事例Ⅲ ~令和2年度 解答例(2)(第1問)~

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今回は、「事例Ⅲ ~令和2年度 解答例(2)(第1問)~」について説明します。

 

目次

事例Ⅲ ~令和2年度試験問題一覧~

令和2年度のその他の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

第1問

第1問(配点20点)

 

C社の(a)強みと(b)弱みを、それぞれ40字以内で述べよ。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

解答の方向性

第1問では、ステンレス加工業C社の事業内容を把握し、C社の強みと弱みを分析する能力を問われています。

 

「事例Ⅲ」の第1問としてよくあるパターンの問題のように見えます。

しかし、過去の問題では「創業からの事業変遷を理解した上で」「○○業界における」「○○面における」といった条件が付いていましたが、今回の問題では、これらの条件が一切なく単純に「C社の強みと弱み」を求められています

過去の問題では、与件文の「1ページ目」に記述されている【C社の概要】を中心に該当する文言を抽出していましたが、今回は与件文全体から「C社の強みと弱み」に該当する箇所を抽出しなければなりません

実際に問題を解いてみると分かりますが、与件文から該当する箇所を抽出するのも大変ですし、抽出した内容から、どれを「C社の弱み」とするかが非常に難しいため「第4問」まで解答した後、根幹にある大きな問題を「C社の弱み」として選択していくのが良いのではないかと思います

 

与件文で関連しそうな箇所

過去の問題では「創業からの事業変遷を理解した上で」「○○業界における」「○○面における」といった条件が付いていましたが、今回の問題では、これらの条件が一切なく単純に「C社の強みと弱み」を求められているため、与件文全体から「C社の強みと弱み」に該当する箇所を抽出する必要があります。

 

「C社の強み」は「1ページ目」の【C社の概要】から抽出することができますが「C社の弱み」となりそうな候補は、与件文全体に渡って記述されています

 

問題文の中では、以下の部分が該当します。

 

詳細に示すと以下の通りとなります。

 

C社の概要

  • C社が受注しているビル建築用金属製品の主なものは、出入口の窓枠やサッシ、各種手摺(てすり)、室内照明ボックスなどで、特別仕様の装飾性を要求されるステンレス製品である。またモニュメント製品は、作家(デザイナー)のデザインに従って製作するステンレス製の立体的造形物である。どちらも個別受注製品であり、C社の工場建屋の制約から設置高さ7m以内の製品である。主な顧客は、ビル建築用金属製品については建築用金属製品メーカー、モニュメント製品についてはデザイナーである。
    ⇒C社が製造しているビル建築用金属製品とモニュメント製品について説明されており、ビル建築用金属製品に関する記述の中で「ビル建築用金属製品の主なものは、特別仕様の装飾性を要求されるステンレス製品」と記述されています。
    「C社の強み」を表現する上で使える単語かもしれないので、マークしておきます。
    ⇒また、「工場建屋の制約から設置高さ7m以内の製品である」との記述は「C社の弱み」である可能性があります。

 

  • 創業時は、サッシ、手摺など建築用金属製品の特注品製作から始め、特に鏡面仕上げなどステンレス製品の表面品質にこだわり、溶接技術や研磨技術を高めることに努力した。その後、ビル建築内装材の大型ステンレス加工、サイン(案内板)など装飾性の高い製品製作に拡大し、それに対応して設計技術者を確保し、設計から製作、据付工事までを受注する企業になった。
    ⇒C社は、創業時から「特に鏡面仕上げなどステンレス製品の表面品質にこだわり、溶接技術や研磨技術を高めることに努力した」と記述されています。
    その結果、製作する製品が装飾性の高いものに拡大されていったと記述されているため「溶接技術と研磨技術」が「C社の強み」である可能性が高いです。
    ⇒また「設計から製作、据付工事までを受注する企業になった」と記述されています。
    設計から製作、据付工事までの一貫生産体制を有していることは「C社の強み」である可能性があります。

 

  • その後、3代目である現社長は、就任前から溶接技術や研磨技術を生かした製品市場を探していたが、ある建築プロジェクトで外装デザインを行うデザイナーから、モニュメントの製作依頼を受けたことを契機として、特殊加工と仕上げ品質が要求されるステンレス製モニュメント製品の受注活動を始めた。
    ⇒「溶接技術や研磨技術を生かした製品市場を探していた」と記述されているため、やはり「溶接技術と研磨技術」が「C社の強み」である可能性が高いです。
    デザイナーからモニュメントの製作依頼を受けたことをきっかけに、「特殊加工と仕上げ品質が要求されるステンレス製モニュメント製品の受注活動を始めた。」と記述されています。
    「C社の強み」を表現する上で使える単語かもしれないので、マークしておきます。

 

  • モニュメント製品は受注量が減少したこともあったが、近年の都市型建築の増加に伴い製作依頼が増加している。受注量の変動が大きいものの、全売上高の40%を占め、ビル建築用金属製品と比較して付加価値が高いため、今後も受注の増加を狙っている。
    ⇒「モニュメント製品は、C社の全売上高の40%を占める主力製品となっており、付加価値が高いため、今後も受注の増加を狙っている」と記述されています。
    「モニュメント製品は付加価値が高い」という表現は「C社の強み」を表現する上で使える単語かもしれないので、マークしておきます。
    ただし、「モニュメント製品は、受注量の変動が大きい」ということは、受注量が減少した場合にC社の売上高が受ける影響も大きいことを表しているため「C社の弱み」である可能性があります。

 

業務プロセス

  • 受注、設計、据付工事施工管理は営業部が担当する。顧客から引き合いがあると、受注製品ごとに受注から引き渡しに至る営業部担当者を決め、顧客から提供される設計図や仕様書などを基に、製作仕様と納期を確認して見積書を作成・提出し、契約締結後、製作図および施工図を作成して顧客承認を得る。通常、製作図および施工図の顧客承認段階では、仕様変更や図面変更などによって顧客とのやりとりが多く発生する。特にモニュメント製品では、造形物のイメージの摺合わせに時間を要する場合が多く、図面承認後の製作段階でも打ち合わせが必要な場合がある。設計には2次元CADを早くから使用している。
    「設計には2次元CADを早くから使用している。」と記述されており「C社の弱み」である可能性があります。

 

  • 契約から製品引き渡しまでのリードタイムは、平均約2か月である。最終引き渡し日が設定されているが、契約、図面作成、顧客承認までの製作前プロセスに時間を要して製作期間を十分に確保できないことや、複雑な形状など高度な加工技術が必要な製品などの受注内容によって、製作期間が生産計画をオーバーするなど、納期の遅延が生じC社の大きな悩みとなっている。
    ⇒「納期の遅延が生じC社の大きな悩みとなっている。」と記述されているため「納期の遅延が生じていること」が「C社の弱み」である可能性が高いです。

 

  • C社では、全社的な改善活動として「納期遅延の根絶」を掲げ、製作プロセスを含む業務プロセス全体の見直しを進めている。また、その対策の支援システムとしてIT化も検討している。
    ⇒「全社的な改善活動として納期遅延の根絶を掲げ」と記述されているため「納期の遅延」が「C社の弱み」である可能性が高いです。
    ⇒また、「製作プロセスを含む業務プロセス全体の見直しを進めている」と記述されているため、「製作プロセスを含む業務プロセス全体に問題があること」が「C社の弱み」である可能性があります。

 

生産の現状

  • 製作工程は切断加工、曲げ加工、溶接・組立、研磨、最終検査の5工程である。切断加工工程と曲げ加工工程はNC加工機による加工であり、作業員2名が担当している。溶接・組立工程と研磨工程は溶接機や研磨機を用いた手作業であり、4班の作業チームが受注製品別に担当している。この作業チームは1班5名で編成され、熟練技術者が各班のリーダーとなって作業管理を行うが、各作業チームの技術力には差があり、高度な技術が必要な製作物の場合には任せられない作業チームもある。
    ⇒「各作業チームの技術力には差があり、高度な技術が必要な製作物の場合には任せられない作業チームもある」と記述されており「各作業チームの技術力に差があること」が「C社の弱み」である可能性があります。

 

  • ビル建築用金属製品は切断加工、曲げ加工、溶接・組立までは比較的単純であるが、その後の研磨工程に技術を要する。また、モニュメント製品は立体的で複雑な曲線形状の製作が多く、全ての工程で製作図の理解力と高い加工技術が要求される。ビル建築用金属製品は製作完了後、製造部長と営業部の担当者が最終検査を行って、出荷する。モニュメント製品は、デザイナーの立ち会いの下、最終検査が行われ、この際デザイナーの指示によって製品に修整や手直しが生じる場合がある。
    モニュメント製品の最終検査において、製品に修整や手直しが生じる場合があると記述されており、これも「C社の弱み」である可能性があります。

 

  • 生産計画は、製造部長が月次で作成している。月次生産計画は、営業部の受注情報、設計担当者の製品仕様情報によって、納期順にスケジューリングされるが、溶接・組立工程と研磨工程は加工の難易度などを考慮して各作業チームの振り分けを行いスケジューリングされる。C社の製品については基準となる工程順序や工数見積もりなどの標準化が確立しているとはいえない。
    基準となる工程順序や工数見積もりなどの標準化が確立しているとはいえないと記述されており、これも「C社の弱み」である可能性があります。

 

  • 工場は10年前に改築し、個別受注生産に適した設備や作業スペースのレイアウトに改善したが、最近の加工物の大型化によって狭隘(きょうあい)な状態が進み、溶接・組立工程と研磨工程の作業スペースの確保が難しく、新たな製品の着手によって作業途中の加工物の移動などを強いられている。
    ⇒工場は10年前に改築したが、最近の加工物の大型化によって、作業スペースの確保が難しくなっていると記述されています。
    「C社の概要」で記述されていた「C社の工場建屋の制約から設置高さ7m以内の製品である」と関連があり、C社が製造している製品の大型化が進んでいる状況の中で、工場建屋の制約から製作できる製品の高さが7m以内に限定されるということは、受注できる製品を選別しなければならないということを表しているため「C社の弱み」である可能性が高いです。

 

  • 製造部長は、全社的改善活動のテーマである納期遅延の問題点を把握するため、作業時間中の作業者の稼働状態を調査した。それによると、不稼働の作業内容としては、「材料・工具運搬」と「歩行」のモノの移動に関連する作業が多く、その他作業者間の「打ち合わせ」、営業部担当者などとの打ち合わせのための「不在」が多く発生していた。
    モノの移動に関連する作業や打ち合わせが多く作業効率が悪いと記述されており、これも「C社の弱み」である可能性があります。

 

C社の強み

与件文から抽出した内容に基づき「C社の強み」をまとめていきます。

 

  • 特殊加工と仕上げ品質が要求される付加価値が高いステンレス製モニュメント製品を製作する高い溶接技術と研磨技術を有していること。(62文字)
  • 設計から製作、据付工事までの一貫生産体制を有していること。(29文字)

 

1つの文章にまとめます。

 

  • C社の強みは、特殊加工と仕上げ品質が要求される付加価値が高いステンレス製モニュメント製品を製作する高い溶接技術と研磨技術を有していることと、設計から製作、据付工事までの一貫生産体制を有していることである。(102文字)

 

文章が長すぎるため、簡潔にします。

 

  • 付加価値が高いモニュメント製品を製作する高い溶接技術と研磨技術を有することと、設計から製作、据付工事までの一貫生産体制を有すること。(66文字)

 

  • 付加価値が高いモニュメント製品を製作する高い溶接技術や研磨技術と、設計から製作、据付工事までの一貫生産体制を有すること。(60文字)

 

40文字って短すぎますね。一気に削らないと。

 

  • 高付加価値製品を製作する高い溶接・研磨技術と設計から据付までの一貫生産体制の保有(40文字)

 

C社の弱み

与件文から抽出した内容に基づき「C社の弱み」をまとめていきます。
抽出した内容を列挙すると、以下に示す通り「C社の弱み」候補が大量にあります

 

「第4問」まで解答した後「C社の弱み」候補を見直して、全売上高に占めるモニュメント製品の割合が高く、今後もモニュメント事業の充実と拡大を狙っているC社にとって、根幹にある大きな「C社の弱み」は「工場建屋の制約」と「問題がある業務プロセス」と判断しました。(根拠というよりも感覚なので、論理的な説明は難しいです。)

 

  • 工場建屋の制約から設置高さ7m以内の製品であること
  • モニュメント製品は、受注量の変動が大きいこと
  • 設計には2次元CADを使用していること
  • 納期の遅延が生じていること
  • 製作プロセスを含む業務プロセス全体に問題があること
  • 各作業チームの技術力に差があること
  • モニュメント製品の最終検査において、製品に修整や手直しが生じる場合があること
  • 基準となる工程順序や工数見積もりなどの標準化が確立しているとはいえないこと
  • 最近の加工物の大型化によって、作業スペースの確保が難しくなっていること
  • モノの移動に関連する作業や打ち合わせが多く、作業効率が悪いこと

 

「工場建屋の制約」と「問題がある業務プロセス」に絞って「C社の弱み」をまとめていきます。

 

  • 工場建屋の制約から製作可能な製品の高さに制限があったり作業スペースの確保が難しくなっているなど最近の加工物の大型化に対応できないこと。
  • 基準となる工程順序や工数見積もりなどの標準化が確立しているとはいえず、製作プロセスを含む業務プロセス全体に問題があること。

 

1つの文章にまとめます。

 

  • 工場建屋の制約から製作可能な製品の高さに制限があったり作業スペースの確保が難しくなっているなど最近の加工物の大型化に対応できないことと基準となる工程順序や工数見積もりなどの標準化が確立しているとはいえず、製作プロセスを含む業務プロセス全体に問題があること。(128文字)

 

文章が長すぎるため、簡潔にします。

 

  • 工場建屋が最近の加工物の大型化に対応できないことと標準化が確立されておらず業務プロセスに問題があること。(52文字)

 

「C社の強み」と記述方法を統一化するため、「○○が××できないこと」ではなく「××できない○○」という表現に置き換えます

 

  • 最近の加工物の大型化に対応できない工場建屋と標準化が確立されておらず問題がある業務プロセス(45文字)

 

「問題がある業務プロセス」という表現ではうまく伝わらないので「脆弱な業務プロセス」という表現に置き換えて、もう少し簡潔にします。

 

  • 加工物の大型化に対応できない工場建屋と標準化が確立されておらず脆弱な業務プロセス(40文字)

 

解答例

C社の強みと弱みは以下の通りです。

 

(a)C社の強み

高付加価値製品を製作する高い溶接・研磨技術と設計から据付までの一貫生産体制の保有(40文字)

 

(b)C社の弱み

加工物の大型化に対応できない工場建屋と標準化が確立されておらず脆弱な業務プロセス(40文字)

 

事例Ⅰ~事例Ⅲは正解のない試験なので、あくまで解答例として参考にしてもらえればと思います。

 


 

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