部担当者などとの打ち合わせによる不稼働の時間を削減できる。

 

1つの文章にまとめます。

 

  • 3次元CADデータを共有することにより、製品の最終イメージを摺合わせることができれば、最終検査においてデザイナーからの指示による製品の修正や手直しといった作業を削減できる。構築したシステム上で営業部の受注情報、設計担当者の製品仕様情報をリアルタイムに共有することで、担当者間の打ち合わせを削減できる。営業部の受注情報、設計担当者の製品仕様情報、3次元CADデータを共有することにより、作業者間の打ち合わせや営業部担当者などとの打ち合わせによる不稼働の時間を削減できる。(232文字)

 

文章が長すぎるため、簡潔にします。

 

  • 構築したシステム上で、受注情報、製品仕様情報、3次元CADデータをリアルタイムに共有することで、打ち合わせによる不稼働や最終検査における製品の修正や手直しといった作業を削減する。(88文字)

 

解答のまとめ

「生産計画システムの構築」と「情報の共有」について整理した内容をまとめます。

 

  • 見直しが行われた業務プロセスに基づく生産計画システムを構築して、余力情報に基づく作業チームの割り当てや、加工物の移動が発生しない作業スペースの割り当てを行う。構築したシステム上で、受注情報、製品仕様情報、3次元CADデータをリアルタイムに共有することで、打ち合わせによる不稼働や最終検査における製品の修正や手直しといった作業を削減する。(167文字)

 

文章が長すぎるため、簡潔にします。

 

  • 見直された業務プロセスに基づく生産計画システムを構築して余力情報に基づく作業チームや加工物の移動が発生しない作業スペースの割り当てを行う。システムで受注情報、製品仕様情報、CADデータを共有して打ち合わせや最終検査の製品修正や手直しを削減する。(120文字)

 

こんな感じでしょうか。

 

解答例

C社のIT活用について、中小企業診断士として助言する内容は以下の通りです。

 

見直された業務プロセスに基づく生産計画システムを構築して余力情報に基づく作業チームや加工物の移動が発生しない作業スペースの割り当てを行う。システムで受注情報、製品仕様情報、CADデータを共有して打ち合わせや最終検査の製品修正や手直しを削減する。(120文字)

 

事例Ⅰ~事例Ⅲは正解のない試験なので、あくまで解答例として参考にしてもらえればと思います。

 


 

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