財務・会計 ~R2-15 デリバティブ取引(オプション取引)(7)~

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今回は、「財務・会計 ~R2-15 デリバティブ取引(オプション取引)(7)~」について説明します。

 

「デリバティブ取引」は二次試験(事例Ⅳ)でも出題される可能性があるため、一次試験の段階からしっかりと勉強しておきましょう。

 

目次

財務・会計 ~令和2年度一次試験問題一覧~

令和2年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

デリバティブ取引(一次試験) -リンク-

本ブログにて「デリバティブ取引(一次試験)」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

 

デリバティブ取引(二次試験) -リンク-

本ブログにて「デリバティブ取引(二次試験)」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

 

デリバティブ取引の目的

材料や商品や製品の輸入や輸出を行う企業においては、為替レートの変動に伴う「為替変動リスク」の対策として「デリバティブ取引」を活用します。

「デリバティブ取引」は、為替レートの変動による損失(為替変動リスク)を回避(ヘッジ)するための手段であり、代表的な方法として「為替予約」と「オプション取引」と「スワップ取引」があります。

輸入を行う企業は業績に悪い影響を与える「円安」になった時に備えて、輸出を行う企業は業績に悪い影響を与える「円高」になった時に備えて、「デリバティブ取引」でリスクヘッジを行います。

なお、中小企業診断士試験で出題される「デリバティブ取引」は、あくまで「為替変動リスク」による損失を回避するための手段であり、為替レートの変動により利益を得ることが目的ではありません

 

「デリバティブ取引」の説明では、取引先企業の通貨が「ドル」であることを前提としていますが、取引先企業がヨーロッパの場合は「ユーロ」に読み替えるなど、現地通貨と理解してください。

 

オプション取引

「オプション取引」とは、ある将来の一定の期日(行使期日)または期日までの間(行使期間)に、外貨をある一定の価格(行使価格)で売買する権利を得るための取引です。

「オプション取引」は、行使期日または行使期間中に、実際の為替レートを確認しながら、利益を享受できるような為替レートになっていた場合は権利を行使して取引を行い、逆に損失を受けるような為替レートになっていた場合は権利を放棄して損失を回避することができる選択権を有していることが特徴です。

 

プレミアム(オプションプレミアム)

オプション取引は、権利を購入するときに「プレミアム(オプションプレミアム)」と呼ばれる手数料を支払います。

つまり、権利を行使した場合でも放棄した場合でもこの手数料が発生するというデメリットがありますが、言い方を変えると「オプション取引」では為替レートがどのように変動しても、最大の損失はこの手数料の金額内に抑えることができるようになっています

 

「プレミアム(オプションプレミアム)」が「オプション」の価格であり、その価格は「本質的価値」と「時間的価値」の合計から構成されています。

 

ヨーロピアンタイプとアメリカンタイプ

「オプション取引」に関する説明の中で「行使期日または行使期間中に」という表現をしていますが、オプション取引には「ヨーロピアンタイプ」と「アメリカンタイプ」の2種類があり、権利を行使もしくは放棄するための取引条件が異なっています

 

  • ヨーロピアンタイプは、行使期日に権利を行使/放棄します
  • アメリカンタイプは、行使期日までの期間であればどのタイミングでも権利を行使することができます

 

アメリカンタイプの方が有利な取引条件となっていますが、その分プレミアム(手数料)が割高となっています。

中小企業診断士で出題される「デリバティブ取引」は、利益を得るためではなく損失を回避するためにオプション取引を行うので、プレミアム(手数料)が割安な「ヨーロピアンタイプ」で取引を行います

 

オプション取引の損益図

オプション取引の種類

オプション取引には、取引の形態として以下の4種類があります。

  • ドルのコールオプション(買う権利)の「買い」
  • ドルのコールオプション(買う権利)の「売り」
  • ドルのプットオプション(売る権利)の「買い」
  • ドルのプットオプション(売る権利)の「売り」

 

「買い」と「売り」の違いについて

海外企業と取引を行う企業がリスクヘッジを目的として活用するのは「買い」オプションであり、「売り」オプションをリスクヘッジの手段として選択することはありません

「買い」オプションは損失の最大金額を制限することができますが、「売り」オプションでは損失の金額を制限することができないためです。

 

「買い」オプションの特徴
  • 「買い」オプションでは、為替レートの状況によって権利を行使するか放棄するかを選択することができます。
  • 為替レートが「有利」な状況になっていた場合、権利を行使することで利益を享受することができます
  • 為替レートが「不利」な状況になっていた場合、権利を放棄することで損失をプレミアム(手数料)の金額に抑えることができます

 

コールオプションの買い

 

プットオプションの買い

 

「売り」オプションの特徴
  • 「売り」オプションは、「買い」オプションの保有者が権利を行使した場合に、権利を放棄することができなくなり、損失の最大金額を制限することができないため、リスクヘッジの手段としては活用されません。

 

コールオプションの売り

 

プットオプションの売り

 

オプション取引によるリスクヘッジ方法

 

輸入を行う企業の場合

  • 輸入を行う企業の場合、「ドル高/円安」となった場合、業績に悪い影響を与えます。
  • 「ドル高/円安」となった場合に備えて、商品を購入する時点でヨーロピアンタイプ」の「ドル」の「コールオプションの買い」を購入してリスクヘッジを行います。
  • 行使期日の為替レートが、保有しているオプションの行使価格より「ドル高/円安となっている場合は権利を行使します。
  • 逆に「ドル安/円高」となっている場合は、権利を放棄して実勢相場で取引します。

 

輸出を行う企業の場合

  • 輸出を行う企業の場合、「ドル安/円高」となった場合、業績に悪い影響を与えます。
  • 「ドル安/円高」となった場合に備えて、商品を販売する時点で「ヨーロピアンタイプ」の「ドル」の「プットオプションの買い」を購入してリスクヘッジを行います。
  • 行使期日の為替レートが、保有しているオプションの行使価格より「ドル安/円高」となっている場合は権利を行使します。
  • 逆に「ドル高/円安」となっている場合は、権利を放棄して実勢相場で取引します。

 

オプション取引によるリスクヘッジ効果

オプション取引によるリスクヘッジの効果を確認していきます。

 

輸入を行う企業の場合

為替レートの変動により発生する損益

海外企業から商品を購入して代金を支払う企業は、為替レートが「ドル高/円安」になると取引先に支払う代金が多くなってしまうため「損失」が発生し、「ドル安/円高」になると支払代金が少なくなるため「利益」が発生します

 

 

オプション取引により発生する損益(ドルのコールオプションの買い)

輸入を行う企業の場合、海外企業から商品を購入する時点で「ドルのコールオプションの買い」を購入します。

「ドルのコールオプションの買い」では、「ドル高/円安」となった場合は権利を行使しますが、「ドル安/円高」となった場合は権利を行使せずに放棄します。

 

 

海外企業との輸入取引における為替差損益

「為替レートの変動により発生する損益」と「オプション取引により発生する損益(ドルのコールオプションの買い)」を組み合わせると、海外企業との輸入取引におけるデリバティブ取引のリスクヘッジ効果を確認することができます。

 

  • 行使期日の為替レートが「ドル高/円安となっている場合はオプション取引の権利を行使します。損失は発生しますが、その金額はオプション取引のプレミアム(手数料)に限定することができます。
  • 行使期日の為替レートが「ドル安/円高」となっている場合は、オプション取引の権利を放棄して実勢相場で取引することにより、利益を享受することができます

 

 

輸出を行う企業の場合

為替レートの変動により発生する損益

海外企業に商品を販売して代金を受け取る企業は、為替レートが「ドル安/円高」になると取引先から受け取る代金が少なくなってしまうため「損失」が発生し、「ドル高/円安」になると受取代金が多くなるため「利益」が発生します

 

 

オプション取引により発生する損益(ドルのプットオプションの買い)

輸出を行う企業の場合、海外企業に商品を販売する時点で「ドルのプットオプションの買い」を購入します。

「ドルのプットオプションの買い」では、「ドル安/円高」となった場合は権利を行使しますが、「ドル高/円安」となった場合は権利を行使せずに放棄します。

 

 

海外企業との輸出取引における為替差損益

「為替レートの変動により発生する損益」と「オプション取引により発生する損益(ドルのプットオプションの買い)」を組み合わせると、海外企業との輸出取引におけるデリバティブ取引のリスクヘッジ効果を確認することができます。

 

  • 行使期日の為替レートが「ドル安/円高となっている場合はオプション取引の権利を行使します。損失は発生しますが、その金額はオプション取引のプレミアム(手数料)に限定することができます。
  • 行使期日の為替レートが「ドル高/円安」となっている場合は、オプション取引の権利を放棄して実勢相場で取引することにより、利益を享受することができます

 

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【令和2年度 第15問】

オプションに関する記述として、最も適切なものはどれか。

 

ア 「10,000円で買う権利」を500円で売ったとする。この原資産の価格が8,000円になって買い手が権利を放棄すれば、売り手は8,000円の利益となる。
イ 「オプションの買い」は、権利を行使しないことができるため、損失が生じる場合、その損失は最初に支払った購入代金(プレミアム)に限定される。
ウ オプションにはプットとコールの2種類あるので、オプション売買のポジションもプットの売りとコールの買いの2種類ある。
エ オプションの代表的なものに先物がある。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答

「デリバティブ取引(オプション取引)」に関する知識を問う問題です。

 

(ア) 不適切です。

「コールオプションの売り」は、「買い」オプションの保有者が権利を行使した場合に、権利を放棄することができなくなり、損失の最大金額を制限することができないため、リスクヘッジの手段としては活用されません。

「コールオプションの売り」における「原資産価格」と「損益」の関係は以下のように、利益の最大金額が「プレミアム(手数料)」に制限されます。

 

 

したがって、「10,000円で買う権利」を「500円(プレミアム)」で売った場合、この原資産の価格が「8,000円」になって買い手が権利を放棄すれば、売り手の利益は「8,000円」ではなく「500円(プレミアム)」となるため、選択肢の内容は不適切です

 

(イ) 適切です。

海外企業と取引を行う企業がリスクヘッジを目的として活用するのは「買い」オプションであり、「売り」オプションをリスクヘッジの手段として選択することはありません

「買い」オプションは損失の最大金額を制限することができますが、「売り」オプションでは損失の金額を制限することができないためです。

 

「買い」オプションの特徴
  • 「買い」オプションでは、為替レートの状況によって権利を行使するか放棄するかを選択することができます。
  • 為替レートが「有利」な状況になっていた場合、権利を行使することで利益を享受することができます
  • 為替レートが「不利」な状況になっていた場合、権利を放棄することで損失をプレミアム(手数料)の金額に抑えることができます

 

したがって、「オプションの買い」は、権利を行使しないことができ、損失が生じる場合、その損失は最初に支払った購入代金(プレミアム)に限定されるため、選択肢の内容は適切です

 

(ウ) 不適切です。

「オプション取引」には、取引の形態として以下の4種類があります。

  • ドルのコールオプション(買う権利)の「買い」
  • ドルのコールオプション(買う権利)の「売り」
  • ドルのプットオプション(売る権利)の「買い」
  • ドルのプットオプション(売る権利)の「売り」

 

したがって、オプションにはプットとコールの2種類ありますが、オプション売買のポジションは、プットの売りとコールの買いの2種類ではなく、プットの買いと売り、コールの買いと売りの4種類あるため、選択肢の内容は不適切です

 

(エ) 不適切です。

「デリバティブ取引」は、為替レートの変動による損失(為替変動リスク)を回避(ヘッジ)するための手段であり、代表的な方法として「為替予約」と「オプション取引」と「スワップ取引」があります。

また、「先渡取引」とは、店頭における「現物決済」で、実際に現物の受け渡しを行う取引方法であり、「先物取引」とは、東京証券取引所、大阪証券取引所、東京金融先物取引所などの取引所を通じて「差金決済」で、現物の受け渡しを行わない取引方法です。

「デリバティブ取引」の代表的な方法である「為替予約」と「オプション取引」と「スワップ取引」は、全て「先物取引」に分類されます。

 

したがって、オプションの代表的なものに先物があるわけではないため、選択肢の内容は不適切です

 

答えは(イ)です。


 

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