今回は、「運営管理 ~R1-11 QC手法(4)QC7つ道具~」について説明します。
目次
運営管理 ~令和元年度一次試験問題一覧~
令和元年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
QC7つ道具
「QC7つ道具」とは、生産現場の品質改善活動で活用できるように、様々な統計的手法が工夫され簡便化されたツールのことをいいます。
- パレート図
- ヒストグラム
- 散布図
- 管理図
- 特性要因図
- チェックシート
- 層別
パレート図
「パレート図」は、様々な項目(問題点など)の中で重要な項目(出現頻度の高い項目)を決定するために活用される手法であり、項目(問題点など)を出現頻度の高い順に並べて棒グラフで表し、累積比率を折れ線グラフで表します。
例えば、生産現場における問題点とその発生件数を「パレート図」で表した場合、グラフの左側に列挙された問題点を優先的に改善することによって、生産現場における問題の発生件数を効率的に削減することができます。
品質管理のツールとして横軸に問題や課題を取る場合は「パレート分析」といいますが、横軸に品目を取る場合は「ABC分析」といいます。
「ABC分析」は、「部品・材料・仕掛品・商品・製品」といった一時的に保管する物品の「在庫管理方式」を決定するために活用されます。
ヒストグラム
「ヒストグラム」は、データの分布状態(バラツキ)を把握するために活用される統計グラフの一種であり、データが発生する全ての範囲を等間隔に区分して、各区間に入るデータの度数を棒グラフで表します。
中心データの度数が高く、データ全体の範囲が狭い場合は、バラツキが少なく安定していることを示しており、中心データの度数が低く、データ全体の範囲が広い場合は、バラツキが大きく不安定であることを示しています。
散布図
「散布図」は、2つの項目の相関関係を把握するために活用される手法であり、2つの項目を横軸と縦軸にとり、観測されたデータを点として表します。
観測されたデータ(点)が右肩上がりに分布している場合は、2つの項目の間に「正の相関関係」があることを示しており、右肩下がりに分布している場合は、2つの項目の間に「負の相関関係」があることを示しています。
また、点がばらばらに分布しているときは、2つの項目の間に「相関関係がない(無相関)」であることを示しています。
右肩上がりの散布図(正の相関関係)
右肩下がりの散布図(負の相関関係)
観測されたデータの中で、大きな集団から外れた点は異常点です。
異常点が発生した場合は、その原因を分析して対処を行う必要があります。
異常点のある散布図
管理図
「管理図」とは、「QC7つ道具」の1つであり、工程において発生する「バラツキ」を観測して、工程が「正常な状態(安定な状態)」にあるかどうかを管理するために活用される手法です。
「管理図」では、横軸に「時間」を、縦軸に「中心線(CL)」「上限管理境界線(UCL)」「下限管理限界線(LCL)」を設定した図表に、観測した順に数値をプロットしていくことによって、工程において観測した数値のバラツキを確認します。
工程においては「バラツキ」が必ず発生しますが、その原因が「偶然原因(安定な状態)」によるものか「異常原因(異常な状態)」によるものかを管理して「異常原因(異常な状態)」が発現した場合は適切な処置を実施します。
シュハート管理図(3シグマ法管理図)
「シュハート管理図」とは「3シグマ(3σ)」を管理境界線とする管理図のことをいいます。
一般的に「管理図」というと、その多くは「シュハート管理図」のことを示しています。
バラツキの原因
偶然原因(安定な状態)
「偶然原因」とは、通常時と同じ状態(統計的管理状態)で発生して、その原因を突き止めることができないものをいい、「偶発原因」によるバラツキが発生している場合は、工程が「安定な状態」であることを示しています。
- 点が管理限界線(±3σ)以内で推移している状態
- 点の並び方に癖がない状態
異常原因(異常な状態)
「異常原因」とは、通常時と異なる状態で発生して、その原因を突き止めることができるものをいい、「異常原因」によるバラツキが発生している場合は、工程が「異常な状態」であることを示しており、適切な処置を実施して、再発を防止する必要があります。
- 1点が管理限界線(±3σ)を超えた状態
- 点が中心線より上部または下部に連続して現れる状態
- 点の推移に傾向や周期性がある状態
- 点が管理限界線(±3σ)にしばしば接近する場合
- 点が中心線から離れた箇所に集中して推移する場合
- 点が中心線の近くに集中して推移する場合
管理図の目的
「管理図」は、その目的により「管理用管理図」と「解析用管理図」に分類することができます。
管理用管理図
「管理用管理図」とは、標準値が定められている状態で、管理状態に保持する際に利用される管理図のことをいいます。
解析用管理図
「解析用管理図」とは、標準値が定められていない状態で、工程が統計的管理状態にあるかどうかを評価する際に利用される管理図のことをいいます。
言い回しが難しいですが、工程を管理するための標準値が定められていない状態において、工程がどういう状態であれば安定しているかを解析するために利用します。
管理図の種類
「管理図」には、「1個2個」と数えることができるデータを扱う「計数値の管理図」と、「長さ/重さ/時間」といった計量的に得られるデータを扱う「計量値の管理図」の2種類があります。
データの種類 | 管理図の種類 | |
計数値 | pn管理図 | 不良個数管理図 |
p管理図 | 不良率管理図 | |
c管理図 | 欠点数管理図 | |
u管理図 | 単位当たり欠点数管理図 | |
計量値 | X-R管理図(※) | 平均値と範囲の管理図 |
X管理図 | 個々の測定値の管理図 |
(※)表記上「X」と記載していますが、実際には「X」の上に「-」を付けて「エックスバー・アール管理図」と読みます。
管理図の選定フロー
管理図の選定フローを以下に示します。
特性要因図
「特性要因図」は、発生している問題の因果関係を体系的に整理する手法であり、その見た目から「魚の骨(フィッシュボーン図)」とも呼ばれています。
「特性」とは「結果(現在の状態)」のことをいい、「要因」とは「その結果をもたらすために影響を与えている要素」のことをいいます。
「特性要因図」を作成するには、「特性」を明確にした後、「Man(人)」「Machine(設備)」「Material(材料)」「Method(方法)」といった様々な観点から幅広い「要因」を書き出し、また「なぜなぜ分析」を使ってより深い「要因」を書き出していきます。
「特性要因図」を作成することで「特性」と「要因」の関係性を視覚的に分かりやすく整理することができ、発生している問題の真の原因を見つけることができます。
チェックシート
「チェックシート」は、事実を把握するためにデータを収集したり、手順の漏れやミスを防止したり、手順の実施記録を残すために活用される手法であり、あらかじめ定められた項目に対して内容を簡単にチェックできる表または図で表します。
「チェックシート」は、その目的により「記録用チェックシート」と「点検用チェックシート」に分類されます。
記録用チェックシート
「記録用チェックシート」は、事実を把握するためにデータを収集することを目的にしており、あらかじめチェックしたい事象を「記録用チェックシート」に記載しておき、その事象が発生したら該当する項目にチェックしていきます。
最終的に、記入された「記録用チェックシート」を見れば、それぞれの事象が発生した件数を確認することができます。
点検用チェックシート
「点検用チェックシート」は、手順の漏れやミスの防止、手順の実施記録を残すことを目的としており、手順を正しく実行するために明確化された項目を「点検用チェックシート」に記載しておき、作業者が手順を実施したら該当する項目にチェックしていきます。
最終的に、全ての手順を完了したら、全ての項目にチェックが入っている状態となります。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和元年度 第11問】
QC7つ道具に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 管理図は、2つの対になったデータをXY軸上に表した図である。
イ 特性要因図は、原因と結果の関係を魚の骨のように表した図である。
ウ パレート図は、不適合の原因を発生件数の昇順に並べた図である。
エ ヒストグラムは、時系列データを折れ線グラフで表した図である。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
「QC7つ道具」に関する知識を問う問題です。
(ア) 不適切です。
「管理図」とは、工程において発生する「バラツキ」を観測して、工程が「正常な状態(安定な状態)」にあるかどうかを管理するために活用される手法であり、横軸に「時間」を、縦軸に「中心線(CL)」「上限管理境界線(UCL)」「下限管理限界線(LCL)」を設定した図表に、観測した順に数値をプロットしていくことによって、工程において観測した数値のバラツキを確認します。
(例)シュハート管理図
「チェックシート」は、事実を把握するためにデータを収集したり、手順の漏れやミスを防止したり、手順の実施記録を残すために活用される手法であり、あらかじめ定められた項目に対して内容を簡単にチェックできる表または図で表します。
したがって、2つの対になったデータをXY軸上に表した図とは、「管理図」ではなく「チェックシート」のことを示しているため、選択肢の内容は不適切です。
(イ) 適切です。
「特性要因図」は、発生している問題の因果関係を体系的に整理する手法であり、その見た目から「魚の骨(フィッシュボーン図)」とも呼ばれています。
(例)特性要因図
したがって、「特性要因図」は、原因と結果の関係を魚の骨のように表した図であるため、選択肢の内容は適切です。
(ウ) 不適切です。
「パレート図」は、様々な項目(問題点など)の中で重要な項目(出現頻度の高い項目)を決定するために活用される手法であり、項目(問題点など)を出現頻度の高い順に並べて棒グラフで表し、累積比率を折れ線グラフで表します。
(例)パレート図
なお、「昇順」と「降順」の意味の違いは以下の通りです。
- 昇順:データを値の小さいものから順に並べること
- 降順:データを値の大きいものから順に並べること
したがって、「パレート図」は、不適合の原因を発生件数の「昇順」ではなく「降順」に並べた図であるため、選択肢の内容は不適切です。
(エ) 不適切です。
「ヒストグラム」は、データの分布状態(バラツキ)を把握するために活用される統計グラフの一種であり、データが発生する全ての範囲を等間隔に区分して、各区間に入るデータの度数を棒グラフで表します。
(例)ヒストグラム
「管理図」とは、工程において発生する「バラツキ」を観測して、工程が「正常な状態(安定な状態)」にあるかどうかを管理するために活用される手法であり、横軸に「時間」を、縦軸に「中心線(CL)」「上限管理境界線(UCL)」「下限管理限界線(LCL)」を設定した図表に、観測した順に数値をプロットしていくことによって、工程において観測した数値のバラツキを確認します。
(例)シュハート管理図
したがって、時系列データを折れ線グラフで表した図とは、「ヒストグラム」ではなく「管理図」のことを示しているため、選択肢の内容は不適切です。
答えは(イ)です。
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