事例Ⅳ ~平成30年度 解答例(8)(成長性分析)~

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平成30年度の事例Ⅳの「第3問(設問3)」に関する解答例(案)を説明していきます。

私なりの思考ロジックに基づく解答例(案)を以下に説明しますので、参考としてもらえればと思います。

 

目次

事例Ⅳ ~平成30年度試験問題一覧~

平成30年度のその他の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

第3問(設問3)

第3問(配点30点)

 

D社は営業拠点として、地方別に計3カ所の支店または営業所を中核となる大都市に開設している。広域にビジネスを展開している多くの顧客企業による業務委託の要望に応えるために、D社はこれまで営業拠点がない地方に営業所を1カ所新たに開設する予定である。

今年度の売上原価と販売費及び一般管理費の内訳は次のとおりである。以下の設問に答えよ。

 

(設問3)

(設問2)の特徴を有する営業拠点の開設がD社の成長性に及ぼす当面の影響、および営業拠点のさらなる開設と成長性の将来的な見通しについて、60字以内で説明せよ。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方(第3問 設問3)

「設問2」で解答した「営業拠点の開設により固定費の割合が低くなるため安全性が高くなる」という特徴を有するD社が、さらに営業拠点を開設していくと成長性がどのように変化するかを説明するよう求められています。

 

「成長性」という言葉について確認するため「成長性分析」について説明します。

 

成長性分析

成長性分析では、損益計算書や貸借対照表などの数値データを2期間(例えば、前期と当期)で比較して、企業の成長の状況やその原因を分析していきます。

成長性分析では、「絶対額で比較する場合」「差額で比較する場合」の2種類の方法がありますが、どちらでも答えは同じとなりますので、特に指定されなければどちらの方法でも構いません。

 

絶対額で比較する場合

「前期の数値」に対する「当期の数値」の比率として表されます。

成長率が100%を超えていれば、前期よりプラスの成長をしているが、成長率が100%未満の場合は、前期よりマイナスの成長をしていることを示しています。

 

 

差額で比較する場合

「前期の数値」に対する「当期の数値 - 前期の数値(差額)」の比率として表されます。

成長率がプラスであれば、前期よりプラスの成長をしているが、成長率がマイナスの場合は、前期よりマイナスの成長をしていることを示しています。

 

 

営業拠点の開設による損益計算と成長率の推移

さらに営業拠点を開設していくと、損益計算書と成長率がどのように推移するかを考えていきます。なお、成長率は、絶対額で比較することとします。

損益計算書と成長率の推移については、以下の2パターンで考えていきます。

 

  • パターン1
    さらに営業拠点を増やしていっても、営業拠点の開設により増加する売上高や営業利益が同じであると仮定した場合
  • パターン2
    実際の経営においては、高い収益効果を得られる地方から順番に営業拠点を開設していくと考えられるため、営業拠点を増やしていくと増加する売上高や営業利益が逓減すると仮定した場合

 

パターン1は営業拠点を開設する都度、同じ収益効果(売上高550百万円増)が得られるケースを想定しており、成長率の仕組みを理解するために考えていきます。

パターン2は、実際の経営で想定されるケースで損益計算書と成長率がどのように推移するかを確認していきます。

 

前提条件

  • 来年度以降、各年度の初めに1店舗ずつ営業拠点を開設する。
  • 変動費率は一定とする。(再来年度以降、外注費は上昇しない。)
  • 営業拠点を1拠点開設すると固定費が34百万円増加する。
  • 営業拠点を1拠点開設した場合の売上高の増加は以下の2パターンで考える。
    パターン1:営業拠点を開設すると、売上高が550百万円増加する
    パターン2:営業拠点を開設する都度、増加する売上高は40%ずつ減少していく。

 

パターン1:増加する売上高や営業利益が同じ場合

毎年度に1店舗ずつ営業拠点を開設して、同じ収益効果(売上高550百万円増)が得られる場合の損益計算書と成長率の推移を以下に示します。

営業拠点を開設する度に同じ収益効果が得られますが、D社全体の売上高や営業利益が大きくなっていくため、成長率としては徐々に減少していくことが分かります。

 

(単位:百万円)
来年度
1拠点
+1年度
2拠点
+2年度
3拠点
+3年度
4拠点
+4年度
5拠点
備考欄
損益計算書
売上高 2,053 2,603 3,153 3,703 4,253 550百万円増
変動費 1,505 1,908 2,311 2,714 3,118 変動費率:73.30%
固定費 472 506 540 574 608 34百万円増
営業利益 76 189 302 415 527
増加額
売上高 550 550 550 550 増加額は変化しない(と仮定)
変動費 403 403 403 403
固定費 34 34 34 34
営業利益 113 113 113 113
成長率
売上高 127% 121% 117% 115% 成長率は逓減していく。
営業利益 248% 160% 137% 127%
固定費割合
(総費用に対する)
24% 21% 19% 17% 16% 固定費割合は逓減していく。
営業レバレッジ 7.20 3.68 2.79 2.38 2.15 営業レバレッジは逓減していく。

 

パターン2:増加する売上高や営業利益が逓減する場合

実際の経営においては、高い収益効果を得られる地方から順番に営業拠点を開設していくと考えられます。逆に言うと、営業拠点を開設する度に増加する売上高は徐々に減少していきます。少し極端ですが、営業拠点を開設する都度、増加する売上高が40%ずつ減少する場合の損益計算書と成長率の推移を以下に示します。

営業拠点を開設するたびに増加する営業利益が減少して、4拠点目を開設したタイミングから「営業利益の成長率がマイナス」に、「総費用に占める固定費の割合」や「営業レバレッジ」も増加に転じることが分かります。

 

(単位:百万円)
来年度
1拠点
+1年度
2拠点
+2年度
3拠点
+3年度
4拠点
+4年度
5拠点
備考欄
損益計算書
売上高 2,053 2,383 2,581 2,700 2,771
変動費 1,505 1,747 1,892 1,979 2,031 変動費率:73.30%
固定費 472 506 540 574 608 34百万円増
営業利益 76 130 149 147 132
増加額
売上高 330 198 119 71 拠点開設による売上増加額が40%ずつ減少する(と仮定)
変動費 242 145 87 52
固定費 34 34 34 34
営業利益 54 19 ▲2 ▲15
成長率
売上高 116% 108% 105% 103% 拠点が増えると営業利益の成長率はマイナスに転じる
営業利益 171% 114% 98% 90%
固定費割合
(総費用に対する)
23.9% 22.5% 22.2% 22.5% 23.0% 拠点が増えると固定費割合が増加に転じる
営業レバレッジ 7.20 4.89 4.62 4.91 5.61 拠点が増えると営業レバレッジが増加に転じる

 

解答の整理

2つのパターンを確認したことで、営業拠点の開設がD社の成長性に及ぼす当面の影響と営業拠点のさらなる開設と成長性の将来的な見通しについては分かりましたが、これを「60文字」に整理するのは至難の業です。

問題文に記述されているように「営業拠点の開設により固定費の割合が低くなるため安全性が高くなる」という特徴との関連付けも考慮しなければなりません。

 

営業拠点の開設が成長性に及ぼす当面の影響

これについては、文句なく成長性が高いと言えます。

  • 当面は成長性が高い

 

営業拠点のさらなる開設と成長性の将来的な見通し

整理するのは至難の業です。自信がありません。

 

  • パターン1の結果
    さらに営業拠点を開設していくと、D社全体の売上高や営業利益が大きくなっていくため、成長率は逓減していく。
  • パターン2の結果
    高い収益効果を得られる地方から順番に営業拠点を開設していくと考えられるため、さらに営業拠点を開設していくと収益性が逓減して成長率も逓減していく。
  • 費用構造との関連性
    収益性が逓減すると、固定費の割合や営業レバレッジが増加に転じる。
  • まとめ
    全体額に占める増加比率の低下と開設による増加額の減少で将来的には固定費割合が増加して成長性が低くなる

 

解答(第3問 設問3)

「営業拠点の開設が成長性に及ぼす当面の影響」と「営業拠点のさらなる開設と成長性の将来的な見通し」は以下の通りです。

以下の文章で私が考察した内容が伝わるのか疑問が残りますが、文字数制限が厳しすぎます

当面は成長性が高いが全体額に占める増加比率の低下と開設による増加額の減少で将来的には固定費割合が増加して成長性が低くなる。(60文字)

 


 

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