事例Ⅳ ~平成30年度 解答例(1)(経営分析)~

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平成30年度の事例Ⅳの「第1問」に関する解答例(案)を説明していきます。

私なりの思考ロジックに基づく解答例(案)を以下に説明しますので、参考としてもらえればと思います。

 

目次

事例Ⅳ ~平成30年度試験問題一覧~

平成30年度のその他の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

経営分析

「経営分析」では、企業の財務諸表に基づき、その企業の経営状況を定量的に分析していきます。定量的に分析して企業の経営状況を正確に把握することによって、経営者が意思決定を行うための情報を提供することを目的としています。

 

第1問

与件文と財務諸表に基づき、経営分析を行う問題です。

第1問(配点24点)

 

(設問1)

D社と同業他社の財務諸表を用いて経営分析を行い、同業他社と比較してD社が優れていると考えられる財務指標を1つ、D社の課題を示すと考えられる財務指標を2つ取り上げ、それぞれについて、名称を(a)欄に、その値を(b)欄に記入せよ。なお、優れていると考えられる指標を①の欄に、課題を示すと考えられる指標を②、③の欄に記入し、(b)欄の値については、小数点第3位を四捨五入し、単位をカッコ内に明記すること。

 

(設問2)

D社の財政状態および経営成績について、同業他社と比較してD社が優れている点とD社の課題を50字以内で述べよ。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

第1問(設問1)

Step1.条件の確認

経営分析を始める前に、問題の条件を確認しておきます。

 

  1. 比較対象:D社の同業他社の財務諸表と比較
  2. 財務指標:優れていると判断できる財務指標を1つ、課題を示す財務指標を2つ
  3. 有効数字:小数点第3位を四捨五入

 

「優れていると判断できる財務指標」を「1つ」、「財務上の課題を示す財務指標」を「2つ」、解答するよう求められていますので、「収益性」「効率性」「安全性」の3つの観点からそれぞれ1つずつ、「合計3つ」の財務指標を選択します。

 

Step2.問題で与えられたデータに基づく予想

与件文と財務諸表を読み込み、対象となる企業の状況を把握して、選択する財務指標をある程度予想します。
ここではあくまで選択する財務指標を予想するだけで「Step3」で予想が正しいかを検証する必要があります。

 

与件文で気になる点(定性情報)
  1. 販売状況
    • 同社は、ハウスメーカーが新築物件と併せて販売するそれらの大型品を一度一カ所に集め、このネットワークにより一括配送するインテリアのトータルサポート事業を開始し、サービスを全国から受注している。
    • E社の子会社F社を吸収合併することにより、インテリアコーディネート、カーテンやブラインドのメンテナンス、インテリア素材調達のサービス業務が事業に加わった。
    • 同社は、E社から事業を譲り受けることにより不動産管理会社等のサポート事業を承継し、マンスリーマンションのサポート、建物の定期巡回やレンタルコンテナ点検のサービスを提供している。定期巡回や点検サービスは、不動産巡回点検用の報告システムを活用することで同社の拠点がない地域でも受託可能であり、全国の建物を対象とすることができる。
  2. 生産状況
    • 顧客企業から受けた要望に応えるための現場における工夫をブラッシュアップし、全社的に共有して一つ一つ事業化を図ってきた。
    • 新たなビジネスモデルで採算の改善を図るために、2年前に家具・インテリア商材・オフィス什器等の大型品を二人一組で配送し、開梱・組み立て・設置までを全国で行う配送ネットワークを構築した。
  3. 今後の展開
    • D社は顧客企業からの要望に十分対応するために配送ネットワークの強化とともに、協力個人事業主等ならびに自社の支店・営業所の拡大が必要と考えている。
    • 同社の事業は労働集約的であることから、昨今の人手不足の状況下で、同社は事業計画に合わせて優秀な人材の採用および社員の教育にも注力する方針である。

 

財務諸表で気になる点(定量情報)

同業他社の財務諸表の数値と比較した場合のD社の財務諸表の特徴を以下に示します

 

  1. 貸借対照表
    • 「現金及び預金」が少ない。
    • 「たな卸し資産」が多い。
    • 「土地」と「建物」が多く「リース資産」がない。
    • 「短期借入金」が少ない。
    • 「未払費用」が多い。
    • 「資本剰余金」が多い。
  2. 損益計算書
    • 「売上総利益」が多い。
    • 「販売費及び一般管理費」が多い。

 

この時点での予想

ここまで見た段階で、ある程度予想してみます。
ただし、あくまで予想なので、実際に「財務指標」を算出して、自分の予想が正しいかを検証する必要があります。

  1. 収益性
    • 吸収合併や事業承継により継続的に事業を拡大する努力をしていること、および現場における工夫をブラッシュアップしたり、新たなビジネスモデルで採算の改善を図るために配送ネットワークを構築するなど、継続的に原価を低減する努力をしているため「売上高売上原価比率」と「売上高総利益率」が「高い」と予想される。(売上高売上原価比率:○/売上高総利益率:○)
    • 与件文を読む限りではその理由は明確に分かりませんが、「販売費及び一般管理費」が非常に高くなっているため、「売上高販管費比率」が「高い」と予想される。(売上高販管費比率:×/売上高営業利益率:×)
    • 「借入金」が少ないため、「売上高営業外費用比率」が「低い」と予想される。(売上高営業外費用比率:○)
  2. 効率性
    • 財務諸表において「棚卸資産」が多いため「棚卸資産回転率」が低い可能性があるが、与件文等から、その原因等については読み取ることができず、その良し悪しについては判断することができない。(棚卸資産回転率:×)
    • 外部業者に代金回収業務等を委託しているため「売上債権回転率」が低い可能性があるが、財務諸表の数値を見る限りでは、その良し悪しについては判断することができない。(売上債権回転率:×)
    • 「土地」と「建物」といった固定資産が多いため、「固定資産回転率」「有形固定資産回転率」が「低い」と予想される。(固定資産回転率:×/有形固定資産回転率:×)
  3. 安全性
    • 財務諸表の数値を見る限りでは、「短期安全性」と「長期安全性」の良し悪しについては判断することができない。
    • 「短期借入金」が少なく「資本剰余金」が多いため、「資本調達構造」が優れており、「負債比率」が「低く」、「自己資本比率」が「高い」と予想される。(自己資本比率:○/負債比率:○)

 

Step3.財務諸表の数値分析(財務指標の絞り込み)

収益性
財務指標一覧(収益性)

収益性の財務指標を以下に示します。

財務指標(収益性) D社 同業他社 比較
売上高売上原価比率 75.85% 90.08%
売上高総利益率 24.15% 9.92%
売上高販管費比率 22.95% 6.67% ×
売上高営業利益率 1.20% 3.25% ×
売上高営業外費用比率 0.13% 0.28%
売上高経常利益率 1.20% 3.03% ×
総資本経常利益率 3.58% 8.93% ×
考察
  • 「売上高売上原価比率」「売上高総利益率」は、同業他社と比較してかなり優れている。
    与件文から読み取れる情報から、D社は単に原価を低減する努力だけでなく、事業を拡大するための努力も継続的に実施しているため、このどちらかを選択するとした場合は「売上高売上原価比率」ではなく「売上高総利益率」を選択する
  • 「売上高売上原価比率」「売上高総利益率」は、同業他社と比較してかなり優れているが、「売上高販管費比率」が著しく高くなっているため、「売上高営業利益率」が同業他社より低くなっている。「売上高営業利益率」が低くなっている原因が「販売費及び一般管理費」によることは明確であるため、このどちらかを選択するとした場合は「売上高営業利益率」ではなく「売上高販管費比率」を選択する
  • 「売上高経常利益率」や「総資本経常利益率」もかなり低くなっているが、その原因が「販売費及び一般管理費」によることは明確であるため、「売上高経常利益率」や「総資本経常利益率」は選択しない。(経常利益に関する財務指標を選択するのは、売上総利益・営業利益・経常利益の全ての数値が悪く、財務諸表や与件文に収益性に関する特徴が見当たらない場合である。
  • 「売上高営業外費用比率」が優れてはいるが、同業他社と比較して「売上高総利益率」「売上高販管費比率」「売上高営業利益率」ほどには数値の差は大きくない。
  • D社が優れていると考えられる財務指標には「売上高総利益率」を候補として残し、課題を示すと考えられる財務指標には「売上高販管費比率」を選択候補として残す。

 

検討結果

「売上高総利益率」と「売上高販管費比率」を候補として残す。

 


明日も引き続き、「事例Ⅳ ~平成30年度 解答例(2)(経営分析)~」として、「第1問」の続きを説明していきます。

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