事例Ⅳの解説もいよいよ終盤です。今年は解説が遅くなり申し訳ありませんでした。
かなり時間をかけて考えたので良い出来になっていると思います。

事例Ⅳ ~令和2年度 解答例(8)(企業価値)~

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令和2年度の事例Ⅳの「第3問(設問2)」に関する解答例(案)を説明していきます。

私なりの思考ロジックに基づく解答例(案)を以下に説明しますので、参考としてもらえればと思います。

 

事例Ⅳ ~令和2年度試験問題一覧~

令和2年度のその他の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

企業価値

「企業価値」は「企業買収(M&A)」などのケースにおいて使用されます。

中小企業は、事業領域を拡大することを目的として企業を買収したり、後継者が不在の場合に企業を存続させるための手段として企業を売却します

当然ながら、買収する側の企業としては買収しようとする企業をできるだけ安く購入したいと考え、売却する側の企業としてはできるだけ企業を高く売りたいと考えて交渉を進めることとなります。

このように、買収する側の企業と売却する側の企業で思惑が異なり、独自の立場でその買収価格(売却価格)を話し合っても双方の合意には至らないため、根拠に基づく「企業価値」を算出して、「企業買収(M&A)」の買収価格(売却価格)を決定していきます。

 

第3問

第3問(配点20点)

 

D社は、リフォーム事業の拡充のため、これまで同社のリフォーム作業において作業補助を依頼していたE社の買収を検討している。当期末のE社の貸借対照表によれば、資産合計は550百万円、負債合計は350百万円である。また、E社の当期純損失は16百万円であった。

 

(設問2)

この買収のリスクについて、買収前に中小企業診断士として相談を受けた場合、どのような助言をするか、60字以内で述べよ。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方(第3問 設問2)

この買収のリスクについて、買収前に中小企業診断士として相談を受けた場合、どのような助言をするかを求められています。

 

問題文を読む限り、D社がE社を買収する前に検討しておくべきリスクは以下2点だと考えられます。

 

  • E社の当期純損失が16百万円であること。
  • 銀行借り入れにより調達した資金を対価としてE社を買収すること。

 

インカムアプローチによる企業価値の評価

1つ目の「D社がE社を買収する前に検討しておくべきリスク」について考えていきます。

 

  • E社の当期純損失が16百万円であること。

 

「第3問(設問1)」において、D社がE社を買収した場合の会計処理について確認しました。(事例Ⅳ ~令和2年度 解答例(7)(企業結合の会計処理)~

その結果は、時価評価による純資産額が「150 百万円」であるE社を、D社が「50 百万円」で買収した場合、D社はE社を「100 百万円」だけ割安で手に入れたことになるため、企業結合の会計処理において、その差額を「負ののれん発生益」として特別利益に計上するという内容でした。

この結果だけを見ると、「50 百万円」で購入して「100 百万円」の利益を得ることができることから、すごくお買い得だと感じてしまいますが、企業買収は単なる買い物ではありません

D社がE社を買収した場合の会計処理は、貸借対照表という現時点における財政状態を表す財務諸表に基づいて処理されるものであり、E社を買収することにより、将来のキャッシュ・フローをどの程度獲得できるのかを表すものではありません

企業の買収は、企業を買収した時点で終わるのではなく、買収した後も、そのリソースを活用しながら収益を上げ続けていく必要があるため、将来のキャッシュ・フローを現在価値に換算して企業価値を評価する「インカムアプローチ」により、E社の企業価値を算定して買収の是非を検討する必要があります

なお、「インカムアプローチ」の代表的な手法は「DCF法(割引キャッシュフロー法)」といい、将来の予想キャッシュ・フローを「資本コスト」で割り引いて「企業価値」を算出します。

 

したがって、中小企業診断士として相談を受けた場合、DCF法(割引キャッシュフロー法)などのインカムアプローチを用いて、将来キャッシュ・フローの観点から当期純損失を計上しているE社の企業価値を評価して買収の是非を検討することを助言します。

 

DCF法(割引キャッシュフロー法)

「DCF法(割引キャッシュフロー法)」とは、将来の予想キャッシュ・フローを「資本コスト」で割り引いて「企業価値」を算出する方法です。

将来の事業活動により獲得できると予想されるキャッシュ・フローに基づき企業価値を算出するため、M&Aにおいて企業価値を算出するという目的と照らし合わせると最も適した評価方法ですが、将来の事業活動により獲得すると予想されるキャッシュ・フローの算出に多大な手間がかかります

また、キャッシュ・フローを算出する人の主観が組み込まれるため、客観的に金額の妥当性を評価することが難しいとされています。

 

銀行借り入れによる安全性の悪化

もう1つの「D社がE社を買収する前に検討しておくべきリスク」について考えていきます。

 

  • 銀行借り入れにより調達した資金を対価としてE社を買収すること。

 

「第1問」の経営分析において、D社は同業他社と比較して「借入金」が非常に多く「資金調達構造(自己資本比率/負債比率)」といった「安全性」が低いことが分かっています。

今回、銀行借り入れにより調達した資金を対価としてE社を買収することを検討していますが、銀行借り入れをすれば「安全性」がさらに悪化します。

今回の買収に際して、銀行借り入れをするのであれば、「借入金」の「利息の支払い」や「返済」に必要なキャッシュ・フローを獲得することができるのかについて検討しておく必要があります。

なぜなら、E社を買収するために調達した「借入金」の「利息の支払い」や「返済」に必要なキャッシュ・フローを獲得できなければ、D社の資金繰りがさらに悪化することが懸念されるからです。

 

したがって、中小企業診断士として相談を受けた場合、銀行借り入れでE社を買収するための資金を調達することによってD社の財政状態の安全性が悪化するため、借入金の利息の支払いや返済に必要なキャッシュ・フローを獲得することができるのかについて検討することを助言します。

 

解答のまとめ

「インカムアプローチによる企業価値の評価」と「銀行借り入れによる安全性の悪化」に基づき解答を構成します。

 

  • DCF法(割引キャッシュフロー法)などのインカムアプローチを用いて、将来キャッシュ・フローの観点から当期純損失を計上しているE社の企業価値を評価して買収の是非を検討することと、銀行借り入れでE社を買収するための資金を調達することによってD社の財政状態の安全性が悪化するため、借入金の利息の支払いや返済に必要なキャッシュ・フローを獲得することができるのかについて検討することを助言する。(191文字)

 

長すぎるため、文章を短くします。

「借入金の利息の支払いや返済に必要なキャッシュ・フローを獲得することができるのかについて検討すること」を全カットしてしまうのが気になります

 

  • DCF法などのインカムアプローチにより当期純損失を計上しているE社の企業価値を評価することと、銀行借り入れによる買収資金の調達によって財政状態の安全性が悪化することを助言する。(87文字)

 

まだ、長すぎるので、さらに文章を簡潔にします。

  • DCF法などにより当期純損失を計上しているE社の企業価値を評価することと銀行借り入れによって財政状態の安全性が悪化すること。(60文字)

 

こんな感じでしょうか。

 

解答(第3問 設問2)

この買収のリスクについて、買収前に中小企業診断士として助言する内容は以下の通りです。

DCF法などにより当期純損失を計上しているE社の企業価値を評価することと銀行借り入れによって財政状態の安全性が悪化すること。(60文字)

 


次回は、「事例Ⅳ ~令和2年度 解答例(9)(ROI:投下資本利益率)~」として「第4問(設問1・2)」について説明します。

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