今回は、「運営管理 ~H30-1 管理目標(2)PQCDSME~」について説明します。
目次
運営管理 ~平成30年度一次試験問題一覧~
平成30年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
PQCDSME
「PQCDSME」とは、生産管理の基本的な管理に使用される7つの観点の英語表記から頭文字を取って並べたものであり、生産管理ではこの観点に基づき、管理目標の設定や評価を行っていきます。
観点 | 管理指標 | 説明 |
Productivity (生産性) |
労働生産性 設備生産性 原材料生産性 エネルギー生産性 |
インプットに対しアウトプットをできるだけ多くすること |
Quality (品質) |
不良品率 検出率 機能充足度 |
ねらいどおりの品質の製品・サービスを提供すること |
Cost (コスト・経済性) |
単価 原価率 固定比率 |
資源のムダを減らし、安いコストで製品・サービスを生産すること |
Delivery (納期・生産量) |
製品リードタイム 納期遵守率 |
必要な時に、必要な量だけ製品やサービスを提供すること |
Safety (安全性) |
強度率 度数率 年千人率 |
作業者の負荷が軽減され、労働災害や事故がなく、安全に作業ができること |
Morale (モラール) |
職務の満足度 集団の団結感 帰属意識 |
人の能力が開発・向上され、良い職場環境のもとで、働きがいをもって仕事ができること |
Environment Ecology (環境) |
製品の使用期間 廃棄物処分量 |
環境に対し負荷をかけない生産プロセスを設計し、環境に対し負荷をかけない製品やサービスを提供すること |
安全性(Safety)
「PQCDSME」において、作業者の負荷が軽減され、労働災害や事故がなく、安全に作業ができることを示す「S(安全性)」について説明していきます。
労働災害
「労働災害」とは、労働者が業務遂行中に業務に起因して受けた災害であり、業務上の負傷、疾病及び死亡に該当するものをいいます。
ただし、業務上の疾病であっても、疾病が事故、災害などの突発的なものによるものでなく緩慢に進行して発生した疾病(じん肺、鉛中毒症、振動障害など)、食中毒及び伝染病、通勤災害による負傷・疾病及び死亡は含まれません。
労働災害の状況については「強度率」「度数率」といった「労働災害率」によって表されます。
労働災害率
強度率
「強度率」とは、労働時間1000人あたりの労働損失日数を表す指標であり、災害の大きさを示しています。
「労働損失日数」とは、労働災害によって労働者が就業できなくなった日数のことであり、以下の基準に基づき算出されます。
分類 | 労働損失日数 |
死亡 | 7,500日 |
永久全労働不能 | 7,500日(身体障害等級1~3級) |
永久一部労働不能 | 等級に応じて50~5,500日(身体障害等級4~14級) |
一時労働不能 | 暦日の休業日数に300/365を乗じた日数 |
度数率
「度数率」とは、100万延労働時間あたりの労働災害による死傷者数を表す指標であり、災害発生の頻度を示しています。
なお、同一人物が2回以上被災した場合は「労働災害による死傷者数」はその被災回数に基づき「2人」として算出します。
年千人率
「年千人率」とは、1000在籍労働者あたりの労働災害による年間死傷者数を表す指標です。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成30年度 第1問】
生産における管理目標(PQCDSME)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 職場環境に関する評価を行うために、検査によって不適合と判断された製品の数を検査対象の製品の総数で除して求められる不適合率を用いた。
イ 職場の安全性を評価するために、延べ労働損失日数を延べ実労働時間数で除し1,000を乗じて求められる強度率を用いた。
ウ 生産の効率性を評価するために、労働量を生産量で除して求められる労働生産性を用いた。
エ 納期に関する評価を行うために、動作可能時間を動作可能時間と動作不能時間の合計で除して求められる可用率を用いた。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
生産における管理目標(PQCDSME)に関する知識を問う問題です。
(ア) 不適切です。
「環境(Environment)」は「製品の使用期間(ライフサイクル)」や「廃棄物処分量」といった管理指標で評価を行います。
選択肢の文章に記載されている「検査によって不適合と判断された製品の数を検査対象の製品の総数で除して求められる不適合率(不良品率)」は「品質(Quality)」の管理指標であるため、選択肢の内容は不適切です。
観点 | 管理指標 | 説明 |
Quality (品質) |
不良品率 検出率 機能充足度 |
ねらいどおりの品質の製品・サービスを提供すること |
Environment Ecology (環境) |
製品の使用期間 廃棄物処分量 |
環境に対し負荷をかけない生産プロセスを設計し、環境に対し負荷をかけない製品やサービスを提供すること |
(イ) 適切です。
「安全性(Safety)」は「労働災害率」「度数率」「強度率」「労働損失日数」といった管理指標で評価を行います。
「強度率」とは、延べ労働損失日数を延べ実労働時間数で除し1,000を乗じて求められる指標であるため、選択肢の内容は適切です。
(ウ) 不適切です。
「生産性(Productivity)」は、「生産要素の投入量(インプット)」に対する「産出量(アウトプット)」の割合として示され、数値が高いほど生産性が高いことを表しています。
選択肢の文章では「労働量を生産量で除して求められる労働生産性」となっていますが、生産の効率性を評価するためには「生産量(アウトプット)」を「労働量(インプット)」で除して生産性を求める必要があるため、選択肢の内容は不適切です。
(エ) 不適切です。
「納期・生産量(Delivery)」は「製品リードタイム」「納期遵守率」といった管理指標で評価を行います。
選択肢の文章に記載されている「動作可能時間を動作可能時間と動作不能時間の合計で除して求められる可用率」は「設備効率」に関する指標であるため、選択肢の内容は不適切です。
可用率
必要とされるときに設備が使用中または運転可能である確率。可動率ともいう。(JISZ8141-6506)
答えは(イ)です。
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