事例Ⅳ ~平成27年度 解答例(8)(主要顧客への売上依存)~

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平成27年度の事例Ⅳに関する解答例(案)を説明していきます。

私なりの思考ロジックに基づく解答例(案)を以下に説明しますので、参考としてもらえればと思います。

 

目次

事例Ⅳ ~平成27年度試験問題一覧~

平成27年度の他の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

主要顧客への売上依存

「主要顧客への売上依存」は「事例Ⅱ」でよく出題される内容です。

「主要顧客への売上依存」は、継続的に安定した受注を見込むことができるため一定の売上高を確保することができるというメリットがありますが、企業全体が主要顧客に依存する体質となり、新規顧客を開拓したり新商品を開発する必要性が薄れてしまうため、営業力が弱くなったり商品開発力が弱くなるといったデメリットも多数あります。

また、主要顧客の業績悪化や経営方針の変更などの理由によって、取引量が減少したり、取引自体が中止となってしまう可能性も考えておかなければなりません。

中小企業にとって、売上高の多くを依存している主要顧客からの取引中止は死活問題へと直結してしまうため、そうなる前に「主要顧客への売上依存」から脱却する対策を講じる必要があります。

 

第4問

第4問(配点12点)

 

X社はD社にとって主要な取引先であり、D社の受注全体に占めるX社からの受注割合が大きい。この点に関して、下記の設問に答えよ。

 

(設問1)

X社のような大口取引先の存在は、D社にとってメリットもあるがデメリットもある。どのようなデメリットがあるか、30字以内で述べよ。

 

(設問2)

設問1におけるデメリットを解消するための方策として、環境関連製品の製造・販売をすることの意義を30字以内で述べよ。

 

 

考え方(設問1)

X社のような大口取引先の存在によるD社にとってのデメリットを求められています。

 

大口取引先の存在による一般的なメリットとデメリット

大口取引先の存在(主要顧客への売上依存)による、一般的な「メリット」と「デメリット」を以下に示します。

 

メリット
  • 継続的な受注により、安定した売上を上げることができる。
  • 大口取引先からの注文対応に集中すればよいため、経営資源の有効活用ができる。

 

デメリット
  • 大口取引先の業績悪化や方針の変更などの理由によって、取引量が減少したり、取引自体が中止となる恐れがある。
  • 大口取引先との取引が中止となった場合、売上高の多くを失うこととなり経営破綻に直結する恐れがあるなど経営リスクが高い
  • 新規顧客開拓や提案型の営業を行う必要性が薄れてしまうため、待ち受け型の営業スタイルとなってしまい営業力が低下する。
  • 新商品を開発する必要性が薄れてしまうため、商品の開発力が低下する。
  • 大口顧客に売上を依存していることを弱みとして利用され、値引き要求などに対する交渉力が低下する。
  • 取引量が増加していることを理由としたボリュームディスカウントにより利益率が低下する。
  • 取引量が増加していることを理由に、大口取引先から売上代金の支払条件を緩和させられるなど、売上債権を回収するまでの期間が長くなり資金繰りが厳しくなる

 

大口取引先の存在によるD社にとってのデメリット

今回の問題では、一般論ではなく「D社にとってのデメリット」を求められていますので「与件文」や「経営分析(第1問)の解答」と照らし合わせて、どのデメリットを解答するか考えていきます。

 

与件文から読み取れる内容

与件文に記載されている内容から、大口取引先の存在による一般的なメリットとデメリットに関連する文章を抜粋していきます。

 

  • D社はX社以外への精密部品の製造・販売にも事業拡大を図ってきた。
  • D社の技術力は市場から一定の評価を受けている。
  • 自社開発のz鋼板を使用した精密部品が主力製品の1つになりつつあり、その効果によってX社向け以外の精密部品の受注が増加傾向にある。
  • これまでの取扱製品とは異なる需要動向を示す環境関連製品の製造・販売を計画しており、すでに一部の製品開発を終了している。
  • 当該新規事業分野への進出にあたって慎重な市場調査を行った結果、一定の需要が存在することが分かっている。
  • 主要取引先のX社は部品調達の一部を海外企業に求めることを決定しており、そのため、来期の受注数量が減少すると予想している。

 

X社以外の製造・販売にも事業拡大を図っていること、自社開発のz鋼板を使用した精密部品の受注が増加傾向にあること、市場調査を行った上で環境関連製品の製造・販売を計画していること、などの記述を読む限りでは「営業力」や「商品開発力」は低くないように見受けられます

ただし、主要取引先の方針に変更により来期の受注数量が減少する、という記述は大口取引先の方針変更によって取引量が減少しているというデメリットに該当します。

 

経営分析結果(第1問)から読み取れる内容

事例Ⅳ ~平成27年度 解答例(2)(経営分析)~」において、「売上高総利益率」は同業他社と比較すると優れており「売上債権回転率」「当座比率」には課題があると解答しています。

X社からの受注がD社における売上の7割程度を占めている状況ではありますが「利益率」は高いことが分かります。

ただし、「売上債権回転率」「当座比率」に課題があるという状況は、売上債権を回収するまでの期間が長くなり資金繰りが厳しくなっているというデメリットに該当します。

 

大口取引先の存在によるD社にとってのデメリット

大口取引先の存在による一般的なデメリットの中で、D社に該当するデメリットは以下の3点であることが分かります。

  • 大口取引先の業績悪化や方針の変更などの理由によって、取引量が減少したり、取引自体が中止となる恐れがある。
  • 大口取引先との取引が中止となった場合、売上高の多くを失うこととなり経営破綻に直結する恐れがあるなど経営リスクが高い
  • 取引量が増加していることを理由に、大口取引先から売上代金の支払条件を緩和させられるなど、売上債権を回収するまでの期間が長くなり資金繰りが厳しくなる

 

最終解答の考察

解答文の文字数が60文字以内であれば、全てのデメリットを解答したいところですが、今回の問題では「30文字以内」との文字制限があり、全てのデメリットを記述するのは難しいため、もう少し解答範囲を絞り込んでいきます

解答範囲を絞り込んでいくにあたって注目したいのは、「第4問(設問2)」において、デメリットを解消するための方策が「環境関連製品の製造・販売をすること」であることです。

「環境関連製品の製造・販売をすること」により、解消されるデメリットは「大口取引先の業績悪化や方針の変更などの理由によって、取引量が減少したり、取引自体が中止となる恐れがある。」ことと「大口取引先との取引が中止となった場合、売上高の多くを失うこととなり経営破綻に直結する恐れがあるなど経営リスクが高い。」の2点であり、「売上債権を回収するまでの期間が長くなり資金繰りが厳しくなる。」は該当しません。

 

したがって、大口取引先の存在によるD社にとってのデメリットは以下の2点に絞ることができます。

  • 大口取引先の業績悪化や方針の変更などの理由によって、取引量が減少したり、取引自体が中止となる恐れがある。
  • 大口取引先との取引が中止となった場合、売上高の多くを失うこととなり経営破綻に直結する恐れがあるなど経営リスクが高い

 

あとは、この2つのデメリットを30文字以内の文章にまとめます。

  • 取引先の業績や方針により売上高が増減するなど経営リスクが高い。(30文字)

 

解答(設問1)

X社のような大口取引先の存在によるD社にとってのデメリットは以下の通りです。

取引先の業績や方針により売上高が増減するなど経営リスクが高い。(30文字)

 

考え方(設問2)

X社のような大口取引先の存在によるD社にとってのデメリットを解消するための方策である環境関連製品の製造・販売をすることの意義について求められています。

 

方策により解消するデメリット

既に「第4問(設問1)」で解答範囲を絞り込んでいくときに検討しましたが、「環境関連製品の製造・販売をすること」により、解消されるデメリットは「大口取引先の業績悪化や方針の変更などの理由によって、取引量が減少したり、取引自体が中止となる恐れがある。」ことと「大口取引先との取引が中止となった場合、売上高の多くを失うこととなり経営破綻に直結する恐れがあるなど経営リスクが高い。」の2点です。

 

最終解答の考察

改めて、大口取引先の存在によるデメリットを解消するためにどうすればよいかについて考えてみます。

  • X社への売上依存を解消するためには、新規顧客の開拓や新製品の開発によって取引先を増やして、売上高に占めるX社の割合を低減させることが必要です。

 

また、方策を実施することにより得られる効果は以下の通りです。

  • 経営破綻に直結するような経営リスクを軽減することができます。

 

あとは、これらの内容を30文字以内の文章にまとめます。

  • 取引先が分散しX社への依存度が低減するため経営基盤が安定する。(30文字)

 

解答(設問2)

デメリットを解消するための方策である環境関連製品の製造・販売をすることの意義は以下の通りです。

取引先が分散しX社への依存度が低減するため経営基盤が安定する。(30文字)

 

与件文において、需要動向や需要変動に関する記述が何度も出てくるため、「従来の製品の需要動向とは異なる製品を販売することによって、受注量を平準化することができるため、リソースの有効活用ができる。」という主旨の解答を求められている可能性もありますが、「第4問(設問1)」とのつながりを考えると、上記の解答の方が良いのではないかと判断しました。

 


 

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