事例Ⅳ ~平成26年度 解答例(7)(デリバティブ取引)~

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平成26年度の事例Ⅳに関する解答例(案)を説明していきます。

私なりの思考ロジックに基づく解答例(案)を以下に説明しますので、参考としてもらえればと思います。

 

目次

事例Ⅳ ~平成26年度試験問題一覧~

平成26年度の他の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

デリバティブ取引

材料や商品や製品の輸入や輸出を行う企業においては、為替レートの変動に伴う「為替変動リスク」の対策として「デリバティブ取引」を活用します。

「デリバティブ取引」は、為替レートの変動による損失(為替変動リスク)を回避(ヘッジ)するための手段であり、代表的な方法として「為替予約」と「オプション取引」と「スワップ取引」があります。

輸入を行う企業は業績に悪い影響を与える「円安」になった時に備えて、輸出を行う企業は業績に悪い影響を与える「円高」になった時に備えて、「デリバティブ取引」でリスクヘッジを行います。

なお、中小企業診断士試験で出題される「デリバティブ取引」は、あくまで「為替変動リスク」による損失を回避するための手段であり、為替レートの変動により利益を得ることが目的ではありません

 

第4問

第4問(配点16点)

 

D社では、再度、コーヒー豆を直接買い付ける可能性を探ることにした。しかし、以前のような為替差損を計上する恐れがあるため、この為替リスクを軽減する手段の検討に入った。為替リスクを軽減する手段を2つ挙げ(a)、それぞれの手段を用いた際、円安になった場合と、円高になった場合の影響(メリット・デメリット)(b)について述べよ。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方

海外企業から材料や商品や製品などを輸入する場合、為替レートの変動によるリスク(為替リスク)を認識して、リスクを回避または軽減するための対策(リスクヘッジ)を講じる必要があります。

今回の問題では、「為替リスク」に対する「リスクヘッジ手段」として活用される「デリバティブ取引」に関する知識を問われています。

 

為替リスク(為替変動リスク)

「為替リスク(為替変動リスク)」とは、外貨取引に適用される為替レートの変動により、為替差損を被るリスクです。

輸入や輸出など海外企業と取引を行う企業は、「デリバティブ取引(為替予約、オプション取引)」を活用して、為替レートの変動による損失を回避または軽減します。

 

為替レートの変動により輸入業者が受ける影響

海外企業と取引を行う企業は為替レートの変動による影響を受けますが、海外企業から商品を輸入している企業においては「円安」になると輸入した商品の支払代金が高くなってしまうため、「円安」に備えて「デリバティブ取引」でリスクヘッジを行います。

 

商品購入後に「円安」となった場合

「ドル」を例に説明します。

為替レートが「1ドル=100円」の時点で、海外企業から「1,000ドル(100,000円)」の商品を購入したが、商品を受け取って代金を支払う時点の為替レートが「1ドル=110円」となっていた場合、海外企業に支払う金額は「1,000ドル(110,000円)」となるため、為替レートの変動により「10,000円」を損したことになります。(為替差損が発生)

 

輸入を行う企業は、このように「円安」となった場合に発生する「為替差損」を回避するため、デリバティブ取引でリスクヘッジを行います。

 

 

デリバティブ取引の種類

「為替変動リスク」に対する「リスクヘッジ手段」として活用される「デリバティブ取引」には、以下2種類の方法があります。

 

  • 為替予約
  • オプション取引

 

為替予約

「為替予約」とは、ある将来の一定の期日を定めて、あらかじめ金融機関と取引の為替レートを決めておく取引です。

「為替予約」は、決済時点の金額を確定させるためリスクヘッジとして非常に有効な手段ですが、履行義務があるため、決済時点の為替レートが為替予約で取り決めた価格より利益を享受できるようになっていても、キャンセルすることができません。

 

オプション取引

「オプション取引」とは、ある将来の一定の期日(行使期日)または期日までの間(行使期間)に、外貨をある一定の価格(行使価格)で売買する権利を得るための取引です。

「オプション取引」は、行使期日または行使期間中に、実際の為替レートを確認しながら、利益を享受できるような為替レートになっていた場合は権利を行使して取引を行い、逆に損失を受けるような為替レートになっていた場合は権利を放棄して損失を回避することができる選択権を有していることが特徴です。

 

プレミアム(オプションプレミアム)

オプション取引は、権利を購入するときに「プレミアム(オプションプレミアム)」と呼ばれる手数料を支払います。

つまり、権利を行使した場合でも放棄した場合でもこの手数料が発生するというデメリットがありますが、言い方を変えると「オプション取引」では為替レートがどのように変動しても、最大の損失はこの手数料の金額内に抑えることができるようになっています

 

D社におけるリスクヘッジの手段と効果

具体的に「為替変動リスク」に対する「リスクヘッジ」の手段と効果について整理していきます。

 

為替予約の場合
リスクヘッジの手段
  • コーヒー豆を購入する時点で外貨買いの為替予約を行い、決済時点の支払金額を確定させます。
「外貨買いの為替予約」による効果

「外貨買いの為替予約」による効果を図に表すと以下の通りとなります。

 

 

円安になった場合

為替レートが「円安(外貨高)」になると、D社が支払うコーヒー豆の代金が高くなるため、「損失」が発生します。

一方で、リスクヘッジのために行った「外貨買いの為替予約」では「円安(外貨高)」になると「利益」が発生します。

「為替レートの変動により発生する損益」と「為替予約により発生する損益」を組み合わせると「利益」と「損失」が相殺されるため、為替レートの変動による「損失」を回避できたという結果となります。

 

円高になった場合

為替レートが「円高(外貨安)」になると、D社が支払うコーヒー豆の代金が安くなるため、「利益」が発生します。

一方で、リスクヘッジのために行った「外貨買いの為替予約」では「円高(外貨安)」になると「損失」が発生します。

「為替レートの変動により発生する損益」と「為替予約により発生する損益」を組み合わせると「利益」と「損失」が相殺されるため、為替レートの変動による「利益」を享受できなかったという結果となります。

 

オプション取引の場合
リスクヘッジの手段
  • コーヒー豆を購入する時点で「外貨」の「コールオプションの買い」を購入してリスクヘッジを行います。

 

「ヨーロピアンタイプ」と「アメリカンタイプ」

今回の問題では、為替リスクを軽減する手段である「デリバティブ取引」の2種類の方法について問われているため、「為替予約」と「オプション取引」という2種類の方法を明確に解答する必要がありますが、「オプション取引」の「ヨーロピアンタイプ」と「アメリカンタイプ」の違いについては重要性が低く言及する必要はないと判断したため、解答内では触れないようにしました。

 

「外貨のコールオプションの買い」による効果

「外貨のコールオプションの買い」による効果を図に表すと以下の通りとなります。

 

 

円安になった場合

為替レートが「円安(外貨高)」になると、D社が支払うコーヒー豆の代金が高くなるため、「損失」が発生します。

一方で、リスクヘッジのために行った「外貨のコールオプションの買い」では「円安(外貨高)」になると権利を行使することにより「利益」を得ることができます。

「為替レートの変動により発生する損益」と「オプション取引により発生する損益」を組み合わせると、為替レートの変動による「損失」を軽減できてはいますが、「オプション取引」の手数料である「プレミアム」分だけ「損失」が発生するという結果となります。

 

円高になった場合

為替レートが「円高(外貨安)」になると、D社が支払うコーヒー豆の代金が安くなるため、「利益」が発生します。

一方で、リスクヘッジのために行った「外貨のコールオプションの買い」では「円高(外貨安)」になると、権利を放棄して損失金額を「オプション取引」の手数料である「プレミアム」に限定します。

「為替レートの変動により発生する損益」と「オプション取引により発生する損益」を組み合わせると、為替レートの変動による「利益」を享受できているという結果となります。

 

解答

為替リスクを軽減する手段(a)、円安になった場合と円高になった場合の影響(メリット・デメリット)(b)は以下の通りです。

外貨買いの為替予約 決済時点の支払金額が確定しているため「円安/円高」の影響を受けない。
「円安」の場合は損失を回避することができるが「円高」の場合は利益を享受することができない。
外貨のコールオプションの買い 「円安」の場合は権利を行使することにより損失を回避することができる。ただし、「オプション取引」の手数料である「プレミアム」分だけは損失が発生する。
「円高」の場合は、権利を放棄して実勢相場で取引することにより利益を享受することができる。

 


 

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