今回は、「財務・会計 ~R1-18 金利(1)~」について説明します。
目次
財務・会計 ~令和元年度一次試験問題一覧~
令和元年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
金利 -リンク-
「金利」については、過去にも説明していますので、以下のページにもアクセスしてみてください。
公定歩合
「公定歩合」とは、日本銀行が金融機関に対して貸し付けを行う際に適用される基準金利のことをいいます。
金利が規制されていた1994年までは、日本銀行が「公定歩合」を変更すると預金金利などといった各種金利も連動する仕組みとなっていましたが、1994年に金利が自由化されてからは、これらの各種金利が「公定歩合」に直接的に連動することはなくなりました。
2006年に「公定歩合」の名称は「基準割引率および基準貸付利率」に変更され、現在では「無担保コールレート翌日物」における短期金利の変動上限としての役割を担っています。
短期金利/長期金利
「短期金利」とは期間が1年以内である金融取引に基づく資産・負債に設定される金利のことをいい、「長期金利」とは期間が1年を超える金融取引に基づく資産・負債に設定される金利のことをいいます。
一般的に、「長期金利」は「短期金利」よりも、元利金の返済が滞るリスクなどを考慮して高く設定されますが、将来にかけて金利が低下すると想定されるような経済動向においては、長短金利が逆転することもあります。
このように、「短期金利」の方が「長期金利」よりも高くなることを「逆イールド」といい、直接的な因果関係があるわけではありませんが、景気が悪くなる前兆として知られています。
直近では「2019年8月14日」に、米債券市場で12年ぶりに「逆イールド」が発生したと話題になっています。
なお、日本の国債市場においても「逆イールド」が発生することがありますが、これは景気が悪くなる前兆ではなく、異次元緩和に伴う日本銀行による国債の大量購入で需給が逼迫していることが原因だと言われています。
名目金利/実質金利
「名目金利」とは「物価上昇率(インフレ率)」を加味していない金利のことをいい、「実質金利」とは「物価上昇率(インフレ率)」を加味した金利のことをいいます。
例えば、「名目金利」「1%」で資金を運用しても「物価上昇率(インフレ率)」が「2%」だった場合は「実質金利」は「マイナス(-1%)」となります。
もう少しわかりやすく表現すると、銀行に金利1%で現金を1年間預けても、その1年の間に物価が2%上昇した場合は、1年後に銀行から引き出した現金の価値は1%下がっているため、1年前よりも購入できるものが少なくなります。
つまり、「実質金利」は「名目金利」から「物価上昇率(インフレ率)」を控除して算出することができます。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和元年度 第18問】
金利に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 将来の利払い額が変動するリスクを考慮すると、固定金利での借り入れが常に有利である。
イ 日本における短期金利の代表的なものとして、インターバンク市場で取引される公定歩合がある。
ウ 名目金利とは、実質金利から物価上昇率(インフレ率)を控除した金利水準を指す。
エ 歴史的に長期金利と短期金利では、長期金利の方が高い傾向にあるが、金利水準の低下局面では逆のケースも観察されている。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
各種金利に関する知識を問う問題です。
(ア) 不適切です。
一見すると、選択肢の内容は適切であるように見えます。それでは何が不適切なのか。。。
一般的に「リスク」とは「危険」を表す言葉として認知されていますが、正確には「リスク」とは「不確実性さ」を意味しています。
例えば、「ハイリスクハイリターン」な金融商品とは、大損をする可能性もあれば大儲けできる可能性もある商品のことをいいますが、これは「危険が大きければ儲けも大きくなる可能性がある」のではなく「不確実な度合いが大きければ儲けも大きくなる可能性がある」ということを意味しています。
したがって、将来の利払い額が変動するリスク(不確実性さ)を考慮すると、将来の市場金利が高くなれば固定金利での借り入れが有利ですが、将来の市場金利が低くなれば変動金利での借り入れが有利となるため、選択肢の内容は不適切です。
(イ) 不適切です。
「公定歩合」とは、日本銀行が金融機関に対して貸し付けを行う際に適用される基準金利のことをいいます。
金利が規制されていた1994年までは、日本銀行が「公定歩合」が変更させると預金金利などといった各種金利も連動する仕組みとなっていましたが、1994年に金利が自由化されてからは、これらの各種金利が「公定歩合」に直接的に連動することはなくなりました。
2006年に「公定歩合」の名称は「基準割引率および基準貸付利率」に変更され、現在では「無担保コールレート翌日物」における短期金利の変動上限としての役割を担っています。
ちなみに、「インターバンク市場」とは金融機関の間で短期資金の貸借が行われる市場のことをいいます。
したがって、インターバンク市場で取引される公定歩合は、日本における短期金利の代表的なものではないため、選択肢の内容は不適切です。
(ウ) 不適切です。
「名目金利」とは「物価上昇率(インフレ率)」を加味していない金利のことをいい、「実質金利」とは「物価上昇率(インフレ率)」を加味した金利のことをいいます。
「実質金利」は「名目金利」から「物価上昇率(インフレ率)」を控除して算出することができます。
したがって、「実質金利」が「名目金利」から物価上昇率(インフレ率)を控除した金利水準であるため、選択肢の内容は不適切です。
(エ) 適切です。
「短期金利」とは期間が1年以内である金融取引に基づく資産・負債に設定される金利のことをいい、「長期金利」とは期間が1年を超える金融取引に基づく資産・負債に設定される金利のことをいいます。
一般的に、「長期金利」は「短期金利」よりも、元利金の返済が滞るリスクなどを考慮して高く設定されますが、将来にかけて金利が低下すると想定されるような経済動向においては、長短金利が逆転することもあります。
このように、「短期金利」の方が「長期金利」よりも高くなることを「逆イールド」といい、直接的な因果関係があるわけではありませんが、景気が悪くなる前兆として知られています。
直近では「2019年8月14日」に、米債券市場で12年ぶりに「逆イールド」が発生したと話題になっています。
したがって、歴史的に長期金利と短期金利では、長期金利の方が高い傾向にあるが、金利水準の低下局面では逆のケースも観察されているため、選択肢の内容は適切です。
答えは(エ)です。
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