事例Ⅳ ~平成24年度 解答例(7)(企業価値)~

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平成24年度の事例Ⅳに関する解答例(案)を説明していきます。

私なりの思考ロジックに基づく解答例(案)を以下に説明しますので、参考としてもらえればと思います。

 

目次

事例Ⅳ ~平成24年度試験問題一覧~

平成24年度の他の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

企業価値

「企業価値」は「企業買収(M&A)」などのケースにおいて使用されます。

中小企業は、事業領域を拡大することを目的として企業を買収したり、後継者が不在の場合に企業を存続させるための手段として企業を売却します

当然ながら、買収する側の企業としては買収しようとする企業をできるだけ安く購入したいと考え、売却する側の企業としてはできるだけ企業を高く売りたいと考えて交渉を進めることとなります。

このように、買収する側の企業と売却する側の企業で思惑が異なり、独自の立場でその買収価格(売却価格)を話し合っても双方の合意には至らないため、根拠に基づく「企業価値」を算出して、「企業買収(M&A)」の買収価格(売却価格)を決定していきます。

 

第3問(設問1)

第3問(配点30点)

 

前述したように、オーナー夫妻には後継者がなく、親族にも経営を任せられる人材が見当たらないという。場合によっては、旅館の売却を伴う事業承継も視野に入れているといい、今年度の状況を前提とした具体的なケースについて説明を求められた。

 

(設問1)

承継先にかかわらず、売却価格の算定に際しては、客観的な数値が必要となる。そこで、今年度の財務諸表をもとに企業価値を求めることになった。割引キャッシュフロー法を用いて、企業価値を求めよ(計算過程も明示すること。単位:千円、千円未満は四捨五入すること)。
ただし、算定にあたっては、オーナー夫妻に対する給与16,000千円は不要となることが分かっている。また、今後の株主資本コストを5%、平均的な負債資本コストを4%、税率は40%、キャッシュフローは今年度の水準が将来にわたって継続するものと仮定する。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方(設問1)

D旅館では、オーナー夫妻に後継者となる子供がおらず、親族にも経営を任せられる人材が見当たらないため、旅館の売却による事業承継を視野に入れて検討しています。

今回の問題では、旅館の売却に向けてD旅館の企業価値を算出することを求められています。

問題文に与えられている条件に従って「割引キャッシュフロー法(DCF法)」により「企業価値」を算出していきます。

 

DCF法による企業価値の算出

DCF法により企業価値を算出するための公式は以下の通りです。
事業承継した場合の「フリーキャッシュフロー(FCF)」と「加重平均資本コスト(WACC)」から企業価値を算出します。

 

 

事業承継した場合の税引前営業利益

今年度の損益計算書における「営業損益」は「▲13,490千円」ですが、事業承継した場合は、オーナー夫妻に対する給与「16,000千円」が不要となるため、税引前営業利益は以下の通りとなります。

  • 税引前営業利益 = ▲13,490 + 16,000 = 2,510千円

 

事業承継した場合のFCF

FCF(フリーキャッシュフロー)は、以下の公式により算出することができます。

 

 

今回の問題では「設備投資」や「正味運転資本の増減」は発生しないため「税引前営業利益 ×( 1 - 法人税率 )+ 減価償却費」により「FCF(フリーキャッシュフロー)」を算出します。

  • FCF = 税引前営業利益 ×( 1 - 法人税率 )+ 減価償却費 = 2,510千円 ×( 1 - 40% )+ 25,400千円 = 26,906千円

 

加重平均資本コスト(WACC)

「加重平均資本コスト(WACC)」は、以下の公式により算出します。

 

 

「税引後負債コスト」「株主資本コスト」については、問題文で与えられた「株主資本コストを5%、平均的な負債資本コストを4%、税率は40%」という数値を使用します。

また、事象承継を行っても「貸借対照表」の数値は変わらないため、「負債」「株主資本」「総資産」については、問題文で与えられた「貸借対照表」の数値を使用します。

 

  • 加重平均資本コスト(WACC) = 458,300千円 ÷ 572,875千円 × 4%( 1 - 40% )+ 114,575千円 ÷ 572,875千円 × 5% = 2.92%

 

企業価値の算出

上述で算出した「FCF」と「加重平均資本コスト(WACC)」から、企業価値を算出します。

 

  • 企業価値 = FCF ÷ 加重平均資本コスト(WACC) = 26,906千円 ÷ 0.0292 = 921438.356… ≒ 921,438千円(千円未満は四捨五入)

 

解答(設問1)

DCF法(割引キャッシュフロー法)により算出した「企業価値」は以下の通りです。

事業承継した場合に不要となるオーナー夫妻に対する給与「16,000千円」を税引前営業利益に反映する
税引前営業利益 = ▲13,490千円 + 16,000千円 = 2,510千円
企業価値は、フリーキャッシュフローを加重平均資本コスト(WACC)で除して算出する。
フリーキャッシュフロー = 税引前営業利益 ×( 1 - 法人税率 )+ 減価償却費
2,510千円 ×( 1 - 40% )+ 25,400千円 = 26,906千円

加重平均資本コスト(WACC)
458,300千円 ÷ 572,875千円 × 4% ×( 1 - 40% )+ 114,575千円 ÷ 572,875千円 × 5% = 2.92%
企業価値 = フリーキャッシュフロー ÷ 加重平均資本コスト(WACC)
26,906千円 ÷ 2.92% = 921438.356… ≒ 921,438千円(千円未満は四捨五入)

 


明日も、引き続き「平成24年度 解答例(8)(事業承継)」として「第3問(設問2)」について説明します。

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