財務・会計 ~H30-14 デリバティブ取引(4)~

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今回は、「財務・会計 ~H30-14 デリバティブ取引(4)~」について説明します。

 

「デリバティブ取引」は二次試験(事例Ⅳ)でも出題される可能性があるため、一次試験の段階からしっかりと勉強しておきましょう。

目次

財務・会計 ~平成30年度一次試験問題一覧~

平成30年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

デリバティブ取引(一次試験) -リンク-

本ブログにて「デリバティブ取引(一次試験)」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

 

デリバティブ取引(二次試験) -リンク-

本ブログにて「デリバティブ取引(二次試験)」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

 

デリバティブ取引の目的

材料や商品や製品の輸入や輸出を行う企業においては、為替レートの変動に伴う「為替変動リスク」の対策として「デリバティブ取引」を活用します。

「デリバティブ取引」は、為替レートの変動による損失(為替変動リスク)を回避(ヘッジ)するための手段であり、代表的な方法として「為替予約」と「オプション取引」と「スワップ取引」があります。

輸入を行う企業は業績に悪い影響を与える「円安」になった時に備えて、輸出を行う企業は業績に悪い影響を与える「円高」になった時に備えて、「デリバティブ取引」でリスクヘッジを行います。

なお、中小企業診断士試験で出題される「デリバティブ取引」は、あくまで「為替変動リスク」による損失を回避するための手段であり、為替レートの変動により利益を得ることが目的ではありません

 

「デリバティブ取引」の説明では、取引先企業の通貨が「ドル」であることを前提としていますが、取引先企業がヨーロッパの場合は「ユーロ」に読み替えるなど、現地通貨と理解してください。

 

デリバティブ取引の種類

「為替変動リスク」に対する「リスクヘッジ手段」として活用される「デリバティブ取引」には、以下の方法があります。

 

  • 為替予約
  • オプション取引
  • スワップ取引

 

「デリバティブ取引」は、二次試験の事例IVで出題される論点ですが、「為替予約」や「オプション取引」と比較すると「スワップ取引」が出題されることはあまり多くありません。

 

為替予約

「為替予約」とは、ある将来の一定の期日を定めて、あらかじめ金融機関と取引の為替レートを決めておく取引です。

「為替予約」は、決済時点の金額を確定させるためリスクヘッジとして非常に有効な手段ですが、履行義務があるため、決済時点の為替レートが為替予約で取り決めた価格より利益を享受できるようになっていても、キャンセルすることができません。

 

オプション取引

「オプション取引」とは、ある将来の一定の期日(行使期日)または期日までの間(行使期間)に、外貨をある一定の価格(行使価格)で売買する権利を得るための取引です。

「オプション取引」は、行使期日または行使期間中に、実際の為替レートを確認しながら、利益を享受できるような為替レートになっていた場合は権利を行使して取引を行い、逆に損失を受けるような為替レートになっていた場合は権利を放棄して損失を回避することができる選択権を有していることが特徴です。

 

スワップ取引

「スワップ取引」には、同一通貨間で行う「金利スワップ取引」と異種通貨間で行う「通貨スワップ取引」があります。

 

金利スワップ取引

「金利スワップ取引」は、同一通貨間で異なる種類の金利を交換する取引であり、金利変動リスクをヘッジするための手段として活用されます。

代表的な「金利スワップ取引」として、固定金利と変動金利を交換する取引が挙げられます。
「金利スワップ取引」には、他にも異なる種類の変動金利同士を交換する取引(※)などもありますが、固定金利の場合は将来のキャッシュフローが確定しているため、固定金利同士を交換するという金利スワップ取引はありません

金利スワップ取引は、取引所を通さずに当事者間で直接契約を行う相対取引であり、取引の当事者間で取引内容を自由に決めることができます

また、元本を取引の当事者間で移動させない「想定元本」で取引を行います。

(※)変動金利同士を交換する取引の例

  • 同じ種類の変動金利で期間が異なるものを交換
    3ヶ月円LIBORと6ヶ月円LIBORの交換
  • 異なる種類の変動金利を交換する取引
    円LIBORと円TIBORの交換

 

通貨スワップ取引

同一通貨間で取引する場合は「金利スワップ取引」といいますが、異種通貨間で取引する場合は「通貨スワップ取引」といいます。

「通貨スワップ取引」は「金利」だけでなく「元本」も交換する取引です。
また、異なる通貨の変動金利同士を交換することが一般的です。

 

先渡取引と先物取引の特徴

 

先渡取引

先渡取引は、店頭などで相対取引により行われ、以下のような特徴があります。

 

  • 取引相手が決まっているため、流動性が低く、信用リスクも高い取引です。
  • 取引の当事者間で取引内容を自由に決めることができる取引です。
  • 取引は現物決済となるため、全額を受け渡します。
  • 原則として、期限日に現物を引き渡します。
  • 現物決済となるため、取引には100%の資金が必要です。
  • 委託証拠金は発生しません。

 

先物取引

先物取引は東京証券取引所、大阪証券取引所、東京金融先物取引所などの取引所を通じて行われ、以下のような特徴があります。

 

  • 流動性が高く、信用リスクも低い取引です。
  • 取引所を通じて、定型化された商品を取り扱う取引です。
  • 現物のない取引で、反対取引による差金決済で損益を受け渡します。
  • 期限日までであればいつでも差金決済することができます。
  • 数%の資金で取引を行うため、レバレッジ効果が高い
  • 証拠金制度(商品の価格により変動)により、取引の履行を確保している取引です。

 

「レバレッジ」とは、日本語では「てこの原理」のことを示しており、少ない資金で大きな利益を手に入れるという意味で使われています。

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【平成30年度 第14問】

デリバティブに関する記述として、最も不適切なものはどれか

 

ア 金利スワップ取引の代表的なものは、同一通貨における固定金利と変動金利を交換する取引である。
イ 先物取引では日々値洗いにより損益が計算され、証拠金に加減されている。
ウ デリバティブ取引の代表的なものとして、先物取引、オプション取引、スワップ取引がある。
エ わが国のデリバティブ取引において、想定元本ベースで今日最も多く取引されているものは、通貨スワップである。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答

デリバティブ取引に関する知識を問う問題ですが、求められる知識の範囲が広く、非常に難しい問題です。

 

(ア) 適切です。

「金利スワップ取引」は、同一通貨間で異なる種類の金利を交換する取引であり、代表的な取引は固定金利と変動金利を交換する取引であるため、選択肢の内容は適切です

 

(イ) 適切です。

「先物取引」は、証拠金制度(商品の価格により変動)によって取引の履行を確保している取引であり、日々証拠金の値洗いが行われるため、選択肢の内容は適切です

 

(ウ) 適切です。

「為替変動リスク」に対する「リスクヘッジ手段」として活用される「デリバティブ取引」には、代表的なものとして「為替予約(先物取引)」「オプション取引」「スワップ取引」の3種類があるため、選択肢の内容は適切です

 

「デリバティブ取引」は、二次試験の事例IVで出題される論点ですが、「為替予約」や「オプション取引」と比較すると「スワップ取引」が出題されることはあまり多くありません。

 

(エ) 不適切です。

わが国のデリバティブ取引において、想定元本ベースで今日最も多く取引されているものは、「金利スワップ取引」であるため、選択肢の内容は不適切です

 

ここでは、デリバティブ取引の統計データについて説明していきます。

 

想定元本

「想定元本」とは、デリバティブ取引において実際に受け渡しされるキャッシュ・フローを計算するために、想定される名目上の元本(契約額)のことをいい、デリバティブ取引の規模を示す代表的な指標です。

ちなみに、多くのデリバティブ取引では想定元本自体の受け渡しを行いませんが、「通貨スワップ」は想定元本額相当の受け渡しを行う取引です。

 

デリバティブ市場の統計データ(日本銀行ホームページ)

BIS(Bank for International Settlements/国際決済銀行)」が、デリバティブ市場の透明性確保とモニタリング強化を目的として、各国中央銀行を取りまとめグローバルにおけるデリバティブ市場の取引高と残高の統計を公表しています。

 

  • デリバティブ取引に関する定例市場報告(6ヶ月毎)
    主要ディーラーだけを対象に、半期に1度作成される残高統計
  • 外国為替およびデリバティブに関する中央銀行サーベイ(3年毎)
    広範なディーラーを対象に、3年に1度作成される取引高および残高の統計

 

統計データの内容

日本における統計データを「外国為替関連デリバティブ取引」と「金利関連デリバティブ取引」に区分すると、「金利関連デリバティブ取引」の方が取引高が多く、その中でも「金利スワップ」の取引高が一番多くなっています

 

分類 取引種類
外国為替関連
デリバティブ取引
スポット
フォワード
為替スワップ
通貨スワップ
通貨オプション
金利関連
デリバティブ取引
FRA<金利先渡し取引>
金利スワップ
金利オプション

 

答えは(エ)です。


 

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