今回は、「デリバティブ取引(1)企業のリスク管理」について説明します。
目次
デリバティブ取引
事例Ⅳの与件文において、海外企業との取引などに関する記述がある場合は「デリバティブ取引」について出題される可能性があります。
「デリバティブ取引」に関連する記事は、以下のページに整理しています。
デリバティブ取引とは
材料や商品や製品の輸入や輸出を行う企業においては、為替レートの変動に伴う「為替変動リスク」の対策として「デリバティブ取引」を活用します。
「デリバティブ取引」は、為替レートの変動による損失(為替変動リスク)を回避(ヘッジ)するための手段であり、代表的な方法として「為替予約」と「オプション取引」と「スワップ取引」があります。
輸入を行う企業は業績に悪い影響を与える「円安」になった時に備えて、輸出を行う企業は業績に悪い影響を与える「円高」になった時に備えて、「デリバティブ取引」でリスクヘッジを行います。
なお、中小企業診断士試験で出題される「デリバティブ取引」は、あくまで「為替変動リスク」による損失を回避するための手段であり、為替レートの変動により利益を得ることが目的ではありません。
二次試験において、「デリバティブ取引」に関する問題を解くために必要な知識として「企業のリスク管理」「デリバティブ取引の種類」「為替予約」「オプション取引」など、順番に説明していきます。
リスク
一般的に「リスク」とは「危険」を表す言葉として認知されていますが、正確には「リスク」とは「不確実性さ」を意味しています。
例えば、「ハイリスクハイリターン」な金融商品とは、大損をする可能性もあれば大儲けできる可能性もある商品のことをいいますが、これは「危険が大きいので儲けも大きくなる可能性がある」のではなく「不確実性が高いため儲けも損も大きくなる可能性がある」ということを意味しています。
企業のリスク管理
企業はリスクを管理することによって、被る損失を事前に回避したり軽減する必要があります。
企業にとってのリスクは、「災害リスク」「システムリスク」「法的リスク」「損害賠償リスク」など多岐にわたりますが、以下では「財務・会計」に関連するリスクについて説明します。
「デリバティブ取引」は、為替レートの変動に伴う「為替変動リスク」に対するリスク対策の手段です。
信用リスク
「信用リスク」とは、取引相手先の信用状況の変化(債務超過、倒産など)により、債権回収ができなくなるリスクのことをいいます。
海外企業が取引先だった場合、戦争や革命などが起きて債権が回収できなくなる「カントリーリスク」も含まれます。
市場リスク
「市場リスク」には「為替変動リスク」や「金利変動リスク」があります。
為替変動リスク
「為替変動リスク」とは、為替相場の変動により外貨取引で為替差損益が発生するリスクのことをいいます。
輸入や輸出など海外企業と取引を行う企業は、デリバティブ取引(為替予約、オプション取引)を活用して、為替相場の変動による損失を回避します。
金利変動リスク
「金利変動リスク」とは、金利の変動により債券などの資産価値が変動するリスクのことをいいます。
債券は金利変動による影響を受けやすく、市場の金利が高くなれば債券の価値は下がり、市場の金利が低くなれば債券の価値が上がります。
価格変動リスク
「価格変動リスク」とは、投資対象である金融商品の価格変動により投資資産の価値が変動するリスクのことをいいます。
一般的に大きいリターンが期待できる金融商品は「価格変動リスク」も大きく、小さいリターンしか期待できない金融商品は「価格変動リスク」も小さくなります。
「価格変動リスク」は、標準偏差などの統計指標を用いて分析します。
流動性リスク
「流動性リスク」には「市場流動性リスク」や「資金調達リスク」があります。
市場流動性リスク
「市場流動性リスク」とは、市場における取引ができなくなったり、通常より著しく不利な価格でしか売ることができなくなるリスクのことをいいます。
そのような事態が発生するのは、そもそも市場での取引量が少ない商品(流動性が低い商品)の場合や、大暴落、システム停止、災害、戦争などにより取引自体ができなくなるケースが考えられます。
資金調達リスク
「資金調達リスク」とは、通常より著しく不利な価格でしか資金を調達できなくなるリスクのことをいいます。
例えば、上述した「市場流動性リスク」により資金を回収できなかったり、通常より著しく高い金利でしか借入ができなかったりというケースが考えられます。
明日は、「デリバティブ取引(2)(デリバティブ取引の種類)」について説明します。
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