財務会計の一次試験の問題解説が終了しました。

財務・会計 ~R2-2 引当金(2)貸倒引当金~

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今回は、「財務・会計 ~R2-2 引当金(2)貸倒引当金~」について説明します。

 

財務・会計 ~令和2年度一次試験問題一覧~

令和2年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

引当金 -リンク-

「引当金」については、過去にも説明していますので、以下のページにもアクセスしてみてください。

 

引当金の目的

当期の活動に起因して次期以降に支出または損失が発生する可能性が高い場合、「引当金繰入勘定(費用)」を計上して「引当金(評価勘定)」にその支出金額または損失金額を繰り入れることで、当期の費用として会計処理を行います。また、次期以降において実際に支出または損失が発生してしまった場合は「引当金(評価勘定)」を切り崩して、その損失を補填します。

数ある引当金の中でも有名な「貸倒引当金」は、当期の売上に関する売上債権を、次期以降に回収できない可能性がある場合に、その金額を貸倒引当金として計上して、当期売上の売掛金または受取手形から控除する形で表示します。

厳密に説明すると、「引当金」とは、債権者や株主等の利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにするために、「適正な期間損益計算」や「保守主義の原則」に則った会計処理を行うことを目的として、貸借対照表の負債の部(または資産の部)に繰り入れられる「評価勘定」です。

 

「適正な期間損益計算」への対応

「貸倒引当金」を例にすると、取引先の破産等により、年度末に販売した商品の売上債権を次期以降に回収できなかった(貸し倒れ)場合、売上債権を回収できなかったという事実は次期以降に発生したとしても、その売上債権が発生した事実は当期の収益に関連するものであると考えられるため、費用収益対応の原則や発生主義の原則に基づき、当期の損益計算として計上しておく必要があります。

 

「保守主義の原則」への対応

「保守主義の原則」では、予測される将来の危険に備えて慎重な判断に基づく会計処理を行うことを要請しています。

「貸倒引当金」を例にすると、次期以降に売上債権を回収できない可能性が高く(予測される将来の危険)、その金額を合理的に見積ることができる場合は、将来の費用または損失を先延ばしせずにあらかじめ計上しておく(慎重な判断に基づく会計処理)必要があります。

 

引当金の定義

引当金は、「企業会計原則」の「企業会計原則注解(注18)」に定義されています。

企業会計原則注解(注18) ~引当金について~

将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰入れ、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部又は資産の部に記載するものとする。

製品保証引当金、売上割戻引当金、返品調整引当金、賞与引当金、工事補償引当金、退職給与引当金、修繕引当金、特別修繕引当金、債務保証損失引当金、損害補償損失引当金、貸倒引当金等がこれに該当する。

発生の可能性の低い偶発事象に係る費用又は損失については、引当金を計上することはできない。

 

引当金の計上要件

「引当金」を計上するために満たすべき4つの条件を以下に示します。

  1. 将来の特定の費用または損失であること
  2. その費用又は損失が当期以前の事象に起因していること
  3. その費用又は損失が発生する可能性が高いこと
  4. その金額を合理的に見積ることができること

なお、発生の可能性が低い偶発事象に係る費用または損失に関する「引当金」を計上することはできません

 

偶発事象とは

偶発事象とは、現在は発生していないが、将来発生する可能性があり、その発生が偶発的(不確実)である事象のことをいいます。

例えば、偶発事象には「受取手形の裏書譲渡」や「受取手形の割引」などのケースなどがあります。

 

受取手形の裏書譲渡

「取引先A」から受け取った「受取手形」を、仕入商品の支払代金として「仕入先B」に裏書きして譲り渡すことを「受取手形の裏書譲渡」といいますが、仮に、裏書譲渡した手形が不渡り(「取引先A」の破産等により発生)となった場合は、「仕入先B」からその手形を買い戻さなければならない義務が発生します。
「取引先B」に譲り渡した手形が満期日に無事決済されるまでの間、もしかしたら買い戻さなければならないという偶発債務が発生します。

 

受取手形の割引

「取引先A」から受け取った「受取手形」を、満期日よりも前に銀行に買い取ってもらうことを「受取手形の割引」といいますが、仮に割引した手形が不渡り(「取引先A」の破産等により発生)となった場合は、銀行からその手形を買い戻さなければならない義務が発生します。
銀行に譲り渡した手形が満期日に無事決済されるまでの間、もしかしたら買い戻さなければならないという偶発債務が発生します。

 

 

貸倒引当金

「貸倒引当金」とは、当期に販売した商品や製品の売上債権(売掛金や受取手形)や当期以前に行った貸付金などの金銭債権を、取引先の業績悪化などの理由により次期以降に回収できない(貸倒れ)可能性がある場合に、その貸倒れに備えて設定する引当金のことをいいます。

なお、「貸倒引当金」は貸借対照表の資産の部に計上される売掛金、受取手形、貸付金などの売上債権や金銭債権から控除する形式で表示します。

 

売上債権の区分

「売上債権」は、債務者の財政状態および経営成績などに応じて区分されます。

 

  • 一般債権
    経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権
  • 貸倒懸念債権
    経営破綻の状態には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか、または生じる可能性の高い債務者に対する債権
  • 破産更生債権等
    経営破綻、または実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権

 

貸倒見積高の算定方法

「貸倒見積高」は、売上債権の区分に応じて、算定方法が異なります

「一般債権」は、貸倒れの可能性が低いため、債権全体または同種・同類の債権でグルーピング(総括引当法)して「貸倒見積高」を算定します。

「貸倒懸念債権」や「破産更生債権等」は、貸倒れの可能性が高いため、個別の債権ごと(個別引当法)に「貸倒見積高」を算定します。

 

売上債権の区分 算出の単位 貸倒見積高の算定方法
一般債権 総括引当法 貸倒実績率法
貸倒懸念債権 個別引当法 財務内容評価法
キャッシュ・フロー見積法
破産更生債権等 個別引当法 財務内容評価法
一般債権

一般債権については、債権全体または同種・同類の債権でグルーピング(総括引当法)して「貸倒実績率法」により「貸倒見積高」を算定します。

 

  • 貸倒実績率法
    過去の実績により合理的に設定した「貸倒実績率」を用いて「貸倒見積高」を算定する方法

 

貸倒懸念債権

貸倒懸念債権については、個別の債権ごと(個別引当法)に、「財務内容評価法」または「キャッシュ・フロー見積法」のいずれかの方法により「貸倒見積高」を算定します。

なお、同一の債権については、債務者の財政状態および経営成績の状況等が変化しない限り、同一の方法を継続して適用しなければなりません。

 

  • 財務内容評価法
    債権額から担保の処分見込額および保証による回収見込額を減額し、その残額について債務者の財政状態および経営成績を考慮して「貸倒見積高」を算出する方法
  • キャッシュ・フロー見積法
    債権の元本の回収および利息の受取に係るキャッシュ・フローを合理的に見積もることができる債権については、債権の元本および利息について元本の回収および利息の受取が見込まれるときから当期末までの期間にわたり当初の約定利子率で割り引いた金額の総額と債権の帳簿価額との差額を「貸倒見積高」とする方法

 

破産更生債権等

破産更生債権等については、個別の債権ごと(個別引当法)に「財務内容評価法」により「貸倒見積高」を算定します。

破産更生債権等の「貸倒見積高」は、原則として「貸倒引当金」として処理しますが、債権価額または取得原価から直接控除することもできます

 

  • 財務内容評価法
    債権額から担保の処分見込額および保証による回収見込額を減額し、その残額について債務者の財政状態および経営成績を考慮して「貸倒見積高」を算出する方法

 

貸倒引当金の仕訳

期末における「貸倒引当金」の処理には「洗替法」と「差額補充法」の2種類の仕訳方法があります。

法人税法においては「洗替法」を採用することが原則とされていますが、「差額補充法」を採用することも認められています

 

洗替法

「洗替法」とは、期末における「貸倒引当金」の残高を戻し入れた後、保有する売上債権や金銭債権から算定した「貸倒見積高」を「貸倒引当金」に繰り入れる方法です。

 

借方 貸方
貸倒引当金
貸倒引当金繰入
300千円
1,200千円
貸倒引当金戻入
貸倒引当金
300千円
1,200千円

 

差額補充法

「差額補充法」とは、期末における「貸倒引当金」の残高と、保有する売上債権や金銭債権から算定した「貸倒見積高」の差額を「貸倒引当金」に繰り入れるか、若しくは「貸倒引当金」から戻し入れる方法です。

 

期末における「貸倒引当金」の残高の方が、保有する売上債権や金銭債権から算定した「貸倒見積高」よりも少ない場合は、差額を「貸倒引当金」に繰り入れます

 

借方 貸方
貸倒引当金繰入 900千円 貸倒引当金 900千円

 

期末における「貸倒引当金」の残高の方が、保有する売上債権や金銭債権から算定した「貸倒見積高」よりも多い場合は、差額を「貸倒引当金」から戻し入れます

 

借方 貸方
貸倒引当金 900千円 貸倒引当金戻入 900千円

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【令和2年度 第2問】

A社の決算整理前残高試算表は以下のとおりであった。貸倒引当金の仕訳として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

なお、当社では売上債権の残高に対し5%の貸倒れを見積もり、差額補充法を採用している。

 

決算整理前残高試算表(一部)
(単位:千円)
現金預金 11,000 支払手形 3,000
受取手形 3,000 買掛金 16,000
売掛金 21,000 貸倒引当金 300
棚卸資産 16,000 借入金 17,000
建物 53,000 資本金 50,000

 

[解答群]

(借) 貸倒引当金
貸倒引当金繰入
300
1,050
(貸) 貸倒引当金戻入
貸倒引当金
300
1,050
(借) 貸倒引当金
貸倒引当金繰入
300
1,200
(貸) 貸倒引当金戻入
貸倒引当金
300
1,200
(借) 貸倒引当金繰入 750 (貸) 貸倒引当金 750
(借) 貸倒引当金繰入 900 (貸) 貸倒引当金 900

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答

期末における貸倒引当金の仕訳処理に関する知識を問う問題です。

 

簿記を勉強したことがある方にとっては、比較的簡単だったかもしれませんが、簿記を勉強していない人にとっては、対応に戸惑った難問だったのではないかと思います

 

「貸倒引当金」とは、当期に販売した商品や製品の売上債権(売掛金や受取手形)や当期以前に行った貸付金などの金銭債権を、取引先の業績悪化などの理由により次期以降に回収できない(貸倒れ)可能性がある場合に、その貸倒れに備えて設定する引当金のことをいいます。

 

貸倒見積高の算定

「売上債権」とは、提供した商品や製品に対する代金を取引先から受け取っていないものであり、A社においては「受取手形」と「売掛金」が「売上債権」に該当します。

A社の「売上債権」の債務者に関する業績悪化などの条件は記述されていないため、全ての「売上債権」が一般債権に区分されると判断することができます。

一般債権の場合は、「貸倒実績率」を用いて「貸倒見積高」を算定する方法(貸倒実績率法)により「貸倒見積高」を算定します。

A社では「売上債権」の残高に対する「5%(貸倒実績率)」の金額を「貸倒見積高」に設定しています。

 

  • 貸倒見積高 =( 3,000千円 + 21,000千円 )× 5% = 1,200千円

 

貸倒引当金の仕訳

期末における「貸倒引当金」の処理には「洗替法」と「差額補充法」の2種類の仕訳方法がありますが、A社は「差額補充法」を採用しています。

「差額補充法」とは、期末における「貸倒引当金」の残高と、保有する売上債権や金銭債権から算定した「貸倒見積高」の差額を「貸倒引当金」に繰り入れるか、若しくは「貸倒引当金」から戻し入れる方法です。

売上債権に対して設定する「貸倒見積高」が「1,200千円」であるのに対して、「決算整理前残高試算表」における「貸倒引当金」の残高が「300千円」であり、「貸倒引当金」の残高の方が「貸倒見積高」よりも少ないため、差額を「貸倒引当金」に繰り入れる処理を行います

 

「貸倒引当金繰入額」を算出すると以下の通りです。

 

  • 貸倒引当金繰入額 = 貸倒見積高 - 貸倒引当金残高
    1,200千円 - 300千円 = 900千円

 

したがって、「貸倒引当金」の仕訳は以下の通りです。

 

借方 貸方
貸倒引当金繰入 900千円 貸倒引当金 900千円

 

A社が「洗替法」を採用している場合の仕訳は「選択肢(イ)」です。

 

借方 貸方
貸倒引当金
貸倒引当金繰入
300千円
1,200千円
貸倒引当金戻入
貸倒引当金
300千円
1,200千円

 

 

答えは(エ)です。


 

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