今回は、「財務・会計 ~R2-11 財務指標の計算(13)~」について説明します。
ただし、二次試験(事例Ⅳ)の第1問(経営分析)で必要な「財務指標」は限られているため、あらかじめ確認(事例Ⅳ ~①経営分析~)してから、一次試験の勉強に取り組みましょう。
目次
財務・会計 ~令和2年度一次試験問題一覧~
令和2年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
財務指標の計算 -リンク-
本ブログにて「財務指標の計算」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- 財務指標
- R3-10 財務指標の計算(14)
- R1-11 財務指標の計算(12)
- H29-11 財務指標の計算(1)
- H28-9-2 財務指標の計算(2)
- H27-11 財務指標の計算(3)
- H26-9 財務指標の計算(4)
- H26-10 財務指標の計算(5)
- H25-5 財務指標の計算(7)
- H24-17-1 財務指標の計算(8)
- H24-20-2 財務指標の計算(9)
- H23-9 財務指標の計算(10)
- H22-8 財務指標の計算(11)
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和2年度 第11問】
以下の資料に基づき計算された財務比率の値として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
【資 料】
貸借対照表 (単位:千円) 資産の部 負債・純資産の部 現金預金 25,000 買掛金 40,000 売掛金 22,000 長期借入金 70,000 商品 13,000 資本金 50,000 建物 80,000 資本剰余金 10,000 備品 60,000 利益剰余金 30,000 資産合計 200,000 負債・純資産合計 200,000
損益計算書 (単位:千円) 売上高 250,000 売上原価 180,000 売上総利益 70,000 販売費および一般管理費 40,000 営業利益 30,000 支払利息 4,000 税引前当期純利益 26,000 法人税等 8,000 当期純利益 18,000
[解答群]
ア 固定長期適合率は155.6%である。
イ 自己資本比率は25%である。
ウ 自己資本利益率(ROE)は30%である。
エ 当座比率は117.5%である。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
中小企業の財務状態を確認するための重要な判断材料である「財務指標」に関する知識を問う問題です。「財務指標」は、二次試験の事例IVの第1問(経営分析)で必要な知識なので、必ず習得しましょう。
問題文で与えられた「貸借対照表」を「流動資産」「当座資産」「固定資産」「流動負債」「固定負債」「自己資本(純資産)」に分類すると以下の通りです。
貸借対照表 | ||||||
(単位:千円) | ||||||
資産の部 | 負債・純資産の部 | |||||
流動資産 | 当座資産 | 現金預金 | 25,000 | 流動負債 | 買掛金 | 40,000 |
売掛金 | 22,000 | 固定負債 | 長期借入金 | 70,000 | ||
- | 商品 | 13,000 | 自己資本 (純資産) |
資本金 | 50,000 | |
固定資産 | 建物 | 80,000 | 資本剰余金 | 10,000 | ||
備品 | 60,000 | 利益剰余金 | 30,000 | |||
資産合計 | 200,000 | 負債・純資産合計 | 200,000 |
(ア) 不適切です。
「固定長期適合率」は、長期の安全性を分析するための指標です。
返済期限が1年以上である固定負債と返済の必要がない自己資本(純資産)に対する固定資産の割合で求めることができ、数値が低い方が優れていることを示しています。固定長期適合率が100%を超える場合は、固定資産の調達を返済期限が1年以内の借入金などの負債で賄っていることを意味するため、資金繰りが厳しく、安全性が低いと判断されます。
問題文で与えられた「貸借対照表」の数値を用いて「固定長期適合率」を算出します。
- 固定長期適合率 = 固定負債 ÷( 固定負債 + 純資産 )=( 建物 + 備品 )÷( 長期借入金 + 資本金 + 資本剰余金 + 利益剰余金 )=( 80,000 + 60,000 )÷( 70,000 + 50,000 + 10,000 + 30,000 )= 87.5%
「固定長期適合率」は「87.5%」であり「155.6%」ではないため、選択肢の内容は不適切です。
(イ) 不適切です。
「自己資本比率」は、「総資本」に対する「自己資本(純資産)」の比率を示す財務指標です。
「自己資本比率」は、会社の資本構成割合を分析する指標であり、数値が高いほど優れていることを示しています。数値が低い場合は借入金等の返済が必要な負債の割合が高く、安全性に問題があると判断されます。
問題文で与えられた「貸借対照表」の数値を用いて「自己資本比率」を算出します。
- 自己資本比率 = 自己資本(純資産)÷ 負債・純資産合計 =( 資本金 + 資本剰余金 + 利益剰余金 )÷ 負債・純資産合計 =( 50,000 + 10,000 + 30,000 )÷ 200,000 = 45%
「自己資本比率」は「45%」であり「25%」ではないため、選択肢の内容は不適切です。
(ウ) 不適切です。
「ROE(自己資本当期純利益率)」は、「純資産(株主資本、自己資本)」に対する「当期純利益(税引後当期純利益)」の比率を示す指標であり「自己資本利益率」「株主資本利益率」とも呼ばれます。
「ROE(自己資本当期純利益率)」は、企業の収益力を示す財務指標の一つであり、自己資本によってどれだけ効率的に利益を生み出すことができているかを表す重要な指標であり、数値が高いほど収益性が高いことを示しています。
問題文で与えられた「貸借対照表」と「損益計算書」の数値を用いて「自己資本利益率(ROE)」を算出します。
- 自己資本利益率(ROE)= 当期純利益 ÷ 自己資本(純資産)= 当期純利益 ÷( 資本金 + 資本剰余金 + 利益剰余金 )= 18,000 ÷( 50,000 + 10,000 + 30,000 )= 20%
「自己資本利益率(ROE)」は「20%」であり「30%」ではないため、選択肢の内容は不適切です。
(エ) 適切です。
「当座比率」は、短期の安全性を分析するための指標です。
流動負債に対する当座資産の割合で求めることができ、数値が高い方が優れていることを示しています。当座比率が100%より低い場合は、1年以内に支払わなければならない負債(流動負債)を返済するだけのお金(当座資産)がないことを意味しており、短期的な支払い能力がなく安全性が低いと判断されます。
問題文で与えられた「貸借対照表」の数値を用いて「当座比率」を算出します。
- 当座比率 = 当座資産 ÷ 流動負債 =( 現金預金 + 売掛金 )÷ 買掛金 =( 25,000 + 22,000 )÷ 40,000 = 117.5%
「当座比率」は「117.5%」であるため、選択肢の内容は適切です。
当座資産の計算方法は、結構忘れがちなのでしっかり覚えておきましょう。
当座資産 = 現金・預金 + 売上債権(受取手形・売掛金)+ 有価証券
(※)その他流動資産は含まれません。
答えは(エ)です。
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